会長あいさつ(Presidential Message)

 このたび、2024年(令和6年)4月から、前任者の第8代目森本和滋先生の後を継いで第9代日本薬史学会会長に就任いたしました船山信次と申します。どうぞよろしくお願い申し上げます。

 日本薬史学会は、1954年に東京大学名誉教授の朝比奈泰彦先生を初代会長として発足し、今年はちょうど70周年の節目を迎える由緒ある学会です。初代会長の朝比奈先生と第4代会長の柴田承二先生(東京大学・明治薬科大学名誉教授)は、いずれも奈良東大寺の正倉院薬物の科学調査にも当たられ、それぞれ『正倉院薬物』と『図説 正倉院薬物』という大変に立派な報告書をまとめられました。

 日本薬史学会はこの様に重厚な歴史も持つ一方、現在、薬の歴史に種々の観点から興味を持つ多くの会員が集い、和気あいあいと、互いに研鑚、切磋琢磨しながらこの領域の学術の発展を目指しています。本会は、学術発表の場として『薬史学雑誌』を刊行する他、年会を国内各地で開催しており、最近の対面での開催地は、奈良・東京・埼玉・新潟・岐阜・仙台・岡山などでした。年会の際には薬史ツアーも実施し、開催地の薬の歴史に関係する史跡などを巡ったりして会員同士の親睦を深めています。また、柴田承二先生を記念した「柴田フォーラム」も、主に東京大学薬学部を会場として毎年開催され、薬史に関係ある著名な演者を招いて講演をしていただき講演後には懇親会を開催しています。その他、有志による薬史に関係する本の執筆や、支部における講演会の開催などの活動もなされています。そして、活動のアナウンスなどのためにはH Pを活用するとともに、会員向けに「薬史レター」をウェブサイトにて発信しています。

 日本薬史学会は上記の様な様々な活動を通して、わが国の薬史に関する学術の進歩を目指している学会です。目指すところや実績は高いのですが、これからも、楽しくお互いを高め合う集いにしたいと思います。今後ともこの雰囲気と目指すところは変えずに円滑に運営が進む様に努めたいと考えておりますので、変わらぬご支援の程、何卒どうぞよろしくお願い申し上げます。

2024年5月吉日
日本薬史学会会長 船山信次
(日本薬科大学客員教授)


プロフィール

 1951年仙台市生まれ。東北大学薬学部卒業、同大学大学院薬学研究科博士課程修了。薬剤師・薬学博士。博士研究員としてイリノイ大学薬学部(シカゴ)留学の後、北里研究所技師・室長補佐、東北大学薬学部専任講師、青森大学工学部教授(弘前大学客員教授兼任)、日本薬科大学教授(同大学図書館長・薬用植物園長・漢方資料館長)などを経、現在、日本薬史学会会長・日本薬科大学客員教授。

 著書に、『毒と薬の世界史』(中公新書)、『〈麻薬〉のすべて』(講談社現代新書)、『毒』(P H P文庫)、『毒と薬の文化史』(慶應義塾大学出版会)、『毒の科学』(ナツメ社)、『アルカロイドー毒と薬の宝庫』(共立出版)、『絵でわかる薬のしくみ』(講談社)、『毒が変えた天平時代―藤原氏とかぐや姫の謎』(原書房)、『毒があるのになぜ食べられるのか』(P H P新書)、『禁断の植物園』(山と溪谷社)など多数。毒や薬の歴史と文化に関する雑誌記事の執筆、TVやラジオ番組出演も多数。