「ゲーム使用と健康に関する全国親子調査」について
背景
近年、自らのゲーム行動をコントロールできず、日常生活に支障をきたすゲーム障害が、若者を中心に急速に広まっていると指摘されている。また、ゲーム使用に伴う問題のみならず、発達障害、不登校、ひきこもり等の問題を抱えた患者・家族が存在すると言われている。ゲーム使用問題とは
ゲーム使用が原因で日常生活や人間関係に支障が出ている状態- ICD-11のゲーム障害に該当する場合(以下の3つが1年以上続く場合)
・ゲームする時間や頻度がコントロールできない
・日常生活でゲームを他の何よりも優先させる
・生活に問題が生じてもゲームを続ける - ゲーム使用が原因で、以下のようなことが度々ある
・睡眠不足・昼夜逆転
・欠席・欠勤
・家族と口論が絶えない
・課金をし過ぎる
・他の趣味や活動に関心がなくなる
課題
- 国内のゲーム使用に伴う問題を持つ人におけるゲーム障害の有無や重症度、併存する問題に関する実態は明らかにされていない。
- 日本には信頼性・妥当性が確認されたゲーム障害のスクリーニング尺度が存在せず、的確なスクリーニングが行えない。
- 海外では親評定版のスクリーニング尺度が開発されているが、日本には存在しない。低年齢の子どもがスクリーニング尺度に回答する場合、尺度項目内容を正しく理解できないことが懸念され、親のアセスメントと合わせて問題の程度を評価することが望ましいと言われている。家族が先に相談機関につながることが多く、家族の情報に基づきスクリーニングを行う必要がある。
- ゲーム障害を持つ人の多くは未成年であり、家族を含めた包括的な治療が必要である。しかしながら、家族を含めた介入は確立されていない。
目的
- 医療機関に通院するゲーム使用問題を持つ患者、および患者家族の実態を明らかにする
- 海外で開発されたゲーム障害スクリーニング尺度(自己評価版・家族評定版)の日本語版を作成し、日本語版の信頼性・妥当性を検証する
- 縦断調査によりゲーム使用問題の予後を明らかにする
研究方法
精神科・児童精神科に通院するゲーム使用問題を有する患者とその親を対象に、質問紙またはウェブによるアンケート調査を実施する。1) 対象者
患者調査:ゲーム使用問題を有する通院患者、小学4年生(9歳)~29歳の男女家族調査:小学校4年生~高校3年生のゲーム使用の問題を有する通院患者と同居する親権者
2) 調査スケジュール
2021年 | 8~9月 | 調査対象施設への調査協力依頼 |
10~11月 | ベースライン調査、再テスト | |
2022年 | 4~5月 | 半年後調査 |
10~11月 | 1年後調査 |
3) 調査方法
患者調査:自記式質問紙調査家族調査:ウェブアンケート調査
調査内容:ゲーム使用状況、精神的健康、生活習慣、家族関係など
各調査の所要時間:約30分
4) 患者調査における同意取得方法
年齢に応じた研究説明文書を用いて、研究の説明を行う。小中高学生は、本人と親権者の署名により同意を得る。
高校卒業後の18歳以上の患者の場合は、本人の署名により同意を得る。
研究資金
令和2~4年度厚生労働省科学研究費補助金(障害者政策総合研究事業)「ゲーム障害の診断・治療法の確立に関する研究(研究代表者:松﨑 尊信)」倫理審査の状況
東京医科歯科大学医学部倫理審査委員会の承認済み(M2021-004)。調査票を配布していただく各医療機関では、それぞれの機関における倫理審査委員会で審査を受ける必要はありません。研究実施体制
研究責任者高野 歩(東京医科歯科大学 大学院保健衛生学研究科 精神保健看護学分野 准教授)
共同研究者
館農 勝(ときわ病院・ときわこども発達センター 理事長)
宮本有紀(東京大学大学院医学系研究科 精神看護学分野 准教授)
徳重 誠 (東京大学大学院医学系研究科 精神看護学分野 博士課程)
浅岡紘季(東京大学大学院医学系研究科 精神看護学分野 博士課程)
大野昴紀(東京医科歯科大学 精神保健看護学分野 技術補佐員)
お問い合わせ
高野歩 東京医科歯科大学 精神保健看護学分野 准教授e-mail:ayumi-takano.pn@tmd.ac.jp