ソフィーの選択
とてもこわいお話になりますので,読まないで他のページに行くという方法もあります
第二次世界大戦時のヨーロッパでのお話です。ソフィーという母親が,幼い息子と娘をつれてナチスの強制収容所に送られて行く途中の話です。
ナチスの親衛隊の軍医が,2人の子供を連れて行くことはできないので,どちらか一人をここに残せとソフィーに迫ります。
選ばなければ2人とも助かりません。「選べません」と彼女は泣き叫ぶのですが,結果的に一人を抱きよせます。
小児の脳腫瘍の治療法の選択では,このお話と同じことがおこります。
たとえば,1才のこどもの脳腫瘍に広い範囲の放射線治療をすれば,とても重い障害が残ります。でも,放射線治療をしないとほとんど命が助からない腫瘍もあります。多くの場合,1歳のこどもに全脳照射はしないというのが暗黙の了解です。
手術でも同じように,腫瘍を摘出すれば命は助かるけれども,手足が全く動かなくなり言葉を話すことができないという状況もあります。多くの場合,手術は選択されません。
化学療法においても,多かれ少なかれ,こどもたちは代償を払うことになります。
このような選択への助言は医学論文には書いてありません。ですから,インフォームドコンセントを大切にするならば,私はこどもの両親に選んでもらうしかない状況に陥ります。
でも,それを両親に丸投げして選ばせていいのでしょうか。私が選択肢を与えないで決めた方がいいのでしょうか。
辛い思いを両親と共有しながら,医師側から,この方がいいかもしれないと提案するべきことです。
もちろん,この質問に答えられる人が,いようはずもありません。
選択できない治療選択肢があるのです。
この結果を納得することはできませんし,結果から逃げることはできませんが,答えのない選択肢のどちらかをとった結果に関しては,誰にも責任を問うことができないでしょう。
ソフィーを責めることはできません。
figures by Sora Sawamura at her age of 8 years.