海外派遣
Advanced Imaging Techniques for Neuroscience (AITN) @Bordeaux School for Neuronscience体験記
2024年9月30日~10月18日にかけてBordeaux School for NeuronscienceでAdvanced Imaging Techniques for Neuroscienceに参加する学生の支援を行いました。
Report 1
参加者: 宮田一馬(池谷研究室)
東京大学修士課程2年
このたび私は、フランス・ボルドーのBordeaux School for Neuronscienceで行われたAdvanced Imaging Techniques for Neuroscience (AITN)に国際先導研究の一環として参加させていただきました。本コースは、in vivoおよびin vitroの系における神経科学のイメージングを学ぶコースであり、3週間を通じてイメージングの原理を学ぶレクチャーと、実際に手を動かして技術に触れるハンズオントレーニングが提供されました。施設には2光子励起顕微鏡、STED顕微鏡、超解像顕微鏡、ライトシート顕微鏡など様々な設備があり、イメージングを学ぶうえで非常に恵まれた環境でした。本コースにはヨーロッパを中心に各国の学生・ポスドクあわせて20名が参加しました。
私たち参加者は、3週間の前半と後半で別々のプロジェクトに参加しました。同じグループに配属されたメンバーと協力しながら実験を進め、各プロジェクト終了後にはプロジェクトで得られた知識や結果をグループ単位でプレゼンテーションする機会が設けられました。また、各国の研究機関のPIの方々による最先端のイメージング技術の原理を学ぶレクチャーも充実しており、非常に密な体験をすることができました。
私は、グリア細胞とExpansion Microscopy (ExM)に関心があったことから、前半はShadow imagingによるマイクログリアの動態イメージングを、後半は新たなExpansion Microscopyの手法を学ぶプロジェクトに参加しました。前半のプロジェクトでは、マウスのスライスカルチャーおよび急性切片を用いて、マイクログリアがATP濃度が高い部位に突起を伸長させる様子をライブイメージングしました。標的細胞を直接標識するのではなく、細胞外空間を蛍光色素で満たすことで標的細胞を影として捉えるshadow imagingの技術を、2光子励起顕微鏡と組み合わせることで非常に鮮明な像を得ることができました。後半のプロジェクトでは、私たちのグループのインストラクターであるMojtaba R. Tavakoli博士が開発した”LICONN”と呼ばれる新たなExMの手法を用いて、マウスの脳切片の超高解像度イメージングを行いました。この手法は、組織を水膨張性ゲルで2度拡大して16倍の大きさにし、得られた組織画像を深層学習によるセグメンテーションすることで、複雑な細胞の相互関係を明らかにするものです。私は自身の研究で実際にExMを用いており、その応用や手技のコツなど様々な知識を得ることができました。
こうしたレクチャー・実験以外にも、自身の研究を共有するポスター発表の時間も設けられ、有意義なアドバイスをいただくとともに、多くの研究者および学生とディスカッションをすることができました。また、コースを通じて参加者と交流する機会が多くあり、英語を通じて積極的にコミュニケーションをとる良いトレーニングになったと考えています。これらの経験を通じて、研究に対するモチベーションが大いに向上したと実感しています。イメージングに関心のある方は、ぜひこのコースに応募することをおすすめします。
最後に、3週間を通じてたいへんお世話になったAITNの運営者であるValentin Nägerl先生をはじめ、実際に実験を教えてくださったインストラクターのKosuke Okuda先生、Pranay Gaikwad先生、Nathalie Agudelo Dueñas先生、Mojtaba R. Tavakoli先生、多大なる支援をしていただいた池谷先生、小山先生、そして非常に貴重な機会を与えてくださった国際先導研究のサポートに心からの感謝を述べさせていただきたいと思います。本当にありがとうございました。
Report 2
参加者:福田徹子(柚﨑研究室)
慶應義塾大学医学部・特別研究員
この度、私はBordeaux School for Neuroscienceで行われたCAJAL Advanced Neuroscience Training ProgramのAdvanced Imaging Techniques for Neuroscienceに参加させていただきました。本コースは、神経科学研究における最先端のイメージング技術の開発をリードしている各国のPIおよび研究者の参加を通じて、若手研究者に幅広いイメージングの概念と実践的な技術を提供することにより、神経科学における画像技術の応用と発展を促進することを目的として開催されました。
スケジュールにはイメージングに関する講義と実践的な実験及び解析等のトレーニングの両方が設けられており、3週間の日程にほぼ隙間なく予定が組まれておりました。最先端イメージングシステムの開発者や第一線でご活躍されている研究者による講義では、さまざまなタイプの顕微鏡の基本原理を理解し、発展の歴史と最新型の開発について経緯と成果を含めて学ばせていただきました。私が現在まで触れる機会のなかったライトシート顕微鏡などについてもその発展の経緯は大変興味深いものでした。また、実践トレーニングでは、10種類のプロジェクトが用意されており、生徒は前後半でそれぞれ1つずつプロジェクトを選択する形で行われました。1プロジェクトにつき2〜4人ずつのグループに分かれ、専門のインストラクターがついて丁重に教えてくださり、各工程において細かくアドバイスを頂きながら実践することができました。
私はSTED顕微鏡の構造やイメージング法、特に in vitro のShadow imaging を学ぶことを目的としていましたので、前半のコースではスライス培養を用いたSUSHI live imagingプロジェクトを、後半のコースでは急性切片及びスライス培養、固定切片を用いた2光子顕微鏡のShadow imaging プロジェクトを選択しました。前半で使わせていただいたSTED顕微鏡が自作だったため、構築においてさまざまな工夫がされている光学的仕様について実物を見ながらわかりやすく説明していただき、大変勉強になりました。また、STED顕微鏡を組み立てるにあたり光路を構築していくための手順を教えていただいたり、レーザーライン調整過程でのアライメントの取り方を経験したりと、非常に楽しく学ばせていただきました。
少人数単位で生徒と先生が十分な時間を一緒に過ごすスケジュールでしたので、プロジェクトの内容だけでなく、自分の研究室で行なっている研究についてもディスカッションを行う機会が多々ありました。講師の先生が、私自身が研究室で行なっているプロジェクのイメージングの解析について画像を見てアドバイスをくださったり、顕微鏡のカスタム部に関する問題点についても解決法を指し示してくださったりと、大変貴重なご助言を聞くことができ、このコースに参加して本当によかったと感謝しております。さまざまなタイプのイメージングについて広く深く学べ、自らの研究の幅を広げることができるこのコースへの参加は、非常に意味のあるものだったと感じております。
最後に、この素晴らしいコースのディレクターであり研究について多くのアドバイスをくださったValentin Nägerl先生、実験や解析などについて細かい指導とアドバイスをくださいましたJan Tønnesen先生、Kosuke Okuda先生、Pranay Gaikwad先生、スタッフの皆様に深く感謝いたします。また、貴重な機会を与えてくださいました柚﨑先生と支えてくださった研究室の方々、多大なるご支援をいただきました国際先導研究・記憶メカニズムの多次元解析に深く感謝いたします。
Report 3
参加者:中川育磨(米原研究室)
総研大・5年一貫博士課程1年/国立遺伝学研究所
今回、私は、9月30日から10月18日にかけて、フランス・ボルドーのBordeaux School of Neuroscienceで開催された、”CAJAL course on Advanced Imaging Techniques for Neuroscience 2024”に参加させていただきました。本コースは、最先端のイメージング技術の原理を学ぶとともに、実験プロジェクトを通して実際に手を動かすことで技術を習得することを目的としています。午前は、Keynote Speakerやインストラクターの方々の講演を聴き、イメージング技術の基礎や、それを利用した彼らの研究について、幅広い内容を学びました。午後から夕方にかけて、2~4人のグループごとに分かれ、それぞれ実験を行いました。
3週間の本コースは前半と後半に分かれ、それぞれで異なる実験プロジェクトを通して最先端のイメージング技術を学びました。本コースで学べるイメージング技術は、2光子励起顕微鏡法、誘導放出抑制顕微鏡法、光シート顕微鏡法、shadowイメージング、膨張顕微鏡法など、多岐にわたりました。実験プロジェクトの最後にはグループごとにプレゼンテーションを行い、学んだ内容を共有しました。
私は、前半では誘導放出抑制顕微鏡法(STED)を用いた超解像shadowイメージング(super-resolution shadow imaging: SUSHI)を学びました。2018年にSUSHIを開発したJan Tønnesen先生の指導のもと、マウス海馬のorganotypic スライス培養サンプルを用いて実験を行いました。Shadowイメージングは、Calceinという蛍光色素で細胞外領域を染めて細胞を影として描出する手法で、細胞と細胞外領域の情報を同時に得ることができます。サンプルを浸すバッファー中に直接Calceinを加え、数分待つことで細胞外領域が染まり、Shadowイメージングを行うことができました。スパインやシナプスを観察したり、浸透圧刺激を加えた際に細胞外領域が増加する様子を観察したりすることができました。
後半では膨張顕微鏡法(Expansion Microscopy: ExM)を学びました。膨張顕微鏡法は、水を吸収して膨張する性質を持つゲルの中にサンプルを埋め、ゲルとともにサンプル自体を化学的に膨張させることで、共焦点顕微鏡を用いて超解像イメージングを可能にする手法です。博士号を取得したばかりのMojtaba Tavakoli先生、Nathalie Agudelo Duenas先生のもと、2通りの手法でマウス脳スライスサンプルを膨張させ、共焦点顕微鏡で細胞の観察を行いました。まず、従来のProtein Retention Expansion Microscopy (ProExM)の手法を用いて、約4倍に膨張した神経細胞を観察しました。続いて、Mojtaba Tavakoli先生らが開発した、膨張顕微鏡法を用いて単一シナプスレベルで神経接続を明らかにするLICONN (light-microscopy based connectomics)という新手法のプロトコールでサンプルを膨張させて観察を行いました。Pan-protein染色を行い、2回膨張させてサンプルを16倍にすることで、細胞内の構造体までも観察することができました。
本トレーニングコースでは、関心があった超解像顕微鏡法について実験を通して学ぶことができ、自分の研究に対するモチベーションも大いに向上しました。今回学んだ実験手法を取り入れ、自分の研究をさらに進めていきたいと思います。また、今回が初めての海外経験だったこともあり、フランス・ボルドーの研究所で実験を行い、インストラクターや他の参加者と英語でコミュニケーションをとったりディスカッションしたりして過ごした3週間は私にとって非常に貴重な経験となりました。この経験を生かして、今後の博士課程での研究生活をより実りあるものにしていきたいと思います。
最後に、今回のトレーニングコースに協力いただいたBordeaux School of Neuroscienceの皆様、インストラクターのJan Tønnesen先生、Mojtaba Tavakoli先生、Nathalie Agudelo Duenas先生、コースへの参加を勧め、サポートしてくださった米原圭祐先生、国際先導研究の支援に深く感謝いたします。ありがとうございました。
第二回国際先導研究リトリート体験記
2024年9月18日~21日にかけてMax Planck Florida Instituteで第二回国際先導研究リトリート Retreat for Multidimensional Analysis of Memory Mechanismsを開催しました。学生・ポスドクはさらに3日間滞在し、ラボ見学を行いました。
Report 1
参加者: 坂本丞 (根本研究室)
生理学研究所・特任研究員
この度私は、2024年9月18日から9月25日にMax Planck Florida Institute for Neuroscienceで行われたMemory Formation Retreatとその後の研究室訪問に参加させていただきました。リトリートでは、世界を先導する神経科学者の先生方や、学生・若手研究者の研究発表を拝聴することができ、非常に学びのある有意義な時間を過ごすことができました。私自身もポスター発表およびYoung sessionでの口頭発表を行いました。発表後は諸先生方から非常に有用なご意見をいただくとともに、活発に議論することができました。リトリートでの議論やいただいたご意見を取り込んで、自身の研究をより良いものにしていきたいと思います。リトリートでは、MPFIのmachine shopや顕微鏡のコアファシリティを見学するツアーもしていただきました。最先端の設備を間近で見学することができ、大変貴重な経験となりました。また、リトリート中のsocial activityの時間には、MPFIからUberで20分程度の場所にある、ウミガメの保護施設Loggerhead Marine Life Centerとそこから歩いていけるJuno beachにリトリート参加者数名と行って交流を深めることができました。
9/22にはRyohei Yasuda先生がキャリアパスセミナーを開いてくださり、Lin Tian先生とHidehiko Inagaki先生を招いてアメリカでどのようにキャリアを形成していくのか、学位取得後にアメリカでどのようなグラントに申請できるのかなどについて詳細に話を聞くことができました。キャリアパスセミナー後はセミナー参加者との交流会にシームレスに切り替わっていき、研究の話から趣味の話、宇宙や物理の話まで非常に幅広い話題で交流を深めることができました。
週が開けて9/23から3日間の研究室訪問が始まりました。私は今回Ryohei Yasuda先生のラボを見学させていただきました。Yasudaラボでは私以外に2名を受け入れており、合計3名でのラボ訪問となりました。1日目の午前は定例のラボミーティングやジャーナルクラブに参加し、午後から光学顕微鏡や2光子顕微鏡の基礎について講義を受けました。私自身日本で同様の講義を受け持っており、午後の講義で講師をしてくださったYan Long先生がどのような説明をされているか非常に参考になりました。2日目からはYasudaラボでの実験の様子を見せていただきました。Tristano Pancani先生やIrena Suponitsky-Kroyterさん、Goksu Ozさん、 Koichi Hirokawaさんが実験を見せてくださり、急性脳スライスやorganotypic slice の作製方法、作成したスライスとケージドグルタミン酸を用いた二光子uncaging法によるLTPの誘導とそれに伴う電気生理学実験や蛍光寿命イメージング実験、行動実験などを見学することができました。私は特にYasudaラボの顕微鏡セットアップに興味があり今回の訪問先として希望していました。そのため、顕微鏡の実機を前にして細かな質問や議論できたのは非常に良い機会でした。特に、2P-FLIMによりと種々のプローブを組み合わせた生理機能の測定はYasudaラボ特有の技術であり、その詳細なセットアップについて知ることができたのは私にとって大きな収穫でした。
最後に、本リトリートを企画運営してくださった三國貴康先生とRyohei Yasuda先生をはじめとしたスタッフの皆様と渡航する機会を与えてくださった根本知己先生に深く感謝を申し上げたいと思います。また、実験の見学をさせてくださった方々とYasudaラボでの見学をオーガナイズしてくださったYoshihisa Nakahata先生に感謝するとともに、研究室訪問を受け入れてくださったRyohei Yasuda先生に再度御礼申し上げます。本リトリートに参加することで、最新の研究に触れることができたほか、MPFIの先進的な研究室の設備や実験手法を目の当たりにできたことは大変貴重な経験でした。今回のMPFI滞在を通して得た経験を自身の研究生活に取り込み、より良いものにしていきたいと考えております。
Report 2
参加者: Shambhavi Chaturvedi(米原研究室)
総研大・5年一貫博士課程3年/国立遺伝学研究所
私は、フロリダ州ジュピターにあるマックス・プランク・フロリダ研究所(MPFI)が主催する第二回国際先導研究リトリートに参加する機会に恵まれました。このリトリートは、研究カンファレンスと学生向けの研究室訪問という 2部に分かれていました。
2 日間のカンファレンスでは、分子遺伝学の進歩から複雑な神経ネットワークや疾患メカニズムに至るまで、幅広いトピックにわたる研究セッションが実施されました。これらのセッションでは、現在の神経科学研究のホットな話題から、意識に関する話題など広範囲なテーマについて、同世代や熟練した研究者たちと(休憩時間を通じても)魅力的なディスカッションを行うことができ、非常に充実していました。
また、MPFIで使用される研究機器を構築するための設備が整った素晴らしいワークショップを見学する機会もありました。リトリートではポスターセッションも開催され、アイデアを交換し、進行中の自身のプロジェクトについて新たな視点を得るのに役立ちました。カンファレンスを通じて、私は、二光子顕微鏡の技術進歩や新たなイメージング技術の開発、生体シグナルを可視化するためのセンサー開発、生理学と行動における実験的アプローチについて学ぶことができました。
カンファレンスの後、私はLin Tian博士の研究室に3日間滞在し、バイオセンサー技術と神経治療法の開発について個別に学ぶ機会を得られました。
- 1 日目は、ライトシート顕微鏡法の紹介と in vitro 実験に焦点を当てました。また、ラボミーティングにも参加させていただき、内側前頭前皮質 (mPFC) や側坐核 (NAc) などの脳領域でのドーパミンセンサー(dLight)について学ぶことができました。さらに、NAc に発現させたdLightのイメージング実験を実際に見学することができました。
- 2 日目は、Tian Labで行われている研究プロジェクトについての紹介から始まり、最新のグルタミンセンサー(iGluSnFR)を用いた研究についてディスカッションする機会がありました。また、眼窩前頭皮質にセロトニンセンサー (iSeroSnFR)を発現させるための送達に関連する外科手術を見学しました。
- 3 日目には、線条体からの in vitro イメージング実験を見学し、ビブラトームでの切片作成や2光子イメージングに関する実践的なデモンストレーションが行われました。
この研究室訪問により、最新のバイオセンサー、2 光子イメージング、および行動神経科学についての理解が深まりました。さらに、研究室のメンバーとの洞察に富んだディスカッションにより、これらのツールの応用についての理解が深まり、自身の研究を発展させるための参考になりました。
Tian Labで実施されている革新的な研究を学ぶ機会を提供してくれたリン・ティアン博士には大変感謝しています。また、私の訪問中に実験をデモンストレーションし、指導とサポートを提供してくれた Akash Pal 博士、Yihan Jin 氏、Kiran Long-Iyer 氏、Julie Chouinard博士、そして Tian Lab のメンバー全員に感謝しています。今回のリトリートは充実した経験であり、私の科学的知識が広がり、この分野の多くの人々とつながることができました。特に、Ryohei Yasuda博士、Hidehiko Inagaki博士、Lin Tian博士から研究キャリアの歩みにおいてご指導をいただいたことに感謝しています。最後に、このリトリートへの参加を勧めてくださった指導教官の米原圭祐博士に心より感謝申し上げます。また、国際先導研究・記憶メカニズムの多次元解析から旅費を支援して頂いたことで、この思い出に残るリトリートへの参加が可能になったことにも非常に感謝しています。今回の経験から得た知見を自分の今後の研究に活かしていきたいと思っています。
Imaging Course at Max Planck Florida Institute体験記
国際先導研究「記憶メカニズムの多次元解析」は、2024年2月5日~17日にかけてMax Planck Florida Instituteで開催されたImaging Courseに参加する2名の学生の支援を行いました。
Report 1
参加者: Chung-Han Wang (久保研究室)
総研大・5年一貫博士課程3年/理化学研究所・研修生
この度、私はMax Planck Florida Institute (MPFI)が開催するニューロイメージングコースに参加する機会を得ました。フロリダ州ジュピターにあるMPFIのキャンパスは、Wertheim UF Scripps研究所とフロリダ・アトランティック大学(FAU)に囲まれています。MPFIのニューロイメージングコースは、イメージング技術を神経科学研究に応用することに焦点を当てた、集中的かつ包括的な研究室指向型のコースです。このコースは、午前中の講義と午後・夕方の実験セクションから構成され、MPFIのPIや外部から招待された教授たちによる講義が行われました。今回、博士課程の学生やポスドクを含め、合計22名が参加しました。
初日の午後は、全員が打ち解けるためのアイスブレーキング・アクティビティが行われました。2日目は特に重要で、すべての生徒が4つのチームに分かれてステーション・ローテーション(研究室のローテーション)を行いました。超小型2光子顕微鏡(Mini2P)、ホログラフィック光遺伝学的刺激、3光子顕微鏡、膜電位イメージング、自由行動下のマウスでのミニチュア顕微鏡、DNA PAINT、FLIM/FRETでのMini2P、電子顕微鏡(EM)など、10のステーションが用意されていました。午前中のセッションは、光学、顕微鏡の基礎、高度な顕微鏡技術、イメージングに関する講義から始まり、基本的な原理からレーザーアライメントのような実践的な応用まで、学生が包括的に理解できるような内容でした。すべての講義は、mini-2PやVoltronなどのトピックの発明者である数名の招待PIなど、各分野で定評のある研究者によって行われました。さらに、コース期間中の夕方2回、学生が5分間でPhDプロジェクトを発表するデータ・ブリッツ・セッションも開催されました。
私の場合は、関連する研究への共通の関心から、もう一人の学生と電顕ステーションに割り当てられました。電顕ステーションに割り当てられる参加者はあらかじめ決まっていたので、MPFIイメージングセンター長のNaomi Kamasawa博士は、私たちが自分のサンプルを持ち込みたいかどうか事前に尋ねてくれました。これにより、私は固定済みゼブラフィッシュ脳サンプルを日本からMPFIに送り、連続ブロックフェイスSEM解析を行うことができました。電顕コアでは、研究員のDebbie Guerrero-Givenさんの指導のもと、サンプルのコントラスト増強、重金属染色、樹脂浸潤と超微細構造保存のための脱水、ミクロトームのシェービングと切片作成、樹脂サンプルをピンに合うようにトリミングすること、帯電を防ぐためのコーティングなど、電顕用のサンプル調製の様々な側面について学びました。これらの経験を通して、SEMとTEMの構造的・機能的な違いについて理解を深め、両方の技術を使って画像を撮影することができました。
このイメージング・コースへの応募を検討されることを強くお勧めします。このコースは、ニューロイメージングの最新技術や方法論を探求したいと思う方にとって(学生だけでなくPIにとっても)、またとない機会を提供してくれます。最後に、このコースへの参加を後押ししてくださった指導教員の久保郁先生と米原圭祐先生に深く感謝いたします。さらに、この忘れがたいコースへの参加が可能としていただいた、国際先導研究「記憶メカニズムの多次元解析」からの手厚いご支援に心から感謝いたします。さらに、MPFIの2週間のコース期間中、非常に貴重な支援と指導をしてくださったNaomiとDebbieに感謝いたします。
Report 2
参加者: 田中志和(池谷研究室)
東京大学博士課程2年
私は2週間にわたり、Max Planck Florida Institute (MPFI) で開催されたImaging Courseに参加する機会を頂きました。本コースはイメージング技術を自身の研究に取り入れ、さらなる発展を目指すことを目的に設計されています。参加メンバーは学部生から博士課程の学生、ポスドクまで幅広く、世界中から集まった多様な人々と共に学ぶという非常にダイバーシティ豊かな環境でした。
Imaging Courseは、午前中の講義と午後の実験セクションで構成されており、講義ではイメージングに関連する幅広いトピックがカバーされていました。光学の基本原理から始まり、これを基礎として高度なイメージング技術が体系的に学べるカリキュラムが組まれており非常に理解しやすく、また応用の幅が広がる内容でした。特に印象に残ったのは理論的な知識を実験に直結させるカリキュラム構成であり、理論と実践の融合が図られていた点です。これにより、技術の背景をしっかりと理解した上で実験へと進めました。
実験セクションでは、参加者が2〜3人の小グループに分かれそれぞれ異なる研究室に配属されました。私は幸運にも第一希望のテーマである「Mini2P」を選択することができ、Mini2Pという小型の2光子顕微鏡を用いて自由行動中のマウスの神経活動を観察するプロジェクトに取り組みました。このプロジェクトはMPFI のRyohei Yasuda研究室、Yingxue Wang研究室が主催となって開かれました。そして、Mini2Pの開発者であるWeijian Zong先生をお招きし、各研究室の博士課程の学生であるGoksu Ozさん、Zhuoyang Yeさん、Ohm Parikhさんのご指導のもとMini2Pのセットアップから神経活動の記録まで、一連の流れを学ばせて頂きました。
さらに、研究だけではなく、フロリダの自然を満喫することもできました。MPFI周辺の環境は非常に良く広大な敷地と澄んだ空気に恵まれており、研究の合間にはリフレッシュを兼ねて海やバーに出かけたり、現地の路上ライブを楽しんだりしました。また、滞在したホテルも非常に快適で、本コースは毎日朝9時から夜9時までという密度の高いスケジュールが組まれていましたが、体調を万全に保ち集中して取り組むことができました。
このコースを通じて、最先端のイメージング技術に触れ世界中の研究者とのネットワークを広げることができました。私は、現在取り組んでいる研究テーマにイメージング技術を組み入れ、パターン光刺激時の神経活動を詳細に観察したいというモチベーションでこのコースに参加しました。このコースで得た知識やスキル、そして世界中から集まった仲間たちとの出会いのおかげで目標達成への道筋が明確になったと感じています。
最後に、このような貴重な経験を提供してくださったMPFIの皆様、特にWeijian Zong先生、Ryohei Yasuda先生、Yingxue Wang先生、をはじめとする講師陣、TAの皆様、一緒にコースを受講し励ましてくれたJulia Dziubekさん、そして私を支えてくださった池谷先生をはじめとする先生方、先輩方に深く感謝申し上げます。この経験を糧に今後も研究に邁進していきたいと思います。ご支援いただき誠にありがとうございました。