(しゃふつべり the third Earl of Shaftesbury)
英国の思想家(1671-1713)。 シャフツベリというのは貴族の称号であり、 本名はAnthony Ashley Cooper。 おじいさんは政治家であり、 ロックのパトロンでもあった。 シャフツベリ自身もロックと親交があり、 彼からの知的影響を受けているが、 道徳に関してはロックの《神の賞罰によって支えられた自然法の遵守》 という考え方を 「神の賞罰が恐いから自然法を守るなんて、ちっとも道徳的じゃない。 それは他律だ。権威に従うことだ。があ」と非難し、 感情と道徳感覚を基礎におく 自発的(自律的)な道徳を説いた。
また、経験的心理学を道徳の基礎においたことで、 ハチソン、 ヒュームに代表される 英国の道徳哲学の新たな流れを生みだしたとされる。 彼は、人間の感情を自然的感情(他者愛)、 利己的感情(自己愛)、 反自然的感情の三種類に分け、 共同体の善を促進しようとする自然的感情と、 個人の善を促進しようとする利己的感情がほどよく調和して存在するときに 人は「有徳的」と言われると論じた。 つまり、シャフツベリは、 これまでの英国道徳哲学者のように 「正しい行為とはどのようなものか」と問うのではなく、 むしろ人の性格、徳性を問題にし、 「正しい行為を生み出す感情(および性格) はどのようなものか」 と問うたわけである。 (06/30/99)
ただ、「なぜ有徳であるべきか」という問いに シャフツベリは結局のところは「自己利益から」 と答えるために、ハチソンによって批判されることになる。 (28/Jan/2000 追記)
主著はCharacteristics of Men, Manners, Opinions, Times (1711)。この中にAn Inquiry Concerning Virtue or Merit (1699)が収められている。 (06/30/99)