自己愛

(じこあい self-love [prudence])

いったい、人は皆自分の自分に対する愛を 徒に有しているのではなかろうか、いや、これは自然的なものなのである。 しかし自愛的であるということは非難せられるのが正当である。 だが、非難せられるのは自己を愛するというこのことではなくて、 むしろ守銭奴が過度に銭を愛するのと同じように、 必要な程度以上に自己を愛することなのである。

---アリストテレス


文字通り、自分に対する愛。自愛。 他者愛(善意)と対比的に用いられる。 self-loveはprudenceの訳語であると考えられるが、 一般的に、prudenceには単なる「自己愛」ではなく、 「賢明な自己愛」という含意があるように思われる (このためprudenceは「自愛の思慮」と訳されたりもする)。 prudenceはドイツ語ではKlugheitとなり、 カントでは「怜悧」などと訳されて なんだか「ずる賢さ」を連想させるが、 英国道徳哲学におけるprudenceはそれほど悪者ではない。 (06/30/99)


冒頭の引用は以下の著作から。


KODAMA Satoshi <kodama@ethics.bun.kyoto-u.ac.jp>
Last modified: Tue Oct 15 19:59:53 JST 2002