W・D・ロス

(ろす Ross, W.D.)


オックスフォード大学でアリストテレス研究をしていた人(1877-1971)。 Sir David Rossと書かれることが多いので貴族のようだ。 道徳哲学においては一見自明な義務 という概念を提唱し、 直観主義義務論 を唱えた。 主著The Right and the Good (1930), The Foundations of Ethics


G・J・ウォーノックの説明によると、 プリチャードは義務の自明性を主張し、 「この行為はなぜわたしにとって義務なのか」 という問いはナンセンスで、 ある状況において何が自分の義務であるかは じっくり考えてみればわかる、とした。

これに対し、ロスは、「ウソをついてはならない」 とか、「困っている人を助けるべきである」 という一般的なルールが正しいことは自明であるが、 特定の状況においてどのルールが優先されるか (すなわち、何が自分の義務であるか)は議論の余地があると考えた。 この意味で、ウソをつかない義務や、困っている人を助ける義務は、 一見自明な義務(prima facie duty / conditional duty) ではあるが、本来の義務 (duty proper / duty sans phrase)ではない、と言われる。

参考文献

(31/May/2000 追記)


KODAMA Satoshi <kodama@ethics.bun.kyoto-u.ac.jp>
Last modified: Wed May 31 16:24:57 2000