プーフェンドルフ

(ぷーふぇんどるふ Pufendorf, Samuel von)


ドイツの思想家(1632-94)。ライプツィヒ大学とイエナ大学で勉強したあと、 ハイデルベルグ大学とスウェーデンのルンド大学で「自然法と国際法」を教える。 主著『自然法と万民法』De jure naturae et gentium (1672)は、 ホッブズグロティウス 影響を強く受けた、世俗的な自然法理論を展開している。 この主著の原型となるthe Elementa jurisprudentiae universalis (1660)は、 スウェーデンとデンマークが戦争中に牢獄に入れられたときに、 獄中で本もノートもなしに書かれたんだそうな。

『自然法と万民法』では、 ホッブズの自然状態論を利用して、 「万人はお互いに友好的な態度を保つべきである」という自然法を導き出し、 これに基いて詳細な自然法体系を作った。 この法体系のさまざまな部分が19世紀になってヨーロッパ諸国の法典に組込まれた。

また、グロティウスの完全権利と不完全権利の区別を利用して 完全義務と不完全義務の区別を作り出し、 スコラ哲学ストア哲学徳倫理とは対照的な、 義務や規則中心の倫理の伝統を作り出した。

上の主著を要約した『人と市民の義務』De Officio Hominis et Civis juxta Legem Naturalem (1673)は、さまざまな言語に翻訳され、 教科書としてヨーロッパ中で使われた。 たとえば、Gershom Carmichaelの註釈入りの『人と市民の義務』の英訳は、 グラスゴー大学で道徳哲学の授業で使用され、 スコットランド啓蒙に影響を与えた。 ドイツでは、トマジウスやクリスチャン・ヴォルフ、 カントなどに影響を与えた。 また、ロックルソーらも プーフェンドルフをちゃんと読んでいた。

シュニーウィンドによれば、 プーフェンドルフは17世紀終わりから18世紀全体にかけて 倫理思想に大きな影響を及ぼしたのに、 倫理学史では不当になおざりにされているそうだ。

(17/May/99, 07/Dec/99, 09/May/2004)


参考文献


KODAMA Satoshi <kodama@ethics.bun.kyoto-u.ac.jp>
Last modified: Mon Jul 26 02:01:50 JST 2004