神の存在証明

(かみのそんざいしょうめい arguments for and against the existence of God)

"I always had an interest in Christianity. But I just needed some proof."

`How the City found God', in the Guardian, 05/Jul/2001.

島津: 「形而上学の手をまったく借りずに、 神を否定することができるパラドックスがある、 のをご存知ですか? 〈神は、自分が持ち上げることのできない石をつくれるか?〉 というのが、そのパラドックスです。 もし、つくれるとしたら、 かれにも持ち上げることのできない石が存在することになり、 かれは全能ではないから神ではない。 もし、つくれないとしたら、かれは全能でないから、やはり神ではない----」

---山田正紀、『神狩り』、85-86頁


が存在することを証明する方法は、 伝統的に三つある(とカントがまとめた)。 それらは通常、 存在論的証明(ontological argument)、 宇宙論的証明(cosmological argument)、 目的論的証明(teleological argument)と呼ばれる。

[存在論的証明] 中世の神学者アンセルム[アンセルムス]が定式化した神の存在証明。 「神は完璧である。ところで、存在しない神と存在する神を比べた場合、 明らかに存在する神の方が完璧である。 したがって、神は存在する」。 非常に簡潔で説得力があるが、 実際のところいろいろ難しい問題があるらしく、 20世紀になってからも議論が続けられている。 カントが批判したことでも有名だが、 それについてはまたいつか。

[宇宙論的証明] 「ここに家が存在しているからには、大工さんが来て作ったに違いない」 というのと同様に、「宇宙が存在するからには、 宇宙を作った神が存在するに違いない」と論じる議論。 トマス・アクィナスは、 アリストテレスの第一原因の議論を援用して、 「すべてのものには原因がある。その原因を辿っていくと、 いつかは第一の原因、もはや他のものに依存しない原因、 必然的存在があるに違いない。それは神にほかならない」 というように論じた。

[目的論的証明] デザイン・アーギュメント(design argument, 適当な訳語がないようです) とも呼ばれる。宇宙論的証明と似ていて、 「家が人間にとって住みやすくできているのと同様に、 宇宙も人間が住みやすいように作られている。 建築家が家を設計したように、 神さまが宇宙を設計したに違いない」 と論じる議論。 やはりアクィナスが論じたことで有名。

しかし、世界にはいろいろ問題もあるわけで、 ギャングや戦争まで神が設計したと言うべきだろうか。 こうした悪の存在をどう説明するかが問題になってきた。 詳しくは弁神論の項を見よ。

(12/Oct/2000)


KODAMA Satoshi <kodama@ethics.bun.kyoto-u.ac.jp>
Last modified: Fri Jan 28 06:58:05 JST 2000