こだまの(新)世界 / 文学のお話

山田正紀、『神狩り』


書誌学的情報: ハヤカワ文庫の初版は1976年。角川文庫でも出ているようだ。


内容

工事現場で見つかった弥生時代の石室には、 謎の〈古代文字〉が刻まれていた。 情報工学の若き天才島津圭助は、 その解明に乗り出した。 が、古代文字は人間にはとうてい理解不能な構造を持つことが判明する。 この言語を操る者、 それは神なのか? だとしたら、嘲笑うように謎の言語を提示する神の真意は? やがて圭助は、人類の未来を賭けた壮絶な闘いの渦に巻き込まれていく --壮大なテーマでSF界を瞠目させた傑作長編
(カバー裏から引用)


感想

最初にヴィトゲンシュタインやラッセルが出てくるのでびっくりする。 言語学や論理学の専門的な話がでてくるのもおもしろい。

非常に読ませる力はあるのだが、展開が地味なのが今いち。 完結感もなし。

どこかヴァン・ヴォークトの作品を思わせるなあと思っていたら、 主人公の雰囲気の暗さが似ていたのだ:-)

『弥勒戦争』も面白いらしいのでそのうち読もう。


名セリフ

島津: 「形而上学の手をまったく借りずに、 神を否定することができるパラドックスがある、 のをご存知ですか? 〈神は、自分が持ち上げることのできない石をつくれるか?〉 というのが、そのパラドックスです。 もし、つくれるとしたら、 かれにも持ち上げることのできない石が存在することになり、 かれは全能ではないから神ではない。 もし、つくれないとしたら、かれは全能でないから、やはり神ではない----」 (85-86頁)


12/05/98-12/07/98

B-


KODAMA Satoshi <kodama@ethics.bun.kyoto-u.ac.jp>
Last modified: Mon Dec 7 14:43:12 JST 1998