アポリア

(あぽりあ aporia)

まことに、ソフィストというものは、 自分たちの腕前を誇らんがためにもろもろの逆説的な諍論を行ないたがるのであり、 これが成功した暁には、彼らの論法はひとびとを行きづまり(アポリア)に陥れる。 けだし、 「導出された結論には満足できないがゆえにそこにとどまっているわけにはゆかない、 だがこの論議を解きほぐすべきを知らないから前進することもできない」とあっては、 われわれの思考は金縛りになってしまうほかはないからである---。

---アリストテレス


行きづまり、道のないこと。 ディレンマアンチノミーパラドクスと似ており、 ほとんど同義語として用いられる場合もあるが、 ホンデリックの辞典によると、 「いくつかのそれぞれはもっともらしい命題があり、 しかしそれらがみな正しいとすると矛盾に陥る」 というような状態を指す。

たとえば、
命題1: 自然の変化は起きる
命題2: 自然の変化を通じて変化しない何かが存在する
命題3: 物質は、変化を通じて影響を受ける
命題4: 世界には物質しか存在しない
という四つの命題はそれぞれはもっともらしいが、 すべてを受けいれると矛盾に陥る。 これがアポリア(難点)であり、 古代ギリシアの哲学者はこの問題に対してさまざまな解答を試みた。 たとえば、 ゼノンやパルメニデスは命題1を否定することによって (「変化は単なる錯覚である」)アポリアを避けようとし、 ピタゴラスプラトンは命題4を否定することによって (「世界には物質の他に幾何学的な構造やイデアが存在する」) 困難を乗り越えようとした。

31/Mar/2002


冒頭の引用は以下の著作から。


KODAMA Satoshi <kodama@ethics.bun.kyoto-u.ac.jp>
Last modified: Sun Mar 24 02:41:03 2002