(ぴたごらす Pythagoras)
哲学という語を最初に用い、また自らを哲学者(知恵を愛する者)と読んだ最初の人は ピュタゴラスであった。それは…ピュタゴラスが…神以外には誰も知恵のある者はいないと 語ったからだとされている。その営みが知恵(ソピアー)と名づけられたり、 またその営みに従事していると公言する者は精神的な完成に達しているのだろうとして、 知者(ソポス)と呼ばれたりするのはあまりにも性急すぎることであって、 哲学者(ピロソポス)とは知恵を熱心に追求する人のことなのである。
---ディオゲネス・ラエルティオス『ギリシア哲学者列伝』
古代ギリシアの哲学者(570年頃〜500年頃)。 ミレトスのアナクシメネスとほぼ同時代で、 ミレトスの北西にあるサモス島に生まれ、 40才頃に南イタリアのギリシア植民地に移り住み、 死ぬまでそこで暮らしたとされる。
ピタゴラス自身が書いたものは一切残っておらず、 また彼は一種の教団を形成していたため、 ピタゴラス自身の業績を彼の弟子たちの業績から切離すことは難しい (たとえば、有名なピタゴラスの定理は彼によるものではないとされる)。 そのことを述べたうえで、以下ではピタゴラス哲学の特徴を述べる。
ピタゴラスはオルフェウス教を信じていた。 この宗教によれば、不死の魂は有限で不浄な身体に閉じこめられており、 身体が死ぬたびに魂は別の身体へと移り、転生を繰り返している (転生によって魂は動物に宿ることもあるため、 ピタゴラスとその弟子たちは菜食主義者だった)。 唯一この循環から逃れでる方法は、 数学(幾何学)を研究し宇宙の秩序を理解することによって 身体によって汚された魂を浄化させることである。
ピタゴラスの考えでは、万物は数によって理解することができる。 その顕著な例は音楽で、ピタゴラス派が和音(harmony 調和) を数学的に理解したことは有名である。 彼らはこのような関係が宇宙の至るところに成り立っていると考え、 無限なる宇宙を数学的に理解することによって自分たちも無限(不死)になれる と考えたのである。
このようなピタゴラスの思想は、 プラトンに大きな影響 (とくに数学の重要性と魂を尊重し身体を軽蔑する態度)を与えた他、 近代の天文学者のケプラーやラッセルにも強い影響 (数学によって世界が理解できるという信念)を与えた。
19/Jan/2002
上の引用は以下の著作から。