大会長挨拶
この度、2024年6月14,15日の2日間、神戸国際会議場・神戸国際展示場・神戸ポートピアホテルにおきまして、第29回日本緩和医療学会学術大会・第37回日本サイコオンコロジー学会総会 合同学術大会の大会長を拝命しました国立病院機構近畿中央呼吸器センターの所 昭宏です。
日本緩和医療学会は日本医学会分科会加盟の学術団体で1996年に設立されて以来、がんやその他の重篤な病いのあらゆる過程において、人々の生活の質の向上を目指し、緩和医療を発展させるための学際的かつ学術的研究を促進し、その実践と教育を通して社会に貢献すべく活動して参りました。特にがん対策基本法が施行されてからは、診断時からの緩和ケアの普及、緩和ケアチームの整備、緩和ケアの普及啓発活動、様々なガイドラインの作成、専門医および認定医の養成などの活動を通じて、日本の緩和医療を先導してまいりました。会員は医師、看護師、薬剤師などの多職種で構成され約12,000人です。年次大会は29回を迎え毎年8,000人超の参加者が集います。
日本サイコオンコロジー学会は1986年に国際サイコオンコロジー学会が創設されたことに呼応して、同年、日本臨床精神腫瘍学会(後の日本サイコオンコロジー学会)が結成され、がん告知後の是非、在り方、ケア、QOL(生活・人生・生命の質)、がんストレスと生存期間など、臨床の疑問に応える現場第一主義のテーマを扱って、翌1987年に第1回学術大会が開催されました。現在まで、毎年学会総会を開催し、会員は医師、心理士、看護師、薬剤師、MSW等の多職種で構成された会員数約1,700人です。登録精神腫瘍医制度、癌患者の心のケアシリーズのガイドラインの作成、コクランレビューに引用されるコミュニケーションスキル研修の開発、心理士、看護師向けのサイコオンコロジーの研修、普及など特徴あるがんとこころや行動、こころや行動とがんの両方向を扱う学際的な学術団体です。第4期がん対策推進基本計画においてもがん患者の精神心理的なサポートの重要性はさらに高まっています。年次大会は37回を迎え、過去に4回日本緩和医療学会との合同大会を開催しています。
両学会は上記のように、我が国がん医療の発展とともにそれぞれ発展をし、定期的に合同大会開催にてともに学術、臨床、教育研修、社会貢献で高め合って参りました。私は永年両学会にて所属し、その一翼を担ってきましたが今回偶然にも大変な栄誉として両学会の合同学術大会をお世話させていただく機会に恵まれました。新型コロナ感染症パンデミック、デジタル化、働き方改革による様々な価値感、行動・生活様式の変容は緩和医療、サイコオンコロジーにも大きな影響を与えています。急激な社会変化の中で、我々が一貫して大切にしてきた全人的医療とInterdisciplinary Team Approachのコアな価値観や臨床、世界の潮流となっているuniversal health coverageの一部としていつでもどこでも緩和ケアにアクセスできることなどを我が国の実状にそって考え、共有できる学術大会としたいと考えます。
そこで今回の合同学術大会のテーマは「時空を超えて、希望につながる緩和医療、サイコオンコロジー」とさせていただきました。いつでもどこでもだれでも、そしてその取り組みはすべての人や社会の希望になる学問、医療になればとの願いを込めて選定しました。
開催形式は、現地開催を基本としつつ、オンデマンドのデジタル技術の恩恵を最大限生かして勤務、子育て、介護、経済状況などを乗り越え現地に参加できなくても時を超え、空間を超え、学びの機会を確保し、緩和医療、サイコオンコロロジーの発展と関係する人々の広がり、社会への貢献をしたいと思います。
現在、大会長をはじめ関係者一同が総力をあげて大会を盛り上げられますよう鋭意準備中でございます。皆様と2024年6月に神戸でお会いできる日を楽しみにしています。
第29回日本緩和医療学会学術大会
第37回日本サイコオンコロジー学会総会
合同学術大会
大会長 所 昭宏
国立病院機構 近畿中央呼吸器センター
心療内科/支持・緩和療法チーム室長