学術集会長挨拶
第38回日本がん看護学会学術集会を、2024年2月24日(土)~25日(日)に神戸国際展示場、神戸国際会議場にて開催いたします。
今回の学術集会のテーマは、「コラボレーション-深化・進化するがん看護-」といたしました。
ビッグデータやAIを活用したがんゲノム医療による個別化治療、内視鏡や手術支援ロボットよる低侵襲性手術、高精度放射線治療や粒子線治療などがんの診断や治療技術の向上はめざましく、
がん患者の生存率は確実に上昇しています。それにともない集学的治療を受けながら社会生活を送っているがん患者が増加し、患者や家族が求めるニーズも多様化・細分化しています。
このような状況のなかでがんとの共生を支える患者本位の医療を提供するためには、患者や家族とのパートナーシップはもとより、同僚看護師や他の専門職とのコラボレーションが欠かせません。
特に看護師は患者や家族にとって身近な存在であり、医療チームのコラボレーションにおいて要となる役割を果たすことを求められています。
また、がん患者が住み慣れた地域で安心して生活し、尊厳をもって暮らせるようサポートしていくためには、病院や地域の医療施設、介護・福祉施設、
産業界などそれぞれの枠を超えて地域社会全体で連携あるいは協働することが求められており、看護にも大きな期待が寄せられています。
さらにがん看護においてエビデンスベースのベストプラクティスを展開するためには、臨床で生じている課題や患者・家族が抱えている困難を敏感に察知し、
その現象を紐解く研究や、臨床に根付いた新しいケアを創造し創出する研究が重要となります。このような研究活動の推進には、さまざまな知識や情報、技術を共有できる
看護実践者と研究者、他の学問分野、企業などとの協力関係が必要になります。
我が国がめざす未来社会Society5.0の新しい時代において、がん看護がよりいっそう前進するため
には、個では成しえないコラボレーションによって互いに補い合い、強みや個性を発揮しあいながら新たな価値を生み出し、深化・進化していくことが重要と考えます。
本学会における先人・先達の皆様が築いてくださった38年の歴史と看護実践を大切にするという伝統を礎に、さらなるがん看護の深化・進化をめざして、
患者や家族に対するケアの本質を再考しつつ、それぞれのコラボレーションのあり方やより良い方策を議論できる機会にしたいと考えております。
多くの皆様にご参加いただきたく、これまでの開催方法を踏襲して、現地開催とオンラインを併用したハイブリッド形式にて開催準備を進めております。
日頃の研究成果や看護実践の成果をご発表いただき、有意義なディスカッションができるよう、多数の皆様のご参加を心よりお待ちしております。
この学術集会をとおして、世代や職種、専門分野を超えて互いに尊重し合い、一人一人が活躍できるがん看護実践者や教育・研究者へとさらに開花し、がん患者のQOL向上に貢献できることを願っています。
第38回日本がん看護学会学術集会
学術集会長 鈴木 久美
大阪医科薬科大学 看護学部 教授