理事長挨拶

日本行動医学会理事長就任にあたって
第11期理事長 中田 光紀 (産業医科大学医学部公衆衛生学)

 2026年7月より、日本行動医学会第11期理事長に就任いたしました、産業医科大学医学部公衆衛生学の中田光紀です。日本行動医学会がこれまで培ってきた歴史と伝統を大切に受け継ぎ、さらに発展させることで、行動医学の持つ力をより多くの人々の健康と社会のために役立てられるよう、錦谷まりこ副理事長、大塚泰正事務局長、中尾睦宏顧問をはじめ、役員・会員の皆様とともに全力で取り組んでまいります。

 第10期には、中尾睦宏理事長のもとで副理事長を務めさせていただきました。この間、本学会は一般社団法人へと移行し、社会的信用と組織基盤をより確かなものとする大きな一歩を踏み出しました。一方、法人として活動することは、透明性の高い運営、健全なガバナンス、そして社会への説明責任をこれまで以上に重視しながら、学会を持続的に発展させていく責任を担うことでもあります。この新たな基盤を、本学会のさらなる発展へとつなげていきたいと考えています。

 行動医学は、心理・行動・社会的要因と健康との関わりを明らかにし、その知見を疾病の予防、診断、治療、リハビリテーション、さらには健康増進へとつなげる学際的な学問領域です。その大きな特徴は、医学、心理学、公衆衛生学、看護学、栄養学、スポーツ科学、社会科学など、多様な領域を結びつけ、「人の行動」を通して健康を多面的に捉えるところにあります。日本行動医学会は、多くの先達のご尽力によって、こうした学問領域をわが国に根づかせ、研究・教育・臨床・実践を結ぶ重要な役割を担ってきました。

 一方、私たちを取り巻く社会は大きく変化しています。少子高齢化、働き方の多様化、孤独・孤立、メンタルヘルス問題、健康格差に加え、デジタル技術やAIの急速な進展、気候変動など、健康をめぐる課題はますます複雑化しています。こうした課題は、医学だけ、心理学だけ、あるいは個人への働きかけだけで解決できるものではありません。人の行動を、その人が暮らし、働く環境や社会との関係の中で捉え、個人から組織、地域、そして社会へと視野を広げていくことが求められています。まさに今、行動医学が果たすべき役割は、これまで以上に大きくなっていると感じています。

 国際的にも、International Society of Behavioral Medicine(ISBM)は、心理社会・行動・生物医学の統合を基盤に、研究、教育、臨床・実践、政策をつなぎ、国や地域を越えた連携を推進しています。近年では、若手研究者を支援するINSPIRE(International Network for Supporting Promising Individual Researchers in their Early Career)や国際共同研究の推進にも力を注いでいます。また、2025年のInternational Congress of Behavioral Medicineでは、「Advancing Global Health Equity through Science, Education and Advocacy」がテーマに掲げられ、行動医学の知見を社会課題の解決へとつなげることの重要性が改めて示されました。日本行動医学会も、こうした国際的な潮流を踏まえ、日本ならではの研究成果や実践を世界へ発信するとともに、アジアをはじめとする海外の研究者・学会との連携をさらに深めていきたいと考えています。

 第11期では、特に三つのことを大切にしていきます。第一は、行動医学の学際性をさらに高め、異なる専門領域の研究者や実践家が垣根を越えて交流し、新たな研究や実践を生み出せる場をつくることです。第二は、若手研究者、大学院生、学生が行動医学の魅力に触れ、国内外で活躍できるよう、教育、研究交流、国際交流の機会をさらに充実させることです。そして第三は、優れた研究成果を学会の中だけにとどめることなく、医療、職域、地域、教育、さらには政策へとつなぎ、広く社会に還元していくことです。

 学会は、そこに集う一人ひとりの力によってつくられます。世代や専門領域を越えて会員がつながり、新しいアイデアを持ち寄り、互いに学び合い、新たな挑戦が生まれる、開かれた活気ある学会を目指したいと思います。そして、日本行動医学会が「人々のより良い健康とウェルビーイングの実現に、行動医学は何ができるのか」を社会に問い続け、その答えを科学的エビデンスと実践を通して示していく存在でありたいと考えています。

 これまで本学会を築き、発展させてこられた諸先生方への敬意と感謝を忘れることなく、その礎の上に、次の時代の日本行動医学会を皆様とともにつくってまいります。行動医学の可能性をさらに広げ、その成果を人々の健康とより良い社会の実現へとつなげていくために、会員の皆様の積極的なご参加とご支援を、心よりお願い申し上げます。

2026年8月吉日

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