会長ご挨拶
会長ご挨拶
第62回
日本鼻科学会
総会・学術講演会
会長 竹内万彦
(三重大学耳鼻咽喉・頭頸部外科)
第62回日本鼻科学会総会・学術講演会を開催させていただけることを大変光栄に存じます。また、開催に関しましてご指導、ご協力を賜りました役員の皆様、学会員の皆様に厚くお礼申し上げます。
近年鼻科学にはいくつかの大きな進歩がみられています。生物学的製剤が鼻副鼻腔疾患にも使用可能となり、これまで難治であった炎症がある程度制御可能となりました。また、内視鏡下鼻副鼻腔手術もその適応が拡大され、腫瘍に対する手術の在り方が変わりつつあります。しかしながら、鼻科学にはまだ解決していない問題が多く残されており、重要でありながら注目されてこなかった領域もあります。今回はこれらの領域についてもしっかりと取り組んで考えていただくよう、「三重の地で鼻科学を考える」というテーマにいたしました。
シンポジウムでは、「小児アレルギー性鼻炎を多面的に考える」、「上気道の難治性疾患病態~non-Type2炎症を中心として~」、「鼻科領域の基礎的な未解決問題に挑む」、「舌下免疫療法をめぐる諸問題」、「鼻科学の発展に向けた多様な働き方を考える」を企画しました。パネルディスカッションでは、若手に手術手技・処置を伝えるセッション「日常臨床における鼻科手術教育を考える」を、また、ラウンドテーブルディスカッションとして「鼻科診療における病診連携」を企画いたしました。
特別講演では、京都大学の後藤慎平先生に「iPS細胞による気道疾患モデルの開発と診断・治療への応用」についてお話ししていただきます。 後藤先生は、日本呼吸器学会奨励賞、日本医学会総会奨励賞を受賞されており、先進的で興味深いお話が聴けることと思います。
また、特別企画1「鼻科学会発 最新の診療指針を理解する」では3つの診療指針の最新の状況について解説をいたします。特別企画2では、「医療データベースの利活用」として、三重大学薬理学の西村有平先生にデータベースを用いた研究について解説していただきます。共通講習(感染)として、「ワクチンによる感染対策~ COVID-19を含めて」について川崎医科大学小児科の中野貴司先生に、お話しいただきます。
また、日本鼻科学会の特色であるアジア諸国の鼻科学会との連携プログラムとして、韓国と台湾の鼻科学会理事長の講演、日韓台シンポジウム、3つのinternational sessionsを開催します。これらの国際セッションでは、海外からの18題、日本からの4題の計22題が英語でプレゼンテーションされます。
学会で重要な部分を占める一般演題にはポスターを含めて282題もの応募をいただきました。今年は、公募演題として、「鼻科手術のトラブルシューティング」と「診断・治療に苦慮した鼻副鼻腔疾患」を募集し、それぞれ6題と15題の応募をいただきました。十分な議論ができるよう、質疑を5分間とさせていただきました。また、昨年に引き続き若手優秀発表賞のカテゴリーを設けましたところ、21題の応募がありました。若さと力のこもった発表を期待しています。
大会終了後には、市民公開講座「エキスパートが語る 鼻炎の最前線」を企画しました。意元義政先生には好酸球性鼻副鼻腔炎について、戸嶋一郎先生にはアレルギー性鼻炎のお話をしていただきます。
このような企画と一般演題を通して、本学会が鼻科学について改めて考える機会となり、鼻科学の理解が深まり、研究・診療に役立つようにと考えております。皆様の津へのお越しをお待ちしております。