山田 祐揮(やまだ ゆうき)先生
・第28回 学生・研修医のための家庭医療学夏期セミナー セッション局長
・PCs関東 代表(2017年度)
・現所属 :川崎市多摩病院 総合診療専攻医1年目 医師3年目
・出身地 :東京都板橋区
・出身大学:横浜市立大学(2019年卒)
■学生時代について教えてください。
バドミントン部に大学4年生まで所属。
学外の団体ではPCs関東のほかに、小児病棟ボランティア 「ちちんぷいぷい」 も。
■夏セミやPCsに関わったきっかけを教えてください。
医学部に入るまで、“家庭医” “総合診療医” という言葉さえ知らず、小児科医志望でした。当時から、患者さんの生活背景や人生そのもの、ご家族のことなど “病気以外のこと” にも関心がありました。草場鉄周先生(現日本プライマリ・ケア連合学会 理事長)の勉強会にお誘いいただき参加し、 “家庭医療“ という分野について知り、面白いと思いました。その後PCsなどにも誘われて…。夏セミに初めて参加したのは大学2年生の時(第25回)です。
■夏セミやPCsで活動を続けていくなかで、一番得られたことは何ですか?
一番はやはり、「仲間を得られたこと」ですね。自分が “家庭医を目指したい” と思わせてくれる仲間であり、一緒に学んでいける仲間であり…。あとは、家庭医・総合診療医の枠にかかわらず “自分がこうありたい” という自分そのままでいられる仲間でもあります。
■夏セミ・PCsの活動をしている中で影響を受けた人を一人挙げるならどなたでしょうか?
一人名前を挙げるとするなら、僕が初めて夏セミスタッフをした時の実行委員長だった、五嶋嶺先生かな。特に “リーダー像” という部分で影響を受けました。みんなを引っ張っていくカリスマ性のあるリーダーでなくて、後輩たちを温かく応援しながら「責任は俺がとるから好きにやりなよ」 というタイプのリーダーでした。「こんな温かいリーダー像もあるのか、こんなリーダーのもとで働くのはすごく有難いことだな」と感じました。
■ちなみに、五嶋先生との一番の思い出を挙げるなら、どんな思い出でしょうか。
僕が学生スタッフとして参加した最後の夏セミの懇親会で、それまで何も言われたことはなかったんだけど、五嶋先生から「山ちゃんのいるセッションだから、いいセッションになると思っていたし、やっぱりいいセッションだった。」と言ってもらったんです。僕のやってきたことを自分の一番嬉しい言葉で肯定してもらえた気がして、涙が出るほど、心から嬉しかったんです。
■今の道(総合診療専攻医)を選んだ理由を教えてください。
それはもう一言で「家庭医療学が大好きだから」です。もちろん、“家庭医” という働き方も好きなんですが、 “家庭医療学” という学問が好きなんです。家族のことや患者背景のことなど多くの先生方が感覚でやっている領域を “学問” として共通言語を使いながら研究をしたり後輩に指導したりしていけます。
今の道についてはあまり悩まずに選びました。でも、少しだけ悩んだ時期もありました。
■悩んだきっかけや最終的に家庭医の道に決めた理由など教えてください。
小児科は悩まなかったけど最後に一番迷ったのは精神科。精神科も家庭医療と似ていて、「患者さんの精神世界」や「認知の歪み」など感覚的なものを言語化していて、“患者さんにとっての病気” をどんどん探っていく。一方で、患者さんの多くが身体的主訴を訴えていて、それに応えていく経験の方が結果的に沢山の人の役に立つんじゃないかと当時考えて、家庭医療を選択しました。今の道に決めた理由はもう一つあります。総合診療医・家庭医の資格にプラスして「○○が得意です」というタグを付けることができるんです。そのタグの1つとして“メンタリスト” “精神科領域” をもつことができるなと思いました。実際に、家庭医療領域と精神科、心療内科領域は仲が良く親和性も高いので総合診療専門研修プログラムのなかで精神科領域を学ぶことは可能です。
■山田先生が、いま仕事をしていて楽しいこと、嬉しいことを教えてください。
うつ病やパニック症の患者さんのなかでもう半年以上薬を1回も出さずに僕の外来に通い続けてる人がいるんですよ。患者さんの話やそれについてどう感じたかを聞いて、それを僕が言語化したり声掛けを提案してみたりすると、見事に症状が消えるんです。“僕がこれまで学び取ってきたもの” を患者さんの治療に役立てられたり、その結果患者さんが喜んでくれたりするのが本当に嬉しいです。
他には、聖マリアンナ医科大学の学生などに家庭医療や精神科領域の話をしてみていいリアクションをもらえた時とかは「教育の現場に入れてよかったな」とやりがいを感じます。
■将来の野望はありますか?
いつか、大学で家庭医療学を教えてみたいな、と思っています。僕は、普通に医学を学ぶ中で家庭医療学の学問体系を身につけて、それを当たり前にカンファレンスや講義のなかで使えるような組織にいたいし、「○○科の医師になりたい」と話すのと同等に「家庭医になりたい」と学生さんが言えるような環境を作れる教育者になりたいと僕は思っています。
■好きな言葉はなんですか?
THE ALFEEの「ひとりぼっちのPretender」という曲の歌詞のワンフレーズ。“思いどおりいかなくても 信じつづけて欲しいのさ 君だけの生き方で 君だけの愛し方で”です。壁にぶち当たった時やどこかで上手くいかなくなった時でも、“自分のやり方で、自分が信じたものを信じ続けて、頑張りたいな” って想いがいつも僕の気持ちを後押ししてきてくれたんです。だから好きです。
■最後に、このサイトを見ている学生、研修医に一言お願いします。
医学部では兎角「みんなと同じようにやりなさい」とよく言われると思うんですが、キャリアの歩み方に関しては一通りではないです。だから、どんなに壁にぶつかっても、自分がとにかく “心から楽しいと思うもの” “心からこうありたいと思うもの” を信じ続けていってくれれば、どこかでその自分が信じ続けているものが輝きだす瞬間が僕はあると思っているし、その心の叫びなるものを受け止めてくれる仲間や場所、人との繋がりや学問領域と出会えると思っています。自分が楽しいと思うことは絶対に楽しいので、それを信じて前に進んでください。
★★動画では、家庭医療学や総合診療専攻医について、また教育についてなど、より詳しく語っています★★
[インタビューおよび記事作成]
福室(PCs関東)
緒方(夏セミ&PCs九州)
西郡(夏セミ& PCs九州)
橋本(夏セミ&PCs九州)