田中いつみ先生
・第29回 学生・研修医のための家庭医療学夏期セミナー(夏セミ) 実行委員長
・PCs四国 代表(2015・2016年度)
・第18回 若手医師のための家庭医療学冬期セミナー 代表(2022年度)
・現所属 :滋賀家庭医療学センター/近江八幡市立総合医療センター 総合診療専攻医3年目
・出身地 :大阪府
・出身大学:愛媛大学(2018年卒)
■学生時代について教えてください。
部活やサークル活動は、バスケ部、奏楽部(琴や三味線)、Orange Cross(救急医療)、CLE(Clinical Learning Club Ehime、臨床推論やUSMLEの勉強)に入っていました。学生ACLSのサークルにも入っていて、そこで全国の医学生との交流がありました。
■夏セミやPCsに関わったきっかけを教えてください。
1年生と2年生の間の春休みに、EHC(Exploring Health Care)プログラムでスタンフォード大学とUCSF(University of California , San Francisco)に2週間の短期留学に行きました。日本の学生が30人くらい参加するもので、そこで出会った学生から、家庭医療に興味があるなら夏セミに参加するといいよと言われ、それをきっかけに夏セミに参加しました。1回参加者として参加してみて、今度はスタッフとして作る側にまわりたいなと思いました。
■最初は留学に興味があったのでしょうか。
その当時は愛媛にいて、地方大学ならではの “井の中の蛙感” があって、大海を知りたかったです。
■夏セミ・PCsで活動していて一番得られたことは?
“ 居場所 ” かなと思っています。家庭医療は大学や自分が普段いる場所では、虐げられるというと変だけど、「この道を選んでいいのかな?」っていう悩みが出やすい診療科かなと思うんです。でも夏セミに参加すると、友達に会えたり、家庭医療や総合診療の道に実際に進まれている先生、進もうとしている同期に会えたり。そんな風に“ 居場所 ”を感じられたことだと思います。
■様々な活動をする中で、先生が意識されていたことはありますか?
その時の「優先順位」を見極める、改めて考えることです。活動内の作業の締め切りが重なることは多くないと思うから、「今1番に力を入れるべきことは何なのか」をその都度考えていました。
いい仲間に助けられ、頼ることもできました。その時に意識していたのが、「名前を呼ぶこと」、「ありがとうと伝えること」、「あなたに助けてほしいと伝えること」です。
■PCs四国支部ではどんな活動をされていましたか?
(当時は現在のPCs中四国支部がPCs中部支部とPCs四国支部とに分かれていました)
四国支部の方では、あまり家庭医療や総合診療の勉強会が(それまで)なかったので、四国のプライマリ・ケアの交流会の第1回を開催したりしました。各大学のプライマリ・ケアの第一人者をお呼びして、その人たちのライフヒストリーを聞いたり、家庭医療やヘルスケア、行動変容のレクチャーをしてもらったりしていました。
学会の「82大学行脚プロジェクト」(注1)を使って講師を当時お呼びしていましたが、今はサポート側としてかかわっています。
■今の道(総合診療専攻医)を選んだ理由を教えてください。
中学3年生くらいまでは薬剤師を目指していました。しかし薬剤師として在宅を先駆けて実践していた母から「薬剤師よりも医師の方ができることは多いし、尊敬できる医師もたくさんいる。これから必要とされるのはプライマリ・ケア医だ」というのを中学3年生の時に聞き、そこから医師を目指すようになりました。
■他の科と迷われたことはありましたか?
1番迷った科は麻酔科です。神経ブロックが楽しかった。でもこの神経ブロックもプライマリ・ケアの領域で活かせるんじゃないかと思って、 “神経ブロックもできる家庭医になりたいな” と思うようになりました。
■いつみ先生が、いま仕事をしていて楽しいこと、嬉しいことを教えてください。
やりがいを感じるときは、“その人の人生に触れている” という感覚を味わっている時かな。訪問診療に伺ったおうちの中に飾ってある写真、お布団の柄、置いてある置物とか。病院に持ってこられているものだったり。そういったものに触れていると、「この仕事を選んだ甲斐があったな」と思います。
■将来の野望はありますか?
自分が経験したことを次の子たちに経験させない、というのに似ているが、「家庭医になります」と言うのが、「循環器内科になります」「耳鼻科になります」と言うのと同じくらいに言いやすい環境が日本、医学教育界でうまれるように変えていきたいと思っています。
■その野望にむけて、現時点で具体的に活動されていることはありますか?
学会の広報委員会に入って、動画班で『いつみ研修録』という動画を作っています。「総合診療はこういうことやるんだよー」というのを、一般の方にも分かりやすいよう意識して作っています。
『いつみ研修録』第1回の「田舎の在宅診療編」がおすすめです!(注2)自分が何度も伺ったおばあちゃんの家を、訪問する姿を撮っています。自分の目指す家庭医の姿がそこにあるので、ぜひ見てほしいです!
■座右の銘があれば教えてください。
「感謝の気持ちは人を強くする」。
中学のバスケ部のコーチからもらった言葉です。「自分が努力してるから成功するんじゃなくて、君が努力するために助けてくれた人がたくさんいるから、それを意識していなさい」という言葉で、その言葉を、中学時代からずっと意識しています。
■最後に、このサイトを見ている学生、研修医に一言お願いします。
みなさんの夢は必ず叶うかと思います。それを叶えるためには強くそのことを願って、口に出して、周りの人から助けられていることを日々自覚して感謝を伝えてみてください。そうすると、その夢に一歩一歩近づいていくのかなと思うので、そのことを忘れずに日々過ごしていただければな、と思います。
頑張ってください!!
(注1)「82大学行脚プロジェクト」
(注2)「家庭医のたまご いつみ研修録」第1回
https://www.primarycare-japan.com/news-detail.php?nid=25
☆「家庭医のたまご いつみ研修録」の動画一覧は以下のURLからチェック!
https://www.primarycare-japan.com/channel-detail.php?cid=18
★★動画では、家庭医療学や総合診療専攻医について、また教育についてなど、より詳しく語っています★★
[インタビューおよび記事作成]
西郡(夏セミ& PCs九州)
緒方(夏セミ&PCs九州)
橋本(夏セミ&PCs九州)
福室(PCs関東)