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北見地域のがん患者さん支援の充実に向けたセミナー 2023
【実践報告】
ケアマネジメントにおけるがん患者さん支援の課題と工夫

林 大輔さん(介護支援センターさくら 主任介護支援専門員)

私は介護支援センターさくらでケアマネジャーをしています林です。皆さん、よろしくお願いします。
今日は、主に事例を用いて業務のお話をすること、それから、ケアマネジャーの業務、ケアマネジメントについても少し触れられればと思っています。
はじめに、私たちケアマネジャーは介護保険サービスを希望する方に対して、その方の現状の課題を把握し、必要な支援(サービス)の調整をしていきます。依頼を受ける方法はさまざまで、地域包括支援センターの職員の方から依頼を受けたり、医療機関から直接依頼を受けたり、場合によってはご本人・ご家族から直接依頼を受けて支援担当をすることがあります。

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実際に看取りの支援をしたケースについて、簡単に紹介します。事例の概要は、資料のほうを参照していただければと思います。このケースのポイントは家族構成で、旦那さん、お子さん、お孫さんのなかなか人数が多いご家庭でした。

全員の意思統一が図れた上で支援を開始できるとは限らない

このケースにおける課題です。ご本人、それから旦那さん以外のご家族は「最期」を理解していました。旦那さんは末期がんであることは理解していたのですが、「最期」とは思っておらず、治療すれば治ると思っていました。
退院の時に全員の意思統一が図れた上で支援を開始できるのがもちろん望ましいのですが、このケースのように「必ずしも全員の意思統一が図れた上で支援を開始できるとは限らない」ということが、まずポイントだと思います。

訪問看護師による心理的なフォローと対話の機会を増やして

そこで、私が何をしたかというと、医療保険で訪問看護サービスが入っていたので、私よりも非常に多くの頻度でかかわってくださっている訪問看護師さんに、ご家族やご本人の心理的なフォローを依頼しました。
それから、私たちケアマネジャーは基準上、月に1回の訪問でよいとされているのですが、このケースについては週に1回以上必ず訪問して、ご本人とご家族を交えた対話の機会を多く持ちました。最後に医療機関に主治医連絡票を用いて現状の報告をして、「主治医から改めて病状の説明をご家族にしていただけないか」、相談しました。

かかわるチームで役割分担をすることが質の高い支援につながる

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私は、ケアマネジャーが全てを抱えて、全ての支援を考える必要はないと思っていて、かかわるチームには必ず専門分野の専門職の方がいるので、役割分担をすることが非常に大切だと思っています。その「役割分担が、結果的に質の高い支援につながる」のではないかと思います。

ケアの方向性と必要な社会資源の組み合わせを考え抜き、提案し調整する

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私たちケアマネジャーの業務、ケアマネジメントはいろいろな考え方があると思うのですが、今日のお話では、「利用者・家族の生活の質(QOL)を高められるようケアの方向性と、必要な社会資源の組み合わせを考え抜き、提案し、調整すること」だと私は考えています。
先ほどお話しした事例では、ご本人の「自宅に戻ってまた孫と過ごしたい」という希望がありました。その思いを達成するために、私たちケアマネジャー、それから訪問看護事業所、福祉用具サービス事業所、医療機関で体調の安定を図ったり、時にはご家族の支援をしたりということで在宅の支援をしました。

ターミナルケアは「今生きていることを支えていくケア」

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ターミナルケアは、「最期を迎えるまでの過程の支援」というネガティブなイメージを、もしかしたら抱いている方もいるかもしれません。今回の事例でも、「最期まで孫と過ごしたい」と言っていましたが、「今生きていることを支えていくケア」だと私は思っています。
この「今生きていることを支えていくケア」というのは、ケアマネジメントにおいて、どのケースも「今生きていることを支えていく」のは共通なのではないかと思っていて、つまり、ターミナルケアは決して私たちケアマネジャーにとって特別なことではないと考えています。

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最初のほうに、北見市の新規要介護認定者の主病1位が「悪性新生物(がん)」という報告がありましたが、今後も私たちケアマネジャーへのがん患者さんの支援依頼は増えるのではないかと思います。がん患者さんを特別な存在と捉えず、その方の歩んできた人生を尊重し、どのように過ごしていきたいのか意向を確認して支援する、私たちケアマネジャーの業務は、どのケースであっても共通することは多いのではないかと思っています。
これからも地域の一員として、さまざまなケースを一緒に支援していきたいと思っていますので、皆さま、今後ともよろしくお願いいたします。ご清聴ありがとうございました。

関:林さん、ありがとうございました。
それでは、これからグループワークを始めさせていただきます。グループワークの司会は、帝京大学の渡邊先生にお願いをいたします。

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掲載日:2023年11月13日
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