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在宅医療を支える多職種連携研修会/板橋サバイバーシップ研究会 2018
患者さんが安心して住み慣れた地域で暮らすために

閉会あいさつ

石川 徹さん(板橋区医師会 副会長/小豆沢病院附属本蓮沼診療所)
石川 徹さん写真
石川 徹さん

本日は板橋サバイバーシップ研究会にたくさんの方々にご参加いただきました。予想以上に各班の議論も盛り上がりました。それに先立って、渡邊先生、山田先生、そして鈴木先生に本当に適切なプレゼンテーションをいただきました。改めてお礼を申し上げたいと思います。

このサバイバーシップ研究会は、渡邊先生からのご提案、佐藤先生、水野先生のリーダーシップのもと、2年ほど前から実施しています。多職種の方が一堂に会して、一つの事例、ひとりの患者さまについて、それぞれ専門の立場から自由に意見を言う会です。また、自分の職場へ持ち帰って、自分が経験している例について当てはめて考えることで、本当に勉強になっています。

最近は「治す医療」から「支える医療」への転換、高齢社会になり、治療方法もいろいろ進歩し、治療したその後も大切だという考え方になってきています。地域包括ケアというのはその最たるものですし、最近ではACPも含めていろいろと議論されています。

ここで一つご紹介しておきたいのですが、医師の卒後2年間の臨床研修は今、必修化になっており、きちんとしたカリキュラムでやりなさいと決められています。2018年7月に改訂版が出まして、近い将来義務化されるという内容について読んでみます。「研修全体において、…社会復帰支援、緩和ケア、アドバンス・ケア・プランニング(ACP)…等、基本的な診療において必要な分野・領域等に関する研修を含むこと」。今まではこのような具体的なことは書いていませんでした。ACPは基本的な診療において必要なことです。必修ということですので、やらなければ2年間の医師の研修は修了させませんよと、この7月に国が宣言をしたということです。

板橋区の医師会でも大病院からの地域医療研修を受け入れていますが、地域医療の研修についてはこう書いてあります。「地域医療については、…患者が営む日常生活や居住する地域の特性に即した医療…について理解し、実践するという考え方に基づいて、…研修を行う」。「在宅医療の研修を含めること」。これも必修との記載があります。地域医療の中で、在宅の研修を必ずしなさいと決められたわけです。そして、「医療・介護・保健・福祉に係わる種々の施設や組織との連携を含む、地域包括ケアの実際について学ぶ機会を十分に含めること」。これは地域での実情、地域での実践、私たちが行ってきたさまざまな活動がここに反映されています。こういうことが今後医師として必ず習得しなければいけない技術になってきている、領域になってきているということを国がはっきりと示したということでしょう。

逆に言えば、今までの医師の養成の仕組みの中にはこういうことが入っていなかったということも言えるわけで、今ここにいる皆さん方が医師に対して不満に思われるようなことはそもそもそういうところに根があったのかと思います。今後は徐々に改善されてくるのは間違いないと思いますし、私たち自身が若い世代、次の世代にきちんと伝えていかなければいけないと思っています。今日、皆さんの意見やお話を聞いて、私は改めてそう思いました。

私は、サバイバーシップ研究会の、サバイバーに「シップ」という言葉がついていることを、ずっと船だと思っていました。サバイバーの船。今回まとめのあいさつをするというのであらためて調べたところ、それは例えば「リーダーシップをとる」とか「スポーツマンシップにのっとり」の「シップ」と同じで、「○○という状態」「○○にふさわしい状態」、というのが本来の意味ということでした。

だから「サバイバーという状態」「サバイバーにふさわしい状態」というのがこの「サバイバーシップ」という言葉なのですが、でもやっぱり、私はこのシップは船だというほうがイメージにぴったりくるのです。がんサバイバーの人がいる、心不全のサバイバーの人がいる、呼吸器のサバイバーの人がいる部屋もある。船長もいる、いろんな役割を果たす乗組員がいる。食堂もあるし娯楽施設もある、大きな客船みたいな船。板橋でいえば船長が渡邊先生で機関長が山田先生で、優秀な乗組員もいっぱい乗っていてというふうなイメージがぴったりくると思っています。

今後はこの船をもっと大きくしていきたいとも思いますし、それぞれの地域に小さい船をいっぱい造っていただきたいと思います。乗組員が5人乗っている、患者さんは1人2人、そういうふうな船を造っていただいて、地域での医療や介護をより充実させて、一人でも多くの人が充実した人生、ACPでいえば充実した最期となると思いますが、それを過ごしていけるような、そういう板橋の地域になっていければいいのではないかなと今日改めて思いましたし、これからこの世の中は必ずそういう方向へ進んでいくのではないかと思います。

最後に紹介しますが、この12月に、毎年行っております板橋区医師会の区民公開講座が行われます。シンポジウムで、「『終活』医療の現場から アドバンス・ケア・プランニングとは」ということで、今日お話しいただいた渡邊先生、鈴木先生、そしてもう一人、国際医療福祉大学の教授の荻野先生で、一般区民向けシンポジウムを行います。ぜひ皆さま方にもご参加いただきたいと思いますし、周りにも広げていただきたいと思っております。

これで今回のサバイバーシップ研究会を終了としたいと思います。どうぞ気を付けてお帰りください。本当にありがとうございました。

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掲載日:2019年1月28日
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