Bさん 50歳代,女性,病名:変形性股関節症,術式:片側THA
Bさんのご自宅は、1階が職場、2階が居住の場になっていました。2階では、常に椅子座ができるように、各部屋にBさん専用の椅子が配置されています。それぞれの椅子座面の高さは、座布団やクッションを活用して、全て43cm前後に調節されていていました。この高さは、わざわざ計測されたものではなく、座った時のBさんの身体の感覚で整えられたものでした。Bさんは、『座ってみたら不思議と「丁度よい」と身体がわかる高さがあるんですよ』と教えてくださいました。
1階の職場は2階とは異なり、椅子座ができない環境でした。職業柄、畳の上での正座が避けられないBさんは、高さ17cmの正座用の椅子を使って、上手に床に座る工夫をされていました。正座用の椅子は、床から立ち上がる際の上半身の前傾姿勢や股関節の深い屈曲の予防にとても有効です。
Bさんのように常にご自分の身体に関心をもち、身体感覚を敏感にすること、また、安全な動作方法を身体で覚えることは、ご自分の安全を守るための重要なセルフケア能力であるといえます。
ご自宅の間取り
ポイント1 身支度・更衣
ベッドは椅子よりも少し高いですが、朝晩の着替えの際に腰掛けるのに便利な高さです。 |
ポイント2 食事・休息
居間や食卓の椅子・ソファのそばには、座布団やクッションが置かれていて、Bさんが丁度よいと感じる座面の高さにいつでも調節することができるようになっています。 |
ポイント3 仕事
仕事柄、1階の職場では正座をすることが多くなります。17cmの正座椅子を使用すれば、股関節の屈曲を軽減させつつ、安全に正座や床からの立ち上がりができます。 |
ポイント4 トイレ・入浴
浴槽の中でも、常に高い座面の椅子を使用しています。 |
〈参考文献〉
佐藤政枝,川口孝泰,嶋田寿子,谷和子,中山昌美:人工股関節全置換術を受けた患者の環境移行に関する研究,日本看護研究学会雑誌,28(2),41-50,2005,図4を改変