日本整容脳神経外科学会の意義
2022年4月から日本整容脳神経外科学会の理事長を務めます 札幌医科大学脳神経外科 三國信啓です。
本会は日本医科大学脳神経外科 寺本 明教授主催のもと、2008年2月に東京で第1回研究会が開催されました。当初より形成外科医の協力を得て、脳神経外科に様々な知見と技術を提供いただいています。その後1年に1回の年次集会を行い、2013年に千葉大学脳神経外科 佐伯直勝教授が2代目世話人代表となり毎年講演集が出版され、貴重なデータの集積がされてきました。2017年には第10回を迎え、岡山大学脳神経外科の伊達 勲先生が理事長となり研究会から学会へと発展を遂げています。
患者さんは頭蓋内の手術の詳細は見て理解できないところもありますが、手術創は見えます。整容に気を遣い治癒することができる外科医こそ患者さんに信頼されるものです。最近では整容に関する医療機器や材料も格段に進歩してきました。今後は整容に配慮して開閉創を行うための技術的工夫から機器・材料の開発、術後慢性期の創痕の修復方法、そして頭皮・頭髪への配慮、身だしなみにおける精神的ケアまでを取り上げていきたいと考えております。脳神経外科医と形成外科医が討論の場を持つ日本で唯一のユニークな意義のある研究会として、さらに発展するように皆様のご理解とご協力をお願いいたします。
令和4年4月
日本整容脳神経外科学会
理事長
三國 信啓(札幌医科大学脳神経外科)
日本整容脳神経外科学会の役割
日本整容脳神経外科学会の理事長の岡山大学脳神経外科の伊達 勲です。初代世話人代表 寺本 明先生、第2代世話人代表 佐伯 直勝先生に引き続き本学会の発展に努めたいと存じますので、よろしくお願い申し上げます。
従来、脳神経外科の手術は時間のかかる「大手術」が多く、まずは脳内の病変を患者さんの機能を落とすことなく治療することが大きな目的でした。その目的は、ナビゲーション、モニタリングなどで達成されるようになり、患者さんからは、手術した皮膚や頭蓋骨、筋肉などについて、できるだけ元のようにして欲しい、という希望がしばしば聞かれるようになりました。そのような整容的な問題を討論するユニークな会として本会は平成20年(2008年)に研究会としてスタートしました。盛会裡に行われた第1回の研究会の結果から、この問題に関心のある脳神経外科医が大変多いことがわかりました。
その後1年に1回の年次集会を行い、平成29年(2017年)には第10回を迎え、それを期に研究会から学会へと移行しました。これまで毎年講演集を発行し、学会の成果を残して参りました。整容面を討議する会ですから、形成外科医から学ぶ事も多く、年次集会では毎回、教育講演、特別講演などで形成外科医が発表くださり、様々な知見を提供いただいています。
医師の満足度は脳内病変をいかにうまく処置できたかにウェートがありますが、患者さんの満足度は目に見える整容面にウェートがあることをしばしば感じます。これからの脳神経外科手術はこのような整容面での患者さんの満足度を上げていく事が大切です。その意味で、本学会は重要な役割を担っています。
整容脳神経外科を英語でaesthetic neurosurgeryと訳していますが、おそらくは分子脳神経外科(molecular neurosurgery)と同様に日本で生まれた英単語と言えるでしょう。英語でも整容的側面を脳神経外科で論ずる論文はありますが、通常aesthetic issues in neurosurgeryのような表現が使われており、aesthetic neurosurgeryという単語は見当たらないようです。日本整容脳神経外科学会は外国にはない大変ユニークな学会として、その名称と共にこれからも私たちが育てて参りましょう。
平成29年7月
日本整容脳神経外科学会
理事長
伊達 勲(岡山大学脳神経外科教授)
日本整容脳神経外科研究会が目指すもの
本研究会2代目世話人代表を務める 千葉大学 佐伯直勝です。
初代研究会代表 日本医科大学 脳神経外科 寺本明教授主催のもと第1回研究会は、平成20年2月に東京で開催されました。脳神経外科手術を受けた患者さんに満足いただくためには、頭蓋内の手技のみならず、整容に配慮して開閉創を行うことが大切であるとの本研究会の目指すものに、多くの脳神経外科医が集まりました。
患者さんの多様化したニーズ、外科手技以外の治療オプションの台頭、QOLの向上を目指した手術が盛んに行われるようになった今日、手術時の整容的な配慮が強く求められています。
整容を意識した脳神経外科を実践するには、形成外科医の先生方から学ぶことが多いと思います。脳神経外科医と形成外科医が討論の場を持つ日本で唯一の研究会です。
おかげさまをもちまして、今年で第7回目を数えます。他施設の脳神経外科医から、形成外科医の先生から、いろいろな技,知見を学び、実地臨床で行っていることを耳にします。毎年数十に及ぶ講演がなされ、講演集も出版され、貴重なデータの集積がなされています。こういった努力が、私たちの目指す 患者さんに満足していただける脳神経外科とは?という原点となる問題意識に具体的に答えている一つの例と考えます。
本研究会が、脳神経外科手術を受ける患者さんの満足とは何かという基本的なテーマを、新しい切り口から議論し討論する機会となり、日本の脳神経外科医療に貢献できれば幸甚です。
平成26年4月
日本整容脳神経外科学会
2代目世話人代表
佐伯 直勝(千葉大学脳神経外科教授)
日本整容脳神経外科研究会の設立趣旨
近年、脳神経外科手術の進歩は目覚しく、頭蓋内病変の多くを開頭手術で治癒できるようになりました。病変を根治した脳神経外科医の喜びと満足度は高いものと思われますが、患者のそれとは必ずしも一致いたしません。その理由の一つは、頭部の創痕や陥凹にあり、これらは社会生活を営む上で大きな障害となっております。我々脳神経外科医は、頭蓋内の操作には万全を尽くし関心も深いものがありますが、閉頭に関しては確実に閉じれば良いという考えが支配的であると思います。
私は以前からこの点について集中的に論議したいと思っておりましたが、2007年4月に第16回CNTT学会を主催し‘美容形成法’のセッションを設けましたところ大変な反響があり、やはり同様のお考えをお持ちの脳神経外科医が大勢おられることがわかりました。勿論、この分野は形成外科的な知識や技術を要することも多いため、形成外科専門医のご指導ご協力が必須であります。
論議する内容としましては、術前の工夫、術中の工夫や機器・材料の開発、術後慢性期の創痕の修復方法があると思います。それには高度な技術を要する根本的な手技とともに比較的簡便な方法(プチ形成手技や一種の化粧法など)も含まれるものと思います。更には、単に技術的なことだけでなく、患者の精神面でのケアーも主題の一つに含める必要があります。
多くの皆様のご参加をお待ち申し上げております。
平成20年1月
日本整容脳神経外科学会
初代世話人代表
寺本 明(東京労災病院)