編集委員会から
「認知神経科学」は、認知神経科学会の学会誌として1999年4月に創刊され、本号(Vol.9,No.1)で通巻23号を重ねます。本誌ではこれまで、会長講演、シンポジウム、教育講演などの学術集会の記録を中心とし、原著、短報、症例報告や総説などの投稿論文も掲載してきました。
1996年の発足から11年を経て、認知神経科学会は新たな10年(decade)に入りました。そこで、学術的な発信と討論の場をより広げ、学会誌として質量ともに充実したものにするため、編集幹事2名を置き、あらたに以下のような企画を設けて誌面の刷新を目指します。
原著はこれまでも掲載してきましたが、博士論文掲載などで若手研究者の発表の場として広く誌面を提供することを考えています。神経学・神経心理学領域の古典や、肖像写真を含めた内外の神経科学者のプロフィールの紹介を連載企画としていきます。また、認知神経科学全般をテーマに選んだ座談会、ブックレビューなども企画していきます。
認知神経科学cognitive neuroscienceの指し示す範囲についての、一致した見解はまだありませんが、本学会で論じてきたのは,古典的な症例研究にはじまる神経心理学、脳賦活研究を含む神経生理学や脳機能画像、さらに言語学、心理学などの関連領域、これらすべてを含めた脳と行動の関連への総合的なアプローチです。さらに、検討の対象をヒトに限定せず、動物の研究もとりあげてきました。
「認知神経科学」誌がこれから、より一歩踏み込んだ議論の場として発展していくように、会員諸氏のより一層のご協力をお願いしたいと思います。
2007年4月
認知神経科学 編集委員会
委員長 杉下守弘
編集幹事 福山秀直、本村 暁