これまでの成果→

当ユニットではIllumina社のMiniSeqを用いて既成の遺伝子解析パネルや独自でカスタマイズした解析パネルによる遺伝子解析を行っております。
実際に病理組織診断に有用な融合遺伝子パネル解析や特定の遺伝子の全エクソン解析などを行い、成果を出しつつあります。

次世代シークエンサー(NGS)を用いた様々な検討
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癌は特有の体細胞変異や染色体転座による融合遺伝子の働きにより、種々の増殖シグナルを活性化することで過剰な自己複製能力を獲得し、浸潤増殖能を高めていきます。この機能獲得の一環として、増殖シグナルや細胞死の抑制を促すことに一役をかっている因子の一つにマイクロRNA(microRNA)があります。microRNAは主として非翻訳領域にコードされているsmall RNAの仲間で、19-25塩基よりなる低分子量のRNAです。microRNAは生命現象において必要な発生、分化そして正常機能を営む細胞や組織の維持に重要な種々のタンパク質の発現を調節するために様々なメッセンジャーRNAに対して作用をしますが、癌においては癌遺伝子やがん抑制遺伝子のメッセンジャーRNAあるいはこれらの発現ネットワークを構成するシグナル伝達分子のメッセンジャーRNAに作用し、発癌や癌の増殖、進展、さらには他の臓器への転移に深く関与することが明らかとなってきています。microRNAは標的となるメッセンジャーRNA5’側の非翻訳領域に結合し、その分子の翻訳を阻害し、結果として標的タンパク質の生成および機能を阻害します。microRNAの機能を明らかにし、その標的分子を探し出すことで癌の浸潤増殖に関わる特異的な分子を病理組織診断に役立てることができ、さらには分子標的療法の候補として重要な発見につながることが期待されます。

microRNAはこれまで2,500以上発見されており、多くはmiR-126, miR-331など番号で名称を定められています。これらの推定標的分子とのマッチングはデータベースによりin silicoで検索することが可能です。利用しやすい主なデーターベースサイトは、

 miRBase  Release 22.1: October 2018

TargetScanHuman Release 7.2: March 2018

 などです。

癌におけるmicroRNAの機能解析

癌の治療においてこれまでの手術、放射線療法および化学療法に加えて、臓器特異的な分子標的療法が一般的となっています。この背景には癌の分子生物学的研究による癌特有の体細胞変異や融合遺伝子の発見の成果があり、遺伝子異常を検出することが治療の第一歩となります。その材料として、外科的に切除された病理組織標本が用いられますが、これらは病理組織診断のためにすでにホルマリン固定され、パラフィン包埋されて年単位で保管されています。これを材料にした遺伝子解析が行われるようになり、その品質管理が問われることから、組織保存検体および液状細胞診として固定された細胞検体からの核酸抽出、遺伝子解析を行って、病理組織診断および細胞診で用いた検体の品質の精度を検討しています。

病理組織・細胞を用いた遺伝子解析への応用
研究テーマ