句読に苦闘2
- 医経
- by shenquzhai
- 2007/06/18
臂陽明有入鼽徧齒者,名曰人迎,下齒齲,取之臂,惡寒補之,不惡寒寫之。『太素』巻26寒熱雑説の一節の,新校正における句読である。重校も校注も同じ。しかし,この句読には疑問が有る。臂陽明の「名曰人迎」は,『霊枢』に拠って「名曰大迎」に改めるべきであろうが,それにしても「これを臂に取る」はおかしい。この部分は「下齒齲取之,臂惡寒補之」云々とすべきではないかと思う。つまり足陽明の「視有過者取之」と同文例である。また句読とは別に,角孫は「足之大陽」ではないだろう。それでは下の足太陽云々と重なるし,『甲乙』には「手足少陽、手陽明之會」とあり,『素問』氣府論王註には「手太陽、手足少陽三脉之會」と言い,『甲乙』もここに相当する文章では手太陽とする。また,位置も「在鼻與鼽前」ではなくて「出眉外」のはずである。
足之大陽有入頰偏齒者,名曰角孫,上齒齲,取之在鼻與鼽前,方病之時,其脉盛則寫之,虛則補之。一曰取之出眉外,方病之時,盛寫虛補。
足陽明有俠鼻入於面者,名曰懸顱,屬口對入繫目本,視有過者取之,損有餘,益不足,反者益甚。
足太陽有通項入於腦者,正屬目本,名曰眼系,頭目固痛,取之在項中兩筋間,入腦乃別。
臂陽明有入鼽徧齒者,名曰大迎,下齒齲取之,臂惡寒補之,不惡寒寫之。いくらなんでも突拍子もない意見かと,少し不安になって郭靄春の『黄帝内経霊枢校注語訳』を確かめてみたら,ちゃんと「下齒齲取之,臂惡寒補之」云々となっていました。安心するとともに,ちょっとがっかりです。私が言い出しっぺではなかった。それどころか,私の調べたいくつかの『霊枢』の参考書はたいていそのように句読していました。『太素』の研究者と『霊枢』の研究者の違いがこれほど際だつのも珍しいのではなかろうか。
臂太陽有入頰偏齒者,名曰角孫,上齒齲取之,出眉外,方病之時,盛寫虛補。
足陽明有俠鼻入於面者,名曰懸顱,屬口對入繫目本,視有過者取之,損有餘,益不足,反者益甚。
足太陽有通項入於腦者,正屬目本,名曰眼系,頭目固痛取之,在項中兩筋間,入腦乃別。
もっとも,経文に「一曰取之出眉外」云々とあって,「一曰出眉外」云々ではない,つまり「取之」の二字は古くから後に属していると考えられていたらしいのがなんとしても不安で......。
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下齒齲,取之臂,惡寒補之:銭超塵、李雲『太素新校正』における句読である。王洪図、李雲『重校』も李克光、鄭孝昌『校注』も同じ。しかし、この句読には疑問が有る。「人迎」は、『霊枢』に拠って「大迎」に改めるべきであろうが、それにしても「これを臂に取る」はおかしくはないか。郭靄春の『黄帝内経霊枢校注語訳』をはじめとする『霊枢』の参考書は、たいてい「下齒齲取之,臂惡寒補之」云々としている。『太素』の研究者と『霊枢』の研究者の違いが、これほど際だつのも珍しいのではなかろうか。『太素』の側の根拠の一つは、楊上善注に「所以齒齲取於手之商陽穴也」とあることだろう。もう一つは、下の「名曰角孫,上齒齲,取之在鼻與鼽前」を「名曰角孫,上齒齲取之,在鼻與鼽前」と句読した場合、角孫が鼻と鼽の前に在ると解すべきだろうが、それは如何にも無理である。やはり、入るところと、歯齲に取るべきところは別と解さざる得ないようである。ただし、「出眉外」であれば、全くの無理ということもないかも知れない。そこのところが悩ましい。