H・L・A・ハート

(はーと Hart, H.L.A.)

Nobody who reads or thinks about Hart's work dare ignore the fact that he lived through the 1930s and the war years and observed, as an intellectual of Jewish family origins, the growth and then the destruction of Fascism and Nazism and their British copies. [...] The weight of his commitment to a certain conception of human liberty is to be seen against that background.

---Neil MacCormick


Herbert Lionel Adolphus Hartという長い名前を持つ英国の思想家(1907-1993)。 オックスフォードのニューコレッジを抜群の成績で卒業したあと、 しばらく弁護士(barrister)の仕事を務め、第二次世界大戦のあいだは 政府の英国諜報機関(MI5)で兵役を務めた。 そこで一緒に働いたギルバート・ライル(Gilbert Ryle)や ステュアート・ハンプシャー(Stuart Hampshire)との議論で、 哲学への熱が呼びさまされ、戦後、大学に戻り、 オックスフォード言語哲学の影響を強く受けた。

J.L.オースティンの勧めもあり、1952年に法哲学教授になる(1969年まで。 後任はロナルド・ドゥウォーキン)。 学部生相手に講義をしていたものをまとめ、 1961年に主著『法の概念』 (The Concept of Law)を出版する (第二版は死後1994年、第三版は2012年)。

法哲学の領域においては日常言語学派の手法を用いつつ、 ベンタムやJ・オースティンの 法実証主義を批判的に継承し、 倫理学においてはリーガル・モラリズム に反対し、ミル自由主義を擁護して1950-70年代の道徳の自由化 の動きを促進し、加えてベンタムやオースティンの著作の編集作業にも従事した。

彼の思想については、『法の概念』の項を 参照せよ。

関連文献

08/22/99; 17/May/2001更新; 15/Dec/2012更新


上の引用は以下の著作から。

Neil MacCormick, H.L.A. Hart, London: Edward Arnold Ltd., 1981, p. 11.


KODAMA Satoshi <kodama@ethics.bun.kyoto-u.ac.jp>
Last modified: Sat Jun 4 15:37:39 JST 2022