ここでは、「ケトン食」について簡単な説明をしたいと思います。少しお勉強です。

ケトン食療法の必要性  現在、小児てんかんの治療は、抗てんかん剤による薬物療法が中心となっており、抗てんかん剤による治療が最初に行われますが、薬だけでは抑えられない難治性のてんかん発作があります。また、発作が抑えられても、その薬が体質的に合わず使い続けることができない場合もあります。このような場合に「ケトン食」療法を選択する場合があります。
ケトン食の
起源
 そもそも「ケトン食」療法は、「絶食や飢餓状態がてんかん発作を抑制する効果がある」という古代からの伝承に端を発しているそうです。20世紀に入り、絶食により体内に生じるケトン体という物質が抗けいれん作用をもたらしているということがわかり、絶食の代わりに高脂肪、低たんぱく質、低炭水化物の特殊な食事により体内にケトン体を作り出し、発作を抑制しようというが「ケトン食」療法だと言われています。
ケトン食の
仕組み
 通常、人間は日常生活を営むために必要なエネルギーとして糖質を優先的に使うため、ご飯や麺類などの炭水化物中心の食事をします。
 絶食などをして炭水化物を食べない生活をした場合には、体内に蓄積された脂肪を分解してエネルギーを得ますが、脂肪を完全に燃焼させるために必要とされる糖質が不足すると脂肪は不完全燃焼を起こし、「脂肪の燃え残り」のようなケトン体が発生します。
 ケトン体には、アセト酢酸、β−ハイドロキシ酪酸、アセトンの3種類がありますが、アセトンは気化しやすく直ぐに肺から体の外へ出て行きます。残ったケトン体のうち、主にβ−ハイドロキシ酪酸が抗けいれん作用に何らかの影響を与えているのではないかと言われていますが、その仕組みは未だ解明されていないようです。
 このように、体内でケトン体を発生させるためには脂質を使ってエネルギーを得て、その際に脂肪を不完全燃焼させる必要性があります。そのためには、献立中のたんぱく質、炭水化物、脂肪の重量を使い「Woodyattの式」で計算されるケトン指数が2:1以上になる必要があると言われています。
ケトン食の
効果
 「ケトン食」によって抗てんかん剤により発作を抑制することができない、ミオクロニー発作、脱力発作などの難治性けいれんを抑制する効果が期待できます。また、このような抗けいれん作用のほかに、気分や行動が落ち着くなどの効果が期待できるそうです。
 最近では、「ケトン食」は、糖質(グルコース)しかエネルギー源にできない脳へグルコースを運搬する酵素が不足する病気の子供が、ケトン体を脳のエネルギーとする治療法としても活用されているようです。
ケトン食の
問題点
(1)「ケトン食」の献立を作るには厳格なカロリー設定、ケトン指数の計算を必要としますし、調理に手間がかかります。ご飯、麺類、パンなどを食べられませんし、脂っぽい食事が多く、家族と同じ物が食べられないので、一般の食事に慣れている年長児にとっては馴染みにくいものだと思います。

(2)調理された食事を全量食べることが必要となります。食事一回分には複数の料理が用意されますが、全ての料理をトータルしてケトン指数を計算しますので、食べやすい料理を食べて、脂っこい料理を残すと結果的にはケトン指数が低くなってしまいます。
 風邪や胃腸炎で食欲がない時は、料理毎にケトン指数を計算する等の特別な注意が必要になります。

(3)「ケトン食」は脂肪中心の食事であり、成長に必要な十分なたんぱく質を摂取することができずに身長が伸びないなどの副作用が出たり、水溶性のビタミン、特にビタミンB,Cや、カルシウム、食物繊維などが不足しがちとなり、栄養学的な見地から問題があります。