社団法人 日本小児保健協会

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平成12年度幼児健康度調査報告

平成12年度幼児健康度調査報告を掲載しました。

平成12年度 幼児健康度調査報告書(平成13年3月)

社団法人 日本小児保健協会


I.はじめに
 社団法人 日本小児保健協会は、平成12年9月に厚生省が実施した「乳幼児身体発育調査」と併せて、幼児の心身にわたる健康や日常生活及び発達状態の実態を把握し、今後の乳幼児健康診査、保健指導、育児相談に役立てることを目的に、「平成12年度幼児健康度調査」を実施した。調査は身体発育調査と同じ対象に実施された。
 本調査は、社会福祉・医療事業団(子育て支援基金)の助成(事業)として、厚生労働省雇用均等・児童家庭局の指導のもとに、各都道府県・政令市・特別区及び各市町村の格別なご協力を得て実施されたものである。初回の調査は昭和55年度、次いで平成2年度に、そして今回は第3回目の全国調査である。
 本報告では、全国の満1歳から7歳未満(就学前児)の幼児6,875名についての調査票を集計・解析した結果の概要を示した。更に、昭和55年度、平成2年度の幼児健康度調査との比較検討を行い、この20年間の変化を示した。

目次

  1. はじめに
  2. 平成12年度幼児健康度調査実施要領
  3. 平成12年度幼児健康度調査票
  4. 調査方法
  5. 平成12年度調査成績
    1. 対象児の概要
    2. 家庭環境
    3. 育児環境
    4. 両親の心身の健康状態と育児との関わり
    5. 妊娠・出産に関する快適さ
    6. 子どもの健康と生活
    7. 発達
  6. 平成12年度調査成績表(集計表 PDF)
  7. おわりに

本文

II.平成12年度幼児健康度調査実施要領

  1. 調査の目的
      この調査は、厚生省が都道府県及び特別区を含む政令市に委託して行う「乳幼児身体発育調査」と併せて、幼児の心身の健康や日常生活及び発達の状態を調査することにより、今後の乳幼児健診や保健指導、育児相談の指針を得ることを目的に行うものです。
  2. 調査の実施機関
      本調査は、社団法人 日本小児保健協会(日本小児保健学会)が厚生省の指導のもとに実施するものです。
  3. 調査の対象
      調査対象は、「乳幼児身体発育調査」の調査対象児のうち、1歳以上の幼児を対象として実施していただきます。
  4. 調査の方法
      調査方法は、「乳幼児身体発育調査」の会場において、保護者に調査票を配布し、待ち時間などを利用して記入してもらうアンケート方式により行います。なお、調査会場において調査票の記入が終了しない保護者がいる場合には、返信用封筒を渡し、記入後郵送により回収するようにして下さい。回収した調査票は、「乳幼児身体発育調査」と併せて、都道府県及び特別区を含む政令市の母子保健主管課に送付して下さい。

III.平成12年度幼児健康度調査票

pdfアンケート用紙 (48KB)

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IV.調査方法

 厚生労働省雇用均等・児童家庭局の指導のもとに、前掲の「幼児健康度調査実施要領」を定め、これに従って調査を依頼、実施した。調査票は、この20年間の変化をみるために、昭和55年、平成2年度の調査項目を採用したことと、加えて現在の生活、保健、育児環境を踏まえ、健康上問題とされている事項を選定した。調査内容は、別添調査票のとおりである。

V.平成12年度調査成績

 質問項目ごとの調査単純集計結果を、年齢別に別表に示した。対象児の年齢は前2回調査と同様、平成12年9月30日時点での年齢により区分し、1歳(1歳以上―1歳6カ月未満)、1.6歳(1歳6カ月以上―2歳未満)、2歳(2歳以上―3歳未満)、3歳(3歳以上―4歳未満)、4歳(4歳以上―5歳未満)、5-6歳(5歳以上―7歳未満:未就学児)とした。  以下、調査項目に従って、年齢別の集計結果に検討を加えたものについて述べる。なお、昭和55年度、平成2年度調査と同一の項目について比較検討し、この20年間の変化を示す。

  1. 対象児の概要
     調査票回収総数は、7,364人であり、このうち児年齢不明の3人と1歳未満の485人および7歳以上の1人を除いた6,875人を集計・分析の対象とした。性別は男3,486人(50.7%)、女3,338人(48.6%)、不明51人(0.7%)であった。年齢別内訳は、1歳1,398人、1歳6カ月1,392人、2歳1,022人、3歳867人、4歳872人、5-6歳 1,324人であった。昭和55年度の調査結果(以下「昭和55年値」とする)においては、対象数が15,045人であり、平成2年の調査結果(以下「平成2年値」とする)では、調査票回収総数は9,500人であり、今回の調査では、さらに約2,000人減少している。これは調査の対象となる幼児が出生率の低下にともなって、減少していることによるものと思われる。

  2. 家庭環境
    1) 両親の年齢
     父親の年齢は、対象全体では30歳代が最も多く、60%であり、平成2年の67%に比べるとやや減少し、20歳代の父親の比率がいくぶん上昇してきている。児年齢が小さいほど、20歳代の割合が高く、児年齢が高くなるに従って、20歳代の割合が減り、その分40歳代が増加している。この傾向は平成2年調査と同じである。すなわち、20歳代は、1歳児31%、1歳6カ月児28%、2歳児21%、3歳児13%、4歳児10%、5-6歳児6%であり、40歳代は、1歳児9%、1歳6カ月10%、2歳児14%、3歳児18%、4歳児19%、5-6歳児28%であった。 母親の年齢は、平成2年値と比較すると、いくぶん20歳代が減少し、30歳代、40歳代が増加してきている。すなわち、20歳代33%から30%、30歳代61%から64%、40歳代4%から5%と変化している。子どもの年齢との関係では子どもの年齢が高くなると、20歳代の割合が減り、その分40歳代が増加している。20歳代が1歳児44%、1歳6カ月児40%であるのに対して、2歳児33%、3歳児24%、4歳児19%、5-6歳児11%と減少するのに対して、30歳代は1歳児53%、1歳6カ月児57%、2歳児で62%となり、5-6歳児では75%と多くを占めている。 両親の年齢を20年および10年前と比較すると、父親では、20歳代が1歳児30%→27%→31%、2歳児20%→19%→21%、3歳児18%→12%→13%、4歳児10%→8%→10%、5-6歳児7%→5%→6%と20年前と余り変化がないのに対し、40歳代は1歳児4%→8%→9%、2歳児6%→11%→14%、3歳児11%→16%→18%、4歳児11%→19%→19%、5-6歳児17%→24%→28%と各年齢層において増加がみられた。 母親では、20歳代は、1歳児59%→46%→44%、2歳児47%→38%→33%、3歳児47%→28%→24%、4歳児47%→21%→19%、5-6歳児19%→11%→11%と全体に占める割合が少なくなり、代わって30歳代が1歳児40%→49%→53%、2歳児50%→57%→62%、3歳児50%→66%→70%、4歳児50%→71%→75%、5-6歳児75%→78%→75%と明らかに増加していた。

    2) 祖父母の同居
      祖父母の同居については、16%が父方祖父と、6%は母方祖父と同居しており、さらに18%は父方祖母と、8%が母方祖母と同居している。平成2年値と比較すると、父方祖父21%→16%と減、母方祖父6%→6%と変化なく、父方祖母25%→18%と減、母方祖母8%→8%と変化なく、父方祖父母との同居率が減少していた。

    3) きょうだい
     きょうだいのいる率は、1歳児で最も低く51%(平成2年値60%)であり、以後、当然のことであるが、児年齢が増加すると共に高くなり5-6歳児では、87%(平成2年値では92%)がきょうだいありとしていた。5-6歳児における、ひとりっ子は13%であり、平成2年値の7%、昭和55年値の8%に比べ増加していた。子ども数の減少は、子どものいる家庭においてひとりっ子が増えたことが主原因ではないが、少なからず影響を及ぼしつつあると考えられる。きょうだいのうち、兄姉の数については、全体で1人が54%、2人が19%、3人以上が4%であった。一方、弟妹の数は、年齢が上昇するに従って増加し、弟または妹が一人いるものは、1歳児では5%、1歳6カ月児11%、2歳児27%、3歳児41%、4歳児44%、5-6歳児44%であり、年下のきょうだいが2人以上いるものは、3歳児では2%であるのに対して、5-6歳児では9%であった。

    4) 保護者の職業
     職業は、会社員が67%と最も多く、次いで公務員11%、小売店6%、サービス業5%であり、平成2年値と大きくは変わらなかった。

    5) 居住環境
     住んでいる家については、一戸建てが全体の53%(平成2年値61%)と半数を占めていた。集合住宅は47%(平成2年値39%)であり、そのうちの66%(平成2年値73%)は1〜5階の低層部に、20%(平成2年値6%)は6〜13階の中層部に住んでいる。高層部(14階以上)は全体を通じて3.5%であり、平成2年値の1名のみに比べて比率が高くなっていた。 住んでいる地域環境としては、住宅地域66%(平成2年値61%)、田園地域14%(平成2年値19%)、団地9%(平成2年値10%)の順に多かった。 その他の環境面では、日当たりが良いとしたものが83%、交通の騒音で困っているもの15%、工場騒音では2%の人が困っているとしており、騒音で困ることは特になしが77%であり、平成2年値とほぼ同じ比率であった。 以上の住居、地域環境については、平成2年値と同様に、児の年齢による差はみられなかった。

  3. 育児環境
    1) 保育の状況(Q1 Q2)
     昼間主に子どもをみているのは、68%が母親としており、最も多かった。次いで、保育施設32%、父方祖父母5%、母方祖父母5%である。(Q1)
     子どもを預けているかどうかについて平成2年値と比較してみていくと、1歳児平成2年値11%→平成12年値16%、1歳6カ月児13%→18%、2歳児17%→24%、3歳児33%→44%、4歳児61%→76%、5-6歳児73%→86%であり、各年齢層で託児の比率が高くなっている。(Q2)
     預けている場所についても、子どもの年齢により割合が異なり、年少である1―2歳児の場合は、認可保育所が7〜8割を占めるのに対して、4歳以上では幼稚園としたものが半数以上となっている。また、無認可保育施設が1歳児7%、1歳6カ月児11%、2歳児9%の比率を示している。保育ママ(0.3%)、ベビーシッター(0.3%)の利用は全国的にみてまだ少ないといえる。(Q2-1)
     子どもを預けた時期は、3歳以上が51%と多く、次いで6-12ヶ月未満13%、1-1歳6ヶ月12%の順であった。3ヶ月未満2%、3-6ヶ月未満4%が乳児初期の比率である。(Q2-2)
     託児の時間帯は、朝・昼間が93%であるが、夜間1%、朝・昼間から夜までの6%に注目しておきたい。託児時間については、朝・昼間の時間で,1歳代が平均8時間、2-3歳児7.4時間、5-6歳児6.4時間である。当然のことながら朝・昼間から夜までの託児は平均9時間、1歳代では10時間であり、長時間保育の問題があろう。(Q2-3)

    2) 母親の就労(Q3)
     母親が仕事をしている率は、1歳児27%、1歳6カ月児27%、2歳児32%、3歳児40%、4歳児49%、5-6歳児50%と子どもの年齢と共に高くなっている。(Q3)
     その就労形態は、全体で、常勤40%、パートタイム31%、自営業10%、不定期10%の順である。働いているとしたものの中では、子どもの年齢が低い場合は、常勤で働いているものの率が高く、1歳児では常勤が50%、パートタイムは22%であるが、5-6歳児では、パートタイムが36%になり、その分常勤の割合が35%に減少している。なお、常勤の勤務時間は8時間が67%と最も多く、7時間6%、6時間以下8%、9時間以上が14%であった。これらは、平成2年値とほぼ変わりがないが、9時間以上の勤務が平成2年値4%から14%まで増加していることに注意したい。長時間勤務と子どもの保育の問題がありそうである。パートタイムの週あたりの勤務日数は5日が48%、6日16%、4日14%、3日11%であり、常勤に近い日数を働いている。勤務時間をみると、4時間以下25%、6時間22%、5時間19%、7時間14%、8時間11%である。これも常勤とほぼ同じように働いている母親がいることに留意したい。次に、自営業の勤務時間をみると、4時間以下が14%、8時間が13%、9時間以上が7%であり、長時間と短時間勤務に分かれていること、ただし、不明が49%あることは、時間がまちまちで決まっていないことを示しているとも考えられる。(Q3-1)
     就労形態は問わずその勤務時間帯は、主に昼間が74%、主に夜間が5%、朝から夜までが14%であった。(Q3-2)

    3) 子育てサークル(Q4)
     子育てサークルに参加している母親は、全体では15%であり、1歳代では16%〜18%、2〜3歳では18%〜22%、4歳児では10%、5-6歳児6%と4歳以降になると参加率が減少してくる。(Q4)
     これは、幼稚園入園を一つの区切りとして、グループが解散したり、メンバーが交代したりする地域の子育てグループの実態を表している。 サークルの形態は、「母親同士」40%、「保健福祉センター・保育所・児童館などのサークル」51%、「インターネットのサークル」1.4%であり、「母親同士」による自主的な子育てサークルが多数誕生していることを示している。(Q4-1)
     サークルに参加してよかったことは、「情報交換」が63%で一番多い。次いで、「子どもの遊び相手ができた」62%、「地域に(母親の)友だちができた」が58%であり、母も子も共に人との関わりをあげている。孤立からの脱却を志向しているといえよう。(Q4-2)
     逆に、参加してよくなかったことは、「親同士の関係に気を遣い、ストレス」が11%である。人との関わりを不得手とする人や好まない人もおり、このような母親にどの様な場を提供すればいいのかが課題である。次いで、「子どもを比較してストレス」4%、「子ども同士のトラブルで嫌な思い」3%である。ただし、よくなかったことはないとするものが73%もいることは、子育てサークルの効用を示しているといえよう。(Q4-3)
     従って、プラス、マイナスはあろうが、母と子が参加しやすい子育てサークルがより多く誕生し、さらに、サークル同士を結ぶネットワークが形成されれば、情報交換の質も高まり、子育てを支える大きな力となり、人の輪も更に広まると考える。

  4. 両親の心身の健康状態と育児との関わり
    1)母親の心身状態、育児不安(Q5〜Q10)
     母親の心身の健康状態について、平成2年値と共にみていくと、「心身ともに快調」73%→64%、「何ともいえない」14%→19%、「精神面不調」5%→8%、「身体面不調」5%→5%、「心身不調」3%→4%であった。なお、子どもの年齢による差はみられなかった。母親の心身にわたる健康状態がこの10年間で悪化している傾向があり、母親へのより一層の支援を必要としている。(Q5)
      育児に自信のもてない母親は、全体で27%、「何ともいえない」38%、「いいえ」は34%であり、半数以上の母親が育児に自信をもてないことがあると答えている。(Q6)
      子育てに困難を感じる母親は、全体で33%、「何ともいえない」26%、「いいえ」40%であり、自信のなさと同様の結果を示している。(Q7)
      Q6とQ7は育児不安を構成する項目であり、その軽減が大きな課題となっていることからこの数値に注目したい。
      子どもを虐待しているのではと思う母親は、全体で18%、「何ともいえない」16%、「いいえ」65%であった。その内容をみると、「感情的な言葉」80%、「叩くなど」の暴力49%、「しつけのし過ぎ」17%、「食事制限や放置」0.4%である。「感情的な言葉」は年齢と共に漸増し、「叩くなど」は年齢による差はなく、「しつけのし過ぎ」では2歳以上で微増している。  父親と比較すると(父親について母親が回答しているものが多いため信頼性は高くないが)、「感情的な言葉」は母親に多く、一方、「しつけのし過ぎ」は父親の方に多くみられ、「叩くなど」は同率であった。育児不安や母親の心身状態の悪さは虐待へのハイリスク要因であり、母親支援が必須である。(Q8)
      母親が子どもとゆっくりと過ごせる時間があるかどうかについて、平成2年値と共にみると、全体では「はい」73%→68%、「いいえ」7%→9%、「何ともいえない」19%→20%であり、子どもとゆっくり過ごすゆとりが失われる傾向にある。年齢による差はみられない。(Q9)
      自分のために使える時間をもてている母親は、全体で47%、「もてない」27%、「何ともいえない」23%である。子どもの年齢が上がるに従って使える時間をもてる傾向にある。子育て中の母親にとっても、自分のために使える時間をもつことは、心の健康に寄与することにもなろうし、育児不安が軽減されて、かえってゆとりをもって子どもと接することを可能にすると考える。(Q10)

    2)父親の心身状態、家事・育児参加(Q11〜Q18)
      父親の育児への参加の実態については、以下のとおりであった。
    育児への参加度は、全体では、「時々やっている」45%、「よくやっている」37%、「ほとんどしない」11%、「何ともいえない」3%であった。よくやっている率は子どもが小さいときの方が高く、1歳児42%、1歳6カ月児41%、2歳児38%に対して、4歳児33%、5-6歳児33%と減少している。一方、ほとんどしないが3歳以降になるとやや増加してくる。平成2年値ではそれぞれ48%、36%、12%、2%であり、「時々」と「よくやっている」比率がやや減少している。 (Q11)
     家事参加は全体で「時々やっている」38%、「よくやっている」12%、「ほとんどしない」44%、「何ともいえない」2%である。なお、年齢による変化はみられない。(Q12)
      母親の相談相手、精神的な支えについて、「はい」が65%である。「いいえ」は7%と低いが、「何ともいえない」が24%と高く、この値からみると、父親が十分な母親の精神的支えになっているかどうか疑問である。1歳児ではやや多い傾向にあるが、2歳以降では変化はみられない。(Q13)
      父親が虐待をしているのではと思うのは全体で3%、「いいえ」が88%、「何ともいえない」は5%である。この結果から虐待へのリスクは約8%ほどあると考えられる。年齢による変化はみられない。
      虐待と思うその内容は、「感情的な言葉」55%、「叩くなど」47%、「しつけのし過ぎ」35%である。「感情的な言葉」は2歳児58%、3歳児62%、4歳児65%に多く、他の年齢では46%〜50%である。「叩く」などの暴力は1歳児では25%、2歳児が62%と多く、5-6歳児では41%と低くなっている。「しつけのし過ぎ」では1歳児が50%と最も多く、この年齢で「しつけ」が行われていることに注目したい。(Q14)
      子どもとよく遊ぶかについて、全体では「よく遊ぶ」49%、「時々遊ぶ」41%、「ほとんど遊ばない」6%である。年齢が上がるにつれて、「ほとんど遊ばない」率が増えてきており(1歳4%→5-6歳7%)、父親の育児参加と同様、子どもが幼児期前半の頃は高いが、後半になると、低くなる傾向がみられる。平成2年値と比較すると「よく遊ぶ」が44%から49%と上昇している。(Q15)
      子どもが大きくなるにつれて、相手をすることが難しくなること、さらに、父親も年齢が上がり、仕事が忙しくなるなどで、家庭で過ごす時間や子どもとのかかわりが少なくなるなどが推測される。母親は夫の支持、支援を求めており、育児不安の軽減に重要な役割を夫は持っていることを強調したい。
      父の心身の健康状態を平成2年値と共にみていくと、「心身ともに快調」73%→62%と約10ポイント低下、「何ともいえない」14%→18%、「精神面不調」3%→4%、「身体面不調」5%→8%、「心身とも不調」3%→4%であり、この10年間で父親の心身の健康状態が悪化している傾向を示していることに留意したい。(Q16)
      父親の休日は、1カ月に8日以上としたものが40%と最も多く、次いで5〜7日31%、4日17%であり、0〜1日が7%となっている。(Q17)
      父親の帰宅時刻については、無回答が55%を越え、かつ矛盾する回答が多く、信頼性を欠くので割愛する。(Q18)

  5. 妊娠・出産に関する快適さ(Q19)
      妊娠・出産について、「満足している」ものは全体で84%、していないものは14%であり、10%を越える人が「満足していない」ことは課題として検討の余地がある。
      満足しているその内容は、「病産院スタッフの対応」65%、「病産院の設備」52%、「夫の援助などの家庭環境」42%、「妊娠・出産・育児についての不安への対応」23%、「母親(両親)学級」13%、「職場の理解や対応」13%の順である。設備などのハード面だけではなく、スタッフの対応、不安への対応、家庭や職場の理解など人との関わりのありようが満足をもたらすことに注目したい。(Q19-1)
      一方、満足していないものの内容は、圧倒的に「夫の援助などの家庭環境」(93%)である。夫の精神的援助、家事・育児参加がいかに重要であるかを示している。次いで「病産院の設備」31%、「妊娠・出産・育児についての不安への対応」18%、「病産院スタッフの対応」8%の順である。
      夫の援助などの家庭環境が妊娠・出産における満足度に大きく関与することが示されている。

  6. 子どもの健康と生活
    1) 乳幼児突然死症候群(Q20)
      SIDSを知っているものは、全体で92%、各年齢とも90%を越えており、よく認識されている。このうち危険因子であるうつ伏せ寝、受動喫煙について両方知っているものは46%、うつ伏せ寝について知っているものは50%である。うつ伏せ寝の危険性については周知度が高く、SIDSを知っている親のうち96%が周知していることになる。一方、受動喫煙のみを知っているものが1%、両方知っているものと合わせても47%で、5割に達しない。従って、受動喫煙の危険性について、健診など折にふれ伝える努力が必要になる。

    2)健康診査と受診の感想(Q21 Q22)
      これまでに受けた乳児期健診は、1歳児については、1カ月89%、3カ月83%、6カ月56%、9カ月55%であった。1歳6カ月児健診は2歳以上で受診率83〜89%、3歳児健診は4歳児81%、5-6歳児80%であった。
      健診を受けた場所は、全体で保健所・保健センターでの集団健診が一番多く82%、次いで病院38%、開業医・診療所25%の順である。(Q21)
      健診を受けた感想について、「信頼がおけて安心できた」、「医師や保健婦の話が勉強になった」が共に31%、次いで「決まりだから受けた」23%、「栄養士の話がためになった」16%の順であった。要望として「もっとゆっくりした時間がほしかった」11%には今後応えるべきであろう。また、「知っていることばかり教えられた」4%について、従来みられる一方的な指導というあり方が問われているといえよう。さらに、「形式的だった」21%は反省を迫られる。受けてよかった、安心したという健診でありたいし、それには心の通った親切で丁寧な質のよい健診を心がける必要がある。
      保健所、保健センターでの健診の受診率は高いが健診を受けた感想として、「信頼がおけて安心できた」という評価や「医師や保健婦の話が勉強になった」という評価は、年齢ごとの差はないが、31%に過ぎない点は注目すべきであろう。(Q22)

    3)予防接種(Q23)
      いずれかの予防接種を受けたものは、1歳以上全ての年齢で98%を越え、4歳以上で99%に達し、全国の殆どの子どもが何らかの予防接種を受けている。その内容は、定期接種に定められた時期によって、接種率が変動しているが、5-6歳児の値でみると、ポリオ生ワクチン98%、BCG94%、DPT92%、麻疹85%、風疹70%、日本脳炎69%が最終的な接種率といえよう。昭和55年値、平成2年値と比較すると、各ワクチン共に接種率は上昇がみられている。特に、麻疹ワクチンは、昭和55年時点では定期接種となってから日が浅かったため、当時の接種率は38%代であるが、平成2年値81%から今回は85%と接種率の増加がみられた。
      5-6歳児では、任意予防接種としてのおたふくかぜは20%、水痘は17%であり、約2割程度の子どもが接種を受けている。

    4)感染症の罹患状況(Q24)
      年齢と共に罹患率の上昇がみられるが、3歳の集団保育開始年齢から目だって増加している。5-6歳児においては、麻疹7%、風疹7%、水痘65%、流行性耳下腺炎25%、手足口病27%が現状である。麻疹の免疫獲得率は、ワクチン接種したもの(85%)とあわせ、92%程度と考えられる。
      5-6歳児の罹患率の変化を昭和55年値、平成2年値と比較すると、特に、麻疹の自然感染率が昭和55年値48%→平成2年値12%→平成12年値7%と大きく減少しており、これは麻疹ワクチンの接種普及によるものと考えられる。その他、水痘が39%→65%→65%と2年値と12年値は同率、手足口病が11%→21%→27%と増加、流行性耳下腺炎は37%→29%→25%と減少、風疹は26%→26%→7%と今回の調査で著しく減少した。風疹の定期予防接種が幼児期に開始された効果であろう。

    5)入院を要した病気の罹患(Q25)
      入院を要した既往は全体で20%、1歳児14%、1歳6カ月児16%であり、2歳児21%から4歳児27%の幅の中にある。5-6歳児での入院既往なしが73%であり、昭和55年値85%、平成2年値77%と若干の減少を示した。

    6)急病と小児救急体制(Q26)
      急病で、すぐ診てくれる病院が見つからず困ったことがあるのは全体で18%、1歳児16%、1歳6ヶ月児14%、2歳児19%、3歳児が18%、4歳児では25%、5-6歳児22%と年齢が上がると上昇する傾向にある。この結果をみると、小児救急医療体制の整備が緊急の課題であることがうかがえる。
      次いで、困った時間帯をみると、全体で、平日の昼間は5%に過ぎないが、平日の夜間では67%、休日55%であり、殆どがこの二つの時間帯で占められる。夜間、休日など診療時間外の小児救急医療体制の整備が望まれる。

    7)これまでに、わかっている病気や異常について(Q27)
      これまでにわかっている病気や異常が特にないものは、全体で70%であった。病気や異常の内容は、アトピー性皮膚炎が9%、熱性けいれんとぜんそくは共に6%であり、ぜんそくは年齢とともに増加し、5-6歳児では10%を占める。また熱性けいれんは4歳児では約10%に達する。アトピー性皮膚炎は1歳児5%から1歳6ヶ月児では8%と上昇し4歳児、5-6歳児では13%の有病率を示した。昭和55年値よりも、平成2年値、平成12年値ではわかっている病気のある比率が高いが(5-6歳児13%→30%→31%)、この上昇はアトピー性皮膚炎(かゆみのある湿疹)とぜんそくの増加によるものが大きいと思われる。すなわち昭和55年値の5-6歳児では湿疹は全体で4%であり、平成2年値16%、平成12年値13%(アトピー性皮膚炎)である。ぜんそくについても、5-6歳児の有病率が昭和55年値4%から平成2年値7%、平成12年値10%と上昇し、アレルギー性疾患の増加がうかがわれた。ただし、このデータは、親から得られたものであり、医師による確定診断のないものが含まれていることが考えられ、しかも、現在のアレルギー性疾患への関心の高さも背景にあることを考慮する必要がある。

    8)けがおよび事故(Q28)
      これまでに医師にかかるほどのけがや事故の既往は、年齢と共に増加し  ていた。すなわち、既往なしの比率が1歳児85%、1歳6カ月児75%から2歳児67%と減り、それ以降5-6歳児52%まで低下した。そして、5-6歳児の約半数はこれまでに医師にかかるほどのけがの経験があることになる。
      けがや事故の発生場所は、全体では屋内の率が高いが、3歳以上になると屋外の比率が増加し、5-6歳児では屋内31%、屋外16%となっている。
      その内容は、屋内及び屋外別では、切傷等43%、49%、やけど24%、5%、打撲16%、24%、脱臼13%、4%であり、屋内ではやけど、脱臼が多くみられる。年齢と共に増えているものは、切傷等、脱臼、骨折であり、子どもの動きが活発になるに従って増加するものと思われる。一方、やけどについては、屋内、屋外合わせて、1歳児27%、1歳6カ月児22%、2歳児21%、3歳児17%、4歳児18%、5-6歳児15%と経験率も比較的高く、全年齢を通じて予防のための配慮が必要である。

    9)誤飲(Q29)
      誤飲の既往については、1歳児17%、1歳6カ月児の13%、2歳以上児でも10〜12%がありとしていた。平成2年値が1歳6カ月児10%、2歳以上で7〜8%であり、誤飲事故が増加してきており、注意を喚起したい。(Q29)
      飲み込んだものは、極めて多種多彩であり、その内容を付表としてあげた。子どもの身の回りにあるもの全てが誤飲されるとみてよく、保健指導の際に注意を促したい。(Q29-1)
      既往ありのうち38%が医師の治療を受けていた。(Q29-2)

    10)かかりつけの医師(Q30)
      かかりつけの医師の有無は、対象児の年齢とはあまり関係がなく、全体の82%がありとし、また、この20年間の変化はみられない。

    11)う歯(Q31)
     虫歯があるとする率は、年齢と共に明らかに増加がみられ、1歳6カ月児では1.5%、2歳児5%、3歳児9%、4歳児15%、5-6歳児15%に虫歯がある。痛む歯の部位は、当然のことであるが、乳歯のはえる順番に従って、2歳以下では、上の前歯が最も多く、3歳児以降は下の奥歯が多くなる傾向がみられた。このう歯率に関しては、昭和55年値及び平成2年値と比較すると、2歳児12%→7%→5%、3歳児23%→16%→9%、4歳児35%→21%→15%、5-6歳児42%→21%→15%と各年齢層において大きく減っており、この20年間でう歯予防や早期治療が進展していることがうかがえた。

    12)育児の相談相手(Q32)
      日常の育児の相談相手としては、全体では、夫婦で相談する場合が73%と最も多く、次に、祖父母50%、友人49%、近所の人19%、保育士・幼稚園の先生14%、かかりつけの医師7%の順に多かった。保健婦・助産婦は3%であった。これらの値については、児の年齢による大きな差は認められなかった。保育士・幼稚園の先生は、3歳以降に増加がみられ、3歳児14%、4歳児24%、5-6歳児24%であり、子どもが集団生活に入ることにより、身近で相談しやすい相手と思われた。
      昭和55年値及び平成2年値との比較では、祖父母を相談相手とする割合が、昭和55年では25〜41%、平成2年の35〜48%に対し、今回は42〜57%と各年齢層で増加した。核家族化の進行にも関わらず、祖父母への相談が増えていることはよい傾向であろう。ただし、身近に相談する人がいないことの反映ととらえれば問題になろう。
      また、保育士・幼稚園の先生は、2歳以降で昭和55年値4〜10%、平成2年値7〜19%が12〜24%に上昇していた。
      なお、比率は低いが相談相手が誰もいないものが約1%いることに留意したい。

    13)食生活(Q33〜36)
      赤ちゃん時代に市販の離乳食を使用した経験があるかどうかについては、全体で「よく利用した」は平成2年値13%→平成12年値25%、「時々利用した」43%→48%であり、「あまり使わなかった」は44%→26%と、この10年で著しい増大を示した。(Q33)
      食事についての心配事は、年齢にかかわらず、約半数のものがありとしている。その内容は、第1位が「落ち着いて食べない」であり、1歳児平成2年値33%→36%、1歳6カ月児平成2年値31%→33%、2歳児31%→37%、3歳児29%→30%と低年齢における率が高いことと、この10年でやや増加の傾向を示している。しかし、この訴えは、4歳以降は減少し、5-6歳児では16%とかなり落ち着いてくることがわかる。ただし、このなかに多動傾向を示すものがいないか注意したい。
      好き嫌いに示される偏食の訴えは、3歳以降に増大し、22〜23%となっている。
      小食は、年齢にあまり関わりなく、10〜17%にみられた。(Q34)
      朝食のとり方について、年齢には関わりなく毎日食べるものは全体で87%であった。週に1〜2回抜くものが6〜11%いることに注目したい。週1〜2回しか食べないもの約2%と合わせ、特に就寝、起床時間が遅くなってきているなど後述する生活リズムとの関連を考えなくてはならない。(Q35)
      おやつの与え方については、「特に気をつけていない」が年齢にあまり関わりなく全体で44%みられ、平成2年値28%から増大を示し食生活のしつけの点で留意したい。「時間を決めて」も1歳児平成2年値32%から10%、5-6歳児では平成2年値47%から13%であった。次に「欲しがるときに」としたものは、1歳児7%から5-6歳児23%と年齢が上がると共に増加しており、食生活のしつけについて保健指導の際に留意したい。
      「甘いものを少なくしている」が、1歳児平成2年値32%から今回13%、5-6歳児平成2年値20%から12%と減っており、また、「甘いものに偏ってしまう」が平成2年値3%前後から12年値では3〜5%にみられることは、保健指導上留意しておくべきことと思われる。(Q36)

    14)睡眠・生活リズム(Q37〜39)
      就寝時刻は午後9時が最も多く全体の41%であり、次いで10時が36%と多かった。昭和55年値、平成2年値との比較では、全般に10時および11時就寝が年齢を追って増加しており、その分8時就寝が減少していた。
      10時以降に就寝する児の率について昭和55年値、平成2年値と今回を比べると、1歳6ヶ月児で25%→38%→55%、2歳児29%→41%→59%、3歳児22%→36%→52%、4歳児13%→23%→39%、5-6歳児10%→17%→40%と顕著に増加しており、子どもの生活リズムが年々夜型になっていることが注目される。これは、大人の生活リズムに同調してのことであろうし、子どもの心身への影響が懸念され、保健指導の際の留意点になる。(Q37-1)
      起床時刻は、全年齢において午前7時がピークであり、全体では52%、3歳児以降の年齢では、49〜64%が午前7時に目覚めている。次いで午前6時が11%、午前8時29%、午前9時以降に起床するものは7%であった。平成2年値と比べると全体で午前6時及び午前7時起床がやや減少し(午前6時平成2年値23%→平成12年値11%、午前7時55%→52%)、9時以降に起床するものが3%から7%になり、起床時刻についても、やや遅くなっていることが示された。起床時刻は多少遅くなってきているが、就寝時刻が顕著に遅く、このため昼寝を除いた睡眠時間が短くなっていることが推測される。(Q37-2)
      昼寝については、しないものは1〜3歳児ではこの20年間変わらない。4歳児でも昭和55年値39%→平成2年値47%→平成12年値47%、5-6歳児51%→61%→64%と平成2年値と変わらない。3時間以上が15%であり、平成2年の9%から増加している。これも起床、就寝の生活リズムに影響を与えるものと考える。(Q38)
      子どもは眠りにはいるとき不安を持つ傾向がある。その緩和のために以下のような眠るときのくせがある。「特にない」ものは年齢を追って増加し、1歳6ヶ月の23%から5-6歳の59%へと変化する。ただし、昭和55年値、平成2年値と今回の調査結果の変化をみると5-6歳児で昭和55年値79%→平成2年値66%→平成12年値59%と減少しており、不安定な子どもが増えているのではと懸念される。「寝つくまでそばにいてあげる」率は、2歳までは30%内外で、3歳以降減少がみられ、5-6歳児では16%であった。昭和55年値、平成2年値と比較すると、3歳児18%→25%→23%、4歳児12%→20%→19%と平成2年値と同様であった。しかし、5-6歳児では7%→13%→16%と今回の調査において高率である。同じように、「添い寝をしないと寝られない」ものも、例えば4歳児4%→7%→11%、5-6歳児2%→5%→9%と増加傾向をみせている。(Q39)

    15)活動性(Q40)
      普段の動きがおとなしいと母親に評価される子どもは、全体で2.7%と低率であるだけに、「おとなしい」ことが発達のどの様な側面と関係を有するか、研究課題といえよう。「落ち着きなく動きすぎる」は4歳児まで9〜10%みられ、5-6歳児で7%とやや減少している。この項目のみで判断をすることはできないが、多動性障害も念頭に置いておきたい。

    16)忙しいなどの理由とビデオ・テレビ視聴(Q41)
      「よく見せている」が全体で23%、「時々そうしている」が60%である。忙しいなど何らかの理由で視聴させている比率が80%を超え、しかも年齢層に関係がない。発達の領域で視聴時間に触れるが、長時間視聴と「テレビやビデオによる子守」は共に保健指導の際の留意事項になる。

    17)気になるくせ(Q42)
    Q42-1 1-2歳未満
    Q42-2 2歳以上
      母親が気になるくせは、全体で30%があるとしていた。また、昭和55年値と平成2年値では年齢が高くなるほど減少を示したが、平成12年値ではほぼ同率に推移していることに特徴がある。更に昭和55年、平成2年、平成12年を比較すると、2歳児の昭和55年値24%→平成2年値35%→平成12年値31%、3歳児25%→28%→33%、4歳児22%→27%→31%、5-6歳では、24%→24%→30%と3歳児以降、増加の傾向にある。
      その内容は、全体で指しゃぶり(2歳未満児19%、2歳児以上14%)が多く、次いで爪かみが2歳児以上8%である。幼児初期の不安を示す極端な人見知りと母親から離れられないことはそれぞれ2%、6%である。比率は低いが保健指導の際の留意事項である。
      2歳以上の年齢層をみると、「保育所や幼稚園に行きたがらない」では全体で2%あり、平成2年値の1%より増加している。不登校の増加傾向と結びついているのであろうか。「ひどく怖がる」ものは全体で2%、平成2年値1%とこれも増えている。また、「家の人以外と話しをしない」では平成2年値0.5%に対し、12年値は1%である。10年前より増えていることに留意し、そして、これらの項目は幼児の不安を示しているところから、低い比率であるが留意したい。(Q42-2)

    18)友だち・遊び・遊べる場所
    Q43,44  2歳未満
    Q48,49,50  2歳以上
      1歳児20%、1歳6ヶ月14%、1歳児全体では17%が、同年齢の子どもと接する機会がないとしており、どちらともいえないものも全体で12%であった。2歳児以上では、いつも遊ぶ友だちがいないものが2歳児39%、3歳児30%、4歳児17%、5-6歳児11%であった。平成2年値では1歳児全体で22%、2歳児以降は無回答を除外して計算し直すと、2歳児38%、3歳児36%、4歳児16%、5-6歳児25%であり、1歳児全体で5%減少していることは望ましい結果である。集団生活が始まるまでの1-3歳児については母と子だけで過ごしているものが3割程度いることになり、地域での育児支援を必要としている。(Q43 Q48)
      友だちの数は、2歳児以上全体で3人が最も多く25%であり、5-6歳児では5人が23%を示すなど年齢が上がると、友だちの数も増えることを示している。友だちの数は平成2年値と大きな変化はない。(Q48-1)
      遊びの内容は、2歳以上全体で、ごっこ遊び65%、お絵かき・粘土・ブロックなどの造形遊び62%、ボール・すべり台など運動遊び59%、自転車・三輪車など54%、絵本31%、テレビ・ビデオ26%、テレビゲーム11%の順に多かった。平成2年値との比較は選択肢が異なっているため難しいが、平成2年値は、自転車・三輪車69%、テレビ・ビデオ26%、テレビゲーム12%であり、自転車・三輪車などが12年値で減少していた。自転車の減少は交通事情の反映であろうか。あるいは外遊びの減少も考えられる。テレビ・ビデオやテレビゲームは変化がみられなかった。(Q48-2)
      近所に安心して遊べる場所のあるものは、全体で2歳未満児66%、2歳以上児67%であり、昭和55年値、平成2年値がそれぞれ64、66%と70、65%を示し、この10年間で子どもが安心して遊べる場所に変化はみられなかった。引き続き、子どもにとって安心して遊べる場所の確保が求められている。(Q43 Q49)
      いつも遊ぶ場所を2歳以上全体で平成2年値(無記入を除外して再計算)と比較してみていくと、「自分の家」が9%→75%と顕著に増加している。これと反対に「友だちの家」は70%→31%、「公園」61%→45%、「児童館などの児童施設」40%→5%と著しい減少を示した。子どもたちの遊びが家中心であり、行動範囲が狭くなっていることがうかがわれ、前述の遊びの内容、友だち関係、遊べる場所の確保など子どもを取り巻く心理・社会・物理的環境を調えることが望まれる。(Q50)

    19)習い事(Q45 Q51)
      1歳児全体の習い事をやっている率は4%であり、やらせたいと思っているものは45%、まだ考えたことはないものは27%である。昭和55年値、平成2年値をみると、やっている1%、2.4%、やらせたい37%、51%、まだ考えない52%、29%であり、やっている率が漸増している。一方、まだ考えないとするものが減少し、習い事志向にあるといえよう。
      やっている、やらせたい習い事の内容について昭和55年値、平成2年値、平成12年値の順にみたい。昭和55年調査では勉強と幼児教室を合わせて6%、平成2年値勉強のための塾7%、12年値2%と減少している。幼児教室は平成2年値7%から10%とやや増加している。音楽は昭和55年値47%→平成2年値40%→平成12年値33%、水泳31%→53%→49%である。英会話は12年調査のみであるが19%あり、勉強のための塾に比べて高い比率を示している。また、習い事のレパートリーが増えている傾向を伺わせる。 (Q45、Q45―1)
      2歳児以上の幼児の習い事についてみると、習い事をやっていない比率は平成2年値(不明を除いて再計算)71%から74%に増加し、何らかの習い事をしている率は29%から26%にやや減少したことになる。主な習い事の比率は減少しており、お勉強のための塾は平成2年値11%→3.4%、幼児教室9%→11%である。
      1歳児で「もうやらせている」または「やらせてみたい」と19%が回答していた英会話は5-6歳児14%、4歳児で12%と減少している。音楽は昭和55年値44%、平成2年値41%に対し平成12年値は31%、体操は7%、13%→11%へ、水泳は26%、43%→40%とやや減少している。
      4歳児以上はそれぞれの習い事の回答率が年齢とともに上昇しており、2つ以上の習い事をしている子どもが増えているものと推測される。(Q51)

    20)生活習慣(Q46 Q47 Q54 Q55 Q53 Q56)
      排尿のしつけは、まだはじめていないものが、1歳児で86%であるが、1歳6ヶ月児では52%と減少している。1歳半をすぎた時点で、約5割が様子をみながら排尿のしつけを開始しているようである。昭和55年値の1歳児では、まだはじめていないものが28%、平成2年値では1歳児で67%、1歳6カ月児22%に比べて多かった。一方、平成2年値でだいたいうまくいくが1歳児0.8%、1歳6カ月児11%、これに比べて、平成12年値ではそれぞれ、0.4%、2.7%にすぎなかった。この20年で、排尿のしつけの開始時期が遅くなってきている。(Q46)
      2歳以降では、2歳児で排尿のしつけをしているものが79%、していないものが21%であり、平成2年値(無記入を除き再計算)と比べると、している94%、していない6%とここでもしつけの開始は遅くなっている。3歳以降うまくいっていない比率が10%前後に安定しているところから、3歳から4歳にかけて排尿の自立がみられるといえよう。(Q54 Q54-1)
      排便のしつけは、まだはじめていないものが1歳6ヶ月児69%、2歳児34%、3歳児4%であり、2歳から3歳にかけて開始しているようである。平成2年値(再計算)でみると、それぞれ、43%、10%、2%であり、しつけの開始が遅くなってきている。(Q47 Q55)
      夜尿について、毎晩のようにするものは、2歳児40%、3歳児14%、4歳児8%、5-6歳児4%であり、「ほとんどしない」、「時々する」を合わせると4歳児、5-6歳児共に92〜96%を示し、この頃からおねしょはなくなっていくといえよう。(Q53)
      歯磨きの習慣について、2歳までには、96%のものが何らかの形で歯みがきをはじめている。歯をみがくようにいわれれば自分でするものは、3歳児で60%に達し、5-6歳児では73%である。昭和55年値、平成2年値と比較すると、「いわれればみがく」が、2歳児40%→26%→38%、3歳児64%→55%→60%と55年値より低率である。さらに「いわれなくてもみがく」が4歳児15%→7%→9%、5-6歳児25%→15%→20%とこれも55年値より低く、歯みがきの自立が遅れ、かつ、ここ10年でこの比率が横ばい状態になっているようである。(Q56)

  7. 発達
    (1)調査項目について
      発達に関する調査項目は、1歳児については、12ヵ月〜17ヵ月および18ヵ月〜23ヵ月に分け、その後は2、3、4、5-6歳の年齢階級とし、「はい」、「いいえ」の2件法で回答を求めた。各年齢階級とも、言語、認知、社会性の発達及び親子関係、運動発達及び食生活、生活習慣の項目から成っている。なお、調査項目のうち、母子健康手帳の保護者の記録項目から多く選定した。これにより母子健康手帳項目の全国値を得ることができた。
      各年齢階級とも殆どの項目で80から90%内外の通過率が得られ、本調査対象児の多くは正常な発達段階にあることを示している。
      昭和55年値、平成2年値と今回を比較すると、各年齢段階の各項目において、多少の数値の変動はあるが、大きな変化はみられない。数表を比較すると比率の増減のみられる項目をみてみると、12〜17ヵ月の「指をさし声を出して教える」のは、55年値84%、平成2年値83%(不明を除くと84%)に対し今回は78%(不明を除くと81%)である。同じ月齢で「階段をはいのぼる」では、昭和55年値84%→平成2年値89%(不明を除いて89%)→平成12年値79%(不明を除いて83%)である。
      18-23ヶ月の「絵本をみて指さす」は昭和55年値93%→91%→80%、「コップからコップへ水を移す」では昭和55年値93%→91%→78%であるが、無回答(不明群)を除いて比較すると、「絵本をみて指さす」は平成2年値92%、今回調査93%、「コップへ水を移す」は平成2年値92%、平成12年値92%とほとんど差はない。
      2歳児の「2語文」は昭和55年値、平成2年値共に92%(不明を除くと93%)に対し、今回は77%(不明を除くと92%)、「ピョンピョンとぶ」では昭和55年値89%→93%→78%(不明を除くと93%)となっている。今回の調査では、過去の調査に比べ精度が悪く、無回答(空欄)が多いため、この影響で低値を示しているものと考えられる。無回答例を除外して、過去の調査結果と比較してい見ると、12ヶ月から2歳の年齢での以上の項目の通過率には変化はみられない。 次に食生活、生活習慣の項目のうち、「いいえ」が10%以上のものをあげる。
      (1)2歳児  Q8. 肉や野菜を食べる・・・「いいえ」=9%(不明を除くと11%)
      (2)3歳児  Q9. 後片付け、整理整頓ができる・・・「いいえ」=22.1%
      (3)4歳児  Q11.後片づけ・整理整頓ができる ・・・「いいえ」=17%
      (4)5-6歳 Q13.食事やおやつの時間のきまり ・・・「いいえ」=20.2%
      整理整頓は、親のしつけの方針にもよるであろうが、習慣づけることが望ましいには違いない。5-6歳児で「食事やおやつの時間が決まっていないこと」20.2%は行動の枠組み、生活リズムの確立の観点からも望ましいといえない。

    (2)テレビ・ビデオの視聴の有無と視聴時間
      今回各年齢層毎にテレビ・ビデオの視聴の有無と視聴時間を調べた。特にビデオは繰り返し視聴でき、忙しいなどの理由で長時間視聴が可能なため、子どもの遊びや日常経験を妨げるおそれがある。
      12から17ヶ月児では、見せていないものは7%である。視聴時間は1〜2時間未満が36%、2〜3時間未満30%、3〜4時間未満22%であり、1から4時間未満に集中している。
      18ヶ月から23ヶ月児は、見せていないが2%と減少し、視聴時間は2〜3時間未満が第1位34%、次いで3〜4時間未満31%、1〜2時間未満22%と1時間多くなっていることと、5〜6時間未満3%など4から6時間未満の視聴が増えている。
      2歳児では、見せていないものが2%、視聴時間は2〜3時間未満30%、3〜4時間未満37%、1〜2時間未満20%、4〜5時間未満6%の順である。
      3歳児は、見せていないものが1%、視聴時間は2〜3時間未満34%、3〜4時間未満38%、1〜2時間未満17%、4〜5時間未満5%、5〜6時間未満2%であり、2歳児に傾向のみられた短時間から長時間視聴の幅がより出てきている。親の考え方であろう。
      4歳児と5〜6歳児はほぼ同傾向であり、見せていないが1%でこの比率が下限である。視聴時間は2〜3時間未満が4歳児37%、5〜6歳児39%、3〜4時間未満で共に38%に、1〜2時間未満18%と17%、4〜5時間未満4%と3%、5〜6時間未満は共に1%である。
      視聴時間は2から4時間未満が多く、次いで1から2時間未満である。適度な視聴時間は指摘できないが、4〜5時間以上の視聴は前述のように子どもの遊びや日常経験を狭めることが考えられる。

    (3)テレビゲーム
      3歳児以上のテレビゲームと操作時間を記載する。
      3歳児では、「している」5%、「時々している」9%である。操作時間は、1〜2時間未満が62%と多く、次いで1時間以内17%であった。2〜3時間未満7%、3〜4時間未満3%と3歳児にしては操作時間の長いものがいることに注目したい。
      4歳児は、「している」が11%、「時々している」16%であり、3歳児の約2倍になっている。操作時間は、1〜2時間未満72%、2〜3時間未満11%、1時間以内5%、3〜4時間未満3%であり、3歳児よりも長くなっている。
      5-6歳児では、「している」20%、「時々している」24%を合わせて半数近くがテレビゲームをしている。操作時間は、1〜2時間未満74%、2〜3時間未満13%、1時間以内5%、3〜4時間未満2%となり、4歳児とほぼ同率である。一方、テレビゲームをしている比率は4歳児より増えているが、操作時間は4歳児とほぼ同率である。もしこれにテレビ・ビデオの視聴が加われば長時間になり、外遊び、友だち遊び、日常生活経験などを狭め、社会性を中心に子どもの全体的な発達への影響が懸念される。

VI.平成12年度調査成績表

pdf平成12年度調査成績表 (181KB)

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VII. おわりに

 以上、平成12年度幼児健康度調査成績についてその概要を報告した。
  ここでは、年齢群別の単純集計成績について述べると共に、昭和55年度、平成2年度調査成績と比較検討し、この20年間の変化について考察した。ここに得られた成績は、小児に関わる健康と生活及び発達に関する全国的な実態を示すものであり、小児の心身の健康増進を目的とした乳幼児健康診査、保健指導、育児相談に役立つものと考える。
  また、厚生省児童家庭局が策定した「健やか親子21」の課題達成のうち、いくつかの目標値のベースラインとしての活用が期待される。
  報告書をまとめるに当たり、本調査にご指導を賜った厚生労働省雇用均等・児童家庭局、本事業に助成された社会福祉・医療事業団、調査にご協力をいただいた全都道府県、政令市、特別区、市町村、及び保健所、そして直接調査された関係者各位に、深く感謝の意を表する。
  なお、本調査は、日本子ども家庭総合研究所 平山宗宏、東洋英和女学院大学 高野 陽を顧問とし、日本小児保健協会(会長 前川喜平)に幼児健康度調査小委員会を設置して行った。また、集計・解析を主として担当したものは、大正大学 中村 敬、母子愛育会・愛育相談所 川井 尚である。

日本小児保健協会
幼児健康度調査小委員会
川井 尚(母子愛育会 愛育相談所)、中村 敬(大正大学)、恒次欽也(愛知教育大学)
加藤則子(国立公衆衛生院)、衛藤 隆(東京大学)、水野清子(日本子ども家庭総合研究所)
塚原洋子(杏林大学)、近藤洋子(玉川大学)、倉橋俊至(足立区衛生部)、清水凡生(呉大学)

平成13年3月31日

VIII.付表

  1. 平成2年度調査成績表(省略)
  2. 昭和55年度調査成績表(省略)

平成12年度幼児健康度調査報告書
平成13年3月31日発行(無断転載を禁ず)
発行(社)日本小児保健協会
〒160-0001 東京都新宿区片町1-12 藤田ビル4階
TEL: 03-3359-4964  FAX: 03-3359-4906
印刷(株)統計印刷

この事業は、社会福祉・医療事業団(子育て支援基金)の助成(事業)により行ったものです。

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