小林大輝
学校法人 聖路加国際病院 一般内科医員
臨床疫学センター 上級研究員
東北大学大学院医学系研究科 社会人大学院生

Hinohara Fellowship 2012
2012年9月~2013年5月

プロフィール:

略歴

  • 2006年:三重大学卒
  • 2006-2008年:株式会社 麻生飯塚病院 初期研修医
  • 2008-2012年:財団法人 聖路加国際病院 後期研修医
  • 2012-2013年:Beth Israel Deaconess Medical Center(日野原フェロー)
  • 2013-2014年:ハーバード公衆衛生大学院
  • 2014-:現職

専門や関心領域
一般内科/総合診療、臨床研究

留学した期間

2012年9月~2013年5月

留学を志望した動機や経緯

私が本フェローを志望した動機は2つあります。1つは臨床研究の指導を受けることです。聖路加国際病院には臨床疫学センターという部署があり、臨床研究を積極的に勧めています。留学前に同センターにて臨床研究をやっておりましたが、更に詳しい知識及び海外からの視点を学ぶべく志望しました。もう1つは医学教育を学ぶことが目的です。医師として卒後6年を終え、その後後人の指導をする機会が増えると考えられました。米国での医学教育を学ぶことで、日本の医学に還元しようと考えました。これら2つの動機が、日野原フェローの指導医であられる2名のご専門にマッチしたため応募しました。

留学までの準備や関連情報

英語が苦手であったため、英語の勉強を中心に行いました。また、ビザを取得するためにもある程度の貯蓄は必要です。

留学時の経験や活動

臨床研究

臨床研究に関して、Wee先生とは週1回火曜日午前に30分から1時間程度のリサーチミーティングを行いました。ミーティング内容は完全に自分で考え、相談してアドバイスをもらう形です。事前に相談内容をパワーポイントにまとめてなるべく円滑に進む努力をしました。
研究のアイデアを練る段階では、概要を説明し研究の実現可能性を統計学者を交えて相談しました。解析段階では、実際に自分が解析ソフトを使って解析を行い、解析コマンド及び結果について議論しました。論文作成段階では、作成した物を事前に提出しそれに関してコメントをもらい再度校正し直す作業をしました。
それに加え、2週に1回ディレクターズミーティング(Wee先生とMarcantonio先生)もありました。他のフェローと共に、自分の研究の進み具合を確認し合ったり、身近な事や将来的なことに関する相談にも乗ってもらいました。
また週2回はリサーチカンファレンスがあり、それに参加していました。General medicine and primary careに所属するフェローによる研究プレゼン及び、Integrated medicineに所属するフェローによる研究プレゼンです。講義等があれば適宜参加していました。

医学教育

医学教育に関して、Taylor先生はフレキシブルに予定を組んで下さいました。『研修医のモチベーションを如何に向上させ、研修を有意義な物にするか』と言うテーマを希望し、それに対する知識を増やすため経験をさせてくれました。
2週に1回のTaylor先生とのミーティングでは、前の週に経験した事の報告及びその後の予定の方向修正を適宜行いました。またある程度経験を積んだ後は、その経験を基に同テーマで論文作成を行いました。
実際に米国での医学教育の現場は、Beth Israel Deaconess Medical Center以外でも、Harvard vanguardやBrigham and women’s hospitalでの外来指導見学もさせて下さいました。これらの見学が週1,2回から2週に1回程度ありました。

業績(特に留学時の活動と関連するもの)

  • Kobayashi D. et al. A Prediction Rule for Mortality for Inpatients with Staphylococcus aureus Bacteremia: A Classification and Regression Tree (CART) Analysis. 2012 SGIM annual meeting, Devou
  • Kobayashi D. et al. The Relationship between Religiosity and Cardiovascular Risk Factors in Japan: A Large-Scale Cohort Study. J Am Soc Hypertens. 2015 Jul;9(7):553-62.
  • Kobayashi D. et al. The motivation of residents; cross-cultural insight (in progress)

留学してよかったこと

非常に丁寧で献身的なメンターに恵まれたこと。

後輩へのアドバイス

2つのことをアドバイスさせて頂きます。


1つはフェロー中にやることを明確に決めることです。渡米した後に考えるではなく、渡米する前に既に計画は終わっていることが理想です。例えば臨床研究を学びたいという程度ではなく、具体的に何の研究を、どのデータを使って行うのかまで考えておくことが望ましいと思います。1年はとても短く、渡米してから考えたのでは不十分であると思います。


もう1つは、フェローを終えた後、具体的に何に経験を役立てるかを考えて頂きたいと思います。私の場合はその後、公衆衛生大学院で臨床研究を系統だてて学び、帰国後も続けています。留学中の1年間は米国でただ単にやりたいことに時間を注げた特別だった1年間ではなく、その後長く続くキャリアの中で、自分がステップアップする要となった期間にしていただけたらと思います。