国際発達ケア:エンパワメント科学研究室 筑波大学 エンパワメント科学研究室スケジュール

育児環境指標 Index of Child Care Environment の活用

1.育児環境指標 (Index of Child Care Environment (ICCE)) とは

子どもと環境とのかかわりの質的および量的側面を測定する指標です。
健やかな子育ちに影響する子どもと環境との直接的なかかわりの質と頻度、子どものために準備されている環境などを測定します。
現在100カ国以上で活用されている育児環境評価HOME(Home Observation for Measurement of the Environment、文献14)の枠組みをもとに項目と領域を設定し、日本での家庭訪問調査によるHOMEとの関連性、将来の発達や気になる行動等との予測妥当性を検証した質問紙です。

2.育児環境指標の特徴

  1. 日常生活の延長線上で、回答者の負担が少なく容易に情報把握ができます。5分程度で実施でき、頻度など回答しやすい項目を採用しています。
  2. 対象は0~6歳児の養育者等で、4つの領域別にかかわりの特徴を評価できます。
  3. 信頼性と妥当性が検証されています。

3.育児環境指標の領域(4領域13項目)

  • (1)「人的かかわり」領域
    • ①子どもと一緒に遊ぶ機会
    • ②子どもに本を読み聞かせる機会
    • ③子どもと一緒に歌を歌う機会
    • ④配偶者(または、それに代わる人)の育児協力の機会
    • ⑤家族で食事をする機会
  • (2)「制限や罰の回避」領域
    • ⑥子どもの失敗への対応
    • ⑦一週間のうちに子どもをたたく頻度
  • (3)「社会的かかわり」領域
    • ⑧子どもと一緒に買い物に行く機会
    • ⑨子どもを公園に連れて行く機会
    • ⑩子ども同伴の知人との交流の機会
  • (4)「社会的サポート」領域
    • ⑪育児支援者の有無
    • ⑫育児相談者の有無
    • ⑬配偶者(または、それに代わる人)と子どもの話しをする機会

4.育児環境指標の質問項目

ふだんの生活についてのお尋ね
※ふだんの生活のことについて、もっとも近い番号ひとつに○をつけてください。

1.お子さんと一緒に遊ぶ機会(子どもと向き合って過ごすこと)はどのくらいありますか。
1)めったにない 2)月に1~3回  3)週に1~2回  4)週に3~4回 5)ほぼ毎日 6)その他(        )
2.お子さんと一緒に買い物に行く機会はどのくらいありますか。
1)めったにない 2)月に1~3回 3)週に1~2回  4)週に3~4回 5)ほぼ毎日 6)その他(        )
3.お子さんに本を読み聴かせる機会はどのくらいありますか。
1)めったにない 2)月に1~3回  3)週に1~2回 4)週に3~4回 5)ほぼ毎日 6)その他(         )
4.あなたは童謡やお子さんの好きな歌を一緒に歌いますか。
1)めったにない 2)月に1~3回  3)週に1~2回 4)週に3~4回 5)ほぼ毎日 6)その他(         )
5.お子さんと公園など散歩に行く機会はどのくらいありますか。
1)めったにない 2)月に1~3回  3)週に1~2回  4)週に3~4回 5)ほぼ毎日 6)その他(         )
6.お子さんと同じくらいの年齢の子どもを持つ友人や親戚と、どの程度の頻度で訪問したりされたりしますか。
1)めったにない 2)月に1~3回 3)週に1~2回 4)週に3~4回 5)ほぼ毎日 6)その他(         )
7.お父さん(お母さん)は(または父親(母親)代わりとなる方)は、育児にどのくらいの頻度で協力してくれますか。
1)めったにない 2)月に1~3回  3)週に1~2回  4)週に3~4回 5)ほぼ毎日 6)その他(         )
8.お子さんは両親(または母親、父親の代わりとなる方)と一緒に食卓を囲んで食べるのは何回くらいですか。
1)めったにない 2)月に1~3回  3)週に1~2回  4)週に3~4回 5)ほぼ毎日 6)その他(         )
9.お子さんがわざと牛乳をこぼしたらどうしますか。あてはまるものひとつに○を付けてください。
1)子どもをたたく     2)口でしかる
3)なんらかの方法で悪いことをわからせる(内容;          )
4)別の方法でこぼさないように考える    5)その他(             )
10.先週は何回くらいお子さんをたたいたりしましたか。
1)たたかない  2)1~2回位  3)3~4回位 4)5~6回位  5)ほぼ毎日
6)その他(      )
11.夫婦(または母親、父親の代わりとなる方)で子どもの話をする時間はどの程度とれますか。
1)ほとんどとれない  2)月に1~3回  3)週に1~2回  4)週に3~4回
5)ほぼ毎日  6)その他(      )
12.あなた以外に、お子さんの面倒を見てくれる人がいますか。
1)いない
2)いる→それは誰ですか。下記のあてはまるすべての番号に○を付けてください。

1)配偶者(代わりの方含)2)祖父母 3)友人 4)親戚 5)隣人
6)園などの職員 7)ベビーシッター 8)その他(          )
13.子育てについて誰か相談できる人がいますか。
1)いない
2)いる→それは誰ですか。あてはまるすべての番号に○を付けてください。

1)配偶者(代わりの方含) 2)祖父母 3)友人 4)親戚 5)隣人
6)園などの職員 7)ベビーシッター  8)その他(        )

5.育児環境指標の分析方法

  • 利用者の仮説に適合したさまざまな方法で分析が可能です。
  • 項目別、領域別、全体を得点化できます。
  • 妥当性と信頼性の検証に関しては、下記の分析カテゴリーを適用しています。
  • 上記「3.育児環境指標の領域」の各項目について、①~⑤、⑧~⑬は「めったにない」「いない」、⑥は「たたく」、⑦は「1回以上」を0点とし、それ以外を1点とします。
  • 領域別得点と総得点は、加算により算出します。

6.育児環境指標の活用について

育児環境指標を活用される場合には、下記「7.参考文献」の文献(1)(2)(4)(8)(9)を引用いただきますようお願い申し上げます。

7.参考文献

  1. 根拠に基づく子育ち子育てエンパワメント、日本小児医事出版、2009
  2. 子育ち環境と子育て支援-よい長時間保育のみわけかた-、勁草書房、2004
  3. 少子化時代の育児環境評価-保健・医療・福祉の連携による実証研究、川島書店、1996
  4. 保育パワーアップ講座 活用編、日本小児医事出版、2008
  5. 保育パワーアップ講座 EvidenceBased Child Care、日本小児医事出版、2007
  6. Anme T et al, Validity and Reliability of the Index of Child Care Environment (ICCE, Public Health Frontier, 2(6, 2013
  7. Anme T, Child development and childcare in Japan, Journal of Early Childhood Research, 8(2, 193-210, 2010
  8. Anme T, Effectiveness of Japan’s extended/night child care: A five-year follow up, Procedia Social and Behavioural Sciences, 2, 5573-5580, 2010
  9. Tokie Anme, Implications of Japan’s center-based night care: A one-year follow-up. Early Childhood Education Journal. 29. 2007
  10. Tokie Anme, Implications for the development of children placed in 11+hours of center-based care, Child: care, health and development, 30(4, 345-352, 2004
  11. Tokie Anme, Center-Based Evening Child Care: Implications for Young Children’s Development, Early Childhood Education Journal , 30(3, 137-143, 2003
  12. 安梅勅江他、子どもの発達への子育ち環境の影響に関する5年間追跡研究、こども環境学研究、1(1、159-164、2005
  13. 安梅勅江他、幼児期における子育ち環境が学童期の子どもの心身の健康に及ぼす影響、厚生の指標、54(6、20-25、2007
  14. 安梅勅江他、学童期の心身の健康に関連する幼児期の環境要因に関する研究-家庭環境と保育時間に焦点を当てて-、日本保健福祉学会誌、13(1号、15-24、2006
  15. 安梅勅江他、子どもの発達の全国調査に基づく園児用チェックリストの開発に関する研究、厚生の指標、54(1、36-41、2007
  16. 安梅勅江他、母親のストレスの子育ち環境と子どもの発達との複合的な関連性-保育園を利用する1歳児の全国調査結果から-、こども環境学研究、第2巻1号、159-164、2007
  17. 安梅勅江他、18か月児の育児環境評価の関連要因に関する研究、日本公衆衛生学会誌、44、346-352、 1998.
  18. 安梅勅江他、質問紙による家庭養育環境スクリーニングの研究 ?HOMEによるHSQ妥当性の検討?小児保健研究、45、556-560、1986
  19. Caldwell, B.M. & Bradley, R.H. Home Observation for Measurement of the Environment. Little Rock, AR; University of Arkansas at Little Rock、2001