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研究代表者あいさつ

糖尿病患者の皆様、そのご家族、医療従事者の皆様、「2型糖尿病におけるIoT活用の行動変容を介する血糖改善効果の検証:多施設共同無作為化非盲検群間比較試験(PRISM-J)」の ホームページにお越しいただき、ありがとうございます。国立国際医療研究センター糖尿病研究センター長の植木浩二郎と申します。研究者を代表してご挨拶申し上げます。
我が国の糖尿病患者さんと糖尿病予備群の方の合計は、予備群の方の数が徐々に減少し糖尿病患者さんが徐々に増加して2,000万人、全人口に対する割合は男性16.3%、女性9.3%となっています (平成28年国民健康・栄養調査)。
この数値からは、近年の健康意識の高まりや特定健診・保健指導の普及などによって予備群が減少し、一方高齢化や健診・人間ドックなどの受診率の向上で診断される機会が増えたこともあって、糖尿病患者数が増加していることが窺われます。
予備群の減少は大変喜ばしいことですが、一旦発症した糖尿病については、それを完全に治癒させることは難しく、網膜症や腎症などの細小血管症、心筋梗塞や脳梗塞などの大血管症等の合併症、 悪性腫瘍、認知症の発症リスクの増加などにつながる糖尿病の重症化を予防することが、個々の患者さんの予後や生活の質(Quality Of Life;QOL)の改善に大変重要です。 また、我が国全体にとっても、医療コストの低減の観点からも非常に重要です。
生活習慣病の改善には、いかに効果的に健康的な食習慣や運動習慣などを実践できるように自分自身の行動を変化させ(行動変容)、それを続けていけるか(自己管理)が最も重要で、 医療従事者はそれを適切に手助けするよう努めています。しかしながら、個々の患者さんの日々のライフスタイルに最適化されたアドバイスは、患者さんの日常生活の情報を十分に窺うことが難しい現在の診療環境においては容易ではありません。
近年、日々の食習慣や運動習慣などの情報を収集する手段として、IoT(モノのインターネット)が注目されています。今回我々は、ウェアラブル端末を用いて、日々の生活習慣情報(活動量、体重、 血圧等)を収集し、それをもとに、スマートフォンのアプリケーションで患者さんに応援や注意喚起のメッセージを送り、糖尿病患者さんの行動変容や自己管理力の向上を介した血糖コントロールの 改善を検証する研究を計画しました。この研究では、参加いただく患者さんを、IoTを活用する群(介入群)と通常の診療を受けていただく群(対照群)に分けて、糖尿病の血糖コントロールの指標であるヘモグロビンA1c(HbA1c)の改善効果を検証します。いずれの群に割り振られた患者さんにも、活動量計、体重体組成計、血圧計を貸与し、日々の健康管理に活用いただきます。また、約3か月ごとの定期的な医療機関受診を行い、生活習慣の改善による糖尿病を含めた生活習慣病の改善効果をかかりつけ医の先生方にご確認いただきます。
本研究は国立研究開発法人日本医療研究開発機構の平成29年度「IoT等活用生活習慣病行動変容研究事業」における「研究開発課題名:IoT活用による健康情報等の取得及び介入を通じた生活習慣病の行動変容に関するエビデンス及びビジネスモデルの創出に関する研究」に採択され、日本医療研究開発機構研究費の助成を受けて実施します。日本糖尿病学会の全面的な支援のもと、2,000名の糖尿病患者さんを対象とした大規模な臨床研究です。また、日本人間ドック学会および日本人間ドック健診協会の協力も得て、多くの医療施設が参画しています。本研究に参加するにはいくつかの 基準がありますので、参加を希望される方は、ご自身に当てはまるか、かかりつけ医、健診機関、職場の健康管理センターや、PRISM-J事務局にご相談ください。 この研究の成果によって、糖尿病における生活習慣改善と自己管理の向上のための有効なアドバイス法が確立され、糖尿病患者さんの血糖コントロールの改善や合併症予防につながると考えられます。 さらに、このようにIoTを用いて自己管理の向上が図られれば、糖尿病治療に要する人的・経済的な負担が軽減されるため、患者さんがどこに住んでいても、自分に合ったテーラーメイド医療や保健指導を受けることができる将来の環境作りの端緒となることが大いに期待されます。
すでにご参加いただいている患者さんには、研究者一同心より御礼申し上げ、これからご参加いただく皆様には、本研究の意義をご理解いただき、ご協力とご支援のほど、何卒よろしくお願い申し上げます。我々研究関係者も一丸となって本研究の成功へ邁進する所存です。お気づきの点などございましたら、いつでもご連絡ください。
では、これからの明るい糖尿病の未来にPRISMが虹の架け橋を紡ぎだせる様、皆様どうぞよろしくお願い致します。

PRISM-J 研究代表
植木 浩二郎

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