日々のことなど

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2019年4月29日(月)

怒涛の一ヵ月だった。とにかく大過なくすごしただけでもよしとしよう。

「少しずつだよ」トム君は恥ずかしそうでもあった。「すぐに関係はよくならないけれど、少しずつ、鼠ともいい関係になれればいいと思っている。」
「それだけでもずいぶん違うだろうね」私はそれを、気休め以上のつもりで言った。お互いに意識を変えないでいれば、猫と鼠の関係は平行線であるだろうが、ほんのわずかでも相手に寄り添おうと向きを変えれば、二つの線はいずれ、どこかで交錯するかもしれない。可能性は残る。
――伊坂幸太郎『夜の国のクーパー』, 東京創元社, 2012年, 400頁.