研究の概要
J-HOPE3研究の概要
【目的】 1)遺族から見たケアの構造・プロセス・アウトカムの評価、施設間差、および、施設間差を生じる施設要因を明らかにする。 2)遺族の抑うつ・複雑性悲嘆・不眠・飲酒の実態とその関連要因を明らかにする。 3)研究参加施設に結果をフィードバックすることにより施設の質保証・質改善の資料を提供する。 4)付帯研究を実施し、わが国の緩和ケアが直面している臨床的、学術的課題に対し科学的な調査を行う。
【対象】 対象施設は、2013年7月1日現在における日本ホスピス緩和ケア協会会員である、一般病院・緩和ケアチーム(正会員91施設)、ホスピス・緩和ケア病棟(正会員254施設)、および在宅でのホスピス・緩和ケアを提供する診療所等(正会員51施設)のうち本研究への参加に同意した施設とする。各施設にて2014年1月31日以前の死亡した患者のうち、2014年1月31日から選択基準を満たす1施設80名を連続に後向きに同定し対象とする。ただし、2011年10月31日以前の死亡者は含めない。期間内の適格基準を満たす死亡者数が80名以下の場合は、全例を対象とする。
【方法】 自記式質問紙による郵送調査・施設背景調査
【調査内容】 1)ケアの構造・プロセス・アウトカムの評価 2)遺族の抑うつ、複雑性悲嘆、不眠、飲酒の実態とその関連要因 3)付帯研究
【予定対象者数】 一般病院2,000人、ホスピス・緩和ケア病棟13,100人、診療所等1,050人(調査票発送数)
【調査期間】 2014年5月15日~2014年7月31日 (調査票の送付・回収期間)
【主たる解析】 遺族から見たケアの構造・プロセス・アウトカムの評価尺度の施設ごとの平均値を算出し、全体および各施設における分布を算出する。それらを目的変数、遺族背景・施設背景を説明変数とした単変量解析、および、多変量解析を行い、施設間差要因を明らかにする。 遺族アウトカムとして、複雑性悲嘆、抑うつ、不眠の有病率および飲酒量の変化を明らかにするとともに、これらを目的変数、先行研究より選定した遺族背景因子を説明変数とし、重回帰分析、または、ロジスティック回帰分析により、関連要因の探索を行う。
【予想される結果】
- 遺族から見たケアの構造・プロセス・アウトカムの全国平均値が算出され、わが国の一般病院、ホスピス・緩和ケア病棟、診療所等におけるホスピス・緩和ケアの実態が明らかになる。
- 研究参加施設が施設得点を全国平均値と共に知ることで、各施設の改善点を得るための基礎データが得られ、一般病院、ホスピス・緩和ケア病棟、診療所等におけるホスピス・緩和ケアの質の向上につながる。
- ホスピス・緩和ケアをうけた遺族の複雑性悲嘆・抑うつ・不眠の有病率および飲酒習慣の変化と、その関連要因を明らかにすることで、よりよい遺族ケアを検討する基礎データを得る。
- 付帯研究により、我が国のホスピス・緩和ケアが直面している臨床的・学術的課題とその解決策が明らかになる。
【倫理的配慮】 本研究は質問紙によるアンケート調査であり、明らかな遺族への不利益は生じないと考えられる。しかし、受けたケアを評価することに対する精神的葛藤や、つらい体験に関する心理的苦痛を生じることが予測される。したがって、(1)調査票は各施設から直接送付していること、(2)調査は各施設から独立して事務局で行うこと、(3)調査への参加は自由意志に基づくこと、(4)調査に参加しない場合にも診療上の不利益はないこと、(5)調査結果は個人が特定される形では公表しないことを明示した趣意書を同封し、対象者に対する十分な説明を行い、返送をもって研究参加の同意を得たとみなす。研究計画を研究参加施設の倫理委員会へ提出し、承認を得る。倫理委員会の設置のない研究参加施設については、倫理審査代理委託をうけ、事務局で一括して申請する。なお、各施設のデータは研究事務局で厳密に管理され、各施設の得点が明らかにされることはない。
【研究助成】 日本ホスピス・緩和ケア研究振興財団
共通項目(全施設を対象とした付帯研究)
略 称 | 課題名 | 研究担当者 | 研究分担者 |
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付帯研究1 | 療養場所がquality of lifeと遺族の健康に及ぼす影響に関する研究 | 羽多野(京都府立) | 前田(大阪大)宮下(東北大)森田(聖隷三方原) |
付帯研究2 | 終末期の話し合い(End-of-life discussion)の実態とquality of life・遺族の 健康に及ぼす影響に関する研究 | 山口(手稲) | 前田(大阪大)木澤(神戸大)森(聖隷浜松)森田(聖隷三方原) |
付帯研究3 | 療養場所を決定するときに重要視した要因と希望する療養場所と実際の療養 場所の一致に関する研究 | 首藤(大分) | 田實(自治)森田(聖隷三方原) |
付帯研究4 | 若年がん患者の特徴に関する研究 | 森(聖隷浜松) | 森田(聖隷三方原) |
付帯研究5 | 超高齢がん者の特徴に関する研究 | 坂下(神戸大) | 森田(聖隷三方原) |
付帯研究6 | 遺族調査の研究方法に関する研究 | 宮下(東北大) | |
付帯研究7 | 遺族からみた研究プリオリティに関する研究 | 坂下(神戸大) | 森田(聖隷三方原) |
付帯研究8 | 自宅死亡率の高・低い地域での遺族から見た療養場所に関する達成の地域差に 関する研究 | 白土(聖隷三方原) | 森田(聖隷三方原) |
付帯研究9 | 宗教・死生観が遺族の健康に与える影響に関する研究 | 坂口(関西学院) | 森田(聖隷三方原) |
緩和ケア病棟を対象とした付帯研究
略 称 | 課題名 | 研究担当者 | 研究分担者 |
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付帯研究10 | 終末期がん患者の療養場所の意思決定プロセスにおける家族の負担感に関 する研究 | 荒尾(大阪大) | 岸野(シムラ)山本(大阪大)青木(大阪大) |
付帯研究11 | 終末期がん患者の家族が患者の死を前提として行いたいことに対する援助 に関する研究 | 荒尾(大阪大) | 山下(大阪大)青木(大阪大)川島(大阪大) |
付帯研究12 | 家族の臨終に間に合うことの意義や負担に関する研究 | 大谷(九がん) | 森田(聖隷三方原)川見(福岡大)シャルマ(福岡大)白石(九がん)安部(九がん)大島(九がん) |
付帯研究13 | 終末期がん患者へのリハビリテーションに関する家族の体験に関する研究 | 関根(亀田) | 前田(大阪大)森田(聖隷三方原) |
付帯研究14 | ホスピス・緩和ケア病棟の遺族ケアに関する研究 | 北得(関西医大) | 野田(GCI)石井(大阪科学大)森田(聖隷三方原)宮下(東北大) |
付帯研究15 | 心肺蘇生に関する望ましい意思決定のあり方に関する研究 | 木澤(神戸大) | 山口(手稲)坂下(神戸大)森田(聖隷三方原) |
付帯研究16 | 患者・家族の感じる見捨てられ感に関する研究 | 小田切(聖隷三方原) | 森田(聖隷三方原) |
付帯研究17 | ホスピス・緩和ケア病棟から自宅へ一時退院することについての家族の体 験と評価に関する研究 | 関本(六甲) | 田村(淀キリ)山本(多治見)森田(聖隷三方原) |
付帯研究18 | 未成年の子どもを持つがん患者の遺族の体験とサポートニーズに関する 研究 | 廣岡(医科歯科大) | 三浦(国がん東)大谷(九がん)森田(聖隷三方原) |
付帯研究19 | 終末期がん患者に見られる「不十分な身体症状」に関する研究 | 岡本(芦屋) | 川端(東海)森田(聖隷三方原) |
付帯研究20 | 終末期がん患者に見られる「故人やあの世をみた体験」に関する研究 | 森田(聖隷三方原) | 相澤(岡部)小川(国がん東)諸岡(島根大)白土(聖隷三方原) |
付帯研究21 | 終末期がん患者の食欲低下・体重減少に対する家族の体験とニーズに関 する研究 | 天野(さいと) | 濱(大阪成人)岡島(自治大)酒見(大阪成人)森田(聖隷三方原) |
付帯研究22 | 終末期がん患者の家族の心に深く残る体験に関する研究 | 小野(早稲田大) | 木元(高槻)安部(早稲田大) |
付帯研究23 | 終末期がん患者と死を前提とした話や行動をしたか否かについての遺族の 後悔に関する研究 | 森(聖隷浜松) | 馬場(さいと)塩﨑(近畿大)吉田(がんセンター)森田(聖隷三方原) |
一般病棟を対象とした付帯研究
略 称 | 課題名 | 研究担当者 | 研究分担者 |
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付帯研究24 | 治癒不能ながん患者の家族が経験する意思決定における困難感に関する研究 | 清水(東北大) | 柳原(関電)宮下(東北大)中保(東北大)森田(聖隷三方原) |
在宅(診療所)を対象とした付帯研究
略 称 | 課題名 | 研究担当者 | 研究分担者 |
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付帯研究25 | 在宅がん患者の精神症状と対応の実態に関する研究 | 小早川(広島) | 金野(日大)小川(国がん東) |
付帯研究26 | 在宅患者のquality of lifeに影響を与える要因を明らかにする研究 | 濱野(やまと) | 福井(日赤看護大)森田(聖隷三方原) |