研究の概要
J-HOPE4研究の概要
【目的】 1)遺族から見た患者が受けた緩和ケアの質の評価および遺族の悲嘆や抑うつの実態について明らかにする。 2)個々の研究参加施設に緩和ケアの質の評価および遺族の悲嘆や抑うつの結果をフィードバックすることにより施設の質保証・質改善の情報を提供する。 3)付帯研究を実施し、我が国の緩和ケアが直面している臨床的学術的課題に対して科学的な調査を行う。 4)East-Asian collaborative Study to Elucidate the Dying process(EASED)研究との連結により、緩和ケア病棟で行われている医療の実態と、それらの遺族による終末期医療の質の評価の関連性を明らかにする。
【対象】 対象施設は、2017年7月現在における日本ホスピス緩和ケア協会会員である、一般病院・緩和ケアチーム、ホスピス・緩和ケア病棟、および在宅でホスピス・緩和ケアを提供する診療所等(この表現は協会ホームページに沿う)、本研究への参加に同意した施設とする。 各施設にて2018年1月31日以前に死亡した患者のうち、選択基準を満たす死亡者数が80名を連続的に後ろ向きに同定し対象とする。ただし、2014年1月31日以前の死亡者は含めない。期間内の適格基準を満たす死亡者数が80名以下の場合は、全例を対象とする。 EASED付帯研究対象施設においては、EASED研究の対象者のうち、期間内に対象施設において亡くなられた適格基準を満たす対象者については全例を対象とする。また、付帯研究51の対象者については、終末期がん患者の家族介護者の精神的健康とレジリエンスの関係に関する研究(医学部 2017-1-179)の対象者のうち、期間内に対象施設において亡くなられた適格基準を満たす対象者については全例を対象とする。期間内に亡くなられた適格基準を満たすEASED研究対象者もしくは付帯51の対象者が80名以下の場合は、80名に達するまで、2018年1月31日以前の死亡した患者のうち、選択基準を満たす1施設80名を連続に後向きに同定し対象とする。ただし、2014年1月31日以前の死亡者は含めない。期間内の適格基準を満たす死亡者数が80名以下の場合は、全例を対象とする。
【方法】 自記式質問紙による郵送調査・施設背景調査
【調査内容】 1)ケアの構造・プロセス・アウトカムの評価 2)遺族の抑うつ、複雑性悲嘆の実態とその関連要因 3)付帯研究
【予定対象者数】 緩和ケア病棟で12,000人、一般病院で1,600人、診療所等で1,600人(調査票発送数)
【調査期間】 2018年5月~2018年7月 (調査票の送付・回収期間)
【主たる解析】 遺族から見たケアの構造・プロセス・アウトカムの評価尺度の施設ごとの平均値を算出し、全体および各施設における分布を算出する。それらを目的変数、遺族背景・施設背景を説明変数とした単変量解析、および、多変量解析を行い、施設間差要因を明らかにする。なお、EASED研究対象施設では入院から死亡まで3日以内の患者遺族も対象となっているため、全体の質評価の分析からはそれらの対象を除外して分析することにした。 GDI、CES、全般満足度、OHQ-9、BGQの分布とそれに関連する要因に関して明らかにする。
【予想される結果】
- 遺族から見たケアの構造・プロセス・アウトカムの全国平均値が算出され、わが国の一般病院、ホスピス・緩和ケア病棟、診療所等におけるホスピス・緩和ケアの実態が明らかになる。
- 参加施設が施設得点を全国平均値と共に知ることで、各施設の改善点を得るための基礎データが得られ、一般病院、ホスピス・緩和ケア病棟、診療所等におけるホスピス・緩和ケアの質の向上につながる。
- 付帯研究により、我が国のホスピス・緩和ケアが直面している臨床的・学術的問題とその解決策が明らかになる。
- EASED研究との連結により、緩和ケア病棟で行われている医療の実態と、それらの遺族による終末期医療の質の評価の関連性が明らかになる。
【倫理的配慮】 本研究は調査票によるアンケート調査であるので、明らかな遺族への不利益は生じないと考えられる。 調査票によるアンケート調査は2007年および2009年に行われた「遺族によるホスピス・緩和ケアの質評価に関する研究」で本研究と同様の対象者に対して使用したものと同じページ数であり、過去2回の研究では心理的な苦痛や調査による負担などの訴えは調査施設に対しても、事務局に対しても殆どなかったため、本調査でも特に大きな問題は生じないと予想される。 受けたケアを評価することに対する精神的葛藤や、つらい体験に関する心理的苦痛を生じることが予測される。そのため、調査は、(1)調査票は各施設から直接送付していること(2)調査は各施設から独立して事務局で行うこと(4)調査への参加は自由意志に基づくこと、(4)調査に参加しない場合にも診療上の不利益はないこと(5)調査結果は個人が特定される形では公表しないことを明示した趣意書を同封し、対象者に対する十分な説明を行い、返送をもって研究参加の同意を得たとみなす。 以上より、対象となる遺族への不利益は生じないと想定されるため、今研究に参加することによる補償金は発生しない。
【研究助成】 日本ホスピス・緩和ケア研究振興財団
共通項目(全施設を対象とした付帯研究)
略 称 | 課題名 | 研究担当者 |
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付帯研究1 | 社会経済的地位ががん患者の治療選択・望ましい死の達成および遺族の精神的健康 に与える影響 | 青山(東北大) |
付帯研究2 | 原発不明がんの患者および家族の体験に関する研究 | 石田(名古屋市立大) |
付帯研究3 | がん患者の介護者の介護中の離職および死亡 | 宮地(京都大) |
付帯研究4 | 看取りの経験が療養場所・死亡場所の希望に及ぼす影響に関する研究 | 首藤(わたクリニック) |
付帯研究5 | がん患者の遺族の考える望ましい死の規定因子の探索 | 升川(東北大) |
緩和ケア病棟を対象とした付帯研究
略 称 | 課題名 | 研究担当者 |
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付帯研究6 | ホスピス・緩和病棟への紹介・入院時期に関する遺族の認識 | 笹原(筑波大) |
付帯研究7 | 医療者-家族間の死亡直前期の病状認識の相違とその影響:医療者の望ましい態度 | 前田(ガラシア) |
付帯研究8 | 終末期がん患者の呼吸困難に対する望ましい非薬物的ケア | 山本(聖隷三方原) |
付帯研究9 | EOL discussionのベースとなる患者・家族間のコミュニケーションの導入時期と 内容が患者・家族間の十分に分かり合えた感覚と医療者とのEOL discussionの実 施に与える影響 | 辰巳(大阪大) |
付帯研究10 | 遺族の考える症状緩和の治療目標(Personalized Symptom Goal)に関する調査 | 三浦(国がん) |
付帯研究11 | 専門的な緩和ケアの適切な受診・相談時期に関する、遺族の希望についての研究 | 田上(東北大) |
付帯研究12 | 家族の判断によるケミカルコーピングの有無とご家族の経験や認識、ニードに関 する研究 | 馬場(吹田徳洲会) |
付帯研究13 | がん患者の遺族のACPが他者との関係性や死生観に与える影響 | 宮地(京都大) |
付帯研究14 | 意思疎通のとりづらい状態のがん患者と家族の望ましいコミュニケーションに関 する研究 | 長谷川(東北大) |
付帯研究15 | 積極的抗がん治療の中止に際する医師からの説明に関する行動経済学的研究 | 吉田(東北大) |
付帯研究16 | 終末期がん患者の呼吸困難に対する薬物治療において遺族が最も重要と感じるアウ トカムに関する研究 | 森(聖隷三方原) |
付帯研究17 | 死別が遺族に与える肯定的影響について | 嶋田(京都大) |
付帯研究18 | 死亡前24時間の心電図モニター使用の有無がご遺族の看取りに対する心理に与える 影響に関する調査 | 佐藤(伊勢総合) |
付帯研究19 | 複雑性悲嘆の診断および医療経済評価 | 伊藤(精神・神経) |
付帯研究20 | 遺族からみたホスピス・緩和ケア病棟による望ましい遺族ケアの提供に関する研究 | 北得(関西医療大) |
付帯研究21 | 認知機能障害を有する終末期がん患者の家族の体験に関する研究 | 高尾(JCHO大阪) |
付帯研究22 | 終末期がん患者に対するリハビリテーションの実施がquality of lifeに与える影響 と、その望ましい実施方法 | 長谷川(名古屋市立大) |
付帯研究23 | 進行がん患者が食べられなくなったときの経静脈的栄養水分補給に関する家族の 認識とニード、そして実際の経静脈的栄養水分補給が家族の認識とニードに与え る影響:遺族アンケート調査 | 天野(大阪市立総合) |
付帯研究24 | 遺族ケアサービス、グリーフワークの実態、遺族の家族機能と悲嘆、抑うつとの 関連 | 渡邉(千葉大) |
付帯研究25 | 死別後の家族機能が遺族の抑うつ、悲嘆に与える影響 | 宮下(東北大) |
付帯研究26 | 補完代替医療の使用と遺族の抑うつや悲嘆との関連を探索する研究 | 鈴木(都立駒込) |
付帯研究27 | 国際的な遺族調査質問紙VOICES-SF日本語版の妥当性の検討 | 宮下(東北大) |
緩和ケア病棟、一般病院、診療所等のそれぞれ一部を対象とした付帯研究
略 称 | 課題名 | 研究担当者 |
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付帯研究28 | 専門的緩和ケアサービスを利用した患者の家族内葛藤に関する研究 | 浜野(筑波大) |
付帯研究29 | 死別後悲嘆が及ぼす機能障害と労働損益に関する研究 | 藤澤(慶応大) |
付帯研究30 | 終末期がん患者を介護する家族による介護休暇および介護休業制度の利用状況とその 利用を阻害する因子(バリア)に関する調査 | 関根(亀田総合) |
付帯研究31 | 死別後に経験する遺族の社会的苦痛(二次的喪失に伴う苦痛)とソーシャルキャピタル の関連 | 清水(東北大) |
緩和ケア病棟と一般病院を対象とした付帯研究
略 称 | 課題名 | 研究担当者 |
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付帯研究32 | 日本のがん終末期患者の「湯船につかる入浴」の意義 | 林(東北大) |
付帯研究33 | 終末期がん患者の家族のスピリチュアルペインについて | 田村(京都大) |
緩和ケア病棟と診療所等を対象とした付帯研究
略 称 | 課題名 | 研究担当者 |
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付帯研究34 | 在宅療養への移行にも関わらず在宅看取りに至らなかった症例の要因に関する研究 | 西本(北見赤十字) |
診療所等を対象とした付帯研究
略 称 | 課題名 | 研究担当者 |
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付帯研究35 | 在宅ホスピス・緩和ケアでの訪問看護ケアニーズとrole strainに関する研究 | 大槻(関西学院大) |
EASED連結の付帯研究
略 称 | 課題名 | 研究担当者 |
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付帯研究36 | 家族の判断によるケミカルコーピングの有無とご家族の経験や認識、ニードに関す る研究 | 馬場(吹田徳洲会) |
付帯研究37 | 進行がん患者が食べられなくなったときの経静脈的栄養水分補給に関する家族の 認識とニード、そして実際の経静脈的栄養水分補給が家族の認識とニードに与え る影響:遺族アンケート調査 | 天野(大阪市立総合) |
付帯研究38 | 患者の症状及び行われた医療行為・説明に関する遺族の想起の正確さに関する研究 | 浜野(筑波大) |
付帯研究39 | 持続的な深い鎮静は患者-家族間のコミュニケーションを減らすか | 横道(聖隷三方原) |
付帯研究40 | ホスピス緩和ケア病棟において「予期せぬ急変による死亡」を経験した遺族の精神 心理的予後 | 伊藤(京都大) |
付帯研究41 | 遺族が認識する死前喘鳴と死前喘鳴に対する吸引処置に関連する遺族の体験に関す る調査 | 山口(神戸大) |
付帯研究42 | 遺族の終末期せん妄の治療とケアに関する評価と遺族の抑うつ・悲嘆・苦痛の関連について検討する研究 | 内田(名古屋市立大) |
付帯研究43 | Good Death Scale日本語版の妥当性検証 | 前田(ガラシア) |
付帯研究44 | 緩和ケア病棟における望ましい死亡確認とは? | 浜野(筑波大) |
付帯研究45 | 終末期がん患者の肺炎治療に対する遺族の考えを明らかにする質問紙研究 | 小田切(小牧市民) |
付帯研究46 | 家族内葛藤が生じやすい症状・医療行為とは? | 浜野(筑波大) |
付帯研究47 | 終末期がん患者とのDo not attempt resuscitation(DNAR)に関する議論が遺族の 心理的負担・考えに及ぼす影響についての研究 | 松田(聖路加) |
付帯研究48 | 緩和ケア病棟で終末期がん患者にみられる「故人やあの世をみた体験」などの終末 期体験に関する研究 | 鈴木(都立駒込) |
付帯研究49 | プロトコールに基づく苦痛緩和のための鎮静に対するがん患者の遺族の評価 | 今井(聖隷三方原) |
付帯研究50 | 悪性消化管閉塞患者のがん終末期のQOLと家族への影響:遺族アンケート調査 | 天野(大阪市立総合) |
付帯研究51 | 終末期がん患者の家族介護者のレジリエンスと死別後の精神的健康への影響に関す る研究 | 清水(東北大) |
付帯研究52 | がん患者のdying processにおけるイベントやケアと遺族の精神状態との関連につい ての研究 | 羽多野(近畿大) |