はじめに Introduction (原文) |
成人の一次救命処置 Adult BLS (原文) |
■二次救命処置の共通アルゴリズム Universal Algorithm (原文) |
早期除細動 Early Defibrillation (原文) |
小児の心肺蘇生法 Pediatric Resuscitation (原文) |
個々の状況での蘇生 Special Resuscitation (原文) |
Walter Kloeck, MD, Working Group Chair;
Richard O. Cummins, MD; ILCOR Cochair; Douglas Chamberlain, MD;
ILCOR Cochair; Leo Bossaert; Victor Callanan; Pierre Carli;
Jim Christenson, MD; Brian Connolly, MD; Joseph P. Ornato;
Arthur Sanders; Petter Steen
成人の心蘇生の手技のうち、正当な科学的根拠に基いて、
無条件に効果的であると言えるのは、以下の3つしかない。:
二次救命処置の共通アルゴリズム
(ILCOR Advisory Statements: The Universal Advanced Life Support Algorithm)
An Advisory Statement From the Advanced Life Support Working Group of the International Liaison Committee on
Resuscitation
明快な二次救命処置の手技
(Unequivocal Advanced Life Support Interventions)
共通アルゴリズムは、これらの手技をごく単純化して提示し、 救助者が従うべき特定の手順を推奨する。
一連の手技は、可能な限り信頼のおける科学的情報に基づくものとした。しかし、蘇生のいくつかの側面においては、説得力のあるヒトのデータが不足している。新しい情報が得られるようになるまで、ワーキンググループでは十分確立された手続きについては変更しなかった。しかし、科学的根拠というよりは教育的な見地から、いくつかの修正を提案した。
心停止の際の心電図波形は二つに大分して考えるとよい。すなわち、心室細動/脈なし心室頻拍(VF/VT)と非-VF/VTである。非-VF/VTには心静止と脈無し電気活性(pulseless electrical activity, PEA)の両者が入る。これらの2つ分類された波形に対する治療で異なるのは、VF/VTの患者の場合は除細動を行う必要があるという点だけである。その他の処置や手技、すなわち,基本的な心肺蘇生術,気管内挿管,エピネフリンの投与や心停止の原因排除に必要な処置に関しては、両者で本質的な違いはない。
一次救命処置 (BLS) は,二次救命処置 (ALS) が開始できる状況になるまで続けなけ
ればならない。心電図モニター下に起きた心停止の場合には,前胸部叩打は ILCOR では Class I推奨と考えている。(註:AHA では,前胸部叩打は,モニターをつけられている患者の心停止においては任意の処置であり,患者が心停止になったけれども除細動器がすぐには用意できていない場合に,それは Class IIb推奨とみなしている。) 心停止の時点を目撃されていない場合や,小児の場合には,叩打は Class IIb 推奨である。
VF/VT を認めたらすぐに除細動をすべきである。VF は脈を触れない,無秩序で乱れたリズムとして定義され、1分間に150拍以上の心室性波形を伴い、大きさや形が様々で、不規則にうねるような波形が特徴である。
除細動のエネルギーレベルはまず最初には,1回目のショックとして200 J (2
J/kg),2回目のショックとしては200〜300 J (2 〜 4 J/kg),そして3回目以降の
ショックとして 360 J (4 J/kg) で始めるべきである(体重当たりの量で表示したエネルギー量は小児に対する推奨量)。安全性や効力の観点から、同等かそれ以上の臨床的な効果が得られることが明かならば、除細動波の波形(alternative waveforms、訳注)やエネルギーレベルにこだわる必要はない。
"Low-Energy Biphasic Waveform Defibrillation: Evidence-Based Review Applied
to Emergency Cardiovascular Care Guidelines"
"Automatic External Defibrillators for Public Access Defibrillation:
Recommendations for Specifying and Reporting Arrhythmia Analysis Algorithm
Performance, Incorporating New Waveforms, and Enhancing Safety"
気管内挿管は Class I 推奨である。成人の場合、気管内挿管が不可能であれば、ラリンゲルマスクまたはコンピチューブが第一選択として認められる。
血管確保は Class I 推奨である。もし血管確保がなされていないならば,気管チューブから血管内投与量の少なくとも2倍量のエピネフリンを投与してもよい。
エピネフリンは少なくとも 1 mg (0.01 mg/kg) を3分毎に投与されるべきである。
共通アルゴリズムは、救助者が心停止の原因のうち回復可能なものを探索し、適切な治療を行えるように、救助者の判断を導くものである。共通アルゴリズムの推奨内容が前提としているのは、多くの人々、特に非-VF/VT患者においては、心停止をもたらすに至る原因を特定できる筈であるという理解である。これらの原因の多くは、対応する治療を行うことにより除去することができる。本アルゴリズムは、教育をする際の覚え書きとして役立つように、治療により除去しうる心停止の原因のうち、最も一般的なものを一覧表にまとめた。このように、本アルゴリズムでは、以前のリズムに基づく治療方法論から、より臨床的かつ病因論的な方法論へと移行した。
ある種の、特殊な蘇生においては、酸塩基緩衝剤や抗不整脈剤、アトロピン、ペー
シングなどの使用を考慮することもある。ILCORは、蘇生法の手順や技術に関し、心停止を引き起こした特異的な病因に基づく修正が必要となるような状況に関しても勧告を準備した。
蘇生法のアルゴリズムは、シンプルな目で見てわかる教材で、覚えやすくなっている。これは、心肺の緊急事態に対処するために必要最小限の知識を伝えるものである。ワーキンググループは、ほとんどの偶発事件や稀に起こりうることにも対処できる包括的なアルゴリズムを作成しようという誘惑を抑えてきた。しかし、包括的なアルゴリズムは、複雑で混乱をもたらすだけであろう。代わりに、私たちはトレーニングやチームワークを促進する単純化されたアプローチを維持しながら、蘇生法の枠組を提供しようと試みた(図)。
心停止に対する効果的な治療法の知識は,次のような点に要約されるだろう。
これらのステップをできるだけ素早くかつ効果的に憶え,実行することができれば患者の役に立つ事ができるであろう。
図.二次救命処置の共通アルゴリズム:このアルゴリズムの中で、矢印は各ステップが不成功であった場合の流れを示す。BLSは一次救命処置、VF/VTは心室細動/心室頻拍、CPRは心肺蘇生法、ETTは気管内チューブ、IVは静脈内投与を意味する。
*註:アメリカ心臓協会(AHA) では前胸部叩打は,患者の脈が触れず,しかも除細動器がすぐには準備できないときに,心電図モニターの監視下で,任意に行っても良い技術であり,Class IIb の行為と考えられている。目撃されていない心停止や,小児の場合,叩打はclass IIbとしている。
基本的な心肺蘇生法と前胸部叩打法
(Basic CPR and the Precordial Thump)除細動 (Defibrillation)
http://www.americanheart.org/Scientific/statements/1998/049801.html
http://www.americanheart.org/Scientific/statements/1997/039701.html気管内挿管 (Tracheal Intubation)
血管確保 (Intravascular Access)
エピネフリン (Epinephrine)
治療により除去しうる原因に対する治療 (Correction of Reversible Causes)
特殊な考慮事項 (Special Considerations)
共通アルゴリズムの使用 (Using the Universal Algorithm)
二次救命処置の究極の単純化
(The Ultimate Simplicity of ALS Resuscitation)