1. GFRとはなにか?

腎臓は血液を大量に(健常な若い人では、1分間に約100-150 mL程度)濾過します。 1分間に腎臓から濾過され る血液の量(体積)のことを糸球体濾過速度(GFR)と言います。 腎臓でこの血液を濾過している部分を糸球体と言います。だから、腎臓で1分間に濾過する速度のことを 腎臓濾過量といわずに「糸球体」濾過速度と言います。 英語では glomerular filtration rateというので、略してGFRと呼ばれます。 1つの糸球体は大体0.1ミリ~0.2ミリほどの小さいものですが、1つの腎臓に約100万個の糸球体が あります。

濾過された液、このことを 原尿と言いますが、 原尿の90%以上は、再吸収されて体あるいは血液に戻ります。 特に、水、電解質(塩化ナトリウムなど)、糖、アミノ酸など有用な成分はほとんど再吸収されます。しかし、 有害な物質は再吸収されずに原尿中に残ります。 再吸収されずにわずかに残った水や電解質とともに、有害な物質は、最終的に尿となって体の外に排泄されます。

腎臓に障害があると、しばしば糸球体の数が減ったり、糸球体の機能が衰えたりします。その結果、GFRも減少してきます。 GFRが50 mL/分 程度であれば体に直接不調を来すようなことはありませんが、さらに減少し、10 mL/minを切るように なると、尿が十分でなくなり、有害物質が体に溜まるようになり、放っておくと生命に危険を生じるようになります。 そうなると、血液透析などの腎代替療法を行うことが必要になってしまいます。 腎臓を守るためには、今の腎臓の機能を知っておくことが大切です。その最も大切な指標の一つがGFRです。

もっと詳しく知りたい方は、腎臓病学会のWebを御覧になることがお勧めです。

2. eGFRは、GFRと違うの?
本当にGFRを測定しようとすると、イヌリンという注射をして、2時間ほど尿を溜めて、尿中のイヌリンと血中のイヌリンを 測定した後、計算しなければなりません。これはなかなか手数がかかり、 毎回の医療機関受診のたびに行うわけにはいきません。これに代わる方法として、いくつかの方法が有りますが、もっとも 簡単な方法として、血液中の「クレアチニン」(Creと略記する事とします)の濃度を測定して、GFRを計算する方法があります。 血液中(正確には血清中の)CRE(血清クレアチニン)の値と年齢、性別から、以下の計算式に基づいて計算した値が 実際にイヌリンを注射して測定された「正確な、あるいは、本当の」GFRとよく一致することが知られています。血清クレアチニンの値を知るために採血はしないといけませんが、 あとは年齢と性別がわかれば、GFRを求められるので、非常に簡単です。なお、この方法で求めたGFRのことを、本当の GFRと区別するために、推算GFR(eGFR)と呼びます。実質的には、GFRもeGFRも同じことです。 大きな体の人は、腎臓も大きいので、実際のGFRも大きくなります。体の大きさに係わらず、腎機能を標準化して評価するため、実際のGFRは多くの場合、 その人が日本人の標準の体の大きさ(正確には体表面積)であったときに換算して計算されます。 従って、単位は mL/分/標準体表面積 です。mL/min/1.73m2と書くことが多いようです。 計算で求めるeGFRは、はじめから標準体表面積換算された値が示されます。 体の大きい人は実際のGFRも 大きい訳ですが、eGFRは、ある人の実際にイヌリンで測定したGFRの値ではなく、その人の腎臓が標準の体表面積をもった人の腎臓と同じ大きさ(膜面積)に拡大あるいは縮小されたときに、どれだけのGFRになるかを換算された値になるわけです。言い換えると、体表面積換算をすることによって、 そのひとのもともとの腎機能に比べて、現在の腎機能がどれぐらいかを知ることが簡単に出来ます。 まったく腎臓に障害のない人を集めてGFRを求めると、大きな人だと150 mL/min、小さな人だと80 mL/minぐらいとなるかもしれませんが、体表面積換算にすると、大体100ぐらいになります。本当は、もう少し大きいのですが、 わかりやすいので、若い人のeGFRを大体 100 mL/min/1.73m2 と考えて、eGFRは、若い頃の腎機能の何%ぐらいの機能(濾過量)が残っているかを表すと言い換えても、それほど間違いはないことになります。
3. eGFRを見える化する

GFR、すなわち、腎臓の濾過能力は、年齢とともに低下します。日本人のGFR の低下速度は平均0.36 mL/分/1.73 m2/年です。 しかし、この低下速度には個人によって大きな差があり、調べてみるまではその人の低下速度は分かりません。それでも、毎年のeGFRの低下速度は、(治療しなければ)余り変わらないことが知られています。すなわち、最初1-2年調べてみて、1年間にGFRが、3 mL/min/標準体表面積 ずつ低下する事が分かれば、この人は大体その後も同じスピードでGFRが低下していくことが多いようです。(例外も多々あります。)

eGFRが8程度になると、腎代替療法(多くは血液透析です)を行わなければならなくなります。今eGFRが50で、年間5 ずつeGFRが低下するひとはあと8-9 年すると、eGFR が5-10程度になりますので、何もしなければ、そのぐらいに透析を導入しなければならなくなる可能性が高いという予測が出来ます。120歳で透析になると言われて気にする人は余りいないでしょうけれども、50歳で見かけ上元気にしている 人が58歳で透析になると言われたら、びっくりして、さまざまな対策を取ることになるでしょう。 このソフトは、患者さんの生年月日、これまでの血液中のクレアチン値(CRE)から、eGFRの低下スピードと予測透析時期を 示すことで、腎機能の判定と透析の予防に役立てようというソフトです。

4. このソフトの特徴
eGFRが直線的に低下することは以前から知られています。また、eGFRをグラフ化するソフトは他にもたくさんあります。 電子カルテを使用している医療機関なら、そういう機能がついているかもしれません しかし、このソフトの特徴は、4つ有ります
  1. eGFRの低下が回帰直線で示され、透析時期の予測をわかりやすく示す。

    横軸にCREを採血した年月日、縦軸にこれまでのCREから計算されたeGFRをプロットします。また、それらの点を単純に折れ線グラフで結ぶのでは無く、回帰直線で示します。 そして、この回帰直線が、eGFR=8と交わるところ、すなわち、大体、腎代替療法(透析など)が必要になる時期が目で見てすぐに分かります。

  2. 見た目がキレイ

    非常に手前勝手な独りよがりですが、出力としてキレイなフォントを使ったPDFファイルが出力されます。 WMF(Windowsメタファイル)やSVGファイル、PNGファイルとして出力することもできます。もちろん直接印刷することもできます。

  3. 横軸の範囲が選べる

    2015年から、将来の2025年まで表示するようにグラフを出すことも出来ますし、2018年から2021年年末まで表示するように設定することも出来ます。

  4. 解析する範囲を指定する事が出来る

    2015年から2021年までのデータを表示した上で、その中の一部の区間のみを解析したいこともあります。人によっては、ある時点から突然eGFRの低下が著しくなることもあります。また、逆に治療の効果があって、ある時点から傾きが緩くなることもあります。このソフトでは、解析する(点をフィットして回帰直線を求める)期間を指定できるのが1つの特徴です。