研究概要

研究内容

各生体分子の機能が集積・統合されたシステムとして生体を理解し、次世代の創薬手法を確立する

研究課題

  1. 脂質・胆汁酸・尿酸などの生体内輸送を制御する分子メカニズムを解明し、それらの統合的理解に基づく生活習慣病治療法の確立を目指した研究
  2. 骨吸収・骨形成に関わるシグナル分子の動的制御メカニズムを解明し、それらの統合的理解に基づく骨代謝疾患治療法の確立を目指した研究
  3. 創薬段階で意図しなかった分子に対する作用を包括的に考慮した、分子標的抗がん剤の薬理・毒性発現メカニズムの定量的理解と、臨床応用および新規創薬手法の確立を目指した研究
  4. 大規模オミクス解析を用いて、薬物の副作用発現に関わる分子メカニズムを解明し、それらの定量的な理解に基づく副作用発現の予防・治療法の確立を目指した研究
  5. 薬物の体内動態に関連する分子機能の精密な定量化に基づく臨床薬理動態学研究

これまでの生命科学においては、生体を構成する各種要素を、分子レベルまで細分化して機能を明らかにしていけば、生命活動の全貌を理解することに繋がると考えられてきました。

しかしながら、ゲノム解読以降の膨大な情報が蓄積してくるにつれて、各生体要素の分子レベルでの機能と、生命活動全体において果たしている機能の関係は、単純な一対一対応では理解できないことが判ってきました。

例えれば、車の重要な部品と思われる、あるネジがあったとして、その部品のネジとしての機能だけを詳細に調べても、車全体におけるその部品の役割は明らかにならないことに似ています。

やはり、数多くの部品がどのように組み上がって全体を構成し、各部品がその中のどこに位置して機能し、全体としてどのように動作しているのか、を明らかにする必要があり、これがすなわち生命活動を「システムとして理解」することに対応していると言えます。

薬剤部では、より確実で効率的な次世代の創薬手法を実現するためには、生体をシステム的に理解することが必要不可欠であると考えています。

創薬標的になり得る複数の候補分子の中から、最も効果的な標的分子を同定する、あるいは創薬段階の初期において、発現しうる副作用を包括的に予測するなど、現在では未だ解決困難な問題点に関して、システム薬理学の手法を用いて解決することを目指して研究を展開しています。

なお薬剤部では以下のように臨床研究を行っております。

臨床研究

薬剤部では、東京大学医学部付属病院を受診される患者様を対象として、2017年現在以下の臨床研究を行っています。これらの研究は病院の倫理委員会の審査を受けた上で、人権および個人情報の保護を十分に尊重して実施されています。
医療の進歩に貢献するために、これらの研究の成果は公表されることがありますが、名前などの個人を特定できる情報はすべて非公開とされて保護されます。

  • 適正使用を目的とした、薬剤の有効性・副作用および相互作用に関する経時的調査研究
  • 個別化薬物療法を指向した薬物体内動態に関する臨床的研究
  • J-ADNIデータを用いた日本人におけるアルツハイマー病進行過程の解析
  • 肺移植患者におけるイトラコナゾールとタクロリムスの血中濃度の解析

キーワード

システム薬理学・創薬・バイオマーカー・生活習慣病・骨代謝疾患・分子標的薬・薬物誘発性肝障害・個別化医療