理事長挨拶|日本甲状腺病理学会

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日本甲状腺病理学会事務局

〒852-8523
長崎県長崎市坂本1丁目12-4
長崎大学原爆後障害医療研究所
腫瘍・診断病理学研究分野(原研病理)
TEL:095-819-7107
FAX:095-819-7108
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理事長挨拶

この度、2023(令和5)年度より日本甲状腺病理学会の理事長を拝命致しました。本学会は2013年度に創設され10周年を迎えたところですが、前身のサイロイドクラブ(1986年創設)から数えた歴史は37年目になります。この間、学会に関連する先人達は、日本の甲状腺病理学の水準の向上に尽力され、国際的な甲状腺腫瘍の病理分類や診断に寄与する多くの業績を発信してこられました。この伝統を引き継ぎ、学会の設立目的である、「わが国における甲状腺および関連領域の病理診断水準の向上、研究の振興を図り、その成果をもって医学の進歩に寄与する」ことに微力を尽くしたいと存じます。


甲状腺がんと放射線被ばくとの関係は原爆被爆者やチョルノービル(チェルノブイリ)原発事故後の疫学調査から明らかになりました。2011年東日本大震災時に発生した大津波による東京電力福島第一原子力発電所事故後には福島県の若年者に甲状腺がんの増加が危惧されました。現在でも福島県民健康調査が継続されていて、当時の若年者(18歳未満)を対象に健康見守りの一つとして甲状腺検診が実施されています。そこで見つかる甲状腺腫瘍と放射線被ばくとの間に科学的因果関係のないことが判りましたが、同時に福島県以外の地域の一般の人々を対象とした検診によっても若い時期から多くの甲状腺結節が見つかることも明らかになりました。検診で見つかる甲状腺結節の大部分は良性で、治療の必要はありません。大きい結節で“がん”が疑われる場合は、甲状腺結節に針を刺して一部の細胞を採って顕微鏡で観察し、“がん”かどうかを診断します(穿刺吸引細胞診)。その結果、例え“がん”と診断されて手術することになったとしても、約90%の予後は良好と考えられます。従って、約10%の予後の良好ではない“がん”を正しく診断し、適切に治療することが大切になってきます。そのためには各々の“がん”の個性を分子(遺伝子変異)のレベルで理解し、新たな治療戦略につなげる研究を推進する必要もあります。


本学会の構成会員は主に病理医であり、病理医は術前の細胞診や手術で得られた腫瘍の詳細な診断による病期分類(進行度)を行い、あるいは患者さんから得られた細胞や組織を対象とした臨床研究や基礎研究に携わっています。甲状腺腫瘍の正しい診断・治療を社会に提供するには病理学的な知識や理解が不可欠と考えていて、病理医のみならず臨床細胞検査技師、頭頸部外科医、内分泌内科医、放射線治療医との連携が大切です。学会活動として、毎年の学術集会による会員同士の情報交換のみならず、日本病理学会、日本臨床内分泌病理学会、日本臨床細胞学会、日本内分泌外科学会、日本甲状腺学会などの関連学会との学術交流を通じて、様々な事業を推進し、甲状腺病理学に関する情報発信をする役割を果たしていきたいと思います。関連の多様な医療人の新規入会を歓迎します。学会員の皆様におかれましては、学会事業の推進にご協力・ご支援を賜りますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。


令和5年7月吉日
日本甲状腺病理学会理事長
長崎大学原爆後障害医療研究所腫瘍・診断病理
中島正洋




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