挨拶(教授より)

プロフィール

岸本 泰司  (Yasushi Kishimoto)
博士(薬学) 薬剤師

E-mail:y-kishimoto(at)pharm.teikyo-u.ac.jp
※ (at) は @ に置き換えて下さい。

兵庫県出身
東京大学大学院薬学系研究科 修了
金沢大学医学部、NIH/NIMH、大阪大学医学部ポスドク、 徳島文理大学香川薬学部教授を経て2020年より帝京大学薬学部教授。

私からのメッセージとして、まず、ルールや秩序についてお話ししたいと思います。秩序はエントロピー増大法則に密接に絡む概念ですが、私が薬学部に進んだきっかけとなった清水博東大名誉教授の著作(「生命と場所」NTT出版 1992)によると、秩序には「硬い秩序」と、動的で自分自身で環境に応じて変化をしていく「柔らかな秩序」の二種類があると語られています。前者は、押しつけられたルールによる秩序であるがゆえ、各人の自由な意思によって容易に壊れてしまうのに対し、後者では人々の自由意志による選択で生まれる秩序のため、柔軟に変化することが述べられています。

後者の一例として、各時代の人々が好んで身につけるファッション、服装があります。つまり、誰から強制されるわけでもないにも関わらず、他人の服装に気にいるものがあれば、それと似たものを身につけようとする人間の傾向から生じる「協動性」から生じる秩序です。

この研究室では、ぜひ押しつけられたルールにただ従うのではなく、同級生や先輩後輩から良い影響を受け、また自分が自分自身にも良い影響を与える人間になってほしいと考えています。そこに大事なのはある種の素直さと自分を内省する力かもしれません。またこのことには帝京大学の理念である「自分流」が、もちろん自分勝手を意味するのではなく、自分のなすべきこと、興味あることを見つけだし、自分の力として行動し、最終的には自身が責任をとらなくてはいけないということ同様の意味があると考えます。またルールのためのルールではなく、何のためのルールかを深く考えられる人間になってほしいとも考えています。

 

物理化学研究室では、上記のエントロピーに代表されるまさに熱力学を中心とした物理関連科目を教育面で担当しています。学生のみなさんの一部には、物理に対して苦手意識があったり、そもそもなぜ薬学部で物理を習わなければいけないのかという疑問があったりするようです。薬剤師になり社会に出た後、物理が役にたたないとすれば、物理を大学で勉強するモチベーションがなくなるのももっともな話でかとは思います。この問いに対しては、いくつかの答えがあろうかと思うのですが、まず物質化学としての薬学の基盤である物理をわかっていないと、他の科目、例えば薬理学や生物学も分子レベルから理解できないということがあります。薬物が体の中ではたらいて効果を発揮することを理解するために、あるいは新薬開発の現場においても、熱力学をはじめとした物理化学的な技術や知識は実はとても重要です。このような教養や知識は、チーム医療の必要性がますます重要となるこれからの時代において、医師や看護師など他の医療従事者に対して、薬剤師が持つ大きな強みになるはずです。

研究面では、全身動物を使用した脳・行動心理学的実験を主に行なっています。特に記憶と学習の分子メカニズムに興味を持ち、多くの大学や機関で研究を行なってきました。自主性を尊重する気風の研究室だと思います。薬学部の研究室としては特殊なテーマを取り扱っているところがありますので、興味のある方は見学を歓迎します。学内外の研究機関や企業との共同研究・技術供与も随時受けつけています。

卒業生より

プロフィール

今野 裕史(助教)  (Hirofumi konno)
博士(薬学) 薬剤師

E-mail:konno-h(at)pharm.teikyo-u.ac.jp
※ (at) は @ に置き換えて下さい。

福島県出身
帝京大学大学院 薬学系研究科 修了後、2017年より帝京大学薬学部助教

私は、物理化学研究室に学部4年から今に至るまでお世話になっています。居心地のいい中で日々研究活動等を行わせていただいています。研究室の雰囲気は、配属される学生によって毎年違いますが、4、5、6年生が分け隔てなく仲良くやっている様子がよくが見受けられますので、とても風通しのよい研究室であると感じています。

研究面では、岸本教授のご挨拶にもあるように学生の自主性を尊重する研究室であり、「対応できる範囲で」という制約はありますが、やりたいことがあれば積極的にチャレンジさせてもらえます。また、当研究室の最大の特徴として、研究内容、論文リストの項目を見てもらえればなんとなくイメージできるのではないかと思いますが、神経科学系と化学系というの全く分野の異なる2つの領域を取り扱っている研究室となっているところです。そのため、学生の皆さんは研究室配属後に自分の好きな分野を選択し研究することができる、というメリットがあると思います。

学習面では、相談があれば常に受け付けており、国家試験合格に向けてできる限りのフォロー体制は整えています。

「物理化学」という名前の研究室ですので、敬遠する学生もいるかと思います。ですが、その分野が苦手でもほとんど問題なく、楽しくやっている研究室です。興味のある学生は是非、遠慮なく見学にきていただければと思います。