受診案内
摂食障害の入院診療
入院治療の導入
入院前に、外来主治医が心身の状態をもとに入院の必要性や期間の目安などを判断します。治療内容や病棟規則について書面を用いて説明し、同意いただいた方のみ入院していただきます。
他の様々な病気と異なり、摂食障害の患者さんは、どこかで「病気を治したくない」という気持ちもあったり、また病気を治したい気持ちはあっても、「これ以上太りたくない」「もっとやせたい」という気持ちの方が強くなったりして、そもそも治療への意欲が低下していることが少なくありません。これは決して患者さんご本人が悪いということではなく、この病気が引き起こす症状の1つなのですが、そのような治療への葛藤が強く、許可なく売店で食料を購入する、過活動になる(筋トレ、病棟を歩き続ける)など、病棟規則を守れない、あるいは守れないことが想定される方の場合や、自傷行為がある場合などは、内科病棟での治療は難しく、より安全を確保できる精神科病棟での治療が必要となります。
当院当科の入院は内科病棟となりますので、上記等の理由により内科病棟での治療が適切でないと考えられる場合は、入院を中断して退院または当科関連の精神科病院に入院・転院依頼を行うこともあります。
入院中の診療体制
入院の形態は、生命の危機を脱するまで厳格な管理が必要な救命のための緊急入院、目標体重を目指す体重回復目的入院、食行動是正目的入院などがあります。治療内容や期間は、病態や事情に応じて異なりますが、患者さんが主体的に入院目標を決めるようにサポートします。
入院治療の概要
入院中は、毎日の診療の他に主治医チームとの定期的な面談を実施し、家族の方にも参加していただくこともあります。また、経過や治療内容などについてカンファレンスや回診も実施し、看護師や栄養士、公認心理師とも密に連携しています。また、当院で外来通院している患者さんは原則として週に一回、外来主治医との面談を実施します。
摂食障害に用いられている入院治療で代表的なものに栄養療法や認知行動療法があります。栄養療法では、当院では摂食障害の患者さんが一番心配されている体重の変動について、入院の場合は呼気ガス法を用いて基礎代謝量を測定し、より正確に経過を予測します。 また、栄養投与法はできる限り中心静脈栄養などは使用せず、生理的な経口摂取(食事での摂取)を推奨しており、摂食障害に精通した管理栄養士と入院担当医の管理のもと、患者さんごとに最適なエネルギー量や栄養バランスが計算された食事を提供しております。
さらに、入院担当医や外来担当医と、摂取エネルギーと体重の関係についてなどの正しい情報を整理し、経過を見ていくことで患者さんが安心して積極的に栄養療法を受けることができるよう工夫しています。
入院治療中の心理療法は、認知行動療法の中でも、オペラント条件付けに基づいて行動を変容する行動的技法が用いられることが多いです。患者さん本人と共同で納得できるプログラムを作成します。段階を設け、ひとつひとつ達成していくことが達成感や自信にもつながり、前向きに治療を取り組めるようになります。その他、身体症状や心理状態に対しても毎週の各種検査や、毎日の診察で細やかに経過を見て、補助的なお薬や処置が必要な時は速やかに対応できることも入院の利点です。ひとりひとりの患者さんに最適な治療法やその組み合わせをその都度検討して提供しています。