教授挨拶

機能生物学専攻 生理学講座
 神経生理学教室
狩野 方伸 (かのう まさのぶ)

2007年9月1日に神経生理学教室の教授に就任いたしました。私と教室のメンバーは神経細胞と神経細胞が情報を伝達する仕組みに興味を持って研究しています。脳では神経細胞(ニューロン)が単独で機能することはむしろまれで、ニューロンどうしがシナプスによって連絡し、神経回路を形成することによってその機能を実現しています。シナプスでは、常に一定の強さで情報伝達がなされるのではなく、種々の要因により情報の伝わりやすさ(伝達効率)が変化します。例えば、生後発達期の脳においては、初期に過剰なシナプス結合が作られ、発達につれて不要なものは除去され、必要なものが強化されて機能的シナプス結合が作られると考えられています。成熟動物の脳でも、長期増強や長期抑圧などのシナプス可塑性が知られ、これらが記憶や学習の基礎過程と広く考えられています。現在の私たちの主要な研究テーマは以下の4つです。

  (1) 小脳神経回路の機能発達
  (2) シナプス伝達調節、特に内因性カンナビノイドによる逆行性シナプス伝達
  (3) 個体脳(in vivo)における単一ニューロンのシナプス結合と情報処理
  (4) 小脳のシナプス可塑性と運動学習

 私たちの研究の主眼は、「生きている」ニューロンの電気活動や細胞内イオン濃度変化などをリアルタイムで観察することです。急性脳スライス、中枢神経細胞の単離培養、スライス培養、個体脳(in vivo)などの様々な標本を対象にして、パッチクランプ法、カルシウムイメ−ジング法、2光子励起分子イメージング法、を駆使して研究しています。ニューロンとシナプスの働きに興味がある方、また、高次脳機能を分子・細胞レベルで研究してみたい方などの参加を期待しています。近い将来、我が国から多くの優秀な神経科学者が誕生すること、そして私たちの教室がそのお役に立てることを希望しています。

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