大会長挨拶

渡辺みか

平成27年度日本遠隔医療学会学術大会
大会長 渡辺 みか
東北大学病院 特命教授
がんセンターテレパソロジーセンター長

 このたび、第19回日本遠隔医療学会学術大会を、平成27年(2015年) 10月9日(金)、10日(土)の二日間にわたり、宮城県仙台市の仙台市戦災復興記念館におきまして開催させていただく事となりました。

 

 本大会では、「日本の遠隔医療の新たな発展を目指して-日本のすばらしい技術を見直そう-」を大会テーマとして掲げさせていただきました。日本は小さな島国ではありますが、山や湖、複雑な海岸線や多数の島々から構成され、地形の変化に富む国であるために、交通の便の悪い所も多数存在しています。さらに地震大国と言われるほど天災の多い国であり、まさに遠隔医療や地域医療、在宅医療の発展すべき素地のある場所といえます。しかし、日本の遠隔医療は欧米より遅れているとされ、他国に誇るべき日本人の優れた技術力と繊細な精神が活かしきれていないと感じています。各々が個別に実践されている事象には、非常に優れたものが数多く存在しています。本大会は皆様のご活躍を多数情報発信していただき、新たな知見の共有と活発な議論ができる場にしたいという思いを込めております。そして、日本国内での発展と飛躍を目指すとともに、日本の技術の粋を集め、誇りを持って海外にもどんどん発信していける環境を作っていきたいと願っています。

 

 特別講演にはArkansas大学産婦人科主任教授のCurtis L. Lowery Jr. 先生をお呼びしています。Lowery先生はハイリスク妊娠を支援する遠隔医療システムを米国でいち早く立ち上げるとともに、Arkansas大学遠隔医療センターの創設者としても有名です。東日本大震災に際しては、被災地のために遠隔医療が役立つことを力説し、発災直後より現在に至るまで東北大学を支援し続けています。また本学会初の試みとして、遠隔会議システムを用いた公開てんかん症例検討会を開催いたします。Lowery先生の支援がきっかけで始まった遠隔症例検討会は、包括的てんかん診療連携を構築する上での地理的問題を解決し、包括的てんかん医療を普及させるための理想的な教育モデルとして注目されています。

 

 今回3年半前の東日本大震災で甚大な被害を受けた東北宮城の地でこの日本遠隔医療学会学術大会を開催させていただくことは、非常に感慨深いものがあります。被災者にとって震災の傷は深く刻まれ未だ癒えることはなく、あの時の無念の思いは決して忘れてはいけません。今回の大会では、「災害医療のその後、さらなる展開と進歩に向けて」 と称し、急性期を過ぎた今、震災での多くの教訓を胸に、今後に活かすべく新たな災害医療の取り組みについても議論していきたいと思います。

 

 仙台は定禅寺通りや青葉通り、広瀬川など、緑多い街並みの美しい所です。また伊達政宗や青葉城、瑞鳳殿など歴史色も色濃く残っています。少し足をのばせば松尾芭蕉で有名な日本三景松島や、秋保、作並、鳴子といった名湯といわれる温泉もあります。牛タンや笹かまぼこ、ずんだといった仙台名物や海の幸など、美味しい食べ物も豊富です。三連休にかかる開催でもあり、是非この“杜の都”仙台を十分堪能していただきたいと思っております。

 

 今回の大会が、日本の遠隔医療のさらなる普及と発展に向けての大きなステップとなることを目指し、一同頑張って参ります。多数の皆様のご参加をお待ちしております。