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会長挨拶

Nakayama

大会長: 中山 富雄
(大阪府立成人病センター
がん予防情報センター)
第22回日本CT検診学会学術集会を平成27年2月13日~14日、大阪国際会議場(グランキューブ大阪)にて開催させていただくことになり、大変光栄に存じております。この機会を与えていただいた会員・学会関係の皆様に厚く御礼申し上げます。

東京から肺癌をなくす会が世界に先駆けて低線量CTを用いた肺癌検診を報告してから14年が経過しました。以後我が国でのCT検診の受診者は急増し、年間20万弱の方が主に任意型検診の形式で受診されていると推計されています。本学会会員の最大の関心事はCT検診に死亡率減少効果があるか否かでしたが、2011年には米国のランダム化比較試験であるNational Lung Screening Trialにより、低線量CT検診による肺がん死亡率減少が初めて報告されました。この報告はCT検診に従事するものにとっては、待ちに待った研究結果であり、CT検診の対策型検診への導入を急ぐべきという意見もございました。しかし昨年相次いで報告された二つのサブ解析から、①男性に対する効果は乏しい、②BAC typeの発見が乏しく死亡率減少効果も認められない、③BAC typeの過剰診断割合は実に7割前後で、BAC typeの顕在化時間は 約32年と推定される という報告がなされています(PD Pinsky, et al. Cancer 2013, EF Patz, et al. JAMA Internal Med 2013)。日本での多くの先行研究では、発見例の多くがすりガラス状陰影を伴ったBAC typeの腺癌であり、米国の研究結果をそのまま我が国に適応した場合、我が国のCT検診はほぼ無効であり、過剰診断を生み出すだけの試みとなってしまいます。日本のCT検診の従事者・研究者にとっては、到底受け入れられない結果であると考えます。米国の研究が報告されたから「CT検診の研究は終わり。あとは普及あるのみ!」ではありません。喫煙者のみならず非喫煙者肺癌も多い我が国独自の状況を鑑み、我が国発のエビデンスを創出していくことが必要です。「CT検診の研究を再スタート」するにあたり、今までのエビデンスをまとめ、方向性を定めることが必要だと考え、「確かめよう!CT検診の効果と限界」というサブタイトルにさせていただきました。

このような観点から、今回の学術集会では低線量CTによる肺がん検診の既存のエビデンスをまとめ、課題を整理するシンポジウムを計画しております。我が国では年間10万人以上のCT検診の受診者が存在します。この受診者の成績は十分に活用されている訳ではありませんし、研究意欲のある方々にとっても研究の手法や方向性がわからないという方も多く見られます。このような方々に対して、研究のアイデアをつかめるような場にしたいと思います。またCT検診では、肺の気腫性病変や心臓の冠動脈病変も発見が可能であり、それを元にした禁煙指導などの介入や治療がすでに行われています。さらには腹部を撮影することにより、内臓脂肪の計量やCT大腸コロノスコピーなどの試みもなされています。CT検診は肺癌だけでなく、複数の臓器の予防・疾患の早期発見のきっかけとなっています。これらの手法については、効果評価ばかりではなく撮影方法の標準化などの研究が必要です。本大会におきましては、これらの話題・課題について積極的議論を行っていただき、更なるCT検診の活用を図っていきたいと思います。

大阪での本大会の開催は3回目になりました。会場は堂島川沿いにあり、夜景も美しい場所です。学会のみならずナイトライフも是非お楽しみください。それでは皆さまとお会いできるのを楽しみにしております。