[Synonyms:関節眼疾患(Arthroophthalmopathy)]
Gene Reviews著者: Nathaniel H Robin, MD,Rocio T Moran MD,and Leena Ala-Kokko, MD, PhD
日本語訳者: 佐藤康守(たい矯正歯科)、水上都(札幌医科大学医学部遺伝医学)
GeneReviews最終更新日: 2021.5.6. 日本語訳最終更新日: 2022.10.1.
疾患の特徴
Stickler症候群は結合組織疾患で、近視・白内障・網膜剥離などの眼症状、伝音性・感音性の両方を含む難聴、顔面中部の劣成長と口蓋裂(これは単独で現れることもあれば、Robin sequenceの形で現れることもある)、軽度の脊椎骨端異形成ないし早発性関節症といった症状を呈する。
Stickler症候群は、家系内、家系間で大きな表現型の幅を示す。
家系間のばらつきは、座位やアレルの異質性で、一部、説明可能である。
診断・検査
Stickler症候群の診断は臨床ベースで行われる。
現在のところ、一致した最小臨床診断基準というものは確立されていない。
6つの遺伝子(COL2A1、COL11A1、COL11A2、COL9A1、COL9A2、COL9A3 )のうちの1つの病的バリアントがStickler症候群に関与している。
これら6つの座位に連鎖しないStickler症候群家系もいくつかみられることから、これら以外の遺伝子の病的バリアントも本症候群の原因として関与している可能性が考えられる。
臨床的マネジメント
症状に対する治療:
二次症状の予防:
定期的追跡評価:
避けるべき薬剤/環境 :
リスクを有する血族の評価 :
リスクを有する血族の中からStickler症候群罹患者を特定し、定期的追跡評価につなげることが望ましい。
遺伝カウンセリング
COL2A1、COL11A1、COL11A2の病的バリアントに起因するStickler症候群については、常染色体顕性遺伝を示す。
一方、COL9A1、COL9A2、COL9A3の病的バリアントに起因するStickler症候群については、常染色体潜性遺伝を示す。
常染色体顕性遺伝の家系については、罹患者の有する病的バリアントが50%の確率で子に継承される。
常染色体潜性遺伝の家系については、罹患者の同胞に対する再発危険率が25%、同胞が無症状の保因者となる確率が50%、無症状で保因者でもない確率が25%である。
家系内に存在する病的バリアントが判明している場合には、リスクのある妊娠として、出生前検査を行うことが可能である。
本疾患を示唆する所見
下記の所見を複数有する罹患者については、Stickler症候群を疑う必要がある。
臨床診断
発端者におけるStickler症候群の確定診断は、下記の臨床的診断基準に合致すること、ならびにCOL2A1、COL11A1、COL11A2の病的バリアントのヘテロ接合、ないしCOL9A1、COL9A2、COL9A3の両アレルに生じた病的バリアントを確認することで行われる(表1参照)。
臨床的診断基準
Stickler症候群1型(膜状の硝子体異常を示すタイプ。「臨床像」の項目を参照のこと)に対する臨床的診断基準が公表されている[Roseら2005]が、有効性の十分な実証は得られていない。
この診断基準は、臨床所見・家族歴・分子レベルのデータのそれぞれを点数化することで行われるものである。
5点以上を示し、なおかつ他の病名を示唆する症候がみられない場合には、Stickler症候群を疑うべきであるとされる。
主要症候とされるもの(2点を与えられているもので、*を付したもの)を、少なくとも1つは有している必要がある。
下記の各異常(1カテゴリーあたり最大で2点)
特徴的な硝子体変化ないし網膜異常*(格子状変性・網膜円孔・網膜剥離・網膜裂孔):2点
家族歴/分子レベルのデータ
*は、これが主要症候であることを表す。
**は、常染色体潜性遺伝のStickler症候群には当てはまらないことを表す。
分子遺伝学的検査
分子遺伝学的検査としては、直列型の単一遺伝子検査、マルチ遺伝子パネル、ならびに網羅的ゲノム検査がある。
単一遺伝子検査は、罹患者個々の臨床所見ならびに家族歴をもとに検討する。
ただし、臨床所見は、特定の遺伝子検査について、それを行う必要なしと判断する基準として用いるべきではない。
COL2A1、COL11A1、COL11A2、COL9A1、COL9A2、COL9A3、ならびにその他の関連遺伝子(「鑑別診断」の項を参照)を含むマルチ遺伝子パネルが検討されることになろう。
注:(1)パネルに含められる遺伝子の内容、ならびに個々の遺伝子について行う検査の診断上の感度については、検査機関によってばらつきがみられ、また、経時的に変更されていく可能性がある。
(2)マルチ遺伝子パネルによっては、いま本章で取り上げている状況と無関係な遺伝子が含まれることがある。
したがって、臨床医においては、意義不明のバリアントや現況の表現型と無関係な遺伝子の病的バリアントが検出されてしまうことを抑えつつ、どのマルチ遺伝子パネルが安価にして本疾患の原因遺伝子を同定するのに最も適しているかという点を判断することが求められる。
(3)検査機関によって、パネルの内容が、その機関の定めた定型のパネルであったり、表現型ごとに定めたものの中で臨床医の指定した遺伝子を含む定型のエキソーム解析であったりする。
(4)ある1つのパネルに対して適用される手法の中に、配列解析、欠失/重複解析、その他の非配列ベースの検査がある。
マルチ遺伝子パネルの基礎的情報についてはここをクリック。
遺伝子検査をオーダーする臨床医に対するより詳細な情報についてはここをクリック。
利用できるようであれば、エキソームシーケンシングやゲノムシーケンシングといった、より網羅的なゲノム検査を考慮すべきであろう。
こうした検査を行うことで、以前であれば思いもつかなかった診断(例えば同様の臨床所見をもたらすような全く別の遺伝子のバリアント)に立ち至る可能性がある。
網羅的ゲノム検査の基礎的情報についてはここをクリック。
ゲノム検査をオーダーする臨床医に対するより詳細な情報についてはここをクリック。
表1:Stickler症候群で用いられる分子遺伝学的検査
遺伝子1 | Stickler症候群の中でこの遺伝子の病的バリアントの占める割合 | その手法で病的バリアント2が検出される割合 | |
---|---|---|---|
配列解析3 | 遺伝子標的型欠失/重複解析4 | ||
COL2A1 | 80%-90%5 | 99%近く | 不明6,7 |
COL11A1 | 10%-20%5 | 99%近く | 不明6,8 |
COL11A2 | 稀;不明9 | 100%近く | 不明6 |
COL9A1 | 稀;不明10 | 100%近く | 不明6 |
COL9A2 | 稀;不明11 | 100%近く | 不明6 |
COL9A3< | 稀;不明12 | 100%近く | 不明6 |
不明13 | 適用対象外 |
バリアントの種類としては、遺伝子内の小さな欠失/挿入、ミスセンス・ナンセンス・スプライス部位バリアントなどがあるが、通常、エクソン単位ないし遺伝子全体の欠失や重複は検出されない。
配列解析の結果の解釈に際して留意すべき事項についてはこちらをクリック。
具体的手法としては、定量的PCR、ロングレンジPCR、MLPA法、あるいは単一エクソンの欠失ないし重複の検出を目的に設計された遺伝子標的型マイクロアレイなどがある。
こうした欠失の頻度については、よくわかっていない。
両親と非罹患同胞は、c.843_846+4del8の欠失をヘテロで有していた。
したがって、本症候群を引き起こす遺伝子の病的バリアントが、これら以外にも存在する可能性がある。
臨床像
Stickler症候群は、頭蓋顔面・眼・内耳・骨格・関節といった多器官にまたがる結合組織の異常である。
頭蓋顔面所見
平坦な顔、ないし、しばしば「scooped out face」(訳注:直訳すると「スコップですくい取られた顔」)と形容されるような外観を呈する。
こうした顔貌は、内眼角開離や内眼角贅皮をもたらすような上顎や鼻梁の低発達に起因して生じる。
顔面中部の後退は乳幼児期に最も顕著にみられる。
年長になると側貌は正常になることもある。
鼻尖はしばしば小さく上向きで、人中が長く見える。
小下顎症が多くみられるが、これは、Pierre Robin sequence(小下顎症・口蓋裂・舌沈下)を構成する一部分として、口蓋裂と併せて出現する小下顎症であることもある。
小下顎の程度によっては、上気道に問題が生じ、気管切開を要することもある。
小下顎を伴わない口蓋裂の例もみられる。
眼所見
眼所見としては、非進行性で新生児期に探知される重度近視(-3ジオプター以上)[Snead & Yates 1999]、ならびに硝子体の異常がある。
硝子体異常には2つのタイプがある。
遺残物は襞の入った膜で取り囲まれる。
硝子体腔全体にみられる疎で厚みの不規則な索状物を特徴とする。
眼の所見は、家系内では共通した表現型を示す[Snead & Yates 1999]。
Vuら[2003]は、硝子体網膜ジストロフィ、COL2A1の新たなタイプの病的バリアント、Stickler症候群の全身所見を示した1家系において、後部脈絡網膜萎縮がみられたことを報告し、Stickler症候群罹患者が、硝子体の異常に加えて後極の脈絡網膜変化を有する可能性を示唆している。
注:後部脈絡網膜萎縮を呈する家系については、以前は、Wagner症候群であると考えられていた。
難聴
難聴が多くみられる。
聴力低下の程度には幅がみられ、進行性のようである。
一定程度の感音性難聴(通常は高音域の難聴であるが、ごく軽度のこともある)が罹患者の40%にみられる[Snead & Yates 1999]。
これは、内耳におけるⅡ型・Ⅸ型コラーゲンの発現に関連して生じるものである[Admiraalら2000]が、発症メカニズムの詳細についてはまだ解明されていない。
Stickler症候群Ⅰ型における感音性難聴は、全体として軽度であることが多く、目立った進行もみられない。
Stickler症候群Ⅱ型やⅢ型で報告されているものに比べると、重症度は低い。
伝音性難聴がみられることもある。
これは、口蓋裂に関連して生じることの多い反復性の耳感染症に伴う二次性のもの、あるいは、中耳の耳小骨の異常に伴う二次性のものであることがある。
骨格所見
骨格所見としては、早発性の変形性関節症、非罹患同胞と比較したときの相対的低身長、ならびに軽度の脊椎骨端異形成症でみられるのと同様のX線所見がある。
罹患者の中には痩せ型体形を示す例もみられるが、高身長ではない。
若い罹患者では時に関節弛緩がみられるものの、年齢とともに目立たなくなる(あるいは完全に消失する)[Snead & Yates 1999]。
早発性の変形性関節症が多くみられ、時に、20歳代や30歳代という早期に外科的な関節置換術が必要になるほど重度のこともある。
ただ、ふつうは軽度にとどまり、特に尋ねられない限り、罹患者のほうから関節痛を訴えるようなことは少ない。
しかし、非特異的な関節硬直については、幼い子どもからさえ訴えがあることがある。
Stickler症候群で頻繁にみられ、慢性の背中の痛みにつながるような脊椎の異常としては、脊柱側彎、脊椎終板の異常、脊柱後彎、扁平椎がある[Roseら2001]。
僧帽弁逸脱症
Stickler症候群罹患者の50%近くに僧帽弁逸脱症(MVP)がみられたとする報告がある[Liberfarb & Goldblatt 1986]。
なお、その研究におけるStickler症候群の診断は、関連遺伝子同定前の臨床所見をもとに下されている。
これより後の研究[Liberfarbら2003]では、COL2A1の病的バリアントを有するStickler症候群罹患者25人中の1人だけが、心エコーにてMVPを示したという。
Ahmadら[2003]は、分子レベルでの確認が済んだStickler症候群罹患者75人に対して臨床診査あるいは心エコーでスクリーニングを行った結果、僧帽弁その他の弁に関して異常を示した例は1例もみられなかったとしている。
その結果、Stickler症候群におけるMVPの出現頻度は、一般集団における出現頻度と変わらないのではないかということが示唆されている。
これ以外に、Stickler症候群における心所見を調査した研究は現れていない。
遺伝型-表現型相関
分子レベルで同一の診断が下された6家系25罹患者について調べた研究[Liberfarbら, 2003]によると、家系間でも家系内でも、表現型には大きな幅がみられたという。
それでも、遺伝型-表現型相関に関していうと、いくつかの通則を導くことが可能であるように思われる。
Sticklerら[1965]が最初に報告した血族も含め、COL2A1の病的バリアントの結果としてStickler症候群を示すに至った罹患者の大多数は、未成熟終止型のバリアント(すなわち、ナンセンス・フレームシフト・スプライス部位バリアント)を示し、その結果、COL2A1産物の機能的ハプロ不全を生じている。
こうしたタイプの罹患者の大半は1型の硝子体異常を有し、網膜剥離や早発性関節症に関して高リスク状態にある。
聴力は、大多数が正常、ないし軽度の感音性難聴を示す。
頭蓋顔面所見は、軽度の上向き鼻からRobin sequenceまで幅がみられる[Faberら2000]。
p.Leu667Pheという特異な病的バリアントを有する1大家系は、正常な層状構造を欠いた珍しいタイプの「無原線維性」硝子体ゲルを有していたという[Richardsら2000]。
COL2A1の1ミスセンスバリアントが数家系で報告されており、これは特徴的な眼所見や頭蓋顔面所見、ならびに短指趾を伴う軽度の多発性骨端異形成を示した。
このことから、軽度のヘテロ接合性病的バリアントであってもStickler症候群を引き起こす可能性が示唆される。
COL2A1のエクソン2の病的バリアントでは、眼所見を中心とした表現型が現れ、網膜剥離に対し高いリスクを示す。
Donosoら[2003]は、COL2A1のエクソン2の病的バリアントを有する9家系を報告しており、その病的バリアントのすべてが終止コドンをもたらすものであったとしている。
その表現型は、optically empty vitreous(訳注:硝子体内に浮遊物、ベール様物、混濁物、環状物等が全くみられない状態をいう)、典型的な血管周囲の色素性変化、早発性網膜剥離のみで、Stickler症候群でみられる全身所見は、ほとんどあるいは全くみられなかったという。
Stickler症候群の典型的表現型を有する罹患者において、COL11A1内にミスセンスバリアント、スプライス部位バリアント、欠失がみられた例が多く報告されている。
こうした罹患者は、概して、強めの難聴、ならびに2型の先天性硝子体奇形、すなわち「数珠状」硝子体の表現型を示す。
ただ一方で、「膜状」硝子体(1型)の表現型を呈する3罹患者3家系の報告も存在する[Parentinら2001,Majavaら2007]。
COL11A2の病的バリアントは、常染色体顕性遺伝の非眼症状型のStickler症候群を引き起こすことがわかっている[Vikkulaら1995,Sirko-Osadsaら1998,Vuoristoら2004,Ackeら2014]。
COL9A1の両アレルの病的バリアントは、常染色体潜性遺伝型のStickler症候群(Stickler症候群Ⅳ型)を引き起こすことがわかっている。
このタイプの罹患者は、中等度から重度の感音性難聴、硝子体網膜症を伴う中等度から高度の近視、白内障、骨端異形成を示す[Van Campら2006,Nikopoulosら2011]。
注目すべきは、このタイプでみられる硝子体異常は、通常みられる膜状、数珠状、無原線維性の硝子体ではなく、加齢性硝子体に類似することである。
COL9A2の両アレルの病的バリアントは、常染色体潜性遺伝型のStickler症候群(Stickler症候群Ⅴ型)を引き起こすことがわかっている。
Bakerら[2011]は、インド系の1家系を報告しており、2人の子どもは軽度から中等度の難聴、高度近視、硝子体網膜症といったStickler症候群の症状を有していた。
COL9A3の両アレル性病的バリアントは、常染色体潜性遺伝型のStickler症候群を引き起こすことがわかっている。
このタイプの罹患者は、中等度から重度の感音性難聴、中等度から高度の近視、中顔面の陥凹、知的障害を示したという[Faletraら2014]。
Faletraら[2014]の報告した1血族結婚家系でみられた知的障害に関しては、COL9A3の病的バリアントとは無関係であろうと思われる。
浸透率
浸透率は100%である。
発生頻度
Stickler症候群の発症頻度に関する研究はみられないものの、Robin sequenceの発生頻度(10,000人から14,000人に1人)、ならびに、Robin sequenceの新生児がその後Stickler症候群の徴候や症状をもつようになる割合(35%)から、推算することは可能である。
こうしたデータから、新生児におけるStickler症候群の発生頻度は、おおむね7,500人から9,000人に1人と考えられる[Printzlau & Andersen 2004]。
表2:tickler症候群:同一アレル疾患
遺伝子 | 表現型1 |
---|---|
COL2A1 | 軟骨無発生症Ⅱ型 |
常染色体顕性型裂孔原性網膜剥離 | |
阻血性大腿骨頭壊死,原発性(OMIM https://www.omim.org/entry/608805) | |
軟骨低発生症(軟骨無発生症の軽度型バリアント) | |
Kniest骨異形成症 | |
軽度の軟骨異形成を伴う変形性関節症(OMIM 604864) | |
致死性扁平椎異形成症,Torrance型 | |
脊椎骨端異形成症,Strudwick型 | |
先天性脊椎骨端異形成症 | |
脊椎骨端異形成症 | |
COL9A1 | 多発性骨端異形成症,顕性型 |
COL9A2 | |
COL9A3 | |
COL11A1 | 線維性軟骨発生症 1(OMIM 228520) |
Marshall症候群(OMIM 154780) | |
COL11A2 | 常染色体潜性型耳脊椎巨大骨端異形成症(OMIM 215250) |
線維性軟骨発生症 2(OMIM 614524) | |
非症候性感音性難聴(DFNA13) | |
Weissenbach-Zweymüller症候群(OMIM 277610) |
Stickler症候群と症状の重なりをもつ疾患は多数に上る。
同一アレル疾患については、「遺伝子の上で関連のある疾患」の項を参照。
VCAN関連硝子体網膜症(訳注:VCANは、細胞外マトリックスに分布する大型のコンドロイチン硫酸プロテオグリカンであるバーシカンをコードする遺伝子)
ここにはWagner症候群、ならびに糜爛性硝子体網膜症が含まれる。
細隙灯診査でみられる「optically empty vitreous」や無血管性の硝子体索や硝子体ベール、軽度ないし時に中等度から高度の近視、早老白内障、進行性の脈絡網膜萎縮に伴う種々の程度の夜盲、症状が進行した段階でみられる牽引網膜や網膜剥離、視力低下を特徴とする。
視神経乳頭逆位の報告もみられる。
全身的異常はみられない。
最初の症状は、思春期初期に出現することが多いものの、2歳といった早期に初発することもある。
VCAN関連硝子体網膜症は、常染色体顕性の遺伝形式を示す。
強度近視
強度近視とは、-6ジオプター以上の屈折異常をいう。
近視に関しては、20以上の座位がマッピングされている(OMIMでこの表現型関連の座位/遺伝子を見るには、OMIM Phenotypic SeriesのMyopiaの項目を参照のこと)。
非症候群性先天性網膜非付着症(NCRNA)(OMIM 221900)
NCRNAでは、先天性光覚障害、大きな後水晶体塊、浅前房、小眼球、眼振といった症状が出現するものの、それ以外は罹患者に何らの異常も現れない。
NCRNAは、ATOH7の病的バリアントに起因して生じ、常染色体潜性の遺伝形式をとる。
雪片状硝子体網膜変性症(OMIM 193230)
雪片状硝子体網膜変性症は、白内障、硝子体の原線維変性、雪片に似た結晶状高輝度微小沈着物を含む周辺部網膜の異常を特徴とする。
網膜剥離に至る割合は低いとされる[Leeら2003]。
雪片状硝子体網膜変性症は、KCNJ13の病的バリアントに起因して生じ、常染色体顕性の遺伝形式をとる。
Binder症候群(上顎鼻異形成)(OMIM 155050)
Binder症候群は、顔面中部の後退とX線写真上の前鼻棘欠損を特徴とする。
世代間の伝達例も数家系報告されてはいる[Roy-Dorayら1997]ものの、Binder症候群は遺伝性の症候群とはみなされておらず、鼻上顎複合体の非特異的異常と考えられている。
Robin sequence
Robin sequence罹患者の約半数は、背景に何らかの症候群をもっているとされ、その中でStickler症候群は最も多くみられるものである。
ある研究では、Robin sequence100症例中34人がStickler症候群であったという。
Robin sequenceを有する74症例の後ろ向き研究で、30%以上にStickler症候群がみられたとする研究もみられる[van den Elzenら2001]。
115人のRobin sequence罹患者について調べたより最近の研究では、18%がStickler症候群を有していたという[Evansら2006]。
最初の診断に続いて行う評価
Stickler症候群と診断された罹患者については、疾患の範囲やニーズを把握するため、以下のような評価を行うことが推奨される。
もしそうしたものがあれば、心臓病専門医への紹介が必要となる。
症状に対する治療
頭蓋顔面
Robin sequenceの新生児は、気道確保のため気管切開が必要になることがある。
そのため、すぐに耳鼻科医や小児救急医のチェックが必要である。
頭蓋顔面の総合医療機関であれば、耳鼻科、形成外科、口腔顎顔面外科、小児歯科、矯正歯科、遺伝科といったすべての必要な医療サービスを提供することができるので、そうした機関で評価や管理を行うことが望ましい。
たいていの罹患者では、経時的に小下顎症は改善していき、気管切開から離脱できるようになる。
しかし、症例によっては重度の小下顎症が存続し、矯正歯科的問題を引き起こすことがある。
そうした例では、咬合異常を改善するための下顎骨前方移動術がしばしば必要となる。
眼
眼鏡で、屈折異常の矯正を行う必要がある。
Stickler症候群罹患者には、網膜剥離の症状を説明するとともに、もしもそうした症状が生じた場合には即座に検査や治療が必要であることについて助言する必要がある。
網膜剥離に関して高リスクであること、網膜剥離は乳児期に始まることさえあるということ、最近ではレーザーを用いた予防処置の有効性が報告されていること[Morrisら2021]についても説明する。
聴覚
「遺伝性難聴ならびに聴力喪失概説」のGeneReviewを参照のこと。
口蓋の問題に伴う二次性の中耳炎は、時に反復性のことがある。
鼓膜切開、鼓膜チューブ留置術がしばしば必要になる。
関節
症状に従って関節症の治療を行う。
具体的には、運動前後に市販の抗炎症薬を服用する。
二次的合併症の予防
僧帽弁逸脱症を伴う罹患者については、何らかの外科的処置を受けるに際して、抗生剤の予防投与が必要になろう。
定期的追跡評価
硝子体網膜の専門医による年に1度の診査が必要である。
5歳までは6ヵ月ごと、その後は年に1度の割合で、聴覚の追跡評価が必要である。
Stickler症候群罹患者における僧帽弁逸脱症(MVP)の出現頻度は明らかでなく、すべての罹患者は、ルーチンの内科的診査を通じてMVPのスクリーニングを受けるべきである。
それ以上の検査(心エコーなど)については、MVPを示唆する徴候がみられた場合にのみ行うようにする。
避けるべき薬剤/環境
罹患者には、外傷性網膜剥離をきたす可能性のある活動(身体接触を伴うスポーツなど)を避けるようアドバイスする。
現時点では、関節へのダメージを最小限に抑える予防的治療というものは存在しない。
医師によっては、関節症の発症を遅らせる努力の一環として、関節への衝撃を伴う肉体的活動を避けることを推奨する向きもある。
そうした推奨は一見論理的であるようにみえるものの、それを裏づけるだけのデータは今のところ存在しない。
リスクを有する血縁者の評価
Stickler症候群は表現型の幅が広い[Faberら2000]ため、発端者の兄弟姉妹をはじめ、リスクをもつ可能性のある血族については、ひとまず検査を行い、その後も継続的検査が必要かどうかを確定しておくことが望ましい(「定期的追跡評価」の項目を参照)。
検査には次の2通りの進め方がある。
Stickler症候群に特徴的な頭蓋顔面所見は、年齢とともに目立ちにくくなっていくことが多いので、成人に対して頭蓋顔面の評価を行うにあたっては、子どもの頃の写真をチェックすることが役に立つ。
Stickler症候群の可能性を明確に排除することができない血縁者については、考えられる合併症に関して、経過を追跡していくことが推奨される。
リスクを有する血族に対して行う遺伝カウンセリングを目的とした検査関連の事項については、「遺伝カウンセリング」の項を参照されたい。
研究段階の治療
さまざまな疾患・状況に対して進行中の臨床試験に関する情報については、アメリカの「Clinical Trials.gov」、ならびにヨーロッパの「EU Clinical Trials Register」を参照されたい。
注:現時点で本疾患に関する臨床試験が行われているとは限らない。
「遺伝カウンセリングは個人や家族に対して遺伝性疾患の本質,遺伝,健康上の影響などの情報を提供し,彼らが医療上あるいは個人的な決断を下すのを援助するプロセスである.以下の項目では遺伝的なリスク評価や家族の遺伝学的状況を明らかにするための家族歴の評価,遺伝学的検査について論じる.この項は個々の当事者が直面しうる個人的あるいは文化的、倫理的な問題に言及しようと意図するものではないし,遺伝専門家へのコンサルトの代用となるものでもない.」
遺伝形式
COL2A1、COL11A1、COL11A2の病的バリアントによって引き起こされるStickler症候群については、常染色体顕性の遺伝形式を示す。
COL9A1、COL9A2、COL9A3の両アレルの病的バリアントに起因して生じるStickler症候群については、常染色体潜性の遺伝形式を示す。
常染色体顕性遺伝―血縁者のリスク
発端者の両親
ただ、罹患者全体の中に占める新生のバリアントの割合は、今のところ明らかではない。
発端者の有する病的バリアントが同定されている場合は、分子遺伝学的検査を行う。
このうち生殖細胞系列モザイクに関しては、理論上、起こりうるものではあるものの、これまで実際に生殖細胞系列モザイクとして報告された例はみられない。
発端者の同胞
同胞に現れるリスクは、両親の遺伝的状態によって変わってくる。
理論上、生殖細胞系列モザイクの可能性が残ってはいるものの、これまでにそうした報告はみられない。
発端者の子
Stickler症候群罹患者の子が、病的バリアントを継承するリスクは50%である。
他の家族構成員
他の血族の有するリスクは、発端者の両親の状況によって変わってくる。
もし片親が罹患者であったとしたら、その血族にあたる人はすべてリスクを有することになる。
常染色体潜性遺伝―血縁者のリスク
発端者の親
発端者の同胞
発端者の子
常染色体潜性遺伝型のStickler症候群をもつ罹患者の子は、COL9A1、COL9A2、COL9A3の病的バリアントに関して絶対ヘテロ接合者(保因者)となる。
他の家族構成員
発端者の両親の同胞については、COL9A1、COL9A2、COL9A3の病的バリアントの保因者であることに関し、50%のリスクを有することになる。
保因者の同定
リスクを有する血族に対し、保因者か否かの検査を行うにあたっては、事前にその家系内に存在する病的バリアントを同定しておくことが必要である。
遺伝カウンセリングに関連した問題
早期診断、早期治療を目的として、リスクを有する血族に対して行う検査関連の各種情報については、「臨床的マネジメント」の中の「リスクを有する血縁者の評価」の項を参照されたい。
新生と思われる病的バリアントを有する罹患者の家族についての考え方
常染色体顕性遺伝型Stickler症候群発端者の有する病的バリアントと同じものを、両親のいずれもが有しておらず、さらに、本症候群の臨床所見も示していないということであれば、そのバリアントは新生のものと考えられる。
しかし、代理父、代理母(例えば生殖補助医療によるもの)、もしくは秘匿型の養子縁組といった医学とは別次元の理由が潜んでいる可能性もある。
家族計画
DNAバンキング
検査の手法であるとか、遺伝子・アレルバリアント・疾患等に対するわれわれの理解が、将来はより進歩していくことが予想される。
そのため、分子診断がまだ確定していない(すなわち、原因となっている遺伝子の変化が不明の)発端者のDNAについては、保存しておくことを考慮すべきである。
出生前検査ならびに着床前の遺伝子検査
高リスクの妊娠
家系内に存在するStickler症候群の病的バリアントがすでに同定されている場合は、高リスクの妊娠に備えた出生前検査や、着床前遺伝子検査を行うことが可能となる。
妊娠19-20週の段階になると、分子遺伝学的検査に代えて、あるいはそれに加える形で、口蓋裂のチェックを目的とした超音波検査を行うことが可能となる。
ただ、仮に口蓋裂がみられなかったとしても、それをもってStickler症候群の可能性を排除できるわけではない。
低リスクの妊娠
Stickler症候群の家族歴はないものの、胎児に口蓋裂があることが探知された場合には、Stickler症候群をうかがわせる所見を有する血縁者を洗い出すため、3世代にわたる家系図を作成することが望ましい。
片親に何らかの病的バリアントがあることがわかっているということでなければ、通常は、胎児に対して分子遺伝学的検査を行うということはない。
出生前検査の利用に関しては、医療者間でも、また家族内でも、さまざまな見方がある。
早期診断を目的とするのではなく、堕胎を目的としてこれを利用しようという場合は、特にそれが言える。
現在、多くの医療機関では、出生前検査を個人の決断に委ねられるべきものと考えているようであるが、こうした問題に関しては、もう少し議論を深める必要があろう。
GeneReviewsスタッフは、この疾患を持つ患者および家族に役立つ以下の疾患特異的な支援団体/上部支援団体/登録を選択した。GeneReviewsは、他の組織によって提供される情報には責任をもたない。選択基準における情報については、ここをクリック。
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分子遺伝学
分子遺伝学とOMIMの表の情報はGeneReviewsの他の場所の情報とは異なるかもしれない。表は、より最新の情報を含むことがある。
表A:Stickler症候群の遺伝子とデータベース
遺伝子 | 染色体上の座位 | タンパク質 | Locus-Specific データベース |
HGMD | ClinVar |
---|---|---|---|---|---|
COL2A1 | 12q13.11 | コラーゲンα-1(Ⅱ)鎖 | COL2A1 database | COL2A1 | COL2A1 |
COL9A1 | 6q13 | コラーゲンα-1(Ⅸ)鎖 | COL9A1 database | COL9A1 | COL9A1 |
COL9A2 | 1p34.2 | コラーゲンα-2(Ⅸ)鎖 | COL9A2 database | COL9A2 | COL9A2 |
COL9A3 | 20q13.33 | コラーゲンα-3(Ⅸ)鎖 | COL9A3 database | COL9A3 | COL9A3 |
COL11A1 | 1p21.1 | コラーゲンα-1(Ⅺ)鎖 | COL11A1 database | COL11A1 | COL11A1 |
COL11A2 | 6p21.32 | コラーゲンα-2(Ⅺ)鎖 | Hereditary Hearing Loss Homepage(COL11A2) COL11A2 database |
COL11A2 | COL11A2 |
データは、以下の標準資料から作成したものである。
遺伝子についてはHGNCから、染色体上の座位についてはOMIMから、タンパク質についてはUniProtから。
リンクが張られているデータベース(Locus-Specific,HGMD,ClinVar)の説明についてはこちらをクリック。
表B:Stickle症候群関連のOMIMエントリー(閲覧はすべてOMIMへ)
108300 | STICKLER SYNDROME, TYPE I; STL1 |
120140 | COLLAGEN, TYPE II, ALPHA-1; COL2A1 |
120210 | COLLAGEN, TYPE IX, ALPHA-1; COL9A1 |
120260 | COLLAGEN, TYPE IX, ALPHA-2; COL9A2 |
120270 | COLLAGEN, TYPE IX, ALPHA-3; COL9A3 |
120280 | COLLAGEN, TYPE XI, ALPHA-1; COL11A1 |
120290 | COLLAGEN, TYPE XI, ALPHA-2; COL11A2 |
184840 | OTOSPONDYLOMEGAEPIPHYSEAL DYSPLASIA, AUTOSOMAL DOMINANT; OSMEDA |
604841 | STICKLER SYNDROME, TYPE II; STL2 |
614134 | STICKLER SYNDROME, TYPE IV; STL4 |
614284 | STICKLER SYNDROME, TYPE V; STL5 |
COL2A1
遺伝子構造
COL2A1は54のエクソンから成る。
COL2A1には選択的スプライシングを受けるエクソンが1つあり、2つのアイソフォームが存在する。
NM_001844.4は長いほうの転写産物で、54のエクソン、1,487のアミノ酸をコードする。
こちらは、主として眼の硝子体液中で発現する。
選択的スプライシングを受けるエクソンに生じる各種バリアントにより、眼症状中心型のStickler症候群がもたらされる。
NM_033150.2は短いほうの転写産物で、53のエクソン、1,418のアミノ酸をコードする。
慣例として、最も長い転写産物バリアントが参照配列として用いられる(表3)。
遺伝子とタンパク質の情報に関する概要の詳細については、表Aの「遺伝子」の欄を参照されたい。
病的バリアント
Stickler症候群の原因として、これまでに17種を超える病的バリアントが報告されている。
これらのバリアントは、1塩基の置換、もしくは少数のヌクレオチドの挿入や欠失によって未成熟終止に至る(あるいは、未成熟終止に至ることが予測される)ものである。
表3:COL2A1の病的バリアントの例
DNAヌクレオチドの変化 | 予測されるタンパク質の変化(別表記1) | 参照配列 |
---|---|---|
c.1957C>T | p.Arg653Ter(p.Arg453Ter) | NM_001844.4 2 NP_001835.3 |
c.1999C>T | p.Leu667Phe(p.Leu467Phe) |
上記のバリアントは報告者の記載をそのまま載せたもので、GeneReviewsのスタッフが独自にバリアントの分類を検証したものではない。
GeneReviewsは、Human Genome Variation Society(varnomen.hgvs.org)の標準命名規則に準拠している。
命名規則の説明については、Quick Referenceを参照のこと。
ここに示したものについて言うと、アミノ酸の番号が、成熟タンパク質の先頭のアミノ酸に1番の番号が割り振られている。
正常遺伝子産物
COL2A1は軟骨組織の主たる構造上の要素であるⅡ型コラーゲン鎖をコードする。
別のアイソフォームタンパク質については、前述した「COL2A1」の「遺伝子構造」の項を参照されたい。
異常遺伝子産物
COL2A1の病的バリアントは、典型的には翻訳の未成熟終止の形で現れ、結果としてⅡ型コラーゲンの生成減少を招く。
COL11A1
遺伝子構造
COL11A1は68のエクソンから成る。
COL11A1は選択的スプライシングにより、複数のアイソフォームをコードする。
NM_080629.2は最も長い転写産物で、67のエクソン、1,818のアミノ酸をコードする。
他に3つの転写産物のバリアントがあり、種々の長さのアイソフォームタンパク質をコードすることが知られている。
遺伝子とタンパク質の情報に関する概要の詳細については、表Aの「遺伝子」の欄を参照されたい。
病的バリアント
これまでに、スプライス部位バリアント、ミスセンスバリアント、インフレーム欠失が報告されている。
正常遺伝子産物
COL11A1は、Ⅺ型コラーゲンのα1鎖をコードする。
COL11A1は、Ⅱ型コラーゲン原線維の横方向への伸長をコントロールすることで、原線維形成に重要な役割を演じているものと考えられている。
異常遺伝子産物
COL11A1の病的バリアントは、その多くがGly-X-Yのコラーゲン配列の乱れを引き起こし、これによりⅪ型コラーゲンの合成や機能に障害をもたらす。
COL11A2
遺伝子構造
COL11A2は66のエクソンから成る。
COL11A2(訳注:原文は「COL11A1」となっているが、誤りと思われる)には、選択的スプライシングのバリアントが存在し、複数のアイソフォームをコードする。
NM_080680.2は最も長い転写産物で、66のエクソン、1,736のアミノ酸をコードする。
他に3つの転写産物のバリアントがあり、種々の長さのアイソフォームタンパク質をコードすることが知られている。
遺伝子とタンパク質の情報に関する概要の詳細については、表Aの「遺伝子」の欄を参照されたい。
病的バリアント
非眼症状型のStickler症候群罹患者において、スプライシングの異常やエクソンスキッピングを引き起こすようなインフレームの欠失やバリアントが報告されている。
正常遺伝子産物
COL11A2は、軟骨内にはみられるものの、成人の肝・皮膚・腱・硝子体には存在しないⅪ型コラーゲンのα2鎖をコードする。
異常遺伝子産物
COL11A2の病的バリアントは、Ⅺ型コラーゲンの合成や機能に障害をもたらすものと考えられている。
COL9A1
遺伝子構造
COL9A1は38のエクソンから成る。
COL9A1には、NM_001851.4とNM_078485.3という2つの転写産物バリアントがある。
この2つはそれぞれ、38、32のエクソン、921、678のアミノ酸をコードする。
短いほうのアイソフォームは、選択的下流転写開始点が用いられることにより形成される。
遺伝子とタンパク質の情報に関する概要の詳細については、表Aの「遺伝子」の欄を参照されたい。
病的バリアント
COL9A1のコーディング領域の配列解析を行った結果として、Van Campら[2006]の報告した血族結婚の4人の罹患同胞において、p.Arg295Terという病的バリアントのホモ接合が確認されている。
この両親から生まれた別の4人の同胞はヘテロ接合の保因者、別の2人は野生型アレルのホモ接合であった。
表4:COL9A1の病的バリアントの例
DNAヌクレオチドの変化 | 予測されるタンパク質の変化 | 参照配列 |
---|---|---|
c.883C>T | p.Arg295Ter | NM_001851.3 NP_001842.3 |
上記のバリアントは報告者の記載をそのまま載せたもので、GeneReviewsのスタッフが独自にバリアントの分類を検証したものではない。
GeneReviewsは、Human Genome Variation Society(varnomen.hgvs.org)の標準命名規則に準拠している。
命名規則の説明については、Quick Referenceを参照のこと。
正常遺伝子産物
COL9A1は、Ⅸ型コラーゲンのα1鎖をコードする。
Ⅸ型コラーゲンは、硝子軟骨・眼の硝子体・椎間板の構成要素である。
異常遺伝子産物
両アレルの病的バリアントにより、機能喪失が生じると考えられる。
COL9A2
遺伝子構造
COL9A2(NM_001852.3)は32のエクソンから成る。
遺伝子とタンパク質の情報に関する概要の詳細については、表Aの「遺伝子」の欄を参照されたい。
病的バリアント
Bakerら[2011]は、血族結婚の両親の間に生まれた2人の罹患児についてCOL9A2のコーディング領域の配列解析を行い、病的バリアント c.843_846+4del8 のホモ接合を報告している。
両親ならびに1人の非罹患児が、この病的バリアントをヘテロで有する保因者であった。
表5:COL9A2の病的バリアントの例
DNAヌクレオチドの変化 | 予測されるタンパク質の変化 | 参照配列 |
---|---|---|
c.843_846+4del8 | p.Asp281GlnfsTer70 | NM_001852.3 NP_001843.1 |
上記のバリアントは報告者の記載をそのまま載せたもので、GeneReviewsのスタッフが独自にバリアントの分類を検証したものではない。
GeneReviewsは、Human Genome Variation Society(varnomen.hgvs.org)の標準命名規則に準拠している。
命名規則の説明については、Quick Referenceを参照のこと。
正常遺伝子産物
COL9A2は、689のアミノ酸から成るⅨ型コラーゲンのα2鎖をコードする。
Ⅸ型コラーゲンは、硝子軟骨・眼の硝子体・椎間板の構成要素である。
異常遺伝子産物
両アレルの病的バリアントにより、機能喪失が生じると考えられる。
COL9A3
遺伝子構造
COL9A3の転写産物(NM_001853.3)は32のエクソンから成る。
遺伝子とタンパク質の情報に関する概要の詳細については、表Aの「遺伝子」の欄を参照されたい。
病的バリアント
常染色体潜性遺伝型のStickler症候群をもつ3人の同胞において、COL9A3の機能喪失型バリアントのホモ接合が報告されている[Faletraら2014]。
正常遺伝子産物
COL9A3は、Ⅸ型コラーゲンα3鎖の680のアミノ酸をコードする。
Ⅸ型コラーゲンは、硝子軟骨・眼の硝子体・椎間板の構成要素である。
異常遺伝子産物
両アレルの病的バリアントにより、機能喪失が生じると考えられる。
Gene Reviews著者: Nathaniel H Robin, MD,Rocio T Moran MD,and Leena Ala-Kokko, MD, PhD
日本語訳者: 佐藤康守(たい矯正歯科)、水上都(札幌医科大学医学部遺伝医学)
GeneReviews最終更新日: 2021.5.6. 日本語訳最終更新日: 2022.10.1. [in present]