頭蓋骨硬化を伴う骨線条症
(Osteopathia Striata with Cranial Sclerosis)

[Synoyms: Horan-Beighton Syndrome, OS-CS]

Gene Reviews著者: Russell Gear, MBChB and Ravi Savarirayan, MBBS, MD, FRACP, ARCPA (Hon).
日本語訳者: 佐藤康守(たい矯正歯科)、櫻井晃洋(札幌医科大学医学部遺伝医学)

GeneReviews最終更新日: 2021.4.15. 日本語訳最終更新日: 2023.2.10

原文: Osteopathia Striata with Cranial Sclerosis


要約

頭蓋骨硬化を伴う骨線条症(OS-CS)を有する女性の大多数は、大頭症、ならびに特徴的顔面症候(前額部の突出,眼間開離,内眼角贅皮,低い鼻梁,目立つ顎)を呈する。約半数は、口腔顔面裂や難聴といった症候を併せて有し、さらに一部は一定程度の発達遅滞(通常は軽度)を伴う。X線写真でみられる頭蓋骨硬化、長管骨の硬化、骨幹端の線条(これらに大頭症が加わる)は、本疾患特異的所見とみなすことができそうである。
男性は、軽度の表現型にとどまる場合もあれば、重度の表現型を示す場合もある。
男性の軽症例でみられる臨床症候は女性例の場合と同様で、大頭症、特徴的顔面症候、口腔顔面裂、難聴、軽度から中等度の学習障害といったものを呈する。軽症男性の場合は、女性例より、先天奇形や筋骨格異常を有する割合が高い。軽症男性にみられるX線写真所見としては、頭蓋骨硬化ならびに長管骨の硬化がある。骨幹端の線条は、AMER1の病的バリアントをモザイクで有する男性において、より高頻度にみられる。
重度の表現型を呈する男性は、多発奇形症候群の形で現れ、妊娠中期から後期、あるいは新生児期に死亡する。具体的な先天奇形としては、骨格奇形(多合指趾,腓骨の欠損ないし低形成)、先天性心疾患、脳奇形、尿路性器奇形、消化器奇形などがある。大頭症は現れないこともあり、また、骨幹端の縦の線条については、AMER1の病的バリアントをモザイクで有する例を除き、男性の重症例ではみられない。

疾患の特徴

女性発端者におけるOS-CSの診断は、特徴的症候を有することに加え、分子遺伝学的検査にてAMER1の病的バリアントのヘテロ接合を同定することで確定する。男性発端者におけるOS-CSの診断は、特徴的症候を有することに加え、分子遺伝学的検査にてAMER1の病的バリアントのヘミ接合を同定することで確定する。

診断・検査

HIGM1の診断は、臨床所見、家族歴、白血球の試験管内刺激後のフローサイトメトリーでのCD40リガンド(CD40L)タンパク質の発現の欠損または減少、およびHIGM1の原因変異が知られる唯一の遺伝子であるCD40LG (以前にはTNFSF5もしくはCD154として知られた)の分子遺伝学的検査の組み合わせに基づいて行われる。全コード領域およびイントロン/エクソン境界のダイレクトシークエンスは、罹患男性の約95 %において変異を検出する。

臨床的マネジメント 

治療:
脊柱側彎については、整形外科医が管理を行う。関節拘縮については理学療法が有用なことがある。顔面裂については耳鼻咽喉科医が管理を行う。視力障害の管理は眼科医が行い、神経圧迫については、必要に応じ脳神経外科手術を行う。必要に応じ、早期介入サービスや特別支援教育を行う。心奇形、尿路性器奇形、消化器奇形、ならびにWilms腫瘍その他の悪性腫瘍については、標準治療を行う。

定期的追跡評価:
脊柱側彎、関節拘縮、疲労骨折、持続性骨痛などの骨格症候に関しては、年に1度の臨床的評価を行う。硬化性骨疾患に起因する脳神経圧迫の徴候に関し、年に1度、聴覚評価ならびに眼科的評価を行う。Wilms腫瘍のスクリーニングのため、7歳に達するまでは、3ヵ月に1度の腹部超音波検査を検討する。

遺伝カウンセリング

OS-CSはX連鎖性の遺伝形式をとる。男性発端者の同胞が有するリスクは、母親の遺伝的状態によって変わってくる。一方、女性発端者の同胞が有するリスクは、父親ならびに母親の遺伝的状態によって変わってくる。発端者の母親がAMER1の病的バリアントを有していた場合、妊娠に際してそれを子に伝達する可能性は50%である。発端者の父親がAMER1の病的バリアントを有していた場合は、すべての娘に対してAMER1の病的バリアントを伝達することになるが、息子に対してこれを伝達することはない(現在のところ、父性の伝達は、モザイクの父親からの複数の伝達例が報告されているのみである)。AMER1の病的バリアントを継承した女性はヘテロ接合者となり、OS-CSの症候が多様な幅で現れる。一方、病的バリアントを継承した男性はヘミ接合者となり、妊娠中期・後期から新生児期に死亡するものから軽度の表現型を示すものまで、さまざまな現れ方をする。家系内に存在するAMER1の病的バリアントが同定された場合は、出生前検査や着床前遺伝子検査が可能となる。
                                                                                                             


診断

今のところ、頭蓋骨硬化を伴う骨線条症(OS-CS)に関する合意済の臨床診断基準として公表されたものは存在しないが、大頭症、頭蓋骨硬化、長管骨骨幹端の縦の線条という組み合わせは、本疾患に高度に特徴的なものと考えられている。

本疾患を示唆する所見

以下のような臨床所見とX線写真所見を有する例については、OS-CSを疑う必要がある。

罹患女性ならびにモザイクないし軽症男性

臨床所見

X線写真所見

(注:骨端部の線条は、モザイクの男性ではみられるものの、非モザイクの男性ではふつうみられない。)

重症男性

臨床所見

画像所見

診断の確定

女性発端者

女性発端者におけるOS-CSの診断は、これを示唆する所見を有することをもって確定する。そして、分子遺伝学的検査でAMER1の病的バリアントのヘテロ接合を同定することで、それを確認することができる(表1参照)。

男性発端者

男性発端者におけるOS-CSの診断は、これを示唆する所見を有することをもって確定する。そして、分子遺伝学的検査でAMER1の病的バリアントのヘミ接合を同定することで、それを確認することができる(表1参照)。
注:AMER1に意義不明のバリアントのヘテロ接合/ヘミ接合が検出された場合、それは本疾患の診断を確定させるものでも否定するものでもない。
分子遺伝学的検査のアプローチとしては、単一遺伝子検査、染色体マイクロアレイ解析、マルチ遺伝子パネル、網羅的ゲノム検査などが考えられる。

最初に、遺伝子内の小欠失/挿入、ミスセンス・ナンセンス・スプライス部位バリアントといったものを検出するためのAMER1の配列解析を行うようにする。
注:使用する配列解析の手法によっては、1エクソン、複数エクソン、遺伝子全体といったサイズの欠失/重複が検出されないことがある。そのため、配列解析でバリアントが検出されなかった場合は、次のステップとして、エクソン単位や遺伝子全体の欠失/重複を検出するための遺伝子標的型欠失/重複解析を行う。

染色体マイクロアレイ解析は、オリゴヌクレオチドアレイもしくはSNPアレイを用いて、配列解析では検出できないような大きな欠失/重複(AMER1を含む欠失/重複)をゲノムワイドに検出しようというものである。

現況の表現型と直接関係のない遺伝子における意義不明バリアントや病的バリアントの検出を抑えつつ、疾患の遺伝的原因を特定することに最もつながりやすいと思われるのは、AMER1ならびにその他の関連遺伝子(「鑑別診断」の項を参照)を含むマルチ遺伝子パネルである。
注:(1)パネルに含められる遺伝子の内容、ならびに個々の遺伝子について行う検査の診断上の感度については、検査機関によってばらつきがみられ、また、経時的に変更されていく可能性がある。
(2)マルチ遺伝子パネルによっては、このGeneReviewで取り上げている状況と無関係な遺伝子が含まれることがある。
(3)検査機関によっては、パネルの内容が、その機関の定めた定型のパネルであったり、表現型ごとに定めたものの中で臨床医の指定した遺伝子を含む定型のエクソーム解析であったりすることがある。
(4)ある1つのパネルに対して適用される手法には、配列解析、欠失/重複解析、ないしその他の非配列ベースの検査などがある。
マルチ遺伝子パネル検査の基礎的情報についてはここをクリック。遺伝学的検査をオーダーする臨床医に対する、より詳細な情報についてはここをクリック。

表現型だけでは、その他数多く存在する骨系統疾患と区別が難しい場合、網羅的ゲノム検査を用いることになるが、この場合、関与している遺伝子の目星を臨床医の側でつけておく必要はない。エクソームシーケンシングが最も広く用いられているが、ゲノムシーケンシングを用いることも可能である。
網羅的ゲノム検査の基礎的情報についてはここをクリック。ゲノム検査をオーダーする臨床医に対する、より詳細な情報についてはここをクリック。

表1:頭蓋骨硬化を伴う骨線条症で用いられる分子遺伝学的検査

遺伝子1 方法 その手法で病的バリアント2が検出される発端者の割合
AMER1 配列解析3 75%近く4
遺伝子標的型欠失/重複解析5 25%近く4
CMA6 脚注7参照
  1. 染色体上の座位ならびにタンパク質に関しては、表A「遺伝子とデータベース」を参照。
  2. この遺伝子で検出されているバリアントの情報については、「分子遺伝学」の項を参照のこと。
  3. 配列解析を行うことで、良性、おそらく良性、意義不明、おそらく病的、病的といったバリアントが検出される。バリアントの種類としては、遺伝子内の小さな欠失/挿入、ミスセンス・ナンセンス・スプライス部位バリアントなどがあるが、通常、エクソン単位あるいは遺伝子全体の欠失/重複については検出されない。
  4. 配列解析の結果の解釈に際して留意すべき事項についてはこちらをクリック。

  5. このデータは、論文の形で公表された約90の病的バリアントのレビュー[著者自身のまとめ]、公表されている少数例の報告[Jenkinsら2009,Perduら2011]で示されたデータ、ヒト遺伝子変異データベース(HGMD)[Stensonら2017]の購読ベースの専門家向けデータをまとめたもの。
  6. 遺伝子標的型欠失/重複解析では、遺伝子内の欠失や重複が検出される。具体的手法としては、定量的PCR、ロングレンジPCR、MLPA法、あるいは単一エクソンの欠失/重複の検出を目的に設計された遺伝子標的型マイクロアレイなど、さまざまなものがある。
  7. 染色体マイクロアレイ解析(CMA)は、オリゴヌクレオチドアレイもしくはSNPアレイを用いて、配列解析では検出できないような大きな欠失/重複(AMER1を含む欠失/重複)をゲノムワイドに検出しようというものである。検出しうる欠失/重複のサイズは、使用するマイクロアレイのタイプ、ならびに、Xq11.2領域のプローブの密度によって決まってくる。現在、臨床で使用されているCMAは、Xq11.2を対象とするデザインになっている。
  8. OS-CSの症候を示す複数例で、AMER1を含む隣接遺伝子欠失が確認されたとの報告がみられる[Chénierら2012,Hermanら2013,Holmanら2013]。AMER1とその隣接遺伝子であるARHGEF9MTMR8までを包含する隣接遺伝子欠失を有する女性は、知的障害を伴うOS-CSを引き起こすようである。AMER1ASB12のみの欠失については、知的障害を伴わないとの報告がみられる[Holmanら2013]。

臨床的特徴

臨床像

臨床像
AMER1の病的バリアントを有する例は、現在までに約90人が医学文献中に報告されている[Jenkinsら2009;Perduら2011;著者自身のまとめ]。本疾患に関連して現れる症候として以下に述べるものは、これらの報告を基にしたものである。

表2:頭蓋骨硬化を伴う骨線条症:女性例ならびに軽度罹患男性例でみられる代表的症候の出現頻度

症候 その症候を有する罹患者の割合1 コメント
頭蓋骨硬化 100%  
長管骨の硬化 100%  
骨幹端の線条 ~95% 女性ならびにモザイクの男性に現れ、非モザイクの男性ではみられない。
特徴的顔面症候 ~90% 前額部の突出,眼間開離,内眼角贅皮,低い鼻梁
大頭症 ~80% 絶対値としての大頭症、あるいは相対的大頭症
口腔顔面裂 ~50% 口蓋裂あるいは口唇口蓋裂
難聴 ~50% 伝音性ないし感音性
軽度の発達遅滞 ~30% 重度の発達遅滞は稀
先天性心疾患 ~25%  
Wilms腫瘍2 ~5%3 これ以外に、肝芽腫,成人期に発症した直腸結腸癌,成人期に発症した卵巣癌の報告がみられる。
  1. AMER1の病的バリアントを有するOS-CSとして報告された約90例のレビュー。
  2. Wilms腫瘍との関連(おそらく他の癌との関連についても)は、近年明らかになってきた症候で、本疾患に関する以前の理解から一歩踏み出すものとなっている。
  3. 最近公表されたデータからの推定[Bachら2021]。

女性罹患者

頭蓋骨硬化を伴う骨線条症(OS-CS)罹患女性は、大頭症と特徴的顔面症候(前額部の突出,眼間開離,内眼角贅皮,低い鼻梁)を呈する。約半数に口腔顔面裂や難聴などの関連症候がみられ、少ないながら発達遅滞(ふつうは軽度)を有する例もみられる。X線写真でみられる頭蓋骨硬化、長骨の硬化、骨幹端の線条に加えて大頭症がみられる場合、これは本疾患特異的なものとみなすことができる。

頭蓋のX線写真で観察され、頭蓋冠に最も顕著にみられる。出生時すでにみられることがあり、通常その後、進行性の経過をとる。

骨盤、ならびに大腿骨・上腕骨骨幹のX線写真での観察が最も容易である。出生時すでにみられることがあり、通常その後、進行性の経過をとる。

骨盤、大腿骨近位部ならびに遠位部、脛骨近位部、上腕骨のX線写真での観察が最も容易である。出生前の段階ですでにみられることもあるが、通常は小児期に明らかになっていく。

最も多くみられるのは、前額部の突出、眼間開離、内眼角贅皮、低い鼻梁である。これらの症候は出生時すでにみられる場合もあるが、通常は年齢とともにより悪化の度を強め、特に前額部の突出についてはそれが言える。

大頭症は通常、出生後に始まり、頭蓋骨硬化に関連して生じるものである。絶対値としての大頭症(+2.5SD超)だけでなく、身長あるいは体重との関連でみたときの相対的大頭症であることもある。

多くの骨系統疾患と異なり、OS-CSの女性については低身長を呈することが少ない。

通常は硬口蓋の裂であるが、口蓋垂裂の例もみられる。

伝音性難聴と感音性難聴の両方がみられる。難聴がみられるのは、女性例の約50%である[Jenkinsら2009,Perduら2011]。

稀に、骨硬化に起因する視神経圧迫により視力障害が生じることがあり、顔面神経麻痺の報告もみられる。これは進行性である場合があり、通常、思春期後期や成人初期に発症する。

OS-CS罹患女性の多くは正常な知能を有し、一部(30%)に軽度の学習障害がみられる[Jenkinsら2009,Perduら2011]。重度の学習障害がみられた女性が1例報告されている[Jenkinsら2009]。

OS-CS罹患女性の約25%が構造的心奇形を有している[Jenkinsら2009,Perduら2011]。心房中隔欠損、心室中隔欠損、動脈管開存が最も多く報告されている構造奇形である。

OS-CSと癌との関連を示す報告が積み上がってきつつある。現在のところ、癌が報告されているのは女性のOS-CS罹患者のみである。具体的には、小児期に発症したWilms腫瘍が4例、そのうちの1人は両側性の腫瘍[Sperottoら2017,Bachら2021]で、その他に、小児期に発症した肝芽腫が1例[Fujitaら2014]、成人期に発症した結腸直腸癌が1例[Jenkinsら2009]、成人期に発症した卵巣癌が1例[Perduら2010]という内容である。

男性罹患者

男性については、軽度型と重度型という、明確に異なる2種類の表現型が存在するようである。

軽症表現型

軽症型の罹患男性の示す臨床症候は、罹患女性のそれと類似したものである。具体的には、大頭症、特徴的顔面症候、口腔顔面裂、難聴、軽度から重度の学習障害といったものである。ただ、軽症型の男性のほうが女性罹患者より、先天性の筋骨格奇形を有する例が多くみられる。軽症表現型を示す男性の中には、AMER1の病的バリアントをモザイクで有する例もあれば、非モザイクで有する例もみられる。この両者は、X線写真所見が明確に異なる。共通しているのは頭蓋骨硬化と長管骨の硬化であるが、骨幹端の線条については、モザイクの男性のほうに多くみられる。

これについては、頭蓋、骨盤、大腿骨、上腕骨のX線写真で最もはっきり見てとることができる。骨硬化については、女性の場合より顕著であるように見受けられる。その理由はおそらく、男性の場合は病的バリアントをヘミ接合で有するといった点にあるのであろう。

骨幹端の線条が認められたのは、非モザイクの男性は1例のみ[Holmanら2011]で、モザイク男性の数多く[Josephら2010,Perduら2011,Chénierら2012]と、Klinefelter症候群男性の1例[Fradinら2017]で認められている。骨幹端の線条は、骨盤、大腿骨、上腕骨のX線写真で最もはっきりと確認することができる(「病態生理」の項を参照)。

特徴的顔面症候として最も多くみられるのは、前額部の突出、眼間開離、内眼角贅皮、低い鼻梁である。

大頭症は、通常、頭蓋骨硬化に関連して出生後に発症する。絶対値としての大頭症を呈する(+3SD超)が、身長・体重比較での相対的大頭症にとどまる例もみられる。

OS-CS男性でみられるのは、ふつう、-2SDを下回る均衡型低身長である[Holmanら2011]。

口腔顔面裂は、軽度型の罹患男性の約66%にみられ、硬口蓋裂が最も多い[Holmanら2011,Perduら2011]。

伝音性・感音性両方の難聴が報告されている。難聴は、女性例より軽度型男性例のほうにより多く(85%近く)みられる[Holmanら2011,Perduら2011]。

稀に骨硬化に起因する視神経圧迫により、視力障害が生じることがある。また、顔面神経麻痺の報告もみられる。これは進行性のことがあり、発症時期は思春期後期や成人初期であることが多い。

学習障害の問題は、女性例より生存男性例のほうにより多くみられ、男性例の約80%が軽度から中等度の発達遅滞を示す[Holmanら2011,Perduら2011,Chénierら2012,Hagueら2017]。

軽症型の男性には、脊柱側彎(これは進行性である場合あり)や関節拘縮が多くみられる[Holmanら2011]。

軽症男性の約半数に先天性心疾患がみられる[Perduら2011]。軽症男性のコホートでは、脳室拡大や部分性脳梁無形成などの脳奇形もみられている[Holmanら2011]。

重症表現型

重症表現型は多発奇形症候群として現れ、妊娠中期から後期、あるいは新生児期に死亡に至る[Holmanら2011,Perduら2011,Quélinら2015,Vasiljevicら2015]。重度型男性は、早期に死亡することもあり、女性例で報告されているほど多くの特徴的症候は示さないことが多い。特に、大頭症は必ずしも存在するわけではなく、また、骨幹端の縦の線条はみられない。重度型の男性は、四肢のパターン形成・骨格発生の障害(例えば、多合指趾や腓骨の欠損・低形成)、先天性心疾患、脳奇形、尿路性器奇形、消化器奇形等の多発奇形を有することが多い。

2家系で羊水過多が報告されており、その後の複数回の妊娠でも、やはり同じ羊水過多が生じている[Quélinら2015,Vasiljevicら2015]。

頭蓋骨硬化や骨盤・長管骨の硬化は、頭蓋、骨盤、大腿骨、上腕骨のX線写真で最もはっきり確認することができる。ただ、時にこうした所見がみられない例も存在する[Jenkinsら2009]。

重度型表現型の男性の約50%に大頭症がみられる。これは、絶対値としての大頭症であることも、相対的大頭症であることもある。

重度型表現型の男性の約50%に口蓋裂あるいは口唇口蓋裂がみられる[Holmanら2011,Perduら2011,Quélinら2015,Vasiljevicら2015]。

これまでに、前額部の突出、眼間開離、低い鼻梁、小下顎の報告がみられる[Holmanら2011,Perduら2011,Quélinら2015,Vasiljevicら2015]。

重症型男性の大多数でみられる顕著な所見として、両側性の腓骨欠損あるいは腓骨低形成が挙げられる[Holmanら2011,Quélinら2015,Vasiljevicら2015,Miら2020]。
多合指趾も多くみられる[Holmanら2011]。

脳室拡大[Holmanら2011]や脳梁の奇形が多くみられる。

重症型男性の約40%に先天性心疾患がみられる。具体的には、左心低形成、右心低形成、心室中隔欠損、心房中隔欠損、動脈管開存などが報告されている[Holmanら2011,Perduら2011]。

高エコー輝度腎、腎肥大、集尿系の異常といった非特異的腎奇形が多く報告されている[Holmanら2011,Vasiljevicら2015]。造腎組織遺残が、重度型罹患男性胎児の複数の剖検例で明らかになっている[Fukuzawaら2010,Holmanら2011,Vasiljevicら2015]。これがWilms腫瘍の発生に一定の役割を果たしている可能性が考えられる[Bachら2021]。

消化器系奇形としては、臍帯ヘルニアが最も多くみられるもので、次いで多いのが腸回転異常である[Holmanら2011,Quélinら2015,Vasiljevicら2015]。

病態生理

骨幹端の線条が生じる原因は、骨芽細胞の細胞株が2種類存在し、それらがそれぞれ独立して機能するためであるとの仮説がある[Rottら2003]。そうした事態がどのようにして起きるのかというと、女性の場合はX染色体の選択的不活化であり、男性の場合はAMER1の病的バリアントのモザイクである。非モザイクでAMER1の病的バリアントを有する罹患男性には骨芽細胞の細胞株が1つしかなく、X線写真でみられる骨幹端の線条が形成されないという事実の背景は、この仮説で説明できるように思われる。

遺伝型-表現型相関

AMER1に関し、確認済の遺伝型-表現型相関は存在しない。
初期の報告で、AMER1の5’末端にトランケーションバリアントが生じた場合に重度の表現型が生じるとするものがみられたが、すでにそれは否定されている[Perduら2010,Perduら2011]。

浸透率

同一家系内にあっても、表現型の表現度や重症度には大きな幅がみられる。それでも、浸透率は100%であるように思われる。

命名法について

AMER1は、以前、WTXFAM123Bという名で呼ばれたこともある。
OS-CSは、線条を伴う全身性骨増殖症(hyperostosis generalisata with striations)という名でも知られている。

発生頻度

分子レベルでの確認がなされたOS-CS罹患者は、現在のところ約90人である[著者の個人的意見]。


遺伝学的に関連のある疾患(同一アレル疾患)

生殖細胞系列におけるAMER1の病的バリアントに起因して生じるものとしては、本GeneReviewで述べたもの以外の表現型は知られていない。

頭蓋骨硬化を伴う骨線条症の所見を示さず、単一の腫瘍として生じる散発性腫瘍(Wilms腫瘍を含む)において、生殖細胞系列にではなく体細胞中にAMER1のバリアントが見出される例が多く存在する。こうした例において、これらの腫瘍に関する素因が継承されるわけではない。より詳しい情報については、「癌ならびに良性腫瘍」の項を参照されたい。


鑑別診断

女性ならびに軽症型男性

OS-CS女性(ならびに軽症型男性)でみられるものによく似た硬化性骨病変を呈する疾患群を表3にまとめた。OS-CSとの鑑別診断を検討すべきその他の疾患については、骨系統疾患国際分類[Mortierら2019]2019年版のグループ23―「大理石骨病と関連疾患」とグループ24―「他の骨硬化性骨疾患」を併せて参照されたい。

重症型男性

重症型表現型の男性は、多発奇形を示し、なおかつ通常は骨幹端の線条が現れない。そのため、鑑別診断の範囲は非常に広くなる。胎児期あるいは新生児期に多発奇形がみられる遺伝子のリストの中に、AMER1も加えるべきであろう。

表3:頭蓋骨硬化を伴う骨線条症との鑑別診断に関係する遺伝子

遺伝子 鑑別対象疾患

遺伝形式

鑑別対象疾患の臨床症候

OS-CSと重なる症候

OS-CSと異なる症候

ANKH

頭蓋骨幹端異形成症,常染色体顕性

AD

頭蓋骨の骨硬化

  • 末広がりの骨幹端
  • 骨幹端の線条がみられない

CA2
CLCN7
LPR5
OSTM1
PLEKHM1
SNX10
TCIRG1
TNFRSF11A
TNFSF11

大理石骨病1
(OMIM PS259700 & PS607634)

AR
AD

頭蓋骨と長骨の骨硬化

  • 形態異常がみられない
  • よりびまん性の長管骨硬化
  • 骨幹端の線条がみられない

GJA1

頭蓋骨幹端異形成症,常染色体潜性(OMIM 218400)

AR

頭蓋骨の骨硬化

  • 骨幹端の幅の拡大
  • 骨幹端の線条がみられない

LRP4

硬化性骨症2
(OMIM 614305)

AD
AR

骨硬化

  • 形態異常がみられない
  • 骨幹端の線条がみられない

PORCN

巣状皮膚低形成(Goltz症候群)

XL

骨幹端の線条

  • 外胚葉症候
  • 四肢奇形
  • 眼症候

SOST

骨内膜性骨増殖症,van Buchem型(van Buchem病;「SOST関連硬化性骨異形成症」のGeneReviewを参照)

AR

骨硬化

  • 骨幹端の線条がみられない
  • 進行性の骨格過成長
  • 高ホスファターゼ血症

頭蓋骨幹異形成症(OMIM 122860)

AD

骨硬化;脳神経絞扼を伴う頭蓋顔面骨の進行性過成長

  • 骨幹端の線条がみられない
  • 皮質内での長管骨骨幹の拡大
  • 後鼻孔狭窄の合併が多い

硬化性骨症(「SOST関連硬化性骨異形成症」のGeneReviewを参照)

AR

骨硬化

  • 骨幹端の線条がみられない
  • 第2-3指の合指,爪異形成

TGFB1

Camrati-Engelmann病(進行性骨幹異形成症)

AD

頭蓋や長骨の骨硬化

  • 骨幹端の線条がみられない
  • 顕著な長管骨骨幹の骨増殖症
  • 近位の筋の筋力低下と歩隔の広いあひる歩行

TONSL

SPONASTRIME骨異形成症(OMIM 271510)

AR

骨幹端の線条

  • 脊椎の変化
  • OS-CSにみられる顔面の特徴がみられない
  • 骨硬化がみられない

AD=常染色体顕性;AR=常染色体潜性;XL=X連鎖性

  1. 骨系統疾患国際分類2019年版の、グループ23―「大理石骨病と関連疾患」と、グループ24―「他の骨硬化性骨疾患」を併せて参照[Mortierら2019]。

Voorhoeve病(線条性骨症)

Voorhoeve病は、骨幹端の線条が単独で現れることが特徴である。OS-CSと異なり、Voorhoeve病では頭蓋骨硬化や大頭症はみられない。Voorhoeve病は常染色体顕性の継承を示すか、もしくは家系内における孤発例として出現する。原因遺伝子は明らかになっていない。

 


臨床的マネジメント

今のところ、頭蓋骨硬化を伴う骨線条症(OS-CS)に関する合意済の臨床診断基準として公表されたものは存在しない。

最初の診断に続いて行う評価

OS-CSと診断された罹患者については、疾患の範囲やニーズを把握するため、診断に至る過程ですでに実施済でなければ、表4にまとめた評価を行うことが推奨される。

表4:頭蓋骨硬化を伴う骨線条症の最初の診断後に行うことが推奨される評価

系/懸念事項 評価 コメント
筋骨格 骨格評価―長骨と頭蓋骨 骨硬化,骨幹端の線条に関する評価を目的として行う。
脊柱側彎と関節拘縮に関する臨床的評価  
耳鼻咽喉 耳鼻咽喉科的評価 口腔顔面裂の評価を目的として行う。
聴覚 聴覚評価 難聴の評価を目的として行う。
眼科的評価 視神経圧迫の評価を目的として行う。
体格 成長評価 生存している男性について、低身長(女性は比較的稀)の評価を目的として行う。
認知 発達評価  
心臓 心エコーを含む心評価 女性ならびに生存している男性について、構造的心疾患の評価を目的として行う。
腎超音波検査 ・生存している男性について、腎奇形の評価を目的として行う。
・造腎組織遺残やWilms腫瘍の評価を目的として、男女について行う。
神経 脳のMRIを含む神経学的評価 生存している男性について、中枢神経系奇形の評価を目的として行う。
消化器 臨床的必要性に応じ、回転異常を調べるための画像診断  
遺伝カウンセリング 遺伝の専門医療職1の手で行う。 医学的、個人的な意思決定の用に資するべく、本人や家族に対し、OS-CSの本質、遺伝形式、そのもつ意味についての情報提供を行う。
家族への支援/情報資源 以下の必要性に関する評価を行う。
  • 地域の情報資源や、「Parent to Parent」等のオンラインの情報資源
  • 親の支援のためのソーシャルワーカーの関与
    ・在宅看護への紹介
 

  1. 臨床遺伝医、認定遺伝カウンセラー、認定上級遺伝看護師をいう。

症候に対する治療

小児科医、臨床遺伝医、整形外科医、耳鼻咽喉科医、さらに先天奇形が存在する場合はそれぞれの専門家も含めたスペシャリストによる集学的管理が推奨される。

表5:頭蓋骨硬化を伴う骨線条症罹患者の症候に対する治療

症候/懸念事項 治療 考慮事項/その他
脊柱側彎 整形外科医による管理  
関節拘縮 理学療法が有用な場合あり  
口腔顔面裂 耳鼻咽喉科医による管理  
難聴
  • 聴覚士による管理
  • 言語治療
  • 背景に神経孔の圧迫が関与している場合は、症例により耳鼻咽喉科医による外科的管理を考慮
  • 難聴者に向けた地域サービスや支援グループあり。
  • 骨硬化が手術の障害になる場合がある[Katsevmanら2016]。
    OS-CSにおける脳神経孔の外科的減圧術の有用性は確立されていない。
視覚障害 眼科医による管理 視覚障害者に向けた地域サービスや支援グループあり。
脳神経外科医の手で外科的管理を行うか否かは、症例ごとに判断 骨硬化が手術の障害になる場合がある[Katsevmanら2016]。
OS-CSにおける脳神経孔の外科的減圧術の有用性は確立されていない。
認知 必要に応じ、早期介入プログラムのサービスや特別支援教育のサービス  
心奇形 心臓病専門医による治療  
尿路性器奇形 泌尿器科医ないし腎臓専門医による治療  
消化器奇形 消化器専門医による治療、ないし手術  
Wilms腫瘍その他の悪性腫瘍 標準治療  

定期的追跡評価

表6:頭蓋骨硬化を伴う骨線条症罹患者で推奨される定期的追跡評価

系/懸念事項 評価 実施頻度
筋骨格 脊柱側彎と関節拘縮に関する臨床評価 年に1度、もしくは必要に応じて。
聴覚 聴覚評価
視覚 眼科的評価
認知 発達評価
Wilms腫瘍 腹部超音波検査 OS-CS特異的なガイドラインが確立されるまでの間は、Beckwith-Wiedemann症候群のガイドラインに準じて7歳まで3ヵ月ごとに行う1。
  1. OS-CSとWilms腫瘍との関連は、ごく最近明らかになったばかりである[Bachら2021]。そのため、OS-CS特異的な追跡評価のガイドラインのための基礎的データが蓄積されるまでの間は、Beckwith-Wiedemann症候群のガイドラインに従った追跡評価が推奨されている[Brioudeら2018,Bachら2021,Professor Stephen Robertsonとの個人通信に基づく著者の私見]。

リスクを有する血縁者の評価

聴覚・視覚障害や先天性心疾患の早期診断・早期治療、癌に関する追跡評価、先天奇形の総合的チェック(男性について)といったことにより利益が得られる人を可能な限り早期に特定するため、リスクを有する血縁者については、見かけ上無症状であっても、また罹患者より年上であるか年下であるかを問わず、その遺伝的状態を明確にしておくことが適切である。
リスクを有する血族に対して行う遺伝カウンセリングを目的とした検査関連の事項については、「遺伝カウンセリング」の項を参照されたい。

妊娠に関する管理

OS-CS特異的な妊娠管理のあり方というものは存在しないものの、骨系統疾患の罹患者である妊婦についての管理のガイドライン[Savarirayanら2018]は参考にすべきであろう。

研究段階の治療

さまざまな疾患・状況に対して進行中の臨床試験に関する情報については、アメリカの「Clinical Trials.gov」、ならびにヨーロッパの「EU Clinical Trials Register」を参照されたい。
注:現時点で本疾患に関する臨床試験が行われているとは限らない。


遺伝カウンセリング

「遺伝カウンセリングは個人や家族に対して遺伝性疾患の本質,遺伝,健康上の影響などの情報を提供し,彼らが医療上あるいは個人的な決断を下すのを援助するプロセスである.以下の項目では遺伝的なリスク評価や家族の遺伝学的状況を明らかにするための家族歴の評価,遺伝学的検査について論じる.この項は個々の当事者が直面しうる個人的あるいは文化的、倫理的な問題に言及しようと意図するものではないし,遺伝専門家へのコンサルトの代用となるものでもない.」

遺伝形式

頭蓋骨硬化を伴う骨線条症(OS-CS)はX連鎖性の遺伝形式をとる。

家族構成員のリスク

男性発端者の親

男性発端者の同胞

同胞の有するリスクは、母親の遺伝的状態によって変わってくる。

文献で報告された男性例のうち、約半数は、妊娠中期・後期、ないし新生児期に死亡している。ただ、男性の場合は非特異的な多発奇形を有していて正しく診断されていない可能性が高いことから、死亡頻度は過少に報告されているものと思われる。男性の報告例が少ないことから考えて、早期に流産が生じている可能性も考えられる。

女性発端者の親

女性発端者の同胞

同胞の有するリスクは、両親の遺伝的状態によって変わってくる。

文献で報告された男性例のうち、約半数は、妊娠中期・後期、ないし新生児期に死亡している。ただ、男性の場合は非特異的な多発奇形を有していて正しく診断されていない可能性が高いことから、死亡頻度は過少に報告されているものと思われる。
男性の報告例が少ないことから考えて、早期に流産が生じている可能性も考えられる。

男性発端者の子

AMER1の病的バリアントを有する男性は、すべての娘にこれを伝達する一方、息子には一切これを伝達することがない。

女性発端者の子

AMER1の病的バリアントを有する女性は、それぞれの子に対し、病的バリアントを伝達する50%の可能性を有している。

他の血族

発端者の母親がAMER1の病的バリアントをヘテロで有していた場合(それから、理論上の話ではあるが、発端者の父親がAMER1の病的バリアントをヘミ接合で有していた場合)、その血族にあたる人はすべて、罹患者であることに関しリスクを有することになる。

注:分子遺伝学的検査を行うことで、de novoの病的バリアントが家系内で最初に生じた人を特定できる可能性がある。これがわかることで、家系内の広い範囲の人の遺伝的リスクの状態を明らかにしうる可能性が出てくる。

関連する遺伝カウンセリング上の諸事項

早期診断・早期治療を目的として、リスクを有する血縁者に対して行われる評価関連の情報については、「臨床的マネジメント」の中の「リスクを有する血縁者の評価」の項を参照されたい。

家族計画

DNAバンキング

検査の手法であるとか、遺伝子・病原メカニズム・疾患等に対するわれわれの理解が、将来はより進歩していくことが予想される。そのため、分子診断の確定していない(すなわち、原因となった病原メカニズムが未解明の)発端者のDNAについては、保存しておくことを検討すべきである。

出生前検査ならびに着床前遺伝学的検査

家系内に存在するAMER1の病的バリアントが同定されている場合は、出生前検査や着床前遺伝学的検査を行うことが可能である。
 出生前検査の利用に関しては、医療者間でも、また家族内でも、さまざまな見方がある。
現在、多くの医療機関では、出生前検査を個人の決断に委ねられるべきものと考えているようであるが、こうした問題に関しては、もう少し議論を深める必要があろう。


関連情報

GeneReviewsスタッフは、この疾患を持つ患者および家族に役立つ以下の疾患特異的な支援団体/上部支援団体/登録を選択した。GeneReviewsは、他の組織によって提供される情報には責任をもたない。選択基準における情報についてはここをクリック。

Phone: 866-337-5220 (toll-free); 202-337-5221 (TTY)
Fax: 202-337-8314
Email: info@agbell.org
Listening and Spoken Language Knowledge Center

Phone: 800-942-2732 (ASDC)
Email: info@deafchildren.org
www.deafchildren.org

Phone: 301-587-1788 (Purple/ZVRS); 301-328-1443 (Sorenson); 301-338-6380 (Convo)
Fax: 301-587-1791
Email: nad.info@nad.org
www.nad.org

Phone: 310-825-8998
International Skeletal Dysplasia Registry


分子遺伝学

分子遺伝学とOMIMの表の情報はGeneReviewsの他の場所の情報とは異なるかもしれない。表は、より最新の情報を含むことがある。

表A:頭蓋骨硬化を伴う骨線条症:遺伝子とデータベース

遺伝子 染色体上の座位 タンパク質 Locus-Specificデータベース HGMD ClinVar
AMER1 Xq11​.2 APC膜リクルートメントタンパク質1 FAM123B @ LOVD AMER1 AMER1

データは、以下の標準資料から作成したものである。
遺伝子についてはHGNCから、染色体上の座位についてはOMIMから、タンパク質についてはUniProtから。
リンクが張られているデータベース(Locus-Specific,HGMD,ClinVar)の説明についてはこちらをクリック。

表B:頭蓋骨硬化を伴う骨線条症関連のOMIMエントリー(閲覧はすべてOMIMへ)

300373 OSTEOPATHIA STRIATA WITH CRANIAL SCLEROSIS; OSCS
300647 APC MEMBRANE RECRUITMENT PROTEIN 1; AMER1

分子レベルでの病原

AMER1FAM123BあるいはWTXの名でも知られる)は大腸腺腫症膜リクルートメントタンパク質1をコードしている。
AMER1タンパク質は、β-カテニンのユビキチン化と分解を通じて古典的WNTシグナル伝達経路に対し阻害作用を発揮する[Tannabergerら2011]。WNTシグナル伝達経路は、体軸のパターニングや骨の形態形成などを含めた幅広い細胞プロセスに作用する。この経路が上向きないし下向き調節を受けることで、広い範囲の表現型が現れる可能性が考えられる[Huybrechtsら2020]。
AMER1の発現低下(例えば、機能喪失型バリアントによる発現低下)が生じると、核内にβ-カテニンが蓄積することになる。その結果、WNTシグナル伝達経路や骨芽細胞機能が上向き調節を受け、骨硬化という形で現れることになる[Miら2020]。
骨幹端の線条については、独立して機能する2つの骨芽細胞株が存在するためであると考えることができる[Rottら2003]。2つの骨芽細胞株ができる理由は、1つには女性におけるX染色体の選択的不活化であり、もう1つは男性におけるAMER1の病的バリアントのモザイクである。AMER1の病的バリアントのヘミ接合を非モザイクで有する男性、すなわち骨芽細胞株を1つしかもたない男性で、X線写真で骨幹端の線条がみられない理由は、上記のような仮説で説明可能であるように思われる。

疾患の発症メカニズム
機能喪失型である。

AMER1特異的な検査技術上の考慮事項
AMER1には2つのエクソンがあり、最初のものはノンコーディングエクソンである。頭蓋骨硬化を伴う骨線条症(OS-CS)を引き起こす病的バリアントとしてこれまでに報告されているものは、ほぼすべて、エクソン2の生殖細胞系列のトランケーションバリアント、もしくは遺伝子全体の欠失である[著者自身の個人的見解]。
ただ、AMER1の非コードのエクソン1にみられた病的バリアントも2種類報告されており、これらについては従来型の配列解析手法では捕捉されない可能性がある[Miら2020]。
男性のモザイクが数例報告されており[Josephら2010,Holmanら2011,Perduら2011,Chénierら2012,Hagueら2017]、Klinefelter症候群男性例も1例報告されている[Fradinら2017]。病的バリアントのモザイクが疑われる場合には、細胞株の選択、手法の選択、シーケンシング深度の拡大といった形での対応を検討する必要がある。

癌ならびに良性腫瘍
体細胞性のAMER1バリアントは、Wilms腫瘍の15%-30%にみられる。そして、間葉系腫瘍と上皮性腫瘍とでは半々の割合でみられる[Fukuzawaら2009]。
初期の研究で、生殖細胞系列のAMER1バリアントはWilms腫瘍の素因にはならないとされていたが、最近、Wilms腫瘍の4例(うち1例は両側性)が報告され、両者の関連性が示唆されている[Bachら2021]。


更新履歴:

  1. Gene Reviews著者: Russell Gear, MBChB and Ravi Savarirayan, MBBS, MD, FRACP, ARCPA (Hon).
    日本語訳者: 佐藤康守(たい矯正歯科)、櫻井晃洋(札幌医科大学医学部遺伝医学)
    GeneReviews最終更新日: 2021.4.15. 日本語訳最終更新日: 2023.2.10[in present]

原文: Osteopathia Striata with Cranial Sclerosis

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