家族性高インスリン血症
(Familial Hyperinsulinism)

[Synonyms:Congenital Hyperinsulinism (CHI), Persistent Hyperinsulinemic Hypoglycemia of Infancy (PHHI)]

Gene Reviews著者: David Gillis, MD.
日本語訳者: 西村直人(横浜南共済病院 小児科)

GeneReviews最終更新日: 2019.3.21.  日本語訳最終更新日: 2023.4.24.

原文: Familial Hyperinsulinism


要約

 

本概説の目的は、家族性高インスリン血症(GeneReviewではFHIと表記)とその遺伝学的要因
および管理に関する臨床医の認識を高めることである。本概説の目的は以下の通りである。

目標1.FHIの臨床的特徴について述べること。
目標2.FHIの遺伝学的要因に関するレビューを行うこと。
目標3.FHI発端者の遺伝学的要因を特定するための評価戦略を提供すること。 (可能な場合)
目標4.遺伝学的要因やリスクのある親族の評価に基づいて、FHIの医学的管理を情報共有すること。 (可能な場合)
目標5. FHIの早期発見および治療のために、リスク評価とリスクのある親族のサーベイランスについて情報共有すること。


1. 家族性高インスリン血症の臨床的特徴

臨床診断

臨床症状について

家族性高インスリン血症(FHI)は、重症の新生児期発症から軽症の小児期発症までの低血糖を特徴とする。新生児期発症の場合、生後数時間から数日で症状が現れる。新生児期には、けいれん、筋緊張低下、哺乳不良、および無呼吸などの非特異的な症状が現れることがある。小児期発症の場合、生後数ヶ月から数年の間に症状が現れ、非誘発性発作や、経口摂取量が低下している急性期疾患中に低血糖を呈することがある。無症状の患者もいる。同じ家族内でも、症状は軽症から重症まで、臨床症状は出生直後から小児期の終わりまで様々である。

検査の特徴

ほとんどの患者は、自発的な低血糖のエピソード、または空腹時の血液と尿の検体に基づいて適切な検査が実施されれば、FHIを確定的かつ迅速に診断することができる(グルコース<50 mg/dL)(表1参照)。

表1.高インスリン血症の診断的検査

試料 検査項目 高インスリン血症で予想される検査結果
血液 インスリン 異常高値
Cペプチド 高値
遊離脂肪酸 異常低値
β-ヒドロキシ酪酸 異常低値
アセト酢酸 異常低値
乳酸 正常
カルニチン 正常
成長ホルモン 低血糖による上昇
コルチゾール 低血糖により上昇するが、常に上昇する
わけではなく、特に低血糖が短時間の場合
に上昇する 1
T4,T3,TSH 正常
アンモニア 高インスリン血症/高アンモニア血症
症候群でのみ上昇する
尿 ケトン体(低血糖時) 陰性
還元物質 陰性
Cペプチド 上昇

TSH=甲状腺刺激ホルモン
Elsevier社の許可を得て、Glaser et al [1999]から転載

  1. Hussain et al [2003]

グルカゴン刺激試験

0.03mg/kgのグルカゴン注射後に30mg/dL以上の血糖値反応があれば、一次的な肝臓あるいは代謝疾患は除外され、事実上高インスリン血症が証明される。

グルコース要求量を計算する

15mg/kg/分以上の必要量は、HIを強く示唆する(通常の必要量:新生児5~8mg/kg/分、年長の乳児または子供3~5mg/kg/分)。
注)インスリン分泌促進薬による誘発試験は危険な場合があり、禁忌である。

重症の場合

出生後まもなく現れる重症の新生児または幼児では、症候性低血糖(血漿グルコース濃度<2.7 mmol/L [50mg/dL])があるにもかかわらず、血漿インスリン濃度が不適切に上昇(>14.4pmol/L [2 μU/mL] )したという結果に基づいて、FHIと診断することができる。
注:(1) 「不適切なインスリン濃度の上昇」は、市販のインスリン測定器の特異度や感度に大きな差があるため、定義が困難である。文献に記載されている濃度は、カットオフとして受け止めてはならない。
(2) 病的な低血糖は、どの年齢層でも、特に新生児では定義されていない。

軽症の場合

一部の患者、特に生後数日または数週間以降に症状が現れる軽症の場合では、空腹時血漿インスリン濃度が大きく変動し、病的なインスリン濃度上昇の存在を証明することが困難な場合がある。このような患者では、以下のようなインスリン作用の代用測定が有用である:

画像

Fluoro-DOPA positron emission tomography (F-DOPA-PET) は、局所性病変の術前局在化に有用である [Otonkoski et al 2006, Mohnike et al 2008a]。

組織学

膵臓のβ細胞(全膵臓細胞の2%未満)は、インスリンを合成し、貯蔵し、分泌する。β細胞はランゲルハンス島内に存在する。FHIの患者では、膵臓の組織型は主に2種類(「びまん性」と「局所性」)が報告されている。第3の組織型(「非定型」または「モザイク」)も報告されているが、この型のFHIの遺伝学的病因はまだ発見されていない[Sempoux et al 2011]:

約60%~70%の患者に認められ、びまん性病変は、基本的に正常な新生児期の膵臓の構造によって特徴付けられる。すべてのβ細胞が侵され、多くは大きな核、豊富な細胞質を有し、代謝活性の亢進を組織学的に証明付けられる。

約30%~40%の患者に認められ、膵臓の限られた部位に発生し、残りの組織は組織学的、機能的に正常である。局所病変は、一見正常な膵島が合流したものである。膵臓の肉眼的検査で確認できる真の腺腫とは異なる。病巣の外側にあるβ細胞は、小さな核とまばらな細胞質を有し、
組織学的にインスリンの産生や分泌が抑制されている。

膵臓の組織学的には、2種類の膵島が共存している。細胞質に富んだβ細胞と時折拡大した核を有する大きな膵島と、細胞質が少なく核が小さいβ細胞を有する縮小した膵島である。大きな膵島はほとんど数個の小葉に限られており、膵部分切除術で、これらの小葉を切除すれば治癒する可能性を示唆している [Sempoux et al 2011]。この型のFHIの遺伝学的な病因は不明である。

予後

内科的治療を安全に継続できれば、血糖コントロールは通常、時間の経過とともに容易になり、内科的治療を受けた患者の多くは、数ヶ月から数年の治療後に臨床的寛解となる [Mazor- Aronovitch et al 2009] 。概して、内科的治療に良好な反応を示す患者は、長期的合併症の過度なリスクなしに慢性的な治療を受けることができる。内科的治療を受けた患者の長期的なフォローアップは、最終的にグルコース耐性になる患者が一部いることを示しているが、これは軽度の食事制限で効果的に管理できる [Mazor-Aronovitch et al 2009]。


2. 家族性高インスリン血症の遺伝学的原因について

家族性高インスリン血症(FHI)は、新生児持続性低血糖の最も一般的な原因であり、原因不明の低血糖を呈するすべての乳児に検討されるべきである。14の遺伝子の病的変異が、FHIと関連し
ている(表2)。しかし、FHI患者の40%は、分子的な原因が特定されていない。

表2.家族性高インスリン症:遺伝子と臨床的特徴
遺伝子1,2 遺伝子の病的変異がFHIに関与する割合 MOI 特徴的な臨床症状
ABCC8 3 40-45% 4,5 AR
  • 妊娠週数の割に大きい
  • 生後48時間以内の重度の難治性低血糖症
  • 食事療法やジアゾキシドに部分的にしか反応せず、膵臓切除が必要な場合もある
  • 40%は局所病変を有している
  • 糖尿病は、人生の後半に発症することがある
  • アシュケナージ系ユダヤ人およびフィンランド人集団における創始者変異 6
AD
  • 出生時の妊娠週数に応じた適切な体重
  • 1歳以上(範囲:2日~30歳)に発症する
  • 食事療法&ジアゾキシド療法に反応する、例外も報告されている
  • 一定しない浸透率
CACNA1D 1名 7  
  • 持続的なジアゾキシド反応性低血糖症
  • 軽度の大動脈弁閉鎖不全
  • 重度の筋緊張低下と発達の遅れ
GCK <1% 8 AD
  • 軽度のジアゾキシド反応性低血糖から重度のジアゾキシド非反応性低血糖まで幅広い
  • グルコースレベルの上昇と抑制に反応するインスリン分泌は質的に正常だが、インスリン分泌がオフになるグルコースセットポイントは異常低値である
GLUD1 5% 9 AD 高アンモニア血症/高インスリン血症症候群:
  • 軽度から中等度の高アンモニア血症(正常値上限の1.5~4.0倍)
  • アンモニア値は、グルコース値や絶食
    期間とは関係なく、良性にみえる
  • 軽度の低血糖は、通常、新生児期以降に発症する
  • ロイシンチャレンジに対する鋭敏な感受性と関連している可能性がある。
  • ほとんどがジアゾキシドによく反応し、低血糖の再発を防ぐために手術を必要とするのは少数である
HADH <1% 10,11 AR
  • 尿中3-ヒドロキシグルタル酸&血清
    3-ヒドロキシ酪酸-カルニチン上昇
  • ロイシン投与後の重篤な低血糖症
  • 軽度のジアゾキシド反応性低血糖症;重度の低血糖症が報告されている
  • 尿中3-ヒドロキシグルタル酸および血漿中アシルカルニチンプロファイルが正常であっても、診断の除外にはならない
HK1 1家系 12 AD
  • 1歳前にFHIと診断された
  • 40%はけいれん発作を伴う
  • ジアゾキシド反応性
  • 経口ブドウ糖負荷試験または長期絶食によりインスリン分泌を充分に抑制できなかった場合
  • ロイシン感受性なし
HNF1A 不明 AD
  • 妊娠週数の割に大きい
  • 軽度のジアゾキシド感受性のある低血糖症
  • 低血糖症は通常、小児期に治癒する
    • MODY3は、思春期または成人期に発症する
HNF4A 5% 13 AD
  • 妊娠週数の割に大きい
  • 軽度のジアゾキシド感受性のある低血糖症
  • 低血糖は時に一過性
  • 思春期におけるインスリン欠乏性糖尿病
PMM2 11家系 14  
  • すべての患者の多発性嚢胞腎と関連
  • ~50%は肝嚢胞を有する
  • ジアゾキシド反応性
  • 神経学的後遺症を伴わない乳児後期のけいれん発作との関連
KCNJ11 3 5% 15 AR
  • 妊娠週数の割に大きい
  • 生後48時間以内の重度の難治性低血糖症
  • 患児は通常、食事療法やジアゾキシド療法に部分的にしか反応せず、膵切除が必要になることもある
  • 40%は局所病変を有する
AD
  • 出生時の妊娠週数に応じた適切な体重
  • 1歳以上(範囲:生後2日~30歳)で発症
  • 食事療法とジアゾキシド療法に反応する、例外も報告されている
    • 一定しない浸透率
SLC16A1 不明 AD
  • 低血糖症は、小児期以降に発症する
  • 有酸素運動ではなく、無酸素運動後に発生する重度の低血糖症
UCP2 ジアゾキシドに反応するHIの
2% 16
AD
  • 軽度のジアゾキシド反応性低血糖症
  • ブドウ糖摂取後4時間の低血糖が報告あり
  • 近年、低血糖症の単一な原因として
    疑問視されている 17
不明 40% NA  
  1. 遺伝子はアルファベット順
  2. 染色体の遺伝子座とタンパク質については、表A.遺伝子とデータベースを参照のこと。
  3. ABCC8KCNJ11に関連するFHIは、FHI-KATPとも呼ばれる。
  4. Nestorowicz et al [1998]、Aguilar-Bryan & Bryan [1999]、Meissner et al [1999]、Fournet & Junien [2003], Tornovsky et al [2004]。
  5. ABCC8では、いくつかのエクソンまたはマルチエクソンの欠失が報告されている(表A参照)。
  6. アシュケナージ系ユダヤ人集団では、p.Phe1387delとc.3989-9G>Aという2つのABCC8創始者変異が、FHIの約97%の原因である [Glaser et al 2011]。フィンランド人集団に存在するABCC8創始者変異には、p.Val187Aspとp.Glu1506Lys [Otonkoski et al 1999, Huopio et al 2000]がある。
  7. Flanagan et al [2017]
  8. Glaser et al [1998]、Christesen et al [2002]、Cuesta-Muñoz et al [2004]、Sayed et al [2009] 。
  9. Stanley et al[2000]、Bahi-Buisson et al[2008]。
  10. Clayton et al[2001]、Molven et al[2004]、Di Candia et al[2009]。
  11. まれにエクソン1を含む大きな欠失が報告されている [Flanagan et al 2011]。
  12. Pinney et al[2013]。
  13. Flanagan et al [2010]年
  14. Cabezas et al[2017]
  15. Thomas et al[1996]、Nestorowicz et al[1997]、Tornovsky et al[2004]。
  16. Ferrara et al[2017]は近年、グルコースチャレンジ後低血糖を小児が発症し、年齢により多様な症状を報告している。
  17. Laver et al[2017]は、この遺伝子の多数の変異を含む研究に基づいて、変異は低い効果として作用する可能性があると述べている。また、このタンパク質がインスリン分泌に関与しているというin vitroの証拠は、単一疾患の証明にはならない。

3.発端者における家族性高インスリン症の遺伝学的原因を特定するための評価戦略

家族性高インスリン血症(FHI)の特定の遺伝学的原因を確立する:

病歴

病歴の中で、FHIの特定の遺伝学的原因を鑑別するのに役立つポイントはほとんどない。しかし、民族的背景は、いくつかの病型(例えば、アシュケナージ系ユダヤ人におけるABCC8創始者変異)の可能性を高めることがある。食後、特にタンパク質の豊富な食事の後に生じる低血糖で、夜間の血糖値が比較的安定している場合は、GLUD1病原性変異を示唆することがある。低用量のジアゾキシドに対する強い反応は、ABCC8またはKCNJ11の両アレル変異を有する患者で
は珍しいが、他のほとんどのタイプのFHIでは典型的である。特定のタイプのFHIを示唆するその他の所見については、表2を参照。無酸素運動後に起こる重篤な低血糖の病歴は、7型FHIを示唆する(表3参照)。

身体診察

身体診察で、FHIの異なる遺伝学的原因を鑑別できるような表現型はない。

家族歴

FHIの症状を持つ親族に注目し、分子遺伝学的検査の結果を含む診察または医療記録の見直しによる関連所見を記録し、3世代の家族歴を取る必要がある。

分子遺伝学的検査のアプローチには、標的遺伝子解析(多遺伝子パネルまたは単一遺伝子検査)と包括的ゲノム解析(エクソームシーケンス、ゲノムシーケンス)の組み合わせが含まれる。標的遺伝子解析では、臨床医がどの遺伝子が関与している可能性が高いかを推測する必要があるが、ゲノム解析ではその必要はない。
表2に示した遺伝子の一部または全部を含む多遺伝子パネルは、病原性意義不明な変異や根本的な表現型を説明できない遺伝子の病原性変異の同定を制限しつつ、疾患の遺伝学的原因を特定する可能性が高い。注:(1) パネルに含まれる遺伝子および各遺伝子に使用される検査の診断感度は検査室によって異なり、時間経過とともに変化する可能性がある。 (2) 多遺伝子パネルの一部には、GeneReviewで議論されている疾患と関連性のない遺伝子が含まれている場合がある。(3) 検査施設によっては、パネルのオプションとして、検査室が設計したカスタムパネル、あるいは臨床医が指定した遺伝子を含む表現型に特化したカスタムエクソーム解析が含まれる場合がある。 (4) パネルで使用される解析方法には、シークエンス解析、欠失・重複解析、およびその他のシークエンスに基づかない検査が含まれる。
マルチ遺伝子パネルの概要については、ここをクリックする。遺伝子検査を依頼する臨床医のためのより詳細な情報は、ここを参照のこと。
臨床所見や家族歴から、特定の遺伝子の病原性変異の可能性が高いと判断された場合、一連の単一遺伝子検査を検討することができる(表2参照)。


4. 遺伝学的原因に基づくFHIの医療管理

初期治療

初期診断の血液検体を採取したら、さらなる低血糖と不可逆的な脳損傷を防ぐのに十分な量のブドウ糖を静脈内投与して、低血糖を直ちに是正する必要がある。ブドウ糖の投与量は多く(15mg/kg/分以上)、しばしば中心静脈へのアクセスを必要とする。適切な血糖管理の定義は、議論の的となっている。多くの研究者は、神経組織糖欠乏(すなわち、不十分なグルコース供給によって引き起こされる一過性または恒久的な脳機能障害)の頻回なエピソードを防ぐために十分な余裕があるよう、すべての血糖値を3.3 mmol/L (60 mg/dL)以上に維持することを推奨している。[Burns et al 2008, Inder 2008]

長期的な医療管理

次の段階は、非経口的なグルコース要求量を減少・中止することを目的とした治療で、これは経験的なものであり、医学的治療の組み合わせが必要である。一部の患者、特にGLUD1HADHGCKに関連するFHIやABCC8またはKCNJ11のいずれかに優性病原性変異を有する患者は、内科的治療に非常によく反応する。重度のFHI-KATP(ABCC8またはKCNJ11の常染色体劣性病原性変異)を有する患者もまた、薬物療法に反応することがある;しかし、これらの患者はしばしば、非経口的なグルコース投与を使用せずに血漿グルコース濃度を臨床的に安全な範囲に保つために、食事介入(数年間、頻繁に胃瘻を使用する必要があるかもしれない)とともに以下に述べるいくつかの薬剤を組み合わせて積極的な医療管理を必要とする。この管理プロトコルは非常に厳しいものであり、たとえ病院では成功したとしても、外来では多くの家族にとって適切でない可能性がある。FHI-KATPにおける医療管理の全体的な成功は、非常にばらつきがある [Mazor- Aronovitch et al 2009]。

合することで、タンパク質の異常な折り畳みが修正され、より多くのチャネルが膜に移行しや
すくなることを示唆する証拠もある。治療上の有効量は様々であるが、20mg/kg/日を分割投与
することもある。重篤な体液貯留を防ぐため、8-10 mg/kg/日を超える用量のジアゾキシドと併用してチアジド系利尿薬を投与する必要がある [Hussain et al 2004] 。

合し、多くの細胞内シグナル伝達経路を引き起こし、インスリン分泌を抑制する。オクトレオチドの臨床効果は、皮下ボーラス注射後のインスリン分泌抑制時間が比較的短いこと
(~3時間)、これらの薬剤がグルカゴンや成長ホルモンの分泌も抑制するため肝内グルコー
ス産生が障害されることなどで制限されることがある。投与量に十分注意すること(通常
オクトレオチドは10-15μg/kg/日)、さらに携帯用ポンプを用いた持続皮下注射の使用により、
臨床効果が大幅に向上する [Hussain et al 2004] 。グルカゴンとの同時投与は有効性を高める可能性がある。LARオクトレオチド(Le Quan Sang et al 2012)およびランレオチド(Modan-Moses et al 2011)を含む長時間作用型アナログは、低血糖が管理可能となり安定した後、通常3~4歳以降に使用することができる。

ルシウムの流入を減少させることによりインスリン分泌を抑制する[Hussain et al 2004]。In
vitroでは、この薬剤は病原性変異に応じてインスリン分泌を効果的に抑制するが、in vivoで
は通常副作用が用量制限となり、この薬剤が臨床的に有効なことはまれである。

、重度の低血糖を治療するために急性的に、あるいはソマトスタチンアナログによる抑制を
打ち消すための補充療法として慢性的に使用される。しかしながら、この治療法は、持続皮下注入セットではグルカゴンが結晶化するため制限される[Mohnike et al 2008b]。

[Katz et al 1999]が、治療の成功は確認されていない。

トスタチンアナログと併用されることがある。しかし、ソマトスタチンアナログの投与量は、通常、小児期に症状が改善するにつれて減少するため、成長抑制が臨床的に重要な問題となることはほとんどない。

外科的管理

患者の容態が安定したら、外科的介入の必要性とその程度を決定しなければならない。一部の重症例では、積極的な医療管理でも、血漿グルコース濃度を継続的に安全な範囲(>60mg/dL)に維持することができない。このような症例では、手術を考慮する必要がある。手術の前に、手術方法と臨床結果が全く異なるので、以下のいずれかの方法で局所性病変とびまん性病変を区別することが重要である。

診断される。

ABCC8とKNCJ11は遺伝子サイズが大きいため、同定されたすべてのバリアントの完全なシークエンスと解析には費用と時間がかかり、重症患者の臨床判断に役立てるには時間が足りない可能性がある。最新のシークエンス技術の導入により、関連するすべての遺伝子の迅速で完
全なシークエンスが可能になってきている。一方、創始者変異が知られている民族(例:
アシュケナージ系ユダヤ人)については、病原性変異の標的解析により、臨床的に有用な情報を迅速かつ安価に得ることができる。

びまん性病変の患者では、広範囲(80%~95%)の膵臓切除が必要であり、術後に低血糖が持続したり、小児期後期にインスリン依存性糖尿病になる危険性がある。限局性病変の患者では、過形成部位の局所切除により治癒することがある。限局性膵切除術後の術後糖尿病リスクは非常に低いと思われるが、これらの患者について長期の追跡調査はまだ行われていない [Beltrand et al 2012]。手術時に肉眼的に局所病変が確認できることは稀であるため、周術期における診断と局所性病変の局在化が必要である。

サーベイランス

臨床的に軽症の患者では、診断のつかない低血糖のエピソードが、恒久的な脳障害を引き起こすことがある。したがって、軽症の場合も重症の場合と同様に、厳重な監視と警戒が重要である。さらに、軽症者や臨床的寛解期にある重症者では、ウイルス性疾患の併発によって重症の低血糖が引き起こされることがある。したがって、低血糖の症状がない場合でも、特に病気の併発時には、親がグルコース濃度を注意深く監視することが必要である。FHIの遺伝学的原因を特定することは、血糖値検査の頻度の目安になる。ジアゾキシドに反応し、定期的に薬を服用する患者は、ジアゾキシドに反応しない患者に比べて、血糖値測定の頻度が少なくて済む。生後数年間は、遺伝学的原因にかかわらず、グルコースレベルが非常に不安定な小児には、持続グルコースモニターの使用が推奨される。

避けるべき状況

長期の絶食は、いかなる種類のものであっても避けるべきである。予期せぬ低血糖の発生に備え、低血糖の緊急治療法を常時用意しておくべきである。

妊娠の管理

膵臓全摘術または膵臓亜全摘術を受けたことのある罹患者は、通常、妊娠するまでにインスリン依存性糖尿病になる。この場合、治療は何らかの原因で糖尿病を発症している患者と同様である。保存的治療を受けた患者、あるいは限局性FHIに対して膵切除術を受けた患者の妊娠については、これらの治療法が比較的新しいものであるため、経験があるとしても限定的である。このような状況では、再発する低血糖と高血糖の両方を検出するために、ブドウ糖の綿密なモニタリングが妥当である。高血糖が記録された場合、妊娠糖尿病の女性と同様に治療を開始する必要がある。FHIのリスクのある胎児は、体格をモニターする必要がある。妊娠後期における胎児の過度の体重増加は、産科的合併症および帝王切開分娩のリスクを増大させる。FHIの既往歴があり、過去の外科治療による妊娠高血糖のある妊婦では、既存の1型糖尿病、既存の2型糖尿病、妊娠糖尿病の場合と同様に胎児をモニターする必要がある。
妊娠中の薬の使用に関する詳細は、MotherToBabyを参照。


5.FHIの早期発見・治療のためのリスク評価とリスクのある血縁者のサーベイランスについて

「遺伝カウンセリングは個人や家族に対して遺伝性疾患の本質,遺伝,健康上の影響などの情報を提供し,彼らが医療上あるいは個人的な決断を下すのを援助するプロセスである.以下の項目では遺伝的なリスク評価や家族の遺伝学的状況を明らかにするための家族歴の評価,遺伝学的検査について論じる.この項は個々の当事者が直面しうる個人的あるいは文化的、倫理的な問題に言及しようと意図するものではないし,遺伝専門家へのコンサルトの代用となるものでもない.」

遺伝的リスクアセスメント

家族性高インスリン血症(FHI)は、常染色体劣性または常染色体優性形式で遺伝することがある。

常染色体劣性遺伝 - 家族のリスク

発端者の両親

発端者の同胞 

発端者の子

他の家族

発端者の両親の各同胞が、保因者であるリスクは50%である。

保因者の検出

リスクのある親族に対する保因者の検査では、家族内の病原性変異を事前に同定する必要がある。

常染色体優性遺伝,びまん性病変型 - 家族のリスク

発端者の両親

て、発端者の両親について適切な臨床評価や分子遺伝学的検査が行われない限り、一見陰
性にみえる家族歴を確定することはできない。

発端者の同胞

発端者の同胞のリスクは、発端者の両親の臨床的/遺伝的状況に依存する。

発端者の子

FHI患者の子は、50%の確率で病原性変異を受け継ぐ。

他の家族

他の家族のリスクは、発端者の両親の状況による。両親が罹患しており、かつ/または病原性変異を有している場合、両親の家族はリスクがある。

常染色体優性遺伝,局所性病変型 - 家族のリスク

発端者の両親

有する。このような変異を有する人が局所性病変に罹患するリスクが低いことを考慮すると(単一細胞における母親アレルの体細胞喪失により1:540と推定される[Glaser et al 2011])、父子ともに罹患する確率は1:250000未満である。したがって、実際は、父親が局所性FHIを有することはない。常染色体優性のびまん性FHIの原因となる病原性変異は、局所性HIとは関連がない。

発端者の同胞

発端者の子

他の家族

局所性FHIを発症した発端者の父親の同胞もABCC8またはKCNJ11病原性変異を保有している可能性がある。しかし、FHIの局所型は、病原性変異が父方由来のアリル上に存在し、母方アリルが欠失する体細胞変異が生じた場合にのみ発現する(ヘテロ接合性の喪失)。

リスクのある親族の評価

低血糖が起こる前に適切な評価と治療を開始できるよう、罹患者の同胞の臨床的/遺伝的状況を明らかにすることが適切である。診断と治療が遅れると重篤な神経学的後遺症が生じるため、リスクのある新生児は出生時から注意深く観察し、できるだけ早く確定診断を行うのが肝要である。
評価には以下のようなものがある:

遺伝カウンセリングを目的としたリスクのある親族の検査に関する問題については、遺伝カウンセリングを参照。

遺伝カウンセリングに関連した問題

病原性変異が同定されない場合の遺伝形式

HI患者の約40%は、HIとの関連が知られているどの遺伝子にも病原性変異を有していない。これらの家系における家族構成員のリスクは不明である。

家族計画-常染色体劣性遺伝

この特定の民族集団では、妊娠前の遺伝子スクリーニングを考慮する。同様に、このような遺伝子スクリーニングは、既知の病原性変異の保因率が高いあらゆる民族集団で考慮され得るものである。

家族計画-常染色体優性遺伝

DNAバンキング

検査の手法や遺伝子、発症メカニズム、疾患に対する我々の理解が将来進歩するかも知れないので、分子診断が確定していない(すなわち、原因となる発症メカニズムが不明な)発端者のDNA保存は考慮すべきである。 詳しくは、Huang et al [2022]を参照。

出生前検査および着床前診断

罹患家族で病原性変異が同定されれば、びまん性FHI-KATP(膵臓全体のβ細胞の関与)のリスクが高い妊娠や他のタイプのびまん性FHIの原因となる病原性変異を受け継ぐリスクが高い妊娠の出生前検査や着床前遺伝検査が可能である。胎児が影響を受けると判断された妊娠の継続を選択した親は、出生後すぐに治療を開始できるため、早期の重症低血糖を防ぐことができるという利点がある。
局所性FHI(膵臓の限られた領域で起こる膵臓腺腫様過形成)の患者の家族では、出生前検査は有益ではない。リスクのある胎児のDNAで父方の病原性変異を同定することはできるが、どの胎児が母方のアレルを喪失する体細胞変異を有するかを検査で特定することはできない。


関連情報

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Congenital hyperinsulinism


更新履歴:

  1. 日本語訳者: 西村直人(横浜南共済病院 小児科)
    GeneReviews最終更新日: 2019.3.21.  日本語訳最終更新日: 2023.4.24.[in present]

原文: Familial Hyperinsulinism

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