Gene Reviews著者: ShirleyCheng,MD,IvanFMLo,MD,andHo-MingLuk,MD.
日本語訳者:佐藤康守(たい矯正歯科)、山田崇弘(北海道大学病院臨床遺伝子診療部)
GeneReviews最終更新日: 2023.4.6. 日本語訳最終更新日: 2023.8.16.
原文: FAM111A-Related Skeletal Dysplasia
疾患の特徴
FAM111A関連骨格異形成症には、軽度型の表現型であるKenny-Caffey症候群(KCS)と、重度型で致死性の表現型である骨頭蓋狭窄症(osteocraniostenosis;OCS)がある。KCSは、均衡型低身長(通常は出生後の発症)、相対的大頭症、閉鎖遅延を伴う大きな大泉門、特徴的顔貌、髄腔狭窄を伴う長管骨皮質骨の肥厚、眼科的・歯科的症候を特徴とする疾患である。OCSのほうは、子宮内発育不全、小頭症、特徴的顔面症候、頭蓋骨の骨化不全、皮質骨肥厚を伴う細い長管骨、長管骨の髄腔狭窄、末広がりの骨幹端、呼吸不全をきたすことになる胸郭と肺の低形成を伴う薄い肋骨を特徴とする。そして、周産期に骨折をきたすことがある。KCSとOCSの罹患者には、低カルシウム血症と高リン血症を伴う原発性副甲状腺機能低下が生じる場合がある。
診断・検査
発端者におけるFAM111A関連骨格異形成症の診断は、これを示唆する所見を有することに加え、分子遺伝学的検査にてFAM111Aにヘテロ接合性病的バリアントが同定されることをもって確定する。
臨床的マネジメント
症状に対する治療:
定期的追跡評価 :
KCS、OCSの両罹患者に関して、以下を行う。
遺伝カウンセリング
FAM111A関連骨格異形成症(KCS,OCSとも)は、常染色体顕性遺伝(優性遺伝)疾患である。
KCSと診断された罹患者の大多数は、FAM111Aのdenovoの病的バリアントに起因する例である。稀ながら、罹患者である親からの継承例もみられる。発端者で同定された病的バリアントを片親も有していた場合、同胞がその病的バリアントを継承するリスクは50%である。KCS罹患者の子がFAM111Aの病的バリアントを継承する可能性は50%である。
現時点で例外の可能性のあるものが1例だけ存在するものの、その1例を除いては、両親の分子遺伝学的検査を終えているOCSの発端者はすべて、FAM111Aのdenovoの病的バリアントに起因して疾患に至った例である。OCSの発端者が通常、FAM111Aのdenovoの病的バリアントに起因する例であることから、他の血族の有するリスクは低いものと推定される。
家系内に存在するFAM111Aの病的バリアントが同定されている場合は、出生前検査や着床前遺伝学的検査が可能である。
FAM111A関連骨格異形成症:ここに含まれる表現型1 |
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別名、ならびに過去に用いられた名称については、「疾患名について」の項を参照。
今のところ、FAM111A関連骨格異形成症に関するコンセンサスを得た臨床診断基準は公表されていない。
本疾患を示唆する所見
FAM111A関連骨格異形成症には、軽症型の表現型であるKenny-Caffey症候群と、重症型で致死性の表現型である骨頭蓋狭窄症がある。以下のような臨床所見、画像所見、臨床検査所見を組み合わさった形で有する例については、FAM111A関連骨格異形成症を疑う必要がある。
Kenny-Caffey症候群
臨床所見
図1:23歳のKenny-Caffey症候群罹患者の頭蓋顔面症候
目立つ額、逆三角形の顔、中顔面の後退、小下顎症を認める。
Chengら[2021]より許可を得て転載。
画像所見
図2:Kenny-Caffey症候群(13歳)罹患者の下肢のX線写真
皮質骨の肥厚と髄腔狭窄を伴う細い大腿骨骨幹が認められる(黒矢印)。
Chengら[2021]より許可を得て転載。
臨床検査所見
低カルシウム血症と高リン血症を伴う原発性副甲状腺機能低下がみられる。
骨頭蓋狭窄症
臨床所見
画像所見
臨床検査所見
低カルシウム血症と高リン血症を伴う原発性副甲状腺機能低下
診断の確定
発端者におけるFAM111A関連骨格異形成症の診断は、これを示唆する所見を有することに加え、分子遺伝学的検査にてFAM111Aの病的バリアント(pathogenicとlikelypathogenicの両方を含む)のヘテロ接合が同定されることをもって確定する(表1参照)。
注:(1)アメリカ臨床遺伝ゲノム学会(ACMG)/分子病理学会(AMP)のバリアントの解釈に関するガイドラインによると、「pathogenic」のバリアントと「likelypathogenic」のバリアントとは臨床の場では同義であり、ともに診断に供しうるものであると同時に、臨床的な意思決定に使用しうるものとされている[Richardsら2015]。本セクションで「病的バリアント」と言うとき、それは、あらゆるlikelypathogenicのバリアントまでを包含するものと理解されたい。
(2)FAM111Aにヘテロ接合性の意義不明バリアントが同定された場合、それは、本疾患の診断を確定するものでも否定するものでもない。
分子遺伝学的検査のアプローチとしては、表現型に合わせて、遺伝子標的型検査(単一遺伝子検査、マルチ遺伝子パネル)と網羅的ゲノム検査(エクソームシーケンシング,ゲノムシーケンシング)を組み合わせるやり方が考えられる。
遺伝子標的型検査の場合は、臨床医の側で関与が疑われる遺伝子の目星をつけておく必要があるが、ゲノム検査の場合、その必要はない。「本疾患を示唆する所見」に記載した特徴的所見を有する例については遺伝子標的型検査(「方法1」参照)で診断がつくものと思われるが、表現型からはその他数多く存在する骨系統疾患と区別しにくい例については、ゲノム検査(「方法2」参照)で診断がなされることになろう。
方法1
単一遺伝子検査
最初に、遺伝子内の小欠失/挿入、ミスセンス・ナンセンス・スプライス部位バリアントといったものを検出するためのFAM111Aの配列解析を行う。使用した配列解析の手法でバリアントが検出されなかった場合、次のステップとして、通常はエクソン単位や遺伝子全体の欠失・重複を調べるための遺伝子標的型欠失/重複解析を行うことになる。ただ、本疾患に関して言うと、こうしたタイプのバリアントが原因として同定された例は、これまでにみられない。
現況の表現型と直接関係のない遺伝子の意義不明バリアントや病的バリアントの検出を抑えつつ、疾患の遺伝的原因の特定に最もつながりやすいのは、FAM111Aその他の関連遺伝子(「鑑別診断」の項を参照)を含む骨系統疾患用マルチ遺伝子パネルであるように思われる。
注:(1)パネルに含められる遺伝子の内容、ならびに個々の遺伝子について行う検査の診断上の感度については、検査機関によってばらつきがみられ、また、経時的に変更されていく可能性がある。
(2)マルチ遺伝子パネルによっては、このGeneReviewで取り上げている状況と無関係な遺伝子が含まれることがある。
(3)検査機関によっては、パネルの内容が、その機関の定めた定型のパネルであったり、表現型ごとに定めたものの中で臨床医の指定した遺伝子を含む定型のエクソーム解析であったりすることがある。
(4)ある1つのパネルに対して適用される手法には、配列解析、欠失/重複解析、ないしその他の非配列ベースの検査などがある。
マルチ遺伝子パネル検査の基礎的情報についてはここをクリック。
遺伝学的検査をオーダーする臨床医に対する、より詳細な情報についてはここをクリック。
方法2
網羅的ゲノム検査の場合、臨床医の側で疑わしい遺伝子の目星をつけておく必要はない。
エクソームシーケンシングが広く用いられているが、ゲノムシーケンシングを使用することも可能である。
網羅的ゲノム検査の基礎的情報についてはここをクリック。
ゲノム検査をオーダーする臨床医に対する、より詳細な情報についてはここをクリック。
表1:FAM111A関連骨格異形成症で用いられる分子遺伝学的検査
遺伝子1 | 方法 | その手法で病的バリアント2が検出される発端者の割合 |
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FAM111A | 配列解析3 | 100%4 |
遺伝子標的型欠失/重複解析5 | 報告例なし6 |
配列解析の結果の解釈に際して留意すべき事項についてはこちらをクリック。
臨床像
FAM111A関連骨格異形成症には、軽症型の表現型を示すKenny-Caffey症候群(KCS)と、重症型で致死性の表現型である骨頭蓋狭窄症(OCS)がある。現在までに、FAM111A関連骨格異形成症の罹患者が少なくとも35例確認されている[Ungerら2013,Guoら2014,Isojimaら2014,Nikkelら2014,Kimら2015,Abrahamら2017,Wangら2019,Cavoleら2020,Deconteら2020,Pembertonら2020,Quaioら2020,Chengら2021,Dempseyら2021,Langら2021,Müllerら2021,Stranneheimら2021,Yerawarら2021,Bowlingら2022,Rosatoら2022,Erenら2023]。
以下に述べるKCSとOCSの表現型の特徴は、これらの報告を基礎としたものである。
表2:FAM111A関連骨格異形成症:代表的症候ごとにみたKCSとOCSの比較
症候 | その症候を有する例の割合 | ||
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Kenny-Caffey症候群(22例の報告)1 | 骨頭蓋狭窄症(13例の報告)1 | ||
人体測定 | 子宮内発育不全 | 3/15 | 9/10 |
低身長 | 19/20 | 6/6 | |
小頭症 | 4/20 | 3/4 | |
頭蓋顔面 | 大きな大泉門/大泉門閉鎖遅延 | 13/19 | 4/4 |
頭蓋縫合早期癒合症 | 3/20 | 1/1 | |
前額部の突出あるいは目立つ額 | 17/19 | 4/4 | |
逆三角形の顔 | 10/15 | 2/3 | |
短い眼瞼裂 | 11/18 | 1/2 | |
中顔面の後退 | 5/16 | 1/1 | |
耳介低位 | 4/15 | 4/5 | |
短い鼻ないし狭い鼻梁 | 5/15 | 4/4 | |
小下顎あるいは下顎後退 | 10/16 | 3/3 | |
骨格 | クローバー葉頭蓋 | 0/22 | 9/9 |
頭蓋骨骨化度の低下 | 3/11 | 10/10 | |
細い長管骨 | 3/21 | 9/9 | |
長管骨の皮質骨肥厚 | 21/21 | 7/7 | |
長管骨の髄腔狭窄 | 21/21 | 7/7 | |
末広がりの骨幹端 | 0/16 | 9/9 | |
薄い肋骨 | 1/21 | 4/6 | |
胸郭低形成 | 0/19 | 2/4 | |
遠位肢節短縮症 | 2/21 | 1/1 | |
骨折 | 0/21 | 3/10 | |
内分泌 | 低カルシウム血症と高リン血症を伴う原発性副甲状腺機能低下 | 20/22 | 6/6 |
眼 | 小眼球 | 1/19 | 4/8 |
屈折異常2 | 15/18 | NA | |
鬱血乳頭/偽鬱血乳頭 | 2/19 | NA | |
歯 | 歯の異常3 | 8/12 | NA |
齲歯 | 4/11 | NA | |
永久歯の喪失 | 3/10 | NA |
NA=骨頭蓋狭窄症は周産期致死性のため、評価対象外、もしくは十分な情報がないの意
Kenny-Caffey症候群(KCS)
発育不全
KCS罹患者の大多数は正期産で、子宮内発育不全はそれほど多くみられない。ただ、出生後の低身長(平均に対し、-2SD以下)は全罹患者にみられる。報告された身長の値は、-2.6SDから-8.2SDの間である[Ungerら2013,Guoら2014,Isojimaら2014,Nikkelら2014,Abrahamら2017,Cavoleら2020,Deconteら2020,Quaioら2020,Chengら2021,Langら2021,Yerawarら2021]。
頭囲が比較的保たれた状態で身長が顕著に低下するため、相対的大頭症が多くみられる[Chengら2021,Yerawarら2021]。
頭蓋顔面症候
KCS罹患者では、大きな大泉門と大泉門閉鎖遅延が多くみられる。頭蓋縫合早期癒合症の報告もみられる。これは主として頭蓋底の縫合にみられ、V字形の眼窩上壁となって現れる[Ungerら2013,Chengら2021]。特徴的顔面症候としては、相対的大頭症を伴う前額部の突出あるいは目立つ額、逆三角形の顔、短い眼瞼裂、深い眼球、中顔面の後退、短い鼻、狭い鼻梁、小下顎あるいは下顎後退などがある(図1参照)。
骨格症候
KCS罹患者の一部に、頭蓋骨の骨化不全がみられる。長管骨には、皮質骨の肥厚と髄腔の狭窄がみられる。一部に、長管骨の狭細化を呈する例もみられるものの、骨折の報告はみられない。薄い肋骨が1例で報告されている[Kimら2015]。
原発性副甲状腺機能低下と低カルシウム血症
大多数の例で原発性副甲状腺機能低下と低カルシウム血症が報告されている。そのほとんどが、低カルシウム血症性発作を伴って生後2ヵ月以内(ふつうは新生児期)に現れている[Ungerら2013,Isojimaら2014,Nikkelら2014,Kimら2015,Abrahamら2017,Wangら2019,Cavoleら2020,Deconteら2020,Quaioら2020,Chengら2021,Yerawarら2021,Erenら2023]。低カルシウム血症の重症度には幅がみられるが、大多数の罹患者は、生涯にわたってビタミンDとカルシウムの補給を要する。
異所性石灰化
原発性副甲状腺機能低下により高リン血症となり、血清リン値の上昇により軟部組織に異所性石灰化が生じることがある。
KCS罹患者の脳の画像診断で発見される異常としては、大脳基底核の石灰化が最も多い(10人中5人)。大脳半球と小脳に多発性の石灰化を認めたKCS罹患者が1例報告されている[Cavoleら2020]。
20歳と40歳のKCSの2成人で白内障が報告されている[Ungerら2013,Chengら2021]。
・腎石灰化症
KCSの2成人で腎石灰化症が報告されている[Chengら2021]。
皮膚や関節をはじめとするその他の器官にも異所性石灰化が生じる場合がある。
他の眼科的症候
その他の眼科的症候としては、近視、遠視、乱視、偽鬱血乳頭などがある。屈折異常はKCS罹患者の80%超にみられ、日常の機能に影響が及ぶようなものではないものの、屈折矯正用レンズが必要であった。KCS罹患者の1例で小眼球が報告されている[Langら2021]。
歯の異常
歯の異常としては、無歯症、薄いエナメル質あるいはエナメル質形成不全、齲蝕の多発(4人)、乳歯の晩期残存、永久歯萌出遅延もしくは40歳未満での永久歯列の喪失(3人)などがある。歯の症候はKCS罹患者の60%超にみられ、多くの罹患者が補綴物を要している[Guoら2014,Nikkelら2014,Wangら2019,Cavoleら2020,Chengら2021]。
尿路性器奇形
KCSの3人の男性で小精巣が報告されている[Cavoleら2020,Chengら2021]。小陰茎が1例で報告されている[Cavoleら2020]。
高調の声
KCSの4例で高調の声が報告されている[Ungerら2013,Chengら2021]。
その他
発達遅滞の報告はほとんどみられない。
軽度の発達遅滞を認めたとする報告が1例みられる[Deconteら2020]。
FAM111A関連骨格異形成症を有する1例で、小頭症と知的障害を認めたとする報告がみられる。この症例の臨床的表現型は、KCSとSanjad-Sakati症候群(OMIM211410)の中間型であったと記されている[Cavoleら2020]。
KCSの3例で成長ホルモン分泌低下が報告されている[Isojimaら2014,Kimら2015]ものの、因果関係を明確にする上ではさらなる調査が必要である。
稀ながら、KCS罹患者でこれまでに、多合指趾、斜頸、脊椎強直、脊柱側彎、外反股、膝・足首の外反、関節過可動性などが報告されている[Isojimaら2014,Kimら2015,Cavoleら2020,Chengら2021]。
予後
現時点のデータを見る限り、KCS罹患者の寿命は正常である。
骨頭蓋狭窄症(OCS)
発育不全
子宮内発育不全は、ほぼ全例で認められている。出生後の低身長(身長が-2SD以下)も、全罹患者で認められている。
小頭症
OCS罹患者では小頭症(頭囲が-2SD以下)が多くみられる。このグループの脳の構造を調べた画像診断の情報は不足している。
頭蓋顔面症候
OCS罹患者/胎児全員に、大きな大泉門を伴うクローバー葉頭蓋が報告されている[Ungerら2013,Pembertonら2020,Rosatoら2022,Erenら2023]。小頭症を有するOCSの1胎児で、頭蓋縫合早期癒合が報告されている[Pembertonら2020]。特徴的顔面症候としては、前額部の突出、逆三角形の顔、短い眼瞼裂、中顔面の後退、耳の奇形、耳介低位、短い鼻、狭い口、小下顎、下顎後退などがある。OCSを有する胎児で、妊娠20週の超音波検査で下顎後退が確認された例が2例存在する[Müllerら2021,Rosatoら2022]。
骨格症候
頭蓋骨骨化度の低下がOCS罹患者10人で報告されており、これは、妊娠20週の段階で検出可能であったという[Ungerら2013,Müllerら2021,Rosatoら2022,Erenら2023]。頭蓋骨の低石灰化は、OCSに特徴的な骨格症候の1つとなっている。OCS罹患者は全例、長管骨が細く、皮質骨の肥厚、髄腔の狭窄、末広がりの骨幹端を伴っている。出生前や周産期における長管骨の骨折(例えば、大腿骨、橈骨、尺骨)や肋骨骨折が3例で報告されている[Rosatoら2022]。これら以外の骨格症候(例えば、屈指症,扁平椎)の報告もみられる[Rosatoら2022]。
薄い肋骨と胸郭低形成は、出生前の早い段階で検知可能である。肺の低形成により、新生児期に呼吸窮迫に至ることがあり、これが早期死亡の主たる原因になっている[Rosatoら2022,Erenら2022]。生存しているOCSの新生児についても、通常は積極的な呼吸支援が必要である。21ヵ月齢まで生存したOCS児の1例がある[Ungerら2013]。
原発性副甲状腺機能低下と低カルシウム血症
6人中2人に、新生児期の早い段階での低カルシウム血症性発作の発生が報告されている[Ungerら2013,Erenら2023]。この2例については、ビタミンDとカルシウムの補給が必要だったという。
眼科的症候
小眼球が罹患者の約半数で報告されている。OCSは周産期致死性のため、これ以外の眼科的症候(例えば、鬱血乳頭,屈折異常,若年性白内障)は同定されていない。
尿路性器奇形
OCSの6例で小陰茎が報告されている[Ungerら2013,Rosatoら2022,Erenら2023]。
小精巣が1例で報告されている[Erenら2023]。
脾無形成あるいは低形成
OCSの4例で脾無形成あるいは低形成が報告されている[Ungerら2013,Müllerら2021,Rosatoら2022]。
遺伝型-表現型相関
FAM111Aの病的バリアントの大多数は、タンパク質のC末端近くにクラスターを成して存在する。ただ、現時点では遺伝型-表現型相関として判明しているものはなく、FAM111Aの遺伝型からKCSやOCSの表現型を確実に予見することはできない現状である[Rosatoら2022]。
浸透率
FAM111A関連骨格異形成症の浸透率は100%である。
疾患名について
Kenny-Caffey症候群は、Kenny-Caffey症候群2型とも呼ばれる。「2型」としているのは、FAM111Aのヘテロ接合性病的バリアントに起因して生じるKenny-Caffey症候群を、TBCEの両アレル性病的バリアントに起因して生じるこれと臨床的によく似た疾患と区別することを意図したものである[Rosatoら2022]。TBCEに関連して生じる表現型は、OMIMでは「潜性(劣性)型Kenny-Caffeyバリアント」(OMIM244460)と呼ばれており、これが「Kenny-Caffey症候群1型」である。
2023年改訂の骨系統疾患国際分類[Ungerら2023]において、FAM111Aのヘテロ接合性病的バリアントに起因して生じるKenny-Caffey症候群は、「Kenny-Caffey症候群,顕性(優性)型,FAM111A関連」とされ、一方、TBCEの病的バリアントに起因して生じる常染色体潜性(劣性)型骨系統疾患のほうには「Sanjad-Sakati症候群,潜性(劣性)型,TBCE関連」の名が与えられている。
両疾患の間には表現型上の重なりが存在するものの、これらは臨床的にも遺伝型の点からも明確に別個の疾患である(表3a参照)。
発生頻度
FAM111A関連骨格異形成症の発生頻度は、よくわかっていない。現在までに35人のFAM111A関連骨格異形成症罹患者が報告されている。
FAM111Aの生殖細胞系列の病的バリアントに起因して生じるものとしては、本GeneReviewで述べたもの以外の表現型は知られていない。
Kenny-Caffey症候群(KCS)との鑑別診断に際して注目すべき遺伝子を、表3aにまとめて示した。
表3a:Kenny-Caffey症候群との鑑別診断に際して注目すべき遺伝子
遺伝子 | 疾患名 | 遺伝形式 | 鑑別対象疾患でみられる症候 | |
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KCSと重なる症候 | KCSと異なる症候 | |||
LRP5 | 骨硬化症(OMIM144750) | AD |
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SOST | SOST関連硬化性骨異形成症(硬化性骨症とvanBuchem病を包含) | AR |
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TBXAS1 | 血液骨幹異形成症Ghosal(OMIM231095) | AR | 皮質骨の骨増殖症 |
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TGFB1 | Camurati-Engelmann病(骨幹異形成症Camurati-Engelmann病) | AD |
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TBCE | Sanjad-Sakati症候群(OMIM241410) | AR |
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AD=常染色体顕性遺伝(優性遺伝);AR=常染色体潜性遺伝(劣性遺伝)
骨頭蓋狭窄症(OCS)との鑑別診断に際して注目すべき遺伝子を、表3bにまとめて示した。注目すべきは、OCSと異なり、表3bに挙げた疾患においては長管骨の皮質骨肥厚や髄腔狭窄が一切みられないことである。
表3b:骨頭蓋狭窄症との鑑別診断に際して注目すべき遺伝子
遺伝子 | 疾患名 | 遺伝形式 | 鑑別対象疾患でみられる症候 | |
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OCSと重なる症候 | OCSと異なる症候1 | |||
CEP120 CFAP410 DYNC2H1 DYNC211 DYNC2I2 DYNC2LI1 IFT52 IFT80 IFT81 IFT122 IFT140 IFT172 KIAA0586 KIAA0753 NEK1 TCTEX1D2 TRAF3IP1 TTC21B WDR19 WDR35 |
一連の周産期致死性短肋骨多指症候群とJeune呼吸不全性胸郭異形成症(OMIMPS208500を参照) | AR 2遺伝子性2 |
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COL1A1 CIOLA2 |
周産期致死性骨形成不全症(以前の名称は骨形成不全症Ⅱ型)(「COL1A1/2骨形成不全症」のGeneReviewを参照) | AD |
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COL2A1 SLC26A2 TRIP11 |
軟骨無発生症(ACG)ⅠA型,ⅠB型,Ⅱ型(OMIMPS200600) | AR AD |
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COL2A1 | 扁平椎異形成症,Torrance型(OMIM151210) | AD | ・通常、周産期致死性 ・薄い肋骨 ・短い長管骨 |
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FGFR3 | ホモ接合性軟骨無形成症 | AD |
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SADDAN(重症軟骨無形成症・発達遅滞・黒色表皮腫)(OMIM616482) | AD |
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・通常、周産期致死性とまでは言えない。 ・脛骨,鎖骨の重度の彎曲 ・癲癇発作 ・大孔狭窄/水頭症 ・黒色表皮腫が存在 |
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タナトフォリック骨異形成症 | AD |
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GPX4 | 脊椎骨幹端異形成症,Sedaghatian型(OMIM250220) | AR |
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HSPG2 | 分節異常骨異形成症,Silverman-Handmaker型(OMIM224410) | AR |
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・脊椎の大小不同 ・口蓋裂 ・脳瘤 |
INPPL1 | 成熟遅延骨異形成症(OMIM258480) | AR |
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PAM16 | MAGMAS関連骨異形成症(脊椎骨幹端異形成症,Megarbane-Dagher-Melike型)(OMIM613320) | AR |
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PEX7 | 古典型近位肢型点状軟骨異形成症1型(RCDP1) | AR |
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SLC35D1 | 蝸牛様骨盤異形成症(OMIM269250) | AR |
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SOX9 | 屈曲肢異形成症 | AD |
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AD=常染色体顕性遺伝(優性遺伝);AR=常染色体潜性遺伝(劣性遺伝)
今のところ、FAM111A関連骨格異形成症に関する臨床的管理のガイドラインは公表されていない。
最初の診断に続いて行う評価
FAM111A関連骨格異形成症と診断された罹患者については、疾患の範囲やニーズを把握するため、診断に至る過程ですでに実施済でなければ、表4にまとめた評価を行うことが推奨される。
表4:FAM111A関連骨格異形成症罹患者の最初の診断後に行うことが推奨される評価
系/懸念事項 | 評価 | コメント |
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体格 | 身長,体重,BMIと成長速度,四肢の均衡,上節/下節比 | |
呼吸器 |
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OCSの罹患者について行う。 |
筋骨格 |
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神経 |
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内分泌 |
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年長の小児と成人については、腎石灰化症に向けた腎超音波検査を検討する。 |
眼 | 眼科的検査 | 屈折異常,小眼球,乱視,偽鬱血乳頭,白内障に関する評価 |
歯 | 歯科的診査 | 歯が萌出した段階、できれば2-3歳までに行う。 |
血液 |
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OCSの罹患者について行う。 |
発達 | 運動,適応,認知,言語の評価を含む発達評価 |
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心理社会 |
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遺伝カウンセリング | 遺伝の専門医療職1の手で行う。 | 医学的、個人的な意思決定の用に資するべく、本人や家族に対し、FAM111A関連骨格異形成症の本質、遺伝形式、そのもつ意味についての情報提供を行う。 |
家族への支援と情報資源 | 以下のニーズに関する評価
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症候に対する治療
多職種による支援治療は、小児内分泌内科医、整形外科医、呼吸器専門医(骨頭蓋狭窄症罹患者について)、眼科医、歯科医、血液内科医、作業療法士、理学療法士、心理士などが関与して進めることになろう。
表5:FAM111A関連骨格異形成症罹患者の症候に対する治療
症候/懸念事項 | 治療 | 考慮事項/その他 |
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呼吸器疾患 | 生存しているOCS新生児に対し:
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副甲状腺機能低下/低カルシウム血症 | 内分泌内科医によるカルシウムと活性型ビタミンD(カルシトリオールあるいはアルファカルシドール)の補給 |
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眼 | 眼科医による屈折異常と白内障の管理 | |
歯科的症候 | 歯科医ないし口腔外科医による治療 | |
低身長 |
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KCSの3例で成長ホルモン分泌低下が確認されているものの、遺伝子組換え成長ホルモンへの反応性の評価は行われていない1。 |
脊柱側彎 | 整形外科医ないし脳神経外科医による保存的あるいは外科的治療 | KCSの2成人例で、重度の斜頸と側彎に対し保存的治療がなされている2。 |
発達 | コメディカルによる個別的発達支援 | |
心理社会 |
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定期的追跡評価
表6:FAM111A関連骨格異形成症罹患者で推奨される定期的追跡評価
系/懸念事項 | 評価 | 実施頻度 |
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体格 | 線的成長,体重,上節/下節比 | 来院ごと、ないし年に1度 |
筋骨格 | 脊柱側彎に関する臨床診査 | |
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必要に応じて | |
副甲状腺機能低下/低カルシウム血症 |
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腎石灰化症や腎石症の評価を目的とした腹部超音波検査 | 治療中は年に1度 | |
眼 | 屈折異常や白内障の変化様相を評価するための眼科的検査 | 年に1度もしくは必要に応じて |
歯 | 歯科的診査 | 6ヵ月ごと |
血液 | 貧血の臨床症候に関する評価 | 来院ごと |
全血算 | 必要に応じて | |
発達 | 発達の進行状況と教育上のニーズに関するモニタリング | 小児期を通じて来院ごと |
心理社会的懸念 | 気分の変化,情動,心理社会的ストレス要因に関する評価 | 来院ごと |
家族/地域社会 | ケアコーディネーション、ならびに新たな質問(例えば家族計画)が生じたときの追加の遺伝カウンセリング |
リスクを有する血縁者の評価
リスクを有する血族に対して行う遺伝カウンセリングを目的とした検査関連の事項については、「遺伝カウンセリング」の項を参照されたい。
妊娠管理
出生前超音波検査が行われている例について言うと、骨頭蓋狭窄症(OCS)における最も顕著な臨床症候は、クローバー葉頭蓋、子宮内発育不全、四肢の低成長で、時に子宮内骨折もみられた。
大多数の胎児については、妊娠20週の段階でこうした症候が認められた[Rosatoら2022]。出生前にOCSが疑われた場合には、評価ならびに管理のアドバイスを受けるため、母体胎児医療の専門医に紹介する必要がある。罹患胎児の妊娠管理方針は、医療チームと家族との間で、予後ならびに生存胎児の救命処置の必要性に関する話し合いを十分に行った上で決定することになるが、こうしたことは、多くの場合、医療機関独自の判断に委ねられる。致死性に関する超音波上の各指標が1つの参考となる。骨系統疾患の周産期の管理に関するガイドラインが公表されている[Savarirayanら2019]。
妊娠中に用いる薬剤の詳しい情報については、「MotherToBaby」を参照されたい。
研究段階の治療
さまざまな疾患・状況に対して進行中の臨床試験に関する情報については、アメリカの「ClinicalTrials.gov」、ならびにヨーロッパの「EUClinicalTrialsRegister」を参照されたい。
注:現時点で本疾患に関する臨床試験が行われているとは限らない。
「遺伝カウンセリングは個人や家族に対して遺伝性疾患の本質,遺伝,健康上の影響などの情報を提供し,彼らが医療上あるいは個人的な決断を下すのを援助するプロセスである.以下の項目では遺伝的なリスク評価や家族の遺伝学的状況を明らかにするための家族歴の評価,遺伝学的検査について論じる.この項は個々の当事者が直面しうる個人的あるいは文化的、倫理的な問題に言及しようと意図するものではないし,遺伝専門家へのコンサルトの代用となるものでもない.」
遺伝形式
Kenny-Caffey症候群(KCS)と骨頭蓋狭窄症(OCS)は、ともに常染色体顕性遺伝(優性遺伝)性疾患である。
注:OCSに一致した症候を有した血族結婚家系の1例において、FAM111Aに両アレル性のバリアントが複合ヘテロで同定され、見かけ上、常染色体潜性遺伝(劣性遺伝)を思わせる継承がみられた例が存在する[Erenら2023]。
Kenny-Caffey症候群―血縁者の有するリスク
発端者の両親
注:親の白血球DNAを検査しても、体細胞モザイクの全例で検出できるとは限らず、生殖細胞系列のみに存在する病的バリアントについては、一切検出することができない。
発端者の同胞
発端者の同胞の有するリスクは、発端者の両親の臨床的/遺伝学的状態によって変わってくる。
発端者の子
KCS罹患者の子がFAM111Aの病的バリアントを継承する可能性は50%である。
他の家族構成員
他の血縁者の有するリスクは、発端者の両親の状態によって変わってくる。仮に、片親がFAM111Aの病的バリアントを有していたということになれば、その片親の血縁者にあたる人はすべてリスクを有することになる。
骨頭蓋狭窄症―血縁者の有するリスク
発端者の親
*血族結婚の1家系で、ともに非罹患者である両親から、両アレル性にFAM111Aの複数のバリアントを複合ヘテロ接合で継承し、OCSの症候を呈した1例が報告されている[Erenら2023]。
注:親の白血球DNAを検査しても、体細胞モザイクの全例で検出できるとは限らず、生殖細胞系列のみに存在する病的バリアントについては、一切検出することができない。
発端者の同胞
発端者の同胞の有するリスクは、発端者の両親の遺伝学的状態によって変わってくる。発端者で同定されたFAM111Aの病的バリアントが両親いずれの白血球DNAからも検出されず、かつ、両親とも骨系統疾患の徴候を有しない場合の同胞への再発リスクは1%と推定される。それは、理論上、片親の生殖細胞系列モザイクの可能性が残るからである[Rahbariら2016]。
発端者の子
OCS罹患者は生殖能力を持たない。
他の血縁者
OCSの発端者は、通常、FAM111Aのdenovoの病的バリアントに起因してOCSに至った例であることから、他の血縁者の有するリスクは低いものと推定される。
関連する遺伝カウンセリング上の諸事項
早期診断・早期治療を目的としてリスクを有する血族に対して行う評価関連の情報については、「管理」の中の「リスクを有する血縁者の評価」の項を参照されたい。
家族計画
出生前検査ならびに着床前遺伝学的検査
高リスクの妊娠
家系内に存在するFAM111Aの病的バリアントが同定されている場合は、出生前検査ならびに着床前遺伝学的検査を行うことが可能である。
低リスクの妊娠
OCSに関してリスクがあるとわかっていない胎児において、通常の出生前超音波検査でOCSの可能性を示唆する所見として現れうるものとしては、子宮内発育不全、クローバー葉頭蓋、四肢の低成長、頭蓋骨の骨化不全などがあり、時には骨折がみられるようなこともある。こうした状況の場合は、FAM111Aの病的バリアントに関する分子遺伝学的検査を検討することが適切である。
注:FAM111A関連骨格異形成症の出生前診断が確定した場合は、評価ならびに管理のアドバイスを受けるため、母体胎児医療の専門医に紹介する必要がある(「妊娠管理」の項を参照)。
出生前検査の利用に関しては、医療者間でも、また家族内でも、さまざまな見方がある。
GeneReviewsスタッフは、この疾患を持つ患者および家族に役立つ以下の疾患特異的な支援団体/上部支援団体/登録を選択した。GeneReviewsは、他の組織によって提供される情報には責任をもたない。選択基準における情報については、ここをクリック。
Phone:310-825-8998
International Skeletal Dysplasia Registry
分子遺伝学
分子遺伝学とOMIMの表の情報はGeneReviewsの他の場所の情報とは異なるかもしれない。表は、より最新の情報を含むことがある。
表A:FAM111A関連骨格異形成症:遺伝子とデータベース
遺伝子 | 染色体上の座位 | タンパク質 | HGMD | ClinVar |
---|---|---|---|---|
FAM111A | 11q12.1 | セリンプロテアーゼFAM111A | FAM111A | FAM111A |
データは、以下の標準資料から作成したものである。遺伝子についてはHGNCから、染色体上の座位についてはOMIMから、タンパク質についてはUniProtから。リンクが張られているデータベース(Locus-Specific,HGMD,ClinVar)の説明についてはこちらをクリック。
表B:FAM111A関連骨格異形成症関連のOMIMエントリー(内容の閲覧はOMIMへ)
127000 | KENNY-CAFFEY SYNDROME, TYPE 2; KCS2 |
602361 | GRACILE BONE DYSPLASIA; GCLEB |
615292 | FAMILY WITH SEQUENCE SIMILARITY 111, MEMBER A; FAM111A |
分子レベルの病原
FAM111Aは、保存されたヒスチジン・アスパラギン酸・セリンの触媒3残基を含んだC末端のトリプシン様セリンペプチダーゼドメインを有する、611のアミノ酸残基から成るタンパク質、FAM111Aをコードしている。これは、骨や副甲状腺で発現し、骨格の発達、線的成長、副甲状腺の発生と調節、そしてカルシウムホメオスタシスを調整する細胞内経路において、決定的に重要な役割を果たしているものと考えられている[Ungerら2013,Isojimaら2014,Abrahamら2017]。FAM111Aはセリンプロテアーゼであり、おそらくDNA複製、ならびに複製ストレスに対する反応に関与しているであろうということが、機能研究により明らかになってきている[Hoffmannら2020,Kojimaら2020,Nieら2021]。FAM111Aノックアウト細胞株を用いたinvitroの実験で、細胞生存能力への影響は小さいものの、DNA複製ストレスを誘導する特定の薬剤に対する感受性の高まりが明らかになっている[Hoffmannら2020,Kojimaら2020]。
現在までに骨頭蓋狭窄症(OCS)やKenny-Caffey症候群(KCS)を引き起こすことが判明しているFAM111Aのバリアントは、すべて1アミノ酸の置換あるいは欠失である[Rosatoら2022]。これまでに、FAM111Aの変異がOCSを引き起こす病原メカニズムとして、副甲状腺ホルモンの機能異常もしくは欠損が係わっているとの考え方が提唱されている[Ungerら2013]ものの、詳細なメカニズムについては依然として不明である。参照集団のデータベース中にヌルアレルがみられる一方で、これがこれまでOCS・KCS罹患者中に同定されていないことから、ハプロ不全が関与している可能性は低いものと考えられている。タンパク質の3次元構造を調べた以前の研究で、大多数のバリアントはプロテアーゼドメイン近傍のタンパク質表面の特定領域に位置していると予測されていた[Ungerら2013]。また、最近の研究で、疾患関連バリアントにより分子内、分子間での自己切断メカニズムが亢進し、これによりプロテアーゼ活性依存性の細胞毒性が現れる可能性が示唆されている[Hoffmannら2020,Kojimaら2020,Nieら2021]。しかしながら、FAM111Aのバリアントの病原性に関する機能面でのデータ、とりわけ各バリアントの分子標的や細胞内局在に関しては、依然として不足している現状である。各バリアントによって、OCSやKCSに大きな重症度の幅が生じる分子的メカニズムについても、依然として明らかになっていない。
疾患の発症メカニズム
これは不明である。顕性(優性)の機能獲得型メカニズムが提唱されている[Hoffmannら2020,Rosatoら2022]。OCS、KCSの罹患者に欠失型やトランケーション型のバリアントが報告されていないことも、これを裏づけている。
Gene Reviews著者: ShirleyCheng,MD,IvanFMLo,MD,andHo-MingLuk,MD.
日本語訳者:佐藤康守(たい矯正歯科)、山田崇弘(北海道大学病院臨床遺伝子診療部
)GeneReviews最終更新日: 2023.4.6. 日本語訳最終更新日: 2023.8.16.[in present]