Leber先天黒内障/早期発症型重度網膜ジストロフィー概説
(Leber Congenital Amaurosis / Early-Onset Severe Retinal Dystrophy Overview)

[Synonyms:EOSRD, LCA]

Gene Reviews著者: Neruban Kumaran, BSc, MBBS, FRCOphth, Mark E Pennesi, MD, PhD, Paul Yang, MD, PhD, Karmen M Trzupek, MS, CGC, Catherine Schlechter, MS, MBI, CGC, Anthony T Moore, MA, BM BCh, FRCS, FRCOphth, FMedSci, Richard G Weleber, MD, DABMG, FACMG, and Michel Michaelides, BSc, MBBS, MD(Res), FRCOphth, FACS.
日本語訳者:佐藤康守(たい矯正歯科)、平岡美紀(北海道医療大学病院眼科)

GeneReviews最終更新日: 2023.3.23. 日本語訳最終更新日: 2023.7.15.

原文: Leber Congenital Amaurosis / Early-Onset Severe Retinal Dystrophy Overview


要約


本概説の目的は、臨床医に、Leber先天黒内障(LCA)/早期発症重症網膜ジストロフィー(EOSRD)とその臨床的表現型、遺伝学的原因、管理に関する認識を高めてもらうことにある。
本概説の目標は以下の通りである。

目標1.LCA/EOSRDの臨床的特徴について説明すること。
目標2.LCA/EOSRDの遺伝学的原因に関するレビューを行うこと。
目標3.発端者にみられるLCA/EOSRDの遺伝学的原因を特定(可能な場合)するための評価戦略を提供すること。
目標4.遺伝学的原因を基礎にしたLCA/EOSRDの医学的管理に関する情報を提供(可能な場合)すること。
目標5LCA/EOSRDの遺伝カウンセリングに関する情報を提供すること。


1.Leber先天黒内障/早期発症重症網膜ジストロフィーの臨床的特徴

Leber先天黒内障(LCA)/早期発症重症網膜ジストロフィー(EOSRD)は、重症なLCAから軽症なEOSRDに至るまで、一連のスペクトラムを呈する遺伝性網膜疾患である。
LCAは、出生時もしくは生後数ヵ月の段階に始まる視覚障害、眼球回旋もしくは眼振、瞳孔対光反応の不良、眼指兆候(oculodigitalsign;眼を突く、擦る、押すといった動作)、視野網膜電図(ERG)では反応消失、あるいは重度の反応減弱を特徴とする。

EOSRDは、視覚障害が乳児期を過ぎ5歳までに発症するのがふつうで、幅はあるものの視力がある程度残り、全視野網膜電図の反応もわずかに残るのが特徴である[Kumaranら2017]。

LCA/EOSRD発症時の眼底は、正常に見える場合もあれば、網膜の色素沈着、網膜色素上皮レベルに現れる白斑、血管の狭細化、偽鬱血乳頭と黄斑萎縮など、さまざまな網膜異常を呈する場合もある。出生段階で眼底所見に異常がみられなかった例についても、経時的に、網膜色素の色素沈着、乳頭蒼白、血管の狭細化といったものが経過とともに見られることが多い。その他の遅発性変化としては、乳頭ドルーゼン、円錐角膜、水晶体混濁などがある。一部の遺伝学的サブタイプでは、網膜に特徴的表現型が現れる。
視力障害の進行速度はさまざまで、遺伝子によっては進行の早いものがある(表2参照)。重度の視覚障害を有する乳児は、同時に、発語、社会的技能、行動といった面の遅延や障害を有することがある。そのため早期より発達小児科学の専門家の介入が重要である。

LCA/EOSRDの徴候・症候は、通常、眼のみの単発性で、影響の範囲は眼のみにとどまる。ただ、視覚障害を呈する乳児の一部に、その後、別の全身的問題、特に腎疾患を発症する例がみられる。LCA/EOSRDの中のある種の遺伝学的サブタイプ(例えば、IQCB1IFT140CEP290関連LCA)においては、Senior-Løken症候群やJoubert症候群の部分症候として、後に末期腎不全に至るようなネフロン癆を呈するようなものもある(表2参照)。
早期に分子診断を確立することは、全身の評価を要する例を特定する上で有用である。

鑑別診断

表1:LCA/EOSRDとの鑑別を検討すべき網膜疾患

疾患名 遺伝子 遺伝形式 鑑別上重要な臨床症候/評価
非症候群性 1色覚 CNGB3
CNGA3
GNAT2
PDE6C
ATF6
PDE6H
AR 1色覚では:
  • 網膜電図で錐体応答はなしか重度低下、杆体応答は正常。
  • 疾患の経過に変化はみられない。
LCA/EOSRDでは:
  • 全視野網膜電図は、検知不能か顕著な低下。
  • 疾患は進行性。
先天停在性夜盲(「X連鎖性先天停在性夜盲」のGeneReviewを参照) 10超の遺伝子1 XL
AR
AD
網膜電図所見と疾患の経過により鑑別可能。
眼白皮症(OMIM300500)と眼皮膚白皮症(OMIMPS203100)(「眼皮膚白皮症・眼白皮症概説」のGeneReviewを参照) 10超の遺伝子2 XL
AR
  • 臨床的診査(皮膚・毛髪・眉毛/睫毛・虹彩・網膜の低色素)
  • 網膜の画像診断(光干渉断層撮影と眼底自発蛍光検査);光干渉断層撮影で中心窩低形成がはっきり確認可能。
  • 網膜電図は正常で、視覚誘発電位では視交叉経路の異常
症候群性 神経セロイドリポフスチン症(NCL)(OMIMPS256730) 13の遺伝子3 AR
AD4
  • 乳児型NCLでは、先天性あるいは早期発症性(生後6ヵ月未満)の盲がみられる。
  • 遅発性乳児型ならびに若年型のNCLの発症年齢は、それぞれ2-4歳、6歳以上である。
  • 網膜電図で陰性の波形がみられることがある。
  • NCLでは、神経認知機能の低下とてんかんがみられる。
Joubert症候群 30超の遺伝子5 AR
XL6
  • 重度の視覚障害、眼球運動異常がみられる。
  • 「molartoothsign」などの特徴的MRI所見。
  • 小児期後期にみられるネフロン癆。
Zellwegerスペクトラム障害 13の遺伝子7 AR これに伴って現れる症候:
  • 感音性聾
  • 顔貌異常
  • 発達遅滞
  • 肝腫大
  • 早期死亡
Alström症候群 ALMS1 AR 現れる眼症候:
  • 乳児発症性の眼振
  • 羞明
  • 錐体-杆体ジストロフィー
その他の全身症候:
  • 小児期の肥満
  • 高インスリン血症
  • 2型糖尿病
  • 肝機能障害
  • 心不全
  • 感音性難聴
  • 腎不全
コバラミンC欠損症(「細胞内コバラミン代謝障害」のGeneReviewを参照) MMACHC AR 表現型には幅がみられる。
重症例では、進行性、乳児発症、代謝・神経・眼症候がみられる。

  • 乳児性眼振
  • 標的黄斑症
  • 網膜電図での応答性低下

Kumaranら[2017]より引用(表2)。
AD=常染色体顕性;AR=常染色体潜性;XL=X連鎖性

  1. この表現型に関係する遺伝子のリストについては、OMIMPhenotypicSeriesの「先天停在性夜盲」を参照されたい。
  2. X連鎖性眼白皮症は、GPR143の病的バリアントに起因して生じる。眼皮膚白皮症に関係する遺伝子のリストについては、OMIMPhenotypicSeriesの「眼皮膚白皮症」を参照されたい。
  3. NCLを引き起こすことが知られているのは、PPT1TPP1CLN3CLN5CLN6MFSD8CLN8CTSDDNAJC5CTSFATP13A2GRNKCTD7の各遺伝子の病的バリアントである。
  4. NCLは常染色体潜性遺伝であるが、成人発症型NCLには、常染色体顕性の遺伝形式をとるものもある。
  5. Joubert症候群を引き起こすことが知られているのは、ARL13BB9D1B9D2C2CD3C5orf42CC2D2ACEP41CEP104CEP120CEP290CSPP1IFT172INPP5EKATNIP(KIAA0556),KIAA0586KIF7MKS1NPHP1OFD1PDE6DPOC1BRPGRIP1LTCTN1TCTN2TCTN3TMEM67TMEM107TMEM138TMEM216TMEM231TMEM237TTC21BZNF423の各遺伝子の病的バリアントである。
  6. Joubert症候群は、常染色体潜性の遺伝形式をとるものが多いものの、OFD1の病的バリアントに起因して生じるJoubert症候群はX連鎖性の遺伝形式をとる。2遺伝子遺伝の報告もみられる。
  7. Zellwegerスペクトラム障害を引き起こすことが知られているのは、PEX1PEX6PEX12PEX26PEX10PEX2PEX5PEX13PEX16PEX3PEX19PEX14PEX11βの各遺伝子の病的バリアントである。

2.Leber先天黒内障/早期発症重症網膜ジストロフィーの原因

現在までにわかっている24の遺伝子の変異が、Leber先天黒内障(LCA)/早期発症重症網膜ジストロフィー(EOSRD)罹患者の70%-80%を占める(表2)。

表2:Leber先天黒内障(LCA)/早期発症重症網膜ジストロフィー(EOSRD):関連する遺伝子とその特徴的臨床症候

遺伝子1 LCA/EOSRD全体の中で占める割合 他と異なる症候 その他 参考文献
視機能 眼底所見 OMIM 代表的引用文献
ALMS1       606844  
AIPL1 5%未満 LCA:早期より極度の視力障害。 乳児期は比較的正常に近い場合あり。 光干渉断層撮影:
  • 4歳未満では網膜外層構造が比較的保存されている。
  • 生下時以降、全黄斑萎縮に至るまでの進行性欠損。
604393 Aboshihaら[2015]
CABP4       608965 Aldahmeshら[2010]
CEP290 15%-20% LCA:
  • ばらつきの幅が大きいものの、大多数に重度の視力障害がみられる。
  • ・10歳未満の段階でははっきりした進行はみられない。
乳児期は比較的正常に近い場合あり。
  • 光干渉断層撮影:40歳代まで網膜外層構造が保たれる。
  • ネフロン癆、Joubert症候群に関連。
611755  
CLUAP1       616787 Soensら[2016]
CRB1 10%
  • 表現型:LCA/EOSRD,網膜色素変性,その他2。
  • 重症度や進行速度は、ばらつきの幅が大きい。
以下のものがさまざまな幅でみられる:
  • 銭形色素沈着。
  • 黄斑症。
  • 細動脈近傍の網膜色素上皮は比較的保存される。
光干渉断層撮影:網膜肥厚と層構造消失の報告あり。 613835  
CRX 1%       613829 Jacobsonら[1998]
DTHD1       616979 Abu-Safiehら[2013]
GDF6       615360  
GUCY2D 10%-20% LCA:
  • 早期より重度の視力障害。
  • 色知覚の欠損。
  • 顕著な羞明。
  • ・杆体性視機能はほぼ保たれる。
比較的正常。   204000 Jacobsonら[2013]
IFT140     ネフロン癆、Joubert症候群に関連。 614620 Xuら[2015]
IMPDH1 5%       613837  
IQCB1     ネフロン癆、Joubert症候群に関連。 609237 Estrada-Cuzcanoら[2011]
KCNJ13       614186  
LCA5 1%-2%       604537  
LRAT 1%未満 EOSRD:RPE65-LCAに似る。     613341  
NMNATI LCA/EOSRD:
  • 早期発症の重度の視力障害と広範な黄斑症が大多数。
  • ・軽症の表現型のものも少数あり。
顕著な黄斑症   608553 Kumaranら[2021]
OTX2       600037 Hendersonら[2009]
RD3 1%未満       610612  
RDH12 10% LCAの表現型。
  • 早発かつ広範性の網膜色素上皮・網膜の萎縮。
  • 幼児期には、網膜内色素沈着はあまりみられない。
  • 経時的に、密な網膜内骨小体様色素沈着が出現する。
  • 早発性、進行性の黄斑萎縮
  • 光干渉断層撮影:黄斑陥凹。
  • 眼底自発蛍光検査:自発蛍光の欠損。
612712 Mackayら[2011]
RPE65 5%-10% EOSRD:
  • 出生時からみられる重度の夜盲
  • 眼振はあまりみられない。
  • 色識別障害。
  • 進行性の視野欠損を伴うものの、20歳代までは錐体関連の視覚が残る。
周辺に白色点状病変を伴うブロンド色の眼底

FDA承認済の遺伝子治療が利用可能(「RPE65関連LCA/EOSRD」のGeneReviewを参照)。

204100

Kumaranら[2018a]
Kumaranら[2018b]

RPGRIP1

5%

初期に急激な視力低下がみられるものの、その後の進行はみられない。

 

 

613826

 

PRPH2

 

 

 

608133

 

SPATA7

3%

 

 

 

604232

 

TULP1

1%未満

 

黄斑症

 

613843

 

Kumaranら[2017]より引用。
?=不明

  1. 遺伝子の掲載はアルファベット順。
  2. 網膜色素変性に、Coats病様血管症、遅発性黄斑ジストロフィー、単発性の常染色体潜性中心窩網膜分離症を伴う場合と、伴わない場合がある。


3.発端者におけるLeber先天黒内障/早期発症重症網膜ジストロフィーの遺伝学的原因の特定に向けた評価戦略

Leber先天黒内障(LCA)/早期発症重症網膜ジストロフィー(EOSRD)の遺伝学的原因の特定は:

病歴聴取

表2を参照されたい。

身体の診査,その他の検査

表2を参照されたい。

家族歴

LCA/EOSRDの症候を有する血族、ならびに血族結婚の有無に注意しつつ、3世代にわたる家族歴を聴取する必要がある。直接診査や、分子遺伝学的検査の結果を含めた診療録の見直しを通じて、血族の有する関連所見を記録する。

分子遺伝学的検査

LCA/EOSRDは、遺伝的異質性を有すると同時に、その他数多くの遺伝性網膜ジストロフィーとの鑑別も困難である。そのため、分子遺伝学的検査のアプローチとしては、遺伝子標的型検査(マルチ遺伝子パネル)や、網羅的ゲノム検査(エクソームシーケンシング,ゲノムシーケンシング)が推奨される。遺伝子標的型検査としては、通常、マルチ遺伝子パネルが行われることになるが、その場合は、「網膜ジストロフィー遺伝子」としての原因遺伝子の特徴を事前に把握しておく必要がある。
一方、ゲノム検査の場合は、もともと網膜ジストロフィーとの関連がわかっていなかった遺伝子の中に新たな原因遺伝子が見つかる可能性がある。

注:(1)単一遺伝子検査(最初に、ある1つの遺伝子の配列解析を行い、次いで、遺伝子標的型欠失/重複解析を行う)が有用になるようなことはほとんどないため、通常、これは推奨されない。
(2)すでに実施済の検査で、潜性遺伝のLCA関連遺伝子の病的バリアントがヘテロで同定されている場合であれば、単一遺伝子の配列解析や標的型欠失/重複解析を行うことも検討してよいように思われる。その場合でも、この遺伝子の大欠失/挿入/重複が疾患原因であるという可能性はほとんどない。

現況の表現型と直接関係のない遺伝子の意義不明バリアントや病的バリアントの検出を抑えつつ、LCA/EOSRDの遺伝学的原因を特定できる可能性が最も高いのは、表2に挙げた遺伝子の一部あるいは全部を含むマルチ遺伝子パネルであるように思われる。
注:(1)パネルに含められる遺伝子の内容、ならびに個々の遺伝子について行う検査の診断上の感度については、検査機関によってばらつきがみられ、また、経時的に変更されていく可能性がある。
(2)マルチ遺伝子パネルによっては、このGeneReviewで取り上げているものと無関係な遺伝子が含まれることがある。
LCA/EOSRD関連遺伝子の中には、関与割合がきわめて低いものがあるため、パネルによっては、表2に挙げた遺伝子をすべて含む設計になっていないものがありうることに注意が必要である。
(3)検査機関によっては、パネルの内容が、その機関の定めた定型のパネルであったり、表現型ごとに定めたものの中で臨床医の指定した遺伝子を含む定型のエクソーム解析であったりすることがある。
(4)ある1つのパネルに対して適用される手法には、配列解析、欠失/重複解析、ないしその他の非配列ベースの検査などがある。
マルチ遺伝子パネル検査の基礎的情報についてはここをクリック。
遺伝学的検査をオーダーする臨床医に対する、より詳細な情報についてはここをクリック。

網羅的ゲノム検査(この場合、臨床医の側で関与が疑われる遺伝子の目星をつけておく必要はない)も検討対象になりうる。エクソームシーケンシングが最も広く用いられているが、ゲノムシーケンシングも次第に使用可能なことが多くなってきている。エクソームシーケンシングで診断に至らない場合は、臨床的に利用可能なようなら、配列解析では検出できないようなエクソン単位の欠失や重複を調べるエクソームアレイも検討対象になりうるように思われる。

注:エクソームシーケンシングと異なり、ゲノムシーケンシングの場合は、非コード領域のバリアントも検出可能である。ゲノムシーケンシングでこれまでに確認されている病的バリアントの大多数はエクソン内のものである[Taylorら2015]が、これまでに遺伝性網膜ジストロフィー罹患者のCRB1GUCY2DIFT140の非コード領域に、likelypathogenicのバリアントが検出された例が実際に存在する[DaichVarelaら2023]。

網羅的ゲノム検査の基礎的情報についてはここをクリック。

ゲノム検査をオーダーする臨床医に対する、より詳細な情報についてはここをクリック。


4.遺伝学的原因に基づいたLeber先天黒内障/早期発症重症網膜ジストロフィーの医学的マネジメント

Leber先天黒内障(LCA)/早期発症重症網膜ジストロフィー(EOSRD)の大多数のタイプに対しては、症候に応じた対応を行う。LCA/EOSRDのうち、唯一、他と異なる治療(遺伝子補充療法)が行えるのは、RPE65関連Leber先天黒内障/早期発症重症網膜ジストロフィーである。「RPE65関連Leber先天黒内障/早期発症重症網膜ジストロフィー」のGeneReviewを参照されたい。

視覚障害

症候に対するマネジメント

罹患児には、屈折異常の矯正、可能であればロービジョン補助具の使用、教育や仕事の機会を最大限確保するといったことが有益である。
子どもとその親には、州内あるいは地域内にある視覚障害児のためのプラグラムへの紹介を行う必要がある。

LCA/EOSRDの遺伝子治療

LCAの例については、機能喪失型バリアントに対し、健全な遺伝子を必要とする場所に、健全な遺伝子のコピーを供与することで補償を行う遺伝子補充療法が存在する[Kumaranら2018c]。これまで、LCAの臨床試験ではウイルスベクター、より具体的には、組換えアデノ随伴ウイルスベクターが用いられてきている。
LCAに対する網膜下遺伝子治療薬投与療法は、RPE65関連LCAで最も研究が進んでいる[Kumaranら2018b]。全部で5つの第Ⅰ/Ⅱ相臨床試験[Bainbridgeら2008,Hauswirthら2008,Maguireら2008,Weleberら2016,LeMeurら2018]と、1つの第Ⅲ相臨床試験が行われ、RPE65cDNAを含む組換えAAVベクターの網膜下注入により網膜機能の改善が得られることがわかっている。

発達遅滞/知的障害の管理に関する事項

発達遅滞を伴うLCA/EOSRDの子どもについては、発達小児科医への紹介とともに、継続的ケア・支援プログラムへの登録の進める必要がある。
発達遅滞/知的障害の管理に関するアドバイスは、利用可能な支援サービスの内容により国ごとに異なるものとなることが考えられ、さらに言うと、同一国内にあっても地域ごとに異なる場合もありうる。包括的通則は、以下のようなものとなろう。

認定/登録を受けることで、こうした支援が受けられる国もある。
国によっては、視覚障害の原因や治療効果に関する集団データを得ることを目的として、登録サービスを実施しているところがある。
注:以下に述べる事項は、アメリカにおける発達遅滞/知的障害を有する人の管理に関する標準的推奨事項を示したものである。

運動機能障害

粗大運動機能障害

微細運動機能障害

摂食、身だしなみ、着替え、筆記などの適応機能に問題が生じる微細運動技能の障害に関しては、作業療法が推奨される。

口腔運動機能障害

罹患者が、口からの摂食を安全に行える状況にあるということが前提ではあるが、口腔運動のコントロールがうまくいかないために摂食が困難という例については、摂食治療(ふつう、作業療法士あるいは言語治療士がこれを担当する)が推奨される。

コミュニケーションの問題

表出言語に障害をもつ罹患者に対しては、それに代わるコミュニケーション手段(例えば、拡大代替コミュニケーション[AAC])に向けての評価を検討する。

社会性/行動に関する懸念事項

小児に対しては、応用行動分析(ABA)をはじめとする自閉症スペクトラム障害の治療で用いられる治療的介入の導入に向けた評価を行うとともに、実際にそれを施行することがある。ABA療法は、個々の子どもの行動上の強みと弱み、社会性に関する強みと弱み、適応性に関する強みと弱みに焦点を当てたもので、ふつう、行動分析に関する学会認定士との1対1の場で行われる。
発達小児科医を受診することで、両親に対し、適切な行動管理の指針を指導したり、必要に応じ、注意欠如/多動性障害の治療薬を処方したりといったことも可能になる。


遺伝カウンセリング

「遺伝カウンセリングは個人や家族に対して遺伝性疾患の本質,遺伝,健康上の影響などの情報を提供し,彼らが医療上あるいは個人的な決断を下すのを援助するプロセスである.以下の項目では遺伝的なリスク評価や家族の遺伝学的状況を明らかにするための家族歴の評価,遺伝学的検査について論じる.この項は個々の当事者が直面しうる個人的あるいは文化的、倫理的な問題に言及しようと意図するものではないし,遺伝専門家へのコンサルトの代用となるものでもない.」

遺伝形式

Leber先天黒内障(LCA)/早期発症重症網膜ジストロフィー(EOSRD)は通常、常染色体潜性の遺伝形式をとる。

稀ながら、CRXOTX2IMPDH1については、ヘテロ接合性病的バリアントに起因して疾患が生じる常染色体顕性遺伝の遺伝形式をとる。
注:分子診断が確定しない例が、LCA/EOSRD罹患者全体の30%と推定される。こうした例も、多くは常染色体潜性遺伝であるが、denovoの病的バリアントに起因する常染色体顕性遺伝の可能性もわずかながらある。

常染色体潜性遺伝―血縁者の有するリスク

発端者の親

発端者の同胞

発端者の子

常染色体潜性LCA/EOSRD罹患者の子は、LCA/EOSRDを引き起こすアレルバリアントに関し、絶対ヘテロ接合者(絶対保因者)となる。

他の血族

発端者の両親の同胞は、LCA/EOSRDを引き起こすアレルバリアントの保因者であることに関し、50%のリスクを有する。

保因者の特定

リスクを有する血縁者に対して保因者検査を行うためには、家系内に存在するLCA/EOSRDを引き起こす複数のアレルバリアントを事前に同定しておくことが必要である。

常染色体顕性遺伝―血縁者の有するリスク

発端者の親

発端者の同胞

発端者の同胞の有するリスクは、発端者の両親の臨床的/遺伝学的状態によって変わってくる。

発端者の子

LCA/EOSRD罹患者の子は、LCA/EOSRDを引き起こすアレルバリアントを継承することに関し、50%のリスクを有する。

他の血縁者

他の血縁者の有するリスクは、発端者の両親の状態によって変わってくる。仮に、片親が罹患者であれば、その片親の血族にあたる人はすべてリスクを有することになる。

出生前検査ならびに着床前遺伝学的検査

家系内に存在するLCA/EOSRDを引き起こすアレルバリアントが同定されている場合は、出生前検査ならびに着床前遺伝学的検査を行うことが可能である。


関連情報

GeneReviewsスタッフは、この疾患を持つ患者および家族に役立つ以下の疾患特異的な支援団体/上部支援団体/登録を選択した。GeneReviewsは、他の組織によって提供される情報には責任をもたない。選択基準における情報についてはここをクリック。

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Email:info@fightblindness.org
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Phone:410-659-9314
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www.retina-international.org


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    日本語訳者:佐藤康守(たい矯正歯科)、平岡美紀(北海道医療大学病院眼科)
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