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3-M症候群
(3-M Syndrome)

Gene Review著者:Muriel Holder-Espinasse, MD, PhD
日本語訳者: 江田 肖(瀬戸病院 遺伝診療科),櫻井晃洋(札幌医科大学医学部 遺伝医学)
Gene Review 最終更新日: 2012.1.26. 日本語訳最終更新日: 2014.4.22

原文 3-M Syndrome


要約

疾患の特徴 

3-M症候群は出生前および出生後の重度な発育遅延(最終身長は平均より5~6SD低い、120-130㎝)、特徴的顔貌を主徴とする。知能は正常である。また、短くて太い頚、突出した大菱形骨、胸骨変形、胸郭の狭小化、いかり肩、翼状肩甲骨、脊柱前彎過度、第五指の短指症、突出した踵や関節弛緩などの特徴を呈する。3-M症候群の罹患男性には性腺機能低下、時に尿道下裂も見られる。

診断・検査 

記すべての所見を有する小児は3-M症候群が疑われる。

CUL7,OBSL1,CCDC8、の3つの遺伝子のいずれかの変異が3-M症候群の原因として知られている。 

臨床的マネジメント 

対症療法:外科的骨延長術は1つ選択肢となる。低身長症者向けの補助器具は有効である。重度な関節弛緩の場合、早期に整形外科による評価と治療は関節炎への進行を予防するために必要である。3-M症候群の罹患男性は思春期において、性腺機能に対する内分泌学的評価が推奨されるべきである。

サーベイランス:成長速度を特に考慮し、標準成長曲線に基づく6~12ヶ月ごとの成長モニタリング。

遺伝カウンセリング 

3-M症候群は常染色体劣性遺伝形式をとる。罹患者の子は、25%の確率で3-M症候群を罹患し、50%の確率で無症状の保因者となり、25%の確率で遺伝子変異を受け継がない。保因者検査、リスクのある妊娠に対する出生前診断は家系内における病的変異が同定されていれば可能である。出生前の超音波検査で、すべての長骨における発育遅延が認められる。


診断

臨床診断

下記の所見を有する小児は3-M症候群が疑われる。

X線所見 3-M症候群の診断は下記の非特異的X線所見(2歳まで見られない場合がある)によって確定される。

分子遺伝学的検査

GeneReviewsは,分子遺伝学的検査について,その検査が米国CLIAの承認を受けた研究機関もしくは米国以外の臨床研究機関によってGeneTests Laboratory Directoryに掲載されている場合に限り,臨床的に実施可能であるとする. GeneTestsは研究機関から提出された情報を検証しないし,研究機関の承認状態もしくは実施結果を保証しない.情報を検証するためには,医師は直接それぞれの研究機関と連絡をとらなければならない.―編集者注.

遺伝子 

CUL7, OBSL1, CCDC8における遺伝子変異は3-M症候群の原因として知られている。Table 1とTable A.遺伝子とデータベースを参照のこと。

その他の遺伝子座不均一性 すべての3-M症候群が上記3つの遺伝子における変異によるものではないため、それ以外の遺伝子における変異(同じ遺伝子経路に関わる遺伝子)が存在すると推測されている。

Table 1. 3-M症候群に使用される分子遺伝学的検査の概要

遺伝子1 当該遺伝子変異による3-M症候群の割合 検査方法 検出される変異2
CUL7 77.5%³ シークエンス解析 遺伝子配列変異?
欠失/重複解析? エクソンまたは全遺伝子の欠失?
OBSL1 16% シークエンス解析 遺伝子配列変異?
欠失/重複解析? エクソンまたは全遺伝子の欠失?
CCDC8 不明? シークエンス解析 遺伝子配列変異?
  1. 遺伝子座位またはタンパク質はTable A.遺伝子とデータベースを参照する。
  2. アレル変異は分子遺伝学を参照する。
  3. Huber et al [2011] 
  4. シークエンス解析で検出できる変異は微小な遺伝子内欠失/挿入、ミスセンス、ナンセンス変異、スプライスサイト変異がある。一般的に、エクソンや全遺伝子欠失/重複が検出できない。
  5. 欠失/重複解析とは、シークエンス解析ではなかなか検出できない、ゲノムDNAの翻訳領域やイントロン隣接領域における遺伝子変異を同定するための検査であり、変異が起こった遺伝子/染色体断片を含む、定量的PCR、ロングレンジPCR、MLPA、または染色体マイクロアレイ(CMA)など様々な方法が含まれる。
  6. CUL7あるいはOBSL1における遺伝子の欠失や重複は3-M症候群を引き起こすとの報告はまだない(注:定義上は、欠失/重複解析はゲノムDNAのシークエンス解析で検出できない遺伝子再編成を同定できる)。
  7. おおよそ5%以下、今まで発表された報告は1件のみである。Hanson et al [2011]を参照する。

検査の特長 検査の感度、精度およびその他の特長はwww.eurogentest.org [Holder-Espinasse et al 2011]を参照する。

注:CUGC発表時にCCDC8遺伝子は同定されていなかった。

臨床手順

発端者における確定診断のための検査 本疾患は臨床所見およびX線所見によって診断される。
分子遺伝学的検査は臨床診断だけで確定できない場合、出生前診断、または血縁者の保因者診断が希望される場合に適応となる。本疾患を引き起こす3つの遺伝子における病的変異の可能性によって、下記の検査順序が推奨される。

  1. CUL7遺伝子
  2. CUL7遺伝子に病的変異が同定されなければ、OBSL1遺伝子
  3. OBSL1遺伝子に病的変異が同定されなければ、CCDC8遺伝子

リスクのある血縁者における保因者診断 事前に家系内における病的変異が同定される必要がある。
注:常染色体劣性遺伝形式のため、ヘテロ接合の保因者は本疾患を罹患するリスクがない。

出生前診断および着床前診断(PGD) リスクのある妊娠は事前に家系内における病的変異が同定される必要がある。

遺伝学的関連(アレル)疾患

3-M症候群はCUL7,OBSL1,CCDC8における遺伝子変異が起因とする唯一の疾患として知られている。


臨床像

自然歴

3-M症候群の最も明確な臨床像は子宮内から始まる重度な発育遅延である。出生時身長は40-42㎝に対し、頭囲は妊娠週数に相応しているため、外見的に不均衡な印象が受けられる。出生後に追いつき成長がなく、最終身長は平均より5~6SD以上低い(120-130cm)。

女性罹患者の性腺機能は正常であるが、男性罹患者は高FSH血症、低精巣容積や精液の異常のような性腺機能障害、低妊孕率あるいは不妊が報告されている。一部の男性罹患者には尿道下裂も見られる。

3-M症候群における関節過度可動性や脳内血管動脈瘤に関する報告は2件があり、結合組織における病変の可能性が示される。

Temtamy et al [2006]は目立つ前上額骨、上額低形成、厚い口唇、高アーチ型口蓋、中度の溝状舌、萌出遅延、エナメルの低石灰化または不正咬合のような歯科口腔的所見を新たに報告した。

遺伝子型‐表現型の相関

現時点で、遺伝子型‐表現型の相関に関する報告がない。

命名

3-Mとの疾患名は最初に本疾患を報告した3名の研究者の名前のイニシャルから由来する。
Elliott et al [2002]が報告した長頭脊椎異形成症は、内眼角贅皮や眼間解離を除いた正常な顔立ち、境界型知的障害またはX線所見が3-M症候群に似ているため、同一疾患である可能性が高い。

頻度 

3-M症候群は稀で、頻度は不明。1975年に初めて報告[Miler et al 1975]され以来、おおよそ100名の罹患者が文献に報告されている。


鑑別診断

本稿で扱われる疾患に対する遺伝学的検査の実施可能性に関する最新情報は,GeneTests Laboratory Directoryを参照のこと.―編集者注.

全出生児の約0.17%に見られる子宮内発育遅延は本疾患の非特異的所見の一つである。以下は3-M症候群と鑑別する必要のある子宮内発育遅延―奇形症候群である。

RSS罹患者の50%以上に見られる四肢左右非対称は3-M症候群に見られない。3-M症候群の特徴的X線所見はラッセル・シルバー症候群には見られない。ラッセル・シルバー症候群は通常1家系内に罹患者1人しかいない。


臨床的マネジメント

初診時の評価

3-M症候群と診断された患者に下記の追跡評価項目が推奨されている。

症候に対する治療

成人期の最終身長と成長は主要な治療項目となる。

サーベイランス

成長速度を特に考慮し、標準成長曲線を基づく、6~12ヶ月ごとの成長モニタリングが推奨される。

リスクのある血縁者の評価

リスクのある血縁者における早期診断は、関節炎への進行を予防するために、早期な整形外科的評価と治療を可能にする。リスクのある血縁者の検査は「遺伝カウンセリング」の項目を参照する。

周産期の健康管理

罹患女性の周産期における健康管理はほかの低身長症女性と同様に、主に未熟児を出産するリスクの低減となる。
出生前診断で3-M症候群と診断された胎児に対しても、周産期における特別なサーベイランスや分娩に関する注意事項がない。

研究中の治療

注:本疾患における臨床試験は行われていない。

遺伝カウンセリング

「遺伝カウンセリングは個人や家族に対して遺伝性疾患の本質,遺伝,健康上の影響などの情報を提供し,彼らが医療上あるいは個人的な決断を下すのを援助するプロセスである.以下の項目では遺伝的なリスク評価や家族の遺伝学的状況を明らかにするための家族歴の評価,遺伝子検査について論じる.この項は個々の当事者が直面しうる個人的あるいは文化的な問題に言及しようと意図するものではないし,遺伝専門家へのコンサルトの代用となるものでもない.」

遺伝形式

3-M症候群は常染色体劣性遺伝形式をとる。

患者家族のリスク

発端者の両親

発端者の同胞 

発端者の子

他の血縁者

保因者検査

家系内における病的変異が同定されていれば、リスクのある血縁者の保因者検査は可能。

 

遺伝カウンセリングに関連した問題

早期診断を目的とする血縁者のリスク評価は「臨床的マネジメント」および「罹患者家族のリスク」項目を参照する。

家族計画 

DNAバンキング DNAバンクは主に白血球から調製したDNAを将来の使用のために保存しておくものである。検査法や遺伝子,変異あるいは疾患に対するわれわれの理解が進歩するため,罹患者のDNAを保存することは考慮すべきかもしれない。

出生前診断

分子遺伝学的検査 

リスクのある妊娠に対する出生前診断は羊水検査(妊娠15-18週)または絨毛検査(妊娠10-12週)から採取した胎児DNAを用いて行うことができる。検査を行うには家系内における遺伝子病的変異が事前に同定される必要がある。
*妊娠週数は最終月経の開始日あるいは超音波検査による測定に基づいて計算される。

超音波検査 

3-M症候群における子宮内発育遅延(IUGR)は非特異的で、且つ骨所見は出生後のみに現れるため、妊娠中の超音波検査による診断ができない。
ある報告によると、3-M症候群と診断された胎児は妊娠18週で大腿骨と脛骨の長さが5パーセンタイル、橈骨、尺骨、上腕骨の長さが5パーセンタイル以下、妊娠22週で、すべての長骨における発育遅延が見られた。

着床前診断(PGD)

 家系内の遺伝子病的変異が同定されている場合には技術的には可能である。
訳注:本疾患に対して出生前診断の適応があるとは考えられていないし,着床前診断も行われていない。


関連情報

低身長児・者友の会(ポプラの会)http://www.vho-net.org/-article-368.html


 

分子遺伝学

下記の記述は最新の情報が含まれているため、GeneReviewsに記載されているほかの情報と異なる場合がある

Table A 3-M症候群:遺伝子とデータベース

遺伝子記号 遺伝子座 タンパク質 座位特異性 HGMD
CUL7 6p21.1 Cullin-7 CUL7ホームページ―Mendelian genesを参照すること CUL7
OBSL1 2q35 Obscurin-like protein 1 OBSL1ホームページ―Mendelian genesを参照すること OBSL1
CCDC8 19q13.32 Coiled-coil domain-containing protein 8   CCDC8

Table B  OMIMにおける3-M症候群関連情報

273750 THREE M SYNDROME 1; 3M1
609577 CULLIN 7; CUL7
610991 OBSCURIN-LIKE 1; OBSL1
612921 THREE M SYNDROME 2; 3M2
614145 COILED-COIL DOMAIN-CONTAINING PROTEIN 8; CCDC8
614205

THREE M SYNDROME 3; 3M3

CUL7

正常アレル変異 CUL7遺伝子に26個のエクソンが含まれている。

病的アレル変異 CUL7遺伝子において、45ヶ所(21家系)の異なる変異が同定されている。新たに同定されたホモ接合c.4581dupT変異(フレームシフト変異)により早期の終止コドンは、ヤクート人罹患集団の原因と考えられている。

Table 2 本章に記載されているCUL7病的アレル変異

DNヌクレオチドの変化
(Alias¹)
アミノ酸の変化
(Alias¹)
基準配列
c.4333>T p.Arg1445Ter NM_014780.3
NP_055595.2
c.4391A>C p.His1464Pro
c.4581dupT
(4582_4583insT)
p.Arg1528SerfsTer26
(Arg1528LeufsTer26)

注:上記に記されている変異は著者が提示したものであり、GeneReviewsはその内容に対し、検証を行っていない。

  1. この変異名は最近の命名法に従わない。

正常遺伝子産物 CUL7遺伝子は1698個のアミノ酸から構成される、Cullin-7タンパクをコードする。Cullin-7タンパクはCullinファミリーに属し、Cullinファミリーは進化的に保存されたCullinドメインを共有する複数の構造的に関連タンパクから構成されている。Cullin-7はSkp1、Fbx29(Fbw8とも呼ばれる)、ROC1を含むE3ユビキチンリガーゼ複合体を構築し、ユビキチン化反応(基質タンパク質にユビキチン鎖を付加する反応)を促進する役割を担う。

異常遺伝子産物 CUL 7遺伝子におけるナンセンス変異p.Arg1445Terまたはミスセンス変異p.His1464Proは、ROC1(受容体作動性カルシウムチャネル1)漸加時に、Cullin-7タンパクの不足を引き起こす。Cullin-7タンパクの不足はユビキチン化反応を阻害し、それによって、ヒトの子宮内発育遅延が起こると推測されている。

OBSL1

正常アレル変異 OBSL1遺伝子に22個のエクソンが含まれている。選択的スプライシングによって、異なるタンパクのイソ型をコードする3つのスプライスフォームが生じる。

病的アレル変異 現時点で確認されたすべての病的アレル変異はexon 1-6におけるナンセンス変異またはフレームシフト変異である。

正常遺伝子産物 OBSL1遺伝子はそれぞれ1896個,1401個,1025個のアミノ酸から構成されるスプライスフォーム指定部位A,B,Cを含むObscurin-like1タンパクをコードする。Obscurin-like1タンパクは細胞骨格アダプタータンパクと推測され、Cullin-7タンパクと共に、正常細胞経路に働きをする。Obscurinは細胞シグナルに関与する筋節に存在する筋タンパクである。

異常遺伝子産物 同定されたすべてのOBSL1遺伝子変異は最初の6つのエクソンに存在し、ナンセンス変異依存mRNA分解機構(NMD)経路に関与する。従って、いずれの変異アレルが生じた場合に、OBSL1タンパクの産生ができなくなる。さらに、N末端近位における変異は全OBSL1タンパクのイソ型の欠失を引き起こすため、変異がこの遺伝子領域に集中すると考えられている。

CCDC8

正常アレル変異 CCDC8遺伝子に1個のエクソンが含まれている。

病的アレル変異 CCDC8変異は早期の終始コドンを引き起こす。

正常遺伝子産物 CCDC8はCCDC8タンパク(coiled-coil domain-containing protein 8)をコードする単一エクソン遺伝子である。CCDC8タンパクは538個のアミノ酸から構成され、残基349-369、残基513-535コイルドコイル(coiled-coil)ドメインおよびアラニンリッチドメインを持つ。

異常遺伝子産物 変異によって、機能喪失した切断型CCDC8タンパクが作られる。いずれの変異が生じた場合に、CCDC8タンパクがナンセンス変異依存分解機構をリードすることができなくなる。


原文 3-M Syndrome

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