脳神経外科での脊椎手術

顕微鏡を用いた低侵襲な腰椎後方徐圧術

手術のコンセプト

腰部脊柱管狭窄症のページでも述べたように、この手術は、必要最小限の骨の切除で、腰部脊柱管狭窄症で狭くなった脊柱管を拡大し、神経の圧迫を取り除いて、腰部脊柱管狭窄症による、足のしびれや、痛み、間歇性跛行などの症状を改善するものです。特に、椎間の関節をできる限り温存して、術後に脊椎が不安定になることを防ぐことにより、大がかりな固定の手術を不要にすることができます。脳神経外科の顕微鏡手術の技術が最大限に発揮される手術であるといえます。

手術法

図1.片側からのアプローチ

全身麻酔下に、腰部皮膚に5cm程度の小さい皮膚切開を置き、 図1に示すように、棘突起の片側だけ、筋肉を剥離して侵入します。反対側の筋肉はいじらないので、手術後の脊椎の安定性がより良く保たれると考えられます。

その分、術野は狭くなりますので、手術には顕微鏡が必要になります。片側を、図1に示すように丁寧に骨を削って、圧迫をとったら、図2に示すように、顕微鏡を傾けて、反対側の除圧を行います。

図2. 顕微鏡を傾けて反対側の除圧

このようにして、関節や、椎弓、棘突起などの正常な構造物をできるだけ温存する形で、なおかつ、充分な神経の除圧を行うことができます。正常組織が温存されますので、ほとんどの症例で、固定を行う必要はありません。これは、顕微鏡を使った低侵襲な除圧術の最大の利点といえるでしょう。

図3. 左は手術前の腰椎MRIで、2箇所に著明な狭窄が認められる。右は、手術後の同じ条件のMRIで、2箇所ともきれいに圧迫が取り除かれ、なおかつ、正常組織は、良好に温存されている。

成績

この術式を用いて、いままでに700例を越える手術を行ってきました。そのうちの多くは、通常であれば、脊椎の固定術を行われるような、腰椎すべり症の症例も含まれています。

成績は、幸い非常に良好で、90%近くの患者様で、満足いく結果と評価して頂いています。手術後5年間の追跡調査の結果でも、良好な状態が維持されており、また、すべり症のある症例でも、ない症例と同等な、良好な結果が得られています。この結果は、2014年に、権威ある学術誌、「Spine」に論文として公表しています。

当院では、腰椎の変性疾患に対しては、このページでご紹介した顕微鏡的後方除圧術と、他のページでご紹介している、顕微鏡的椎間孔開放術の、二つの術式を主に用いて外科的治療を行っています。 この二つの手術を組み合わせることにより、ほとんどの症例で、腰椎の固定を行わず、顕微鏡的除圧術のみで、良好な成績を挙げています。